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第1章 ◆ はじまりと出会いと
55. 学校への復帰
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ふわふわと漂うような感覚。
まるで浮いているような、揺り籠の中で優しく揺られているような、そんな感覚。
目を開けようかと思ったけど、なんだかもったいない気がして、目を閉じたままこの感覚を楽しみます。
心地よい感覚にしばらく身を任せていると、ふわりとどこかに足が着いた気がしました。
ゆっくり目を開けると、真っ白な空間に立っていました。
これは夢なのかなと思ったけど、意識が妙にはっきりしています。
でも、現実かと言われると違うような気がして、よくわかりません。
「どこだろう、ここ…」
わかるのは、ここは危険な場所ではないということ。
その何もない真っ白な空間をぐるりと見渡します。
ここは、そうだ、フォルトと契約した時にいた空間に似てるかもしれないです。
あの時は、何も訊けなかったけど…ここも私の精神の中ってことかな?
ふと、何もないと思っていましたが、いたるところにうっすらと扉や鏡が浮かんでいるのに気づきました。
近寄って手を伸ばしてみると、それらに触れることはできませんでした。
実体がないせいなのか、色も形もぼんやりとしています。
そっか。今はだめだった。
私には、まだ鍵がない。
どこか冷静に、妙に納得して、なんとなくまた歩き出します。
たくさんの扉や鏡を通り過ぎて、当てもなく進んでいくと、素通りしてきた鏡とは明らかに様子が違う鏡に辿り着きました。
その鏡は他の鏡よりも大きく、そして、とてもきれいな装飾がされていました。
花や鳥、動物など他にもいろんなモチーフが装飾されていて、何故かそれに懐かしさを覚えました。
「ああ、ここにいたんだね。私の○▽◆◎□●…」
その鏡に手を伸ばそうとした、その時――――――
『クリス!起きろ!!』
「――――――っ!?」
私の名を呼ぶ声と同時に、何かが額にぶつかった痛みで目が覚めました。
目の前にはフォルトの不機嫌な顔があって、どうやら額に頭突きされたようです。痛い。
その痛みで、さっきまで見ていた夢が何だったのかすぐに忘れてしまいました。
『まったく、いつまで寝てんだ!今日から学校だろ!?』
「っああ!!ごめん!起こしてくれてありがとう、フォルト!」
フォルトの言うとおり、今日から学校復帰でした!
ベッドから飛び起きて、急いで学校に行く支度をします。
時計を見れば、乗らなければいけない馬車の時間まであと二十分。
歯を磨いて、朝ご飯を食べて…むむむ、間に合うかな!?
制服に着替えて、歯を磨きながら、鞄の中を確認します。
休んでる間にやった自習ノートと先生からの宿題プリント、教科書、光組ノート、筆記用具…うん、忘れ物は無し!
前日に準備しておいてよかったです!
鞄を閉め、そのままリビングまで持っていって、歯磨きを終わらせます。
静かなリビングには、朝食とお弁当が用意されていました。
今日は、家族のみんなは私よりも早くでかけていて、朝から誰もいない日なのです。
急いで朝食を食べて、お弁当を持って家を出ました。
時間はギリギリです。間に合わないかもしれないです!
