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第1章 ◆ はじまりと出会いと
46. 校外学習③
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「足元、気をつけろよ。ランプも落とさないようにな」
クロードお兄ちゃんが先頭に立って、私達に振り返りながら言いました。
みんな自分のランプを手に暗い遺跡の中を一列で歩きます。
遺跡の中は思ったより広くて、ばらばらに歩くよりも固まって歩いた方がいいとカイト君が言ったので、私達はそうすることにしました。
真っ暗闇の中、私達の足音と足元を照らすランプの揺れる音が辺りに響きます。
広い空間ですが、音の反響からして部屋や広間と言うより、廊下や通路かもしれません。
ときどき壁の方を照らしてみますが、特に何の変わりもない石造りで、外で見た蔦のような模様はありませんでした。
でも、ランプの光を反射する白い壁がなんだか不気味で、あまり見ないようにしました。
そうして、何もない空間をみんなで四方照らしながら奥へと進んでいきました。
「この遺跡って、もう誰かが調べた後なんだよね?」
ぽつりと誰に言うでもなく疑問を呟くと、列の一番後ろに並んだカイト君が答えてくれました。
「管理職員が入ってもいいって言ってたから、調査済みだろ。遺跡は大体の調査が済めば、よっぽど傷んでるか危険じゃなけりゃ一般の人間も入っていいしな」
「そうなんだ?じゃあ、いつか他の遺跡にも行ってみたいなぁ」
見たことのない遺跡を想像して、わくわくしながらそう言うと、すぐ後ろのリィちゃんが小さく笑います。
「ふふ。そのためには古代語の勉強もしないとね」
「うんっ、そうだね!勉強する!」
古代語は勉強したいと思いながら、まだ全然手をつけていないので、校外学習が終わったらレガロお兄ちゃんに解りやすい辞書と簡単な文献を貸してもらおう!
カイト君、リィちゃんとしばらく遺跡についてや古代文字のことを話していると、黙って先頭を歩いていたクロードお兄ちゃんの足が止まりました。
お兄ちゃんが唐突に止まったので、こっちは止まり切れず、その背中にぶつかってしまいました。その流れでリィちゃんも私の背中にぶつかります。きっとカイト君もリィちゃんにぶつかってるかも。
「お兄ちゃん、急にどうしたの…?」
大きなお兄ちゃんに小さな私がぶつかっても痛くないだろうけど、何の反応も返ってこないので、何かあったのかとお兄ちゃんを見上げます。
「……行き止まりみたいだ」
お兄ちゃんはそう言いながら、先を照らすようにランプを掲げました。
その後ろから覗くようにランプの先を見ると、天井が崩れてその先が埋まっていました。
一つ一つが大きな積み石なので、どかすことも難しそうです。
「ここまで分かれ道もない一本道だったし、この遺跡はここまでしか調べられなかったかもな」
「そうね。隠し通路とかあるとおもしろかったと思うけど…」
カイト君とリィちゃんが来た道を振り返りながら言います。
私達が歩いてきた道は、本当に何もありませんでした。
隠し扉も、遺跡によくあるという魔法の跡もです。
魔法の跡というのは、遺跡に残る古代の魔法です。
遺跡がかつての時代、どんな役割を持っていたかによりますが、大抵は施設の維持のために何かしらの魔法が込められているそうです。
それは、今で言う守護魔法や保存魔法、空間魔法などです。
役目を終えたり、時間の流れでそれらは効力を失ってしまうのですが、それでも行使した魔法の痕跡が残っているはずだとカイト君が言いました。
むむむ。古代魔法の痕跡、見てみたかったなぁ。
疑問は残りますが、これ以上は進めないので引き返そうとしたその時。
「…待て。おかしい」
お兄ちゃんが緊張した顔で辺りを見渡します。
それが私達にも伝わって、思わず体が強張ってしまいました。
お兄ちゃんが警戒するように辺りを見渡すので、なんだか怖くなってきます。
ぎゅっとお兄ちゃんの服の裾を掴むと、護るように右と左にリィちゃんとカイト君が寄り添ってくれました。
こういう時、二人の存在に励まされます。
お兄ちゃんのこんな顔、初めて見た。
クロードお兄ちゃんは、眉間に皺を寄せて、何かを睨むような顔で辺りを見ていました。
普段のお兄ちゃんからは感じない、怖い雰囲気にますます緊張が大きくなります。
両隣の二人も何かを感じているのか、左右で違う場所を見ています。
私にはわからないものが三人には見えているのでしょうか?
