異世界転生に憧れてたら向こうから来ちゃった件

明紅

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第一話

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『シャッ』っとカーテンを開ける音で目が覚めた。

「椎葉さん、検温お願いしまーす。」
おもむろに体温計を差し出されたので、 指示に従いつつ今、自分が置かれている状況を把握しようと頑張ってみた。

でも思い出せるのはコンビニで事故に遭った瞬間までの出来事と暗闇で女の子と何かを話してた事だけ…。
どこまでが現実でどこからが夢なのか判別できない気持ち悪い状態…。

なんか俺スゲー混乱してる…。

とりあえず、俺は死んでないって事だけは確かな様だ。
そしてこの看護師さんは、なかなか可愛いってのも確かだ!
是非ともお近づきになりたい!

「…あのぉ…すいません…俺どうなったんですか?」

恐るおそる看護師さんに聞いてみた。

「椎葉さん、昨日事故に遭われたのは覚えてますか?その事故の衝撃で脳しんとうを起こして救急車で運ばれてきたんですよ。でも大丈夫ですよ、ちょっと打撲はありますけど大した怪我も無かったですし、脳波にも異常は診られなかったので、お昼には退院できますよー。」

「退院?え?せっかくこんな可愛い看護師さんが診てくれてるのに?もっと世話話してくださいよぉ。」

「何言ってんですか椎葉さん、そんなことより、あんな凄い事故に巻き込まれたのに全然ケガしてなかったなんて、凄い強運ですよね。」

上手くはぐらかされてしまった…。

看護師から聞いた話によると、コンビニの向の交差点で接触事故を起こした車が、そのままの勢いでコンビニに突っ込んで来たらしい。
運が良かったのは、倒れたブックスタンドと背後にあった商品棚の隙間に俺が倒れ込んでたかららしい。

結果、倒れ込んだ時に頭を打って脳しんとう起こして意識失って、救急車で運ばれて、気を失ってる間に脳波やらなんやら色々検査されまくって、翌朝も異常無しって事でお昼には退院って事らしい。←今ここ。

「椎葉さんご両親は?」

「今年の春に親父が海外赴任になってお袋もついて行っちゃったんで、今一人暮らしです。」

「あら…どうしよ…保護者の方が居ないと…」

「あ、成人してたら大丈夫ですか?従姉妹だったら近所に住んでるんですけど…?」

結局、従姉妹の蒼葉あおばネエちゃんに連絡とって迎えに来てもらうことになった。


§


「ホントびっくりしたよぉ、サトルが入院してるって言うからさぁ…」

もう何度目だろ?このセリフ。
昼前に病院に迎えに来てもらって退院手続き済ませるまでに数回、退院して蒼葉ネエちゃんの車に乗っけてもらって二回程、そして自宅に戻って来てまた言ってる…。
まぁホントに驚いたんだろうなぁ。
帰り道の車内で見たテレビのワイドショーでも事故のことやってた。
店内の防犯カメラ映像とか見たけど、ホント良くあんな事故で生きてたな…俺。
しかも無傷って(笑)

「あとは大丈夫?ちゃんとご飯食べなさいよ。私まだ仕事あるから帰るね。あ、学校と叔母さんには連絡しといたから。また仕事終わったら夜にでも寄るねぇ。」

蒼葉ネエちゃんは、そう言い残すとバタバタと帰って行った。

さっき蒼葉ネエちゃんにがお袋と学校に連絡入れてたの聞いてたし、って言うか学校側は既に病院から連絡入ってたみたいだったけど…。

そう言えば病院代は、俺が退院する前に事故を起こした人が精算してたみたいだけど、事故した人も大変だよなぁ、コンビニの弁償とかもあるんだろ?まぁ保険とか入ってたら幾らか出るんだろうけど、全額って訳じゃ無いだろうし…考えたら悲惨だなぁ…。

とりあえず、何にもしてないけど疲れたから寝ようかな。

両親が居ないから現在一人暮らし状態の4LDKのマンション。
14階建てマンションの12階の右側の角…と言ってもワンフロアに4軒、上から見ると『コ』の字型に『I字型』の部屋と『L字型』の部屋がエレベーターを挟んでシンメトリーに配置されて作られているから全部角部屋みたいなもんだけど…。
作りは、玄関入って右がトイレと洗面所と浴室。
左に6畳の洋間がひとつ、時々蒼葉ネエちゃんが泊まりに来て使ってる。左奥に変形で縦に長い20畳程の広めのリビングダイニングとキッチン。
右側に2畳くらいのウォークインクローゼットを挟んで6~7畳の洋間が二つ、手前が両親の寝室。もうひとつはバルコニーに面している部屋で特に使ってない、しいて言えば客間?
それと、リビングの奥のバルコニー側に6畳程の洋間がもうひとつ、ココが俺の部屋だ。
要はL字型に部屋が3つ並んでいる状態だな。
バルコニーに面した2部屋は陽当たりが良すぎて夏場は暑くてたまらない。
エアコンは必需品だ。
エアコン無しの環境なんて考えられない。

とりあえず、部屋着に着替えてバルコニー側の横のスペースに設置しているベッドに転がって、スマホをいじっていると、見慣れないアイコンが一つ増えていたが、何かのアプリがアップデートしてアイコンが変わったんだろうと思い、さほど気にもせず、画面下のDockを見ると大量の不在着信とメッセージアプリの未読数が付いていて驚いた。
その殆どか、クラスメイトからのモノだったので、とりあえず無事を伝えるメッセージを一斉送信しておいた。


§


何時間寝たんだろう?
部屋は薄暗くなって、窓からは薄っすらとオレンジ色の夕日が差し込んでいた。

「腹減ったな、買っといた弁当でも食べるか…。」

リビングの奥には、4人掛けのテーブルが置いてある。
今や一人暮らしなので使わない場所には雑誌や番組欄くらいしか読まない新聞が積んであって、俺の座る一角だけは食事をするスペースを確保してあった。

しかしそこに、病院の帰りに買っておいた弁当が………無い!?
ん?違う所に置いたっけ?

『ガサッ』

カウンターキッチンの向こうからビニール袋の音がした。

誰か居る!
蒼葉ネエちゃんが戻って来たのか?

「蒼葉ネエちゃん、そんなトコでなにしてんの?」
カウンターキッチンの裏側を覗き込んで見ると、そこには幕の内弁当を貪る魔法使い風のコスプレ姿の見知らぬ女の子が座り込んでいた。
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