「あっ、フォルトは学校行くんだっけ!?」
『行くに決まってんだろ』
家を出た後にフォルトのことを思い出して、慌てて振り返れば、フォルトが後ろから付いて来ていました。
フォルトは呆れたように言っていますが、どこかうれしそうです。
久しぶりの学校だもんね。フォルトもみんなに会いたいよね。
そう思ったら、重大なことを見落としていたことに気づきました。
「フォルト、自分がカイト君だったって、みんなに言うの?」
先生達はともかく、組のみんなはカイト君が精霊獣だって知らないのです。
いきなりフォルトとしてみんなの前に出たら、きっとびっくりさせちゃいます。
『いや、言わねーよ。カイトはもういなくなった。クリスが食べちゃったんだろ?』
フォルトは迷いなくそう言って、最後はいたずらっぽく笑いながら言いました。
確かに言ったけど、あれはゼロを動揺させるために言った言葉です。本気じゃないです。
しばらくフォルトにこの話題でからかわれそうだと思いました。むむむ。
『ところで、クリス。あの馬車に乗るんじゃなかったのか?』
「えっ?ああっ!!?」
フォルトにそう言われて、まだ遠い停留所を見たら、馬車はもう走り出していました。
どう頑張っても、ここから走って追いつけるわけがありません。
がっくりして、小さくなっていく馬車を見送ります。
次の馬車は一時間後。もう学校が始まっている時間です。
学校復帰初日から遅刻だなんて…。
『クリス。何がっくりしてるんだ。まだ間に合うだろ』
「フォルト、次の馬車は一時間後だよ…」
フォルトは、私の背中を鼻で突くと、くいっと自分の背中へと頭を振ります。
その仕草に首を傾げると、がぶっと制服の襟をかまれて、投げられるようにフォルトの背中に乗せられました。
「え、ええええっ!!?」
『俺がいるんだから、乗って行けばいいだろ?ほら、しっかり捕まってろよ。あと、口も閉じとけ』
そう言うと、フォルトは私を背に乗せているのが嘘みたいな速さで馬車を追いかけていきました。
突然のことに文句を言おうとしましたが、フォルトがとても楽しそうに走っているのを感じて、何も言えなくなりました。
そういえば、カイト君だった時も走るのが好きだって言ってたよね。
ちょっと硬めのつやつやの毛並みを撫でながら、フォルトに身を任せました。
馬車に追いついた時は、御者さんがびっくりして慌てて馬車を止めてくれました。
ライオンよりも大きな狼が追いかけてきたら、びっくりするよね。しかも、人を乗せてるし。
「クリスちゃんが乗ってたから、契約獣だったんだね。本当、おじさん、食べられるかと思ったよ」
御者さんが言ったその言葉に、馬車に乗っていたお客さん達も同時に頷いたのが見えました。
びっくりさせて、本当にすみません…。
学園前の停留所に到着すると、フォルトが鼻で背中を突いてきました。
『クリス、俺は一緒に教室には行かねえ。適当に学園内で時間潰してるから』
「みんなに会わなくていいの?」
『いいって。さっきも言っただろ?俺はフォルトだ。クリスの契約獣で、クリスの親友』
「…フォルトがそう言うなら…もう何も言わないよ」
そんなやり取りをして学園の正門まで辿り着くと、フォルトはそのままどこかへ行ってしまいました。
ライオンよりも大きい狼が学園内を歩いていても、他の人達は特に気にしていませんでした。
他にも大型の鳥や私ぐらいの大きさで服を着たうさぎ、二つの頭を持つオオトカゲが歩いているので、そんなにびっくりすることじゃないのかもしれません。
精霊獣だって言われたらびっくりされるかもしれませんが…。
「グランツ学園は、本当にすごい学校だなあ…」
改めてグランツ学園のすごさを実感しながら、教室へと向かいました。
「おはよう、クリスちゃん。久しぶりー」
「おはよう。元気だった?」
教室に入ると、組のみんなが声を掛けてきてくれました。
約三週間ぶりの学校です。みんなに会えてうれしいです!
「クリス、あなたが学校復帰すると聞いてクッキーを作りましたの。是非、食べてちょうだい」
「クリスちゃん、怪我はもう大丈夫?休んでた分の勉強、わからないことがあったら言ってね!」
「ありがとう!アイリーナちゃん、ミルティちゃん!」
アイリーナちゃんがクッキーをくれて、ミルティちゃんがノートを貸してくれました。
二人の気持ちがうれしくて、笑顔で返しました。
その後もみんながいろいろ話しかけてくれて、組のみんなの優しさにちょっとだけ涙が出そうでした。
あれ?そういえば、リィちゃんと他にも何人かいないような…?