しばらくすると何かを警戒していたお兄ちゃんは大きくため息を吐いて、その緊張を解きました。
それに釣られて、私達も力を抜きます。
「ごめんな。大丈夫みたいだ…。俺の勘違いかな」
そう言ったお兄ちゃんの声は、いつもの雰囲気に戻っていました。
困ったように笑いながら、こっちを振り向いたかと思えば、頭をぐしゃぐしゃと撫でられました。
左右にいたリィちゃんとカイト君は、何事もなかったかのようにまた私の後ろに並びました。
撫でられながらも、小さな疑問が私の中に湧いてきます。
本当に?
根拠はなかったけど、どうしてかそう思ってしまいました。
結局、これ以上遺跡の奥へは進めなかったので、外観のスケッチをして午前中を終えました。
お昼ご飯を食べた後は、植物園の見学です。みんなそれぞれ気に入った植物を観察することになっています。
植物園では、リィちゃんがいろいろ教えてくれました。
森の中の植物と街中の植物の違いや植物の成長の過程、薬草になるもの、毒になるものなど植物全般の知識です。
植物園は、いろんな生態や地域別に植物が植えられていて、その違いと移り変わりを見るのがとてもおもしろいです。
リィちゃんの説明もとても丁寧なので、より楽しめました!
「このバンデの森は、精霊がたくさんいる森だから植物も精霊の影響を受けているものが多いわ」
「へぇ~。見た目は普通の植物とあまり変わらないけど…」
精霊の森エリアに植えられている花や樹を見ても、大きな違いがわかりません。
ちょっと葉が大きいとか、花の色が薄い、濃いくらいの違いです。
これは、地域でちょっと見た目が変わる程度の違いだと思います。
隣で花を見ているカイト君も顔をしかめながら普通の植物との違いを探しているようです。
「クリス、深霧の森も精霊の森だろう。普段から精霊の森の植物を見てるんだ。普通の植物を見た方が違いがわかるかもしれないぞ?」
「あっ、そっか!」
お兄ちゃんの言葉に、自分が普通の植物をあまり知らなかったことに気がつきます。
見てはいるんだろうけど、じっくり観察したことはなかったです!
「それじゃあ、平原の植物エリアに行きましょう」
リィちゃんの提案に頷いて、私達はそのエリアへ移動しました。
平原の植物は全体的に花よりも葉の緑が多くて、その形や色の微妙な違いがおもしろいです!
大きな葉っぱや細長い葉っぱ、お花みたいにたくさん葉っぱが連なっているのもあります。
それらをじっくり観察して、ようやく気がつきました。
「わかった!葉の形が全然違うよ!精霊の森の植物はみんなハート形だ!」
「ふふっ。クリスちゃん、正解よ」
リィちゃんは、指でまるっとハンドサインをしてくれました。
うれしくなって笑顔で返します。
隣で見ていたカイト君も納得したように頷いていました。
植物って、みんな似たようなものだと思ってたけど、こうしてじっくり観察してみるとそうじゃないということがわかります。
色も形も、その生態も、それぞれに意味や役割があって、似ているようで全然違う。
うんっ!植物っておもしろい!
こうして、リィちゃんは植物園の出口まで植物の名前を挙げながら丁寧に解説してくれました。
そのおかげで、うまくレポートをまとめることができて先生達にいっぱい褒められました。
ちなみに、私が一番気に入った植物はコスモスです。
これは普通のコスモスと精霊の森のコスモスの違いがとてもよくわかるものだったからです。
もともとコスモスは大好きでしたが、普通のコスモスと見比べて、ますます好きになりました。
精霊の森のコスモスは普通のよりも花びらが丸くて、葉っぱはハート形で蔦のように伸びているのです。
このハートの蔦がかわいくてとても気に入っています。
ふふ。家に帰ったら、深霧の森のコスモスも観察してみよう!
