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第2章 ◆ 見えるものと見えないものと
5. 魔宝石の器②
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手の中にある魔宝石を見つめながら、これは本当に私が持っていたものだったのかと疑ってしまいます。
海組に進級してから忙しくてずっとポーチに入れたままで気がつかなかったけど、それは明らかに形が変わっていました。
「ポーチに入ってたから、魔宝石…なんだよね?」
魔宝石を陽の光に透かしながら、その形をじっくり観察します。
これまで淡い半透明色のごつごつしたものだったのが、中の虹色が揺らめくのがはっきりわかるくらい透明度が増して、磨かれた楕円形の宝玉に変わっていました。
中の虹色の光が前よりも増しているような気がするのは、あまりにも見た目が変わってしまったせいなのでしょうか?
「…どうして形が変わったんだろう?」
そう呟いても答えが出るわけもなく、どこかに行ってしまったフォルトを魔法会話で呼びかけることにしました。
フォルトなら何か知っているかもしれないし、少なくとも私よりも知識が豊富なのは確かです。
実は、自宅療養をしていた時にフォルトに魔宝石を見せたことがあります。
フォルトは特にびっくりした様子もなく、『へ―。ずいぶん懐かしいもの持ってんなー』と、興味もそんなにないような微妙な反応を返したのです。
魔宝石と知った時の私とライゼンさんの反応とは全然違って、ちょっとだけ魔宝石に鼻を寄せただけでした。
その時は特に何を話すまでもなくすぐに別の話に移ったので、フォルトにとっては特に珍しいものではなかったようです。
その後も話題に出ることもなかったので、本当に興味がなかったのかもしれないです。むむむ。
「フォルト、どこにいるの?返事して?」
形が変わってしまった魔宝石を握りながら、フォルトを何度も呼びますが返事はありません。
何か用事をしているか寝ているのでなければ、すぐに返事が返ってくるはずです。
しばらく呼びかけると、眠そうな声が返ってきました。
『ふあぁ…クリス、なんか用か~?』
「ごめん。寝てたんだね、フォルト。今どこにいるの?魔宝石の形が変わっちゃったの。どうしよう、なんかおかしなことになるってことないよね?」
周囲の人に聞こえないように小さな声でフォルトに伝えると、『なんだ、そんなことかよ』と気の抜けたあくびとともに返ってきました。
「そんなことって何!?私にはどういうことか全然わかんないよ!!」
あまりにもそっけない返事だったので、声を荒げてしまいました。
その声で、魔法会話の向こうでフォルトが飛び起きるような音がしました。
近くを歩いていた人達もびっくりした顔をしたので、慌てて頭を下げて足早にこの場を離れます。
とりあえず、魔宝石についてフォルトと落ち着いて話したいから一度寮に帰ることにしました。
フォルトもそれに頷いたので、その時にいろいろと訊くことにします。
「魔宝石の形が変わるなんて、ますます謎が増えていくばかりだよ…」
わからないことばかりの魔宝石をポケット越しに触って、深いため息を吐くしかありませんでした。
寮に戻ると、玄関でルルーシア先輩に会いました。
手には、すらっとした細身の剣が握られていました。柄にきれいな鳥の装飾がされているのが印象的です。
体を動かして高揚した鋭い眼が私を捉えます。すると、ふっと息を吐くように力が抜けた眼になりました。
「おかえり、クリス。随分早い帰りだな。魔法樹図書館はどうだった?」
「ただいまです、先輩。魔法樹図書館は入館できなかったので帰ってきました。先輩は鍛練終わったんですか?」
「そうか、残念だったな。鍛練は早めに切り上げたんだ。この後やらなければいけないことがあってな」
ルルーシア先輩は懐の時計をちらっと見て、「それじゃあ、夕食の時にな」と手を振って自分の部屋へと帰りました。
私も先輩に手を振って、寮の中庭に早足で向かいました。
中庭にはもうフォルトがいて、困ったように何かをぶつぶつと喋っていました。
私がいる位置からはフォルトの背中しか見えませんが、そこに誰かいるのでしょうか?
