異世界転生に憧れてたら向こうから来ちゃった件

明紅

文字の大きさ
5 / 21

第四話

しおりを挟む
ミヨの一方的な話でエリーの面倒を見る羽目になってしまったこの状況で、いくつかの問題に気がついた。

まず、もうすぐ蒼葉ネエちゃんが来てしまうって状況が非常にマズイ。
とりあえず何処かの部屋に隠れててもらおうか…。

あと、面倒を見るイコール養うと言う図式になる訳だけど…まぁ部屋は何とか用意できると思うけど、食事…要は食費を何処から捻出するかだ…ミヨが払ってくれるなんて考えは甘い気がする…。

それと明日は日曜日だから良しとして、明後日から俺は学校だぞ…俺が学校に行ってる間エリーはココに大人しく居るのか?
今のところ、ビビってそうだけど、明るくなったらわかんないよなぁ…。
それに、あんな格好で出歩かれても不審者扱いされそうだし…いやむしろ不審者扱いされて警察に連れて行ってもらった方が良いのかな?
いや待て…仮にもミヨが本当に死神的な何かなんだから、そんなことをしたら何をされるか…考えただけでも恐ろしい…。
あと重大な問題が一つ。
いつまて預かればいいんだ?

「出来たぁー!」

渡してあった卓上メモを切り離してリビングの床いっぱいに敷き詰め、見たこともない平仮名に似た文字列といくつかの記号や地図の様なモノ、そして下手くそな怪獣?の様な落書きが大量に描かれていた。

「なんだそれは?」
「お前が私の話を信用しない様なので、絵と文章で説明してやろうと頑張って書いたのだ!」
「………あー…頑張って書いて貰って申し訳ないけど、さっきミヨから話は聞いた…ザックリだけど…お前の素性はだいたい解ったから…。」
「えっ………?」

エリーはなんとも間の抜けた表情でポカンと口を開けてこちらを見ている。

「いや…俺は悪くないぞ…。不可抗力だ。」
「私の苦労をどうしてくれる…。頑張って書いたんだぞ…。それを…それをちゃんと見もしないで話しを聞いたからもう要らないと……?」

エリーは、頬っぺたを膨らませて此方ににじり寄って来て涙目で訴えかけてきた。

「解った解った….聞いてヤるから説明してみろ。」
「そうか!では仕方ない説明してやろう。」

せっかく書いてくれたんだ聞いてやるか…。

「では説明しよう。まず、お前はイカサガンが何処に在るのかと聞いていたな。このバング列島の南に位置する島の左側にイカサガンは在る。」

何枚かの紙に歪な形の島らしき物がいくつか描かれていた。
その島の絵の左下の方に配置された小さな島に印が付いている。
本土にあたる部分が丸く大きく、その北側に一つ島が描かれ、南側に小さな島が3つジグザグに並んでいる形だった。

「そして帝都はここだ。」

杖で指し示した場所は大きな島の中央部、こいつはこんな小さな島から海を渡って帝都とやらに行こうとしてたんだな…確かに田舎者だ(笑)

「私は5日前にイカサガンを出て海を渡り帝都を目指したんだ。しかしこの…この峠のあたりでキビナーの大群に出くわして………出くわし…ぁあぁぁ…。」

なんか思い出したらしい。

「わ…私は…やはり死んでしまったのか?」
「俺に聞くな…って言いたいところだけど、さっきあの世の番人に聞いたよ。残酷なようだけど、エリー…君はそこで死んだらしい。」
「わ…私が…し…死んだ…。」

流石にショックだった様で、その場に頭を抱え込んで崩れ落ちた。

「まぁでもこの世界に転生して来てる訳だし…。」
「…ん?…転生?転生とはなんだ?」
「要は前の人生を終えて、新天地で生まれ変わったって事だよ。」
「で…では…ここは死後の世界ではないと言うことか?」
「うーん、確かに俺にとっては死後の世界では無いけど…お前にとっては、ある意味死後の世界なのかもな…。」
「やはりあの時…私は死んでしまったのだな。通りでそこからの記憶がない訳だ。しかし何故だ?なんで私はあの時のままの姿なのだ?」
「あの世の番人が言うには、向こうの手違いらしい。お前の魂を別の世界に転生させようとしたけど、なんか勝手にこっちの世界に迷い込んじまったみたいだぞ。」
「ん?どう言う事だ?お前はそのあの世の番人とかいうヤツと話が出来るのか?」
「まぁ俺も似た様なもんでさ、死んでも無いのにあの世に行きかけて、追い帰されたんだわ。それであの世の番人と知り合いみたいになっちまってな…。」

嘘は言って無いぞ、ちょっと盛ってるけど(笑)

「で…では私はこれからどうしたら良いのだ?住む家も…頼れる人間も居ないこの世界で…。赤子として生まれ変わったならまだしも…。」

エリーは今までに無い真剣な顔で考え込みだした。
そんな顔をされると、なんて声を掛ければいいのか解らない。

「でもまぁ死んだけど生きてる的な?ちょっと儲けた感じ?みたいな?」

沈んだ空気を盛り上げようと発した言葉が我ながらくだらな過ぎて情けない…。

「あぁそうだ、他のヤツも説明してくれよ…せっかくいっぱい書いたんだから…。」

沈黙に耐えきれず再び声を掛けてみた。

ピンポーン♪

「ヤッベェ…忘れてた…蒼葉ネエちゃんが来ちまった…。」

エリーをどうにかしないと…。

ガチャッ。

遅かった…エリーを何処かの部屋に隠すつもりでいたのに…蒼葉ネエちゃん…まさか合鍵を持ってるとは…。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

処理中です...