一日目の校外学習が終わり、学園へと帰ってきました。
教室に戻ると、リスト先生が明日の予定について話します。
「明日は、オルデンの郊外にある騎士団の練習場で野外戦闘の見学になります。現地集合になりますから、場所がわからない方は地図をお渡ししますので私の方まで言いに来てください」
オルデン郊外ってなると、街の門の外の平原地帯だよね。
オルデンは、赤煉瓦の壁で囲まれた内側だけだと思われていることが多いですが、実は、その周りの平原もオルデンなのです。
平原には、馬車の停留所と小さな休憩小屋がいくつかあるくらいなので、そう思われてしまうのも仕方がないです。
クロードお兄ちゃんが何度か合同練習か何かでその練習場に行ったことがあるので場所はわかるそうですが、一応、地図をもらいました。
そんなこんなで先生の説明も終わり、あとは帰るだけです。
でも、一年生の下校時間までまだ余裕があったので、図書館に行きたいなと思いました。
森の遺跡の壁で見つけた、あの蔦の模様について調べたい!
そう思って教室を出ようとしたら、リィちゃんとカイト君に止められました。
「クリスちゃん。明日もあるんだから、今日は帰って早く休むこと」
「そうだぞ。調べ物は逃げねーんだから、明日のためにゆっくり休もうぜ」
リィちゃんはちょっとだけ怒った顔で、カイト君は呆れたようにそう言いました。
どうやら、二人には私の考えていることがお見通しのようです。
そんなに疲れてないけど、それもそうだなって思って二人の意見に頷きました。
その後は、ちょっとだけリィちゃん達とおしゃべりして学園の門で別れました。
「クリス。今日は楽しかったか?」
帰りの馬車の中で、お兄ちゃんが私を抱っこしながら言います。
「うんっ!とっても楽しかったよ!お兄ちゃんがいてくれて、本当によかった!ありがとう!」
「そっか。また明日も楽しい日になればいいな!」
その言葉に笑顔で返しました。
今日は気になることもあったけど、たくさんのことを勉強できました。
植物のことももっと知りたくなったし、古代文字の勉強も頑張ろうって思いました。
明日は、どんなことに出会えるかな?そう思うと、とても楽しみで仕方がないです!
「ただいまー!」
「おかえり、クリス」
「おかえりなさい、クリス」
家に帰ると、お父さんとお母さんがすぐに玄関まで飛んできて、力いっぱい抱きしめられました。
苦しくてびっくりしたけど、そんなに心配させてたんだなと思うと、その腕から逃げることはできません。
クロードお兄ちゃんは、その様子を苦笑いで見ていました。
こうして、校外学習一日目を無事に終えることができました。
クロードお兄ちゃんが先頭に立って、私達に振り返りながら言いました。
みんな自分のランプを手に暗い遺跡の中を一列で歩きます。
遺跡の中は思ったより広くて、ばらばらに歩くよりも固まって歩いた方がいいとカイト君が言ったので、私達はそうすることにしました。
真っ暗闇の中、私達の足音と足元を照らすランプの揺れる音が辺りに響きます。
広い空間ですが、音の反響からして部屋や広間と言うより、廊下や通路かもしれません。
ときどき壁の方を照らしてみますが、特に何の変わりもない石造りで、外で見た蔦のような模様はありませんでした。
でも、ランプの光を反射する白い壁がなんだか不気味で、あまり見ないようにしました。
そうして、何もない空間をみんなで四方照らしながら奥へと進んでいきました。
「この遺跡って、もう誰かが調べた後なんだよね?」
ぽつりと誰に言うでもなく疑問を呟くと、列の一番後ろに並んだカイト君が答えてくれました。
「管理職員が入ってもいいって言ってたから、調査済みだろ。遺跡は大体の調査が済めば、よっぽど傷んでるか危険じゃなけりゃ一般の人間も入っていいしな」
「そうなんだ?じゃあ、いつか他の遺跡にも行ってみたいなぁ」
見たことのない遺跡を想像して、わくわくしながらそう言うと、すぐ後ろのリィちゃんが小さく笑います。
「ふふ。そのためには古代語の勉強もしないとね」
「うんっ、そうだね!勉強する!」
古代語は勉強したいと思いながら、まだ全然手をつけていないので、校外学習が終わったらレガロお兄ちゃんに解りやすい辞書と簡単な文献を貸してもらおう!
