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お互いに裸になり、光一から腕に口付けをされる・・・。
私の腕に・・・。
今も残っている、いくつかの傷痕に・・・。



優しく、優しく・・・光一がその傷痕に口付けをしていってくれる・・・。



私が私自身を守った傷痕に、口付けをしていってくれる・・・。



「生きてて、よかった・・・。」



光一がそう呟いたので、私は頷く。



「ね、死んでてもおかしくなかったよね、私。」



「・・・いや、俺の話。」



「光一もね、死んでてもおかしくなかった。」



「・・・いや、そっちじゃなくて。
この現実世界が一瞬で破壊されればいいと思ってたから。
一瞬で全部破壊されて、一瞬でみんな死ねばいいと思ってた。
苦しすぎたから・・・。
桃子が渡とこんなことをしてるのかと想像したくもないのに想像して、一瞬で死にたくなってた。」



光一のそんな言葉には何も言えなくなる・・・。
何度も否定していたし、きょうだい全員が誤解をしたままだとは思ってもいなかった。



「でも、桃子よりも1秒でも長く生きなきゃいけねーからな、俺。
そう約束してたから、一瞬でみんな死ねばいいと思ってた。」



そんな初めて聞く話に、私は驚くしかなくて・・・。



「私のこと・・・大好きじゃん・・・。
全然そんな感じなかったのに・・・。」



「殺しまくってたからな、自分のこと。
“桃子”の幸せのことだけを考えて、俺は俺を殺しまくってた。」



「全然気付かなかった、ごめんね・・・。」



「俺も全然気付かなかった・・・。
頑張り過ぎだろ、泣き虫桃子。」



光一がそう言って・・・私の両足を掴み・・・



持ち上げてきて・・・



「俺、結構勉強得意なんだよな。」



「それは・・・うん・・・。
いつも成績良かったしね・・・。」



「兄貴が教えてくれてたからな。
あいつ、めちゃくちゃ教え方が上手いんだよ。」



そんなことを言ったかと思ったら・・・



思ったら・・・



私のトコロに、顔を下ろしてきて・・・。
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