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そう言った俺に、目の前に座る女の目が鋭くなった。
鋭くなり・・・笑った・・・。
満足そうに、笑った・・・。



それが分かった瞬間、笑い声が聞こえた。
妙子の笑い声、そしてその隣に立つ秘書の男の笑い声・・・。



秘書の男をチラッと見る。
こいつは・・・なんとなく、かなり強そうな男だとは分かった。



そんな男が、面白そうに笑いなら俺の前に歩いてきた。



そして・・・



「お前こそ、会社を背中にして戦をしたこともねー青臭いガキだろうが。」



そう、言ってきた。



そんなことを言ってきた。



それに、俺は思わず右手が伸びて・・・



「サメ。」



そんな俺の右手を・・・妙子がおさえた。



妙子の顔を見下ろしながら、俺は少し深呼吸をする。



そしたら、また秘書の男の笑い声が聞こえてきて・・・



「採用で。
良いですよね?副社長。」



まさかの、そんなことを言われた。
面接も何もしてない、それだけでなく・・・あんなことまで言った俺に・・・。
秘書の男はそう言った・・・。



それには驚きながら副社長である女を見ると・・・



「そうだね、採用で。
でも、今のままでは使い物にならない。
その頭と身体、本当の戦場では使えるでしょうけど、この戦場では使い物にはならない。」



副社長である女がそう言いながら立ち上がり・・・



俺を見据えた・・・。



やけに綺麗に立ち、俺を真っ直ぐと見据えてきた・・・。



そして、綺麗に整った口を開いた。



「使い物にしてみなさい、その頭も身体も・・・心も精神も。
そして、スーツを着て戦が出来る大人の男になってみせなさい。」



そんなことを言い放ってきたこの女は・・・



副社長であるこの女は・・・。



ムカつくくらいに、良い女だった・・・。



妙子が選んだ、女だった・・・。



この女の元で働くと即決したくらいの・・・



めちゃくちゃ良い女だった・・・。
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