カイト君、リィちゃんとしばらく遺跡についてや古代文字のことを話していると、黙って先頭を歩いていたクロードお兄ちゃんの足が止まりました。
お兄ちゃんが唐突に止まったので、こっちは止まり切れず、その背中にぶつかってしまいました。その流れでリィちゃんも私の背中にぶつかります。きっとカイト君もリィちゃんにぶつかってるかも。
「お兄ちゃん、急にどうしたの…?」
大きなお兄ちゃんに小さな私がぶつかっても痛くないだろうけど、何の反応も返ってこないので、何かあったのかとお兄ちゃんを見上げます。
「……行き止まりみたいだ」
お兄ちゃんはそう言いながら、先を照らすようにランプを掲げました。
その後ろから覗くようにランプの先を見ると、天井が崩れてその先が埋まっていました。
一つ一つが大きな積み石なので、どかすことも難しそうです。
「ここまで分かれ道もない一本道だったし、この遺跡はここまでしか調べられなかったかもな」
「そうね。隠し通路とかあるとおもしろかったと思うけど…」
カイト君とリィちゃんが来た道を振り返りながら言います。
私達が歩いてきた道は、本当に何もありませんでした。
隠し扉も、遺跡によくあるという魔法の跡もです。
魔法の跡というのは、遺跡に残る古代の魔法です。
遺跡がかつての時代、どんな役割を持っていたかによりますが、大抵は施設の維持のために何かしらの魔法が込められているそうです。
それは、今で言う守護魔法や保存魔法、空間魔法などです。
役目を終えたり、時間の流れでそれらは効力を失ってしまうのですが、それでも行使した魔法の痕跡が残っているはずだとカイト君が言いました。
むむむ。古代魔法の痕跡、見てみたかったなぁ。
疑問は残りますが、これ以上は進めないので引き返そうとしたその時。
「…待て。おかしい」
お兄ちゃんが緊張した顔で辺りを見渡します。
それが私達にも伝わって、思わず体が強張ってしまいました。
お兄ちゃんが警戒するように辺りを見渡すので、なんだか怖くなってきます。
ぎゅっとお兄ちゃんの服の裾を掴むと、護るように右と左にリィちゃんとカイト君が寄り添ってくれました。
こういう時、二人の存在に励まされます。
お兄ちゃんのこんな顔、初めて見た。
クロードお兄ちゃんは、眉間に皺を寄せて、何かを睨むような顔で辺りを見ていました。
普段のお兄ちゃんからは感じない、怖い雰囲気にますます緊張が大きくなります。
両隣の二人も何かを感じているのか、左右で違う場所を見ています。
私にはわからないものが三人には見えているのでしょうか?
しばらくすると何かを警戒していたお兄ちゃんは大きくため息を吐いて、その緊張を解きました。
それに釣られて、私達も力を抜きます。
「ごめんな。大丈夫みたいだ…。俺の勘違いかな」
そう言ったお兄ちゃんの声は、いつもの雰囲気に戻っていました。
困ったように笑いながら、こっちを振り向いたかと思えば、頭をぐしゃぐしゃと撫でられました。
左右にいたリィちゃんとカイト君は、何事もなかったかのようにまた私の後ろに並びました。
撫でられながらも、小さな疑問が私の中に湧いてきます。
本当に?
根拠はなかったけど、どうしてかそう思ってしまいました。
結局、これ以上遺跡の奥へは進めなかったので、外観のスケッチをして午前中を終えました。
お昼ご飯を食べた後は、植物園の見学です。みんなそれぞれ気に入った植物を観察することになっています。
植物園では、リィちゃんがいろいろ教えてくれました。
森の中の植物と街中の植物の違いや植物の成長の過程、薬草になるもの、毒になるものなど植物全般の知識です。
植物園は、いろんな生態や地域別に植物が植えられていて、その違いと移り変わりを見るのがとてもおもしろいです。
リィちゃんの説明もとても丁寧なので、より楽しめました!
「このバンデの森は、精霊がたくさんいる森だから植物も精霊の影響を受けているものが多いわ」
「へぇ~。見た目は普通の植物とあまり変わらないけど…」
精霊の森エリアに植えられている花や樹を見ても、大きな違いがわかりません。
ちょっと葉が大きいとか、花の色が薄い、濃いくらいの違いです。
これは、地域でちょっと見た目が変わる程度の違いだと思います。
隣で花を見ているカイト君も顔をしかめながら普通の植物との違いを探しているようです。
「クリス、深霧の森も精霊の森だろう。普段から精霊の森の植物を見てるんだ。普通の植物を見た方が違いがわかるかもしれないぞ?」
「あっ、そっか!」
お兄ちゃんの言葉に、自分が普通の植物をあまり知らなかったことに気がつきます。
見てはいるんだろうけど、じっくり観察したことはなかったです!