それをアイリーナちゃんに訊くと、さみしそうな顔で答えてくれました。
「リィさんは職員室に行っていますわ。他の子は…クリスが来ていなかった間に、進級しましたのよ」
「あ…そうだったんだ…」
進級…組替えです。
そうだった、ずっとこの組でみんなと一緒にいられるわけじゃない。
私だってこの組に入ってから、もう半年が過ぎています。
私より早く入っていた子は、組替えしてもおかしくないのです。
あの校外学習で自分の道を決めた子だって、すぐに組替えしていきます。
「ご挨拶できなかったのはさみしいけど…仕方ないよね」
「ええ。その子達もクリスによろしくって言っていましたわ」
「うん…」
ここにはいない子達を思い出して、心の中で応援の言葉を贈りました。
私もこれからの道を考えなくてはいけません。
これまで迷っていましたが、フォルトと契約してからずっと考えていたことがあります。
それは、難しいかもしれないし、もしかしたら私にはできないことなのかもしれない。
それでも、やってみたい。勉強してみたい。
「おはよう、クリスちゃん。難しい顔をしてどうしたの?」
考えていたところに声を掛けられて、顔を上げました。
目の前に立つ、優しい新緑色の目と合えば思わず笑顔になります。
「リィちゃん、おはよう!…あれ?その教科書…」
リィちゃんは慌ててそれを後ろに隠しました。
とても困った顔をしています。
見たこともない大きな教科書と資料集…もしかして。
「リィちゃん、組替えするの?」
「……」
リィちゃんは俯いてしまいました。
そっか、そうだよね。リィちゃんは自分のやりたいことが決まってる。
だったら組替えは早い方がいいと思います!
リィちゃんと離ればなれになるのはさみしいですが、会えないわけではありません。
同じ学園にいるんだから、会おうと思えば会えます!
私は、俯いているリィちゃんをぎゅっと抱きしめました。
「リィちゃん、よかったね!やりたいことを勉強できるんだから!応援してるねっ」
「クリスちゃん…」
リィちゃんの目には涙がありました。
それに釣られて、私も涙が出ちゃいました。
教室だったから大きな声では泣かなかったけど、リィちゃんと二人でその場で泣いてしまいました。
組のみんなにはすごくびっくりされて、いっしょに喜んでくれたり慰めてくれました。
そんなこともあって、リィちゃん以外にももうすぐ組替えをする子達が数人いることがわかって、放課後に小さなお見送り会をすることになりました。
リスト先生の許しももらって、エヴァン先生がお菓子も用意してくれることになりました!
別れをさみしく思いながら、光組八番のみんなは今日の授業も頑張るのでした。
まるで浮いているような、揺り籠の中で優しく揺られているような、そんな感覚。
目を開けようかと思ったけど、なんだかもったいない気がして、目を閉じたままこの感覚を楽しみます。
心地よい感覚にしばらく身を任せていると、ふわりとどこかに足が着いた気がしました。
ゆっくり目を開けると、真っ白な空間に立っていました。
これは夢なのかなと思ったけど、意識が妙にはっきりしています。
でも、現実かと言われると違うような気がして、よくわかりません。
「どこだろう、ここ…」
わかるのは、ここは危険な場所ではないということ。
その何もない真っ白な空間をぐるりと見渡します。
ここは、そうだ、フォルトと契約した時にいた空間に似てるかもしれないです。
あの時は、何も訊けなかったけど…ここも私の精神の中ってことかな?
ふと、何もないと思っていましたが、いたるところにうっすらと扉や鏡が浮かんでいるのに気づきました。
近寄って手を伸ばしてみると、それらに触れることはできませんでした。
実体がないせいなのか、色も形もぼんやりとしています。
そっか。今はだめだった。
私には、まだ鍵がない。
どこか冷静に、妙に納得して、なんとなくまた歩き出します。
たくさんの扉や鏡を通り過ぎて、当てもなく進んでいくと、素通りしてきた鏡とは明らかに様子が違う鏡に辿り着きました。
その鏡は他の鏡よりも大きく、そして、とてもきれいな装飾がされていました。
花や鳥、動物など他にもいろんなモチーフが装飾されていて、何故かそれに懐かしさを覚えました。
「ああ、ここにいたんだね。私の○▽◆◎□●…」
その鏡に手を伸ばそうとした、その時――――――
『クリス!起きろ!!』
「――――――っ!?」
私の名を呼ぶ声と同時に、何かが額にぶつかった痛みで目が覚めました。
目の前にはフォルトの不機嫌な顔があって、どうやら額に頭突きされたようです。痛い。
その痛みで、さっきまで見ていた夢が何だったのかすぐに忘れてしまいました。
『まったく、いつまで寝てんだ!今日から学校だろ!?』
「っああ!!ごめん!起こしてくれてありがとう、フォルト!」
フォルトの言うとおり、今日から学校復帰でした!