こっそりと覗くように木の後ろから様子を見てみます。
『…どういうことだ?空っぽの化石じゃなかったのかよ?』
「わらわも驚いているぞ。まさか形が変わるとはな」
『あ~~。見せてもらった時は何も感じなかったんだけどなぁ』
「昔からおまえは魔力感知が下手だな」
『うるせーよ!……事実だけどよ』
フォルトが肩を落とすように頭をがくんと下げると、さらさらの銀髪が見えました。
あの髪は、もしかして…。
「む?クリス、そんなところでどうしたのだ?」
フォルトの陰から流れる髪を優雅に押さえながら顔を出したのは、思ったとおりルミナさんでした。
笑顔で手招きされたので、フォルトの傍へ駆け寄ります。
フォルトを見上げたら、ちょっと困ったような目を返されました。
「フォルトから聞いてな。クリス、魔宝石ユーラティオを持っておるそうだな?」
「えっ、あ…はい」
そう訊いてきたルミナさんの目はいつものような温かいものではなく、かと言って冷たいものでもありませんでした。
何かを見極めるような、冷静でいて、でも灼けつくような何かを感じる目です。
「クリスは、いつからその石を持っておる?」
「えと…2年近く前に、精霊王様からいただいたんです」
アンジェさんとのやり取りを簡単に説明したら、2人とも始終ずっと目を丸くしていました。
あれ…?そういえば、アンジェさんに会ったことはライゼンさん以外の人に話したことなかったかも?
『…マジかよ。本当にあの方に会ったのか…』
「なるほどな。諸々の合点がいった…」
私の話を聴いて、2人はそれぞれ何かに納得したようです。
そして、何かを伝え合うようにお互いを見つめました。
精霊と精霊獣との会話か何かがあるのでしょうか?
しばらく2人はそのまま動かなかったので、取り残された私はどうすればいいのかわかりません。
ぱらぱらと木の葉が落ちるのをぼんやりと眺めて、どれくらいの時間が経ったのでしょうか。
ルミナさんが私に向き直るように手を伸ばしてきました。
その手は、私の頬に触れたかと思うと、横髪を後ろに梳くような優しい動きで撫でてきました。
されるがままになっていると、いつもの温かい目が私の目に映ります。
「…うむ、わかった。あの方は、おまえに何かを託しておられるようだな。その役割を果たすまでは、わらわ達はおまえにそのことについて何も言えん」
『悪ぃな、クリス。こればっかりはあの方にしかわかんねーことだから』
フォルトの困ったようなため息が降ってきます。
よくわからないけど、フォルトとルミナさんにはアンジェさんの考えていることがわかっているみたいです。
ちょっと残念に思いましたが、アンジェさんに会えばきっとわかるよね?
だって、まだ私はアンジェさんの「言葉」を聴いてないから。
「うん、わかった…。じゃあ、この石のことは教えてくれる?」
ポケットから魔宝石を取り出します。
それを見た2人が息を呑んだ気がしました。
2人は恐る恐るといった感じで魔法石を見つめます。
ルミナさんは何度か角度を変えながら眺めて、小さく息をつきました。
「うむ、紛うことない魔宝石だな。懐かしい」
『ああ。この形…本当にあの魔宝石だな…』
私の手に乗る魔宝石を顔を寄せながら言う2人。
2人の目はどこかキラキラとしていて、なんだかうれしそうです。
その様子がちょっとだけ微笑ましいと思ってしまったのは秘密です。
話が長くなるのか、ルミナさんが近くのベンチを指差しました。
それに頷いて、ベンチに私とルミナさんが腰かけて、フォルトは私達の前の芝生に座ります。
「わらわ達が魔宝石について知っていることは少ない。だが、クリスよりは知っているつもりだ。そうだな、とりあえず魔宝石ユーラティオの特性を教えよう」
「特性…?」
ルミナさんは、魔宝石ユーラティオについて知っていることを話してくれました。
簡単に説明すると、魔宝石ができたのは今からずっとずっとずーっと昔のこと。
妖精とエルフと人間が争いばかりしていた、とても暗い時代。
精霊王さんはそれまで世界に干渉することはありませんでしたが、長く続く争いと流れる血の多さに心を痛めて、3つの魔宝石を創りました。
それが「祝福の石」「追憶の石」「契約の石」です。
その3つの石のうち、人間がもらった「契約の石」は他の2つとは違い、成長していく石でした。
何かと心を通わす度に、誰かと約束を交わす度に、その形を変えていくのです。
どういう流れで3者の争いが終わったのかはわかりませんが、精霊王さんが介入したということは間違いありません。
と、2人が魔宝石について知っているのはこれくらいでした。
「精霊王と3つの石」の絵本で大体の話は分かっていたつもりでしたが、ところどころ違うところがありました。
それと、私が持っている魔宝石は「契約の石」だということもわかりました。
ライゼンさんがおでかけの時に教えてくれた、『少し意味合いが違うが、魔宝石もそういう意味の名だ』と言っていたのを思い出しました。
そして、魔宝石の「特性」…成長するというのは、ライゼンさんも知らないことでした。