「それじゃあ、平原の植物エリアに行きましょう」
リィちゃんの提案に頷いて、私達はそのエリアへ移動しました。
平原の植物は全体的に花よりも葉の緑が多くて、その形や色の微妙な違いがおもしろいです!
大きな葉っぱや細長い葉っぱ、お花みたいにたくさん葉っぱが連なっているのもあります。
それらをじっくり観察して、ようやく気がつきました。
「わかった!葉の形が全然違うよ!精霊の森の植物はみんなハート形だ!」
「ふふっ。クリスちゃん、正解よ」
リィちゃんは、指でまるっとハンドサインをしてくれました。
うれしくなって笑顔で返します。
隣で見ていたカイト君も納得したように頷いていました。
植物って、みんな似たようなものだと思ってたけど、こうしてじっくり観察してみるとそうじゃないということがわかります。
色も形も、その生態も、それぞれに意味や役割があって、似ているようで全然違う。
うんっ!植物っておもしろい!
こうして、リィちゃんは植物園の出口まで植物の名前を挙げながら丁寧に解説してくれました。
そのおかげで、うまくレポートをまとめることができて先生達にいっぱい褒められました。
ちなみに、私が一番気に入った植物はコスモスです。
これは普通のコスモスと精霊の森のコスモスの違いがとてもよくわかるものだったからです。
もともとコスモスは大好きでしたが、普通のコスモスと見比べて、ますます好きになりました。
精霊の森のコスモスは普通のよりも花びらが丸くて、葉っぱはハート形で蔦のように伸びているのです。
このハートの蔦がかわいくてとても気に入っています。
ふふ。家に帰ったら、深霧の森のコスモスも観察してみよう!
一日目の校外学習が終わり、学園へと帰ってきました。
教室に戻ると、リスト先生が明日の予定について話します。
「明日は、オルデンの郊外にある騎士団の練習場で野外戦闘の見学になります。現地集合になりますから、場所がわからない方は地図をお渡ししますので私の方まで言いに来てください」
オルデン郊外ってなると、街の門の外の平原地帯だよね。
オルデンは、赤煉瓦の壁で囲まれた内側だけだと思われていることが多いですが、実は、その周りの平原もオルデンなのです。
平原には、馬車の停留所と小さな休憩小屋がいくつかあるくらいなので、そう思われてしまうのも仕方がないです。
クロードお兄ちゃんが何度か合同練習か何かでその練習場に行ったことがあるので場所はわかるそうですが、一応、地図をもらいました。
そんなこんなで先生の説明も終わり、あとは帰るだけです。
でも、一年生の下校時間までまだ余裕があったので、図書館に行きたいなと思いました。
森の遺跡の壁で見つけた、あの蔦の模様について調べたい!
そう思って教室を出ようとしたら、リィちゃんとカイト君に止められました。
「クリスちゃん。明日もあるんだから、今日は帰って早く休むこと」
「そうだぞ。調べ物は逃げねーんだから、明日のためにゆっくり休もうぜ」
リィちゃんはちょっとだけ怒った顔で、カイト君は呆れたようにそう言いました。
どうやら、二人には私の考えていることがお見通しのようです。
そんなに疲れてないけど、それもそうだなって思って二人の意見に頷きました。
その後は、ちょっとだけリィちゃん達とおしゃべりして学園の門で別れました。
「クリス。今日は楽しかったか?」
帰りの馬車の中で、お兄ちゃんが私を抱っこしながら言います。
「うんっ!とっても楽しかったよ!お兄ちゃんがいてくれて、本当によかった!ありがとう!」
「そっか。また明日も楽しい日になればいいな!」
その言葉に笑顔で返しました。
今日は気になることもあったけど、たくさんのことを勉強できました。
植物のことももっと知りたくなったし、古代文字の勉強も頑張ろうって思いました。
明日は、どんなことに出会えるかな?そう思うと、とても楽しみで仕方がないです!
「ただいまー!」
「おかえり、クリス」
「おかえりなさい、クリス」
家に帰ると、お父さんとお母さんがすぐに玄関まで飛んできて、力いっぱい抱きしめられました。
苦しくてびっくりしたけど、そんなに心配させてたんだなと思うと、その腕から逃げることはできません。
クロードお兄ちゃんは、その様子を苦笑いで見ていました。
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