ベッドから飛び起きて、急いで学校に行く支度をします。
時計を見れば、乗らなければいけない馬車の時間まであと二十分。
歯を磨いて、朝ご飯を食べて…むむむ、間に合うかな!?
制服に着替えて、歯を磨きながら、鞄の中を確認します。
休んでる間にやった自習ノートと先生からの宿題プリント、教科書、光組ノート、筆記用具…うん、忘れ物は無し!
前日に準備しておいてよかったです!
鞄を閉め、そのままリビングまで持っていって、歯磨きを終わらせます。
静かなリビングには、朝食とお弁当が用意されていました。
今日は、家族のみんなは私よりも早くでかけていて、朝から誰もいない日なのです。
急いで朝食を食べて、お弁当を持って家を出ました。
時間はギリギリです。間に合わないかもしれないです!
「あっ、フォルトは学校行くんだっけ!?」
『行くに決まってんだろ』
家を出た後にフォルトのことを思い出して、慌てて振り返れば、フォルトが後ろから付いて来ていました。
フォルトは呆れたように言っていますが、どこかうれしそうです。
久しぶりの学校だもんね。フォルトもみんなに会いたいよね。
そう思ったら、重大なことを見落としていたことに気づきました。
「フォルト、自分がカイト君だったって、みんなに言うの?」
先生達はともかく、組のみんなはカイト君が精霊獣だって知らないのです。
いきなりフォルトとしてみんなの前に出たら、きっとびっくりさせちゃいます。
『いや、言わねーよ。カイトはもういなくなった。クリスが食べちゃったんだろ?』
フォルトは迷いなくそう言って、最後はいたずらっぽく笑いながら言いました。
確かに言ったけど、あれはゼロを動揺させるために言った言葉です。本気じゃないです。
しばらくフォルトにこの話題でからかわれそうだと思いました。むむむ。
『ところで、クリス。あの馬車に乗るんじゃなかったのか?』
「えっ?ああっ!!?」
フォルトにそう言われて、まだ遠い停留所を見たら、馬車はもう走り出していました。
どう頑張っても、ここから走って追いつけるわけがありません。
がっくりして、小さくなっていく馬車を見送ります。
次の馬車は一時間後。もう学校が始まっている時間です。
学校復帰初日から遅刻だなんて…。
『クリス。何がっくりしてるんだ。まだ間に合うだろ』
「フォルト、次の馬車は一時間後だよ…」
フォルトは、私の背中を鼻で突くと、くいっと自分の背中へと頭を振ります。
その仕草に首を傾げると、がぶっと制服の襟をかまれて、投げられるようにフォルトの背中に乗せられました。
「え、ええええっ!!?」
『俺がいるんだから、乗って行けばいいだろ?ほら、しっかり捕まってろよ。あと、口も閉じとけ』
そう言うと、フォルトは私を背に乗せているのが嘘みたいな速さで馬車を追いかけていきました。
突然のことに文句を言おうとしましたが、フォルトがとても楽しそうに走っているのを感じて、何も言えなくなりました。
そういえば、カイト君だった時も走るのが好きだって言ってたよね。
ちょっと硬めのつやつやの毛並みを撫でながら、フォルトに身を任せました。
馬車に追いついた時は、御者さんがびっくりして慌てて馬車を止めてくれました。
ライオンよりも大きな狼が追いかけてきたら、びっくりするよね。しかも、人を乗せてるし。
「クリスちゃんが乗ってたから、契約獣だったんだね。本当、おじさん、食べられるかと思ったよ」
御者さんが言ったその言葉に、馬車に乗っていたお客さん達も同時に頷いたのが見えました。
びっくりさせて、本当にすみません…。
学園前の停留所に到着すると、フォルトが鼻で背中を突いてきました。
『クリス、俺は一緒に教室には行かねえ。適当に学園内で時間潰してるから』
「みんなに会わなくていいの?」
『いいって。さっきも言っただろ?俺はフォルトだ。クリスの契約獣で、クリスの親友』
「…フォルトがそう言うなら…もう何も言わないよ」
そんなやり取りをして学園の正門まで辿り着くと、フォルトはそのままどこかへ行ってしまいました。
ライオンよりも大きい狼が学園内を歩いていても、他の人達は特に気にしていませんでした。
他にも大型の鳥や私ぐらいの大きさで服を着たうさぎ、二つの頭を持つオオトカゲが歩いているので、そんなにびっくりすることじゃないのかもしれません。
精霊獣だって言われたらびっくりされるかもしれませんが…。
「グランツ学園は、本当にすごい学校だなあ…」
改めてグランツ学園のすごさを実感しながら、教室へと向かいました。
「おはよう、クリスちゃん。久しぶりー」
「おはよう。元気だった?」
教室に入ると、組のみんなが声を掛けてきてくれました。
約三週間ぶりの学校です。みんなに会えてうれしいです!
