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第六話

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日曜日の朝。
俺はいつもの様にリビングで毎週欠かさず見ている、子供向けの特撮モノを見ながら朝飯用に焼いたトーストを食べていた。

丁度ヒーローの変身シーンが始まった時、エリーの部屋のドアが開いた。

「…なっ…なんですかそれは!!」

エリーが勢いよく近づいてくる。
目が覚めたら夢だったってのは…やっぱ無いよなぁ。

近づいてくるエリーに「これか?これが欲しいのか?」とトーストを見せたが首を横に振り、50インチのテレビを指差した。

「へ…変身してるぞ!それに見たこともない凶悪そうなモンスターも居るじゃないか!お前達の世界では、こんな恐ろしい奴らと戦っているのか?…凄いじゃないか見たこともない魔法でやっつけたぞ!え?なんだと?死んだはずのモンスターが巨大化しただと?」
慌てて部屋の窓から外を見渡すエリー。

あぁそうか、特撮なんて初めて見るんだろうなぁ。

「おお!凄いぞ!サトル見ろ!あの巨大ゴーレム…合体してモンスターをやっつけてしまったぞ!」

まるで、子供みたいにはしゃいでいる。

「お前達の世界の技術力って凄いんだな!っと言うか、この薄っぺらい板はなんだ?昨日見た時は黒くて映りの悪い鏡だと思ってたんだが、遠隔地の映像を映し出す魔道具か?」

遠からず間違いではないが、話の内容が科学文明以前の発想だな…。
面白いから、そのままにしとこうかな?

「そうだ。この魔道具はテレビと言う。そして今映し出されていた映像は、遥東の地での出来事だ。」

エリーは眼をキラキラさせながら俺の話を聞いていた。

嘘は教えてないぞ。
ちゃんと解り易いようにテレビを表現しただけだ。
そして『物語』を『出来事』って表現しただけだからな(笑)

「なに朝から子供番組で盛り上がってんのよ…。」
「あ、おはよ。」
「おはようございます。蒼葉さん」

リビングで騒いでいたのが聞こえたのか、蒼葉ネエちゃんが起きてきた。

「あぁエリーちゃん、さん付けはやめようよ。なんか他人行儀じゃない?『蒼葉ちゃん』とか『蒼ちゃん』で構わないから。」

自分でちゃん付けする女って…。

「は、はい…では、蒼葉ちゃん…。」
「よく出来また♪」
「じゃ俺も呼び方変えよーかなぁ。『蒼ネエ』って。」
「なによそれ!青ネギみたいじゃん…やだよ。」
どんな発想だよ…そんな反応想像もしてなかったわ(笑)

「あ、エリーちゃん…ちょっと。」
蒼葉ネエ…いやモノローグでも蒼ネエに統一しとこう。
文字数減るしな。
蒼ネエは手招きしてエリーを部屋に連れて行った。


§


「戸締りOK!じゃ行きましょうか?」
なんか昨日からずーっと蒼ネエに仕切られてる…。

エリーは昨日のコスチュームではなく、蒼ネエから借りた水色のワンピースを着て、なんだか落ち着かない様子だった。

マンションの外廊下を曲がって中央部に差し掛かるとエリーが不安げに呟いた。
「あ…あのぉ…もしかして、ソコに入るのか?」

「??」

「昨日は、この隣の扉を開けようとしたんだが、ココに封印が施されていたんで、迂闊に触ることができなかったのだ…そしてこっちの…この覗き窓から見える向こう側が暗闇の扉を見つけたんだが…中から『ガーッ』っと聞こえてきて…いや…本当だぞ!きっと中に何か居るんだ!」

封印って…確かに非常階段だから鍵の所の蓋を壊さないと開けられない様になってる…これを封印って…。
でも被せてるだけだから簡単に外せるようになってるのになぁ。
まぁ壊されなくて良かったけど(笑)

エレベーターの前で力説しているエリーを横目に呼びボタンを押した。

「なっ…何をしている…ま…まさかこの中を通るというのか?」

確かに遠くから『ガーッ』っと音を立ててエレベーターが登ってくるのが聞こえる。
初めて見る機械だろうし、覗き窓の向こうには確かに暗闇しか見えないし、こんな音が響いてたら…やっぱ怖いのかなぁ?

程なくしてエレベーターが到着した。

ガーッと開くエレベーターの扉を見てエリーは只たじろいでいた。

「ほ…本当に乗るのか?」
「まぁまぁ大丈夫だから。」
怯えるエリーの背中を蒼ネエが押してエレベーターに押し込んだ。

数十秒後、一階ロビーに到着して扉が開いた瞬間、エリーは外に飛び出して『ぶはーっ』っと深呼吸をしていた。
どうやらエレベーター内でずっと息を止めていたらしい(笑)

「エリーちゃん可愛い♪」

なにが可愛いんだか…。

「こ…これは便利な昇降機だな。帝都にも無いんじゃないか?」

蒼ネエは、そんなエリーの言葉を余所にサッサとエントランスを出て行った。
「ほら行くよ!」

「サ…サトル…あんな無防備に外に出て大丈夫なのか?」
「ん?なんでだ?」
「いや、だってさっきみたいなモンスターに出くわすと大変じゃないか…。」
あぁ、何かと思えばさっきのとくさつのコトを気にしてんのか(笑)
「そうだな、この辺りは大丈夫だ。心配ないと思うぞ。」
「ホントか?ホントなんだな?」
「二人とも何やってんの?早く行くよー。」
エントランスの外から蒼ネエが呼んでる。
「ほら、行くぞ。」

それにしても天気良すぎだろ…まだ朝の10時すぎだってのに、もう暑い。

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