「クリス、あなたが学校復帰すると聞いてクッキーを作りましたの。是非、食べてちょうだい」
「クリスちゃん、怪我はもう大丈夫?休んでた分の勉強、わからないことがあったら言ってね!」
「ありがとう!アイリーナちゃん、ミルティちゃん!」
アイリーナちゃんがクッキーをくれて、ミルティちゃんがノートを貸してくれました。
二人の気持ちがうれしくて、笑顔で返しました。
その後もみんながいろいろ話しかけてくれて、組のみんなの優しさにちょっとだけ涙が出そうでした。
あれ?そういえば、リィちゃんと他にも何人かいないような…?
それをアイリーナちゃんに訊くと、さみしそうな顔で答えてくれました。
「リィさんは職員室に行っていますわ。他の子は…クリスが来ていなかった間に、進級しましたのよ」
「あ…そうだったんだ…」
進級…組替えです。
そうだった、ずっとこの組でみんなと一緒にいられるわけじゃない。
私だってこの組に入ってから、もう半年が過ぎています。
私より早く入っていた子は、組替えしてもおかしくないのです。
あの校外学習で自分の道を決めた子だって、すぐに組替えしていきます。
「ご挨拶できなかったのはさみしいけど…仕方ないよね」
「ええ。その子達もクリスによろしくって言っていましたわ」
「うん…」
ここにはいない子達を思い出して、心の中で応援の言葉を贈りました。
私もこれからの道を考えなくてはいけません。
これまで迷っていましたが、フォルトと契約してからずっと考えていたことがあります。
それは、難しいかもしれないし、もしかしたら私にはできないことなのかもしれない。
それでも、やってみたい。勉強してみたい。
「おはよう、クリスちゃん。難しい顔をしてどうしたの?」
考えていたところに声を掛けられて、顔を上げました。
目の前に立つ、優しい新緑色の目と合えば思わず笑顔になります。
「リィちゃん、おはよう!…あれ?その教科書…」
リィちゃんは慌ててそれを後ろに隠しました。
とても困った顔をしています。
見たこともない大きな教科書と資料集…もしかして。
「リィちゃん、組替えするの?」
「……」
リィちゃんは俯いてしまいました。
そっか、そうだよね。リィちゃんは自分のやりたいことが決まってる。
だったら組替えは早い方がいいと思います!
リィちゃんと離ればなれになるのはさみしいですが、会えないわけではありません。
同じ学園にいるんだから、会おうと思えば会えます!
私は、俯いているリィちゃんをぎゅっと抱きしめました。
「リィちゃん、よかったね!やりたいことを勉強できるんだから!応援してるねっ」
「クリスちゃん…」
リィちゃんの目には涙がありました。
それに釣られて、私も涙が出ちゃいました。
教室だったから大きな声では泣かなかったけど、リィちゃんと二人でその場で泣いてしまいました。
組のみんなにはすごくびっくりされて、いっしょに喜んでくれたり慰めてくれました。
そんなこともあって、リィちゃん以外にももうすぐ組替えをする子達が数人いることがわかって、放課後に小さなお見送り会をすることになりました。
リスト先生の許しももらって、エヴァン先生がお菓子も用意してくれることになりました!
別れをさみしく思いながら、光組八番のみんなは今日の授業も頑張るのでした。
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