ちなみに、フォルトはアンジェさんが魔宝石を持っているのを見たことあるくらいで、どんなものかはよく知らなかったようです。懐かしいっていう反応しかできなかったのも納得です。
2人の話を聴いて、改めて手の中の魔宝石を見つめます。
「どうして成長していくんだろう?」
「それはわらわ達にもわからない。だが、あのお方のことだ。人間にとって一番適した石を創ったのであろう」
ルミナさんは、魔宝石にそっと指先で触れました。
すると魔宝石がキラキラと輝いて、ちょっとだけ虹色が強くなった気がしました。
「そうか…そうだな。人間とはそういう存在だな」
ルミナさんは目を細めて、きれいに微笑みます。まるで大好きなものを目にしたような柔らかな笑みです。
私にはその言葉の意味は分かりませんでしたが。
芝生に寝そべってそれを見ていたフォルトも顔を上げて、魔宝石に鼻先を近づけます。
さっきと同じようにまた魔宝石が輝いて、虹色が広がります。
『細かいことはわかんねーけど、この石の魔力はあったけーな。クリスみてえだ』
フォルトも何かを感じたのか、どこか遠い目で魔宝石を見つめています。
私達を囲む空気はとても穏やかで優しいものでした。
そんな空気に包まれながら、ぼんやりと頭に浮かんだのは。
ああ。この空気、私はどこかで覚えがある―――――
海組に進級してから忙しくてずっとポーチに入れたままで気がつかなかったけど、それは明らかに形が変わっていました。
「ポーチに入ってたから、魔宝石…なんだよね?」
魔宝石を陽の光に透かしながら、その形をじっくり観察します。
これまで淡い半透明色のごつごつしたものだったのが、中の虹色が揺らめくのがはっきりわかるくらい透明度が増して、磨かれた楕円形の宝玉に変わっていました。
中の虹色の光が前よりも増しているような気がするのは、あまりにも見た目が変わってしまったせいなのでしょうか?
「…どうして形が変わったんだろう?」
そう呟いても答えが出るわけもなく、どこかに行ってしまったフォルトを魔法会話で呼びかけることにしました。
フォルトなら何か知っているかもしれないし、少なくとも私よりも知識が豊富なのは確かです。
実は、自宅療養をしていた時にフォルトに魔宝石を見せたことがあります。
フォルトは特にびっくりした様子もなく、『へ―。ずいぶん懐かしいもの持ってんなー』と、興味もそんなにないような微妙な反応を返したのです。
魔宝石と知った時の私とライゼンさんの反応とは全然違って、ちょっとだけ魔宝石に鼻を寄せただけでした。
その時は特に何を話すまでもなくすぐに別の話に移ったので、フォルトにとっては特に珍しいものではなかったようです。
その後も話題に出ることもなかったので、本当に興味がなかったのかもしれないです。むむむ。
「フォルト、どこにいるの?返事して?」
形が変わってしまった魔宝石を握りながら、フォルトを何度も呼びますが返事はありません。
何か用事をしているか寝ているのでなければ、すぐに返事が返ってくるはずです。
しばらく呼びかけると、眠そうな声が返ってきました。
『ふあぁ…クリス、なんか用か~?』
「ごめん。寝てたんだね、フォルト。今どこにいるの?魔宝石の形が変わっちゃったの。どうしよう、なんかおかしなことになるってことないよね?」
周囲の人に聞こえないように小さな声でフォルトに伝えると、『なんだ、そんなことかよ』と気の抜けたあくびとともに返ってきました。
「そんなことって何!?私にはどういうことか全然わかんないよ!!」
あまりにもそっけない返事だったので、声を荒げてしまいました。
その声で、魔法会話の向こうでフォルトが飛び起きるような音がしました。
近くを歩いていた人達もびっくりした顔をしたので、慌てて頭を下げて足早にこの場を離れます。
とりあえず、魔宝石についてフォルトと落ち着いて話したいから一度寮に帰ることにしました。
フォルトもそれに頷いたので、その時にいろいろと訊くことにします。
「魔宝石の形が変わるなんて、ますます謎が増えていくばかりだよ…」
わからないことばかりの魔宝石をポケット越しに触って、深いため息を吐くしかありませんでした。
寮に戻ると、玄関でルルーシア先輩に会いました。
手には、すらっとした細身の剣が握られていました。柄にきれいな鳥の装飾がされているのが印象的です。
体を動かして高揚した鋭い眼が私を捉えます。すると、ふっと息を吐くように力が抜けた眼になりました。
「おかえり、クリス。随分早い帰りだな。魔法樹図書館はどうだった?」
「ただいまです、先輩。魔法樹図書館は入館できなかったので帰ってきました。先輩は鍛練終わったんですか?」
「そうか、残念だったな。鍛練は早めに切り上げたんだ。この後やらなければいけないことがあってな」
ルルーシア先輩は懐の時計をちらっと見て、「それじゃあ、夕食の時にな」と手を振って自分の部屋へと帰りました。
私も先輩に手を振って、寮の中庭に早足で向かいました。
中庭にはもうフォルトがいて、困ったように何かをぶつぶつと喋っていました。
私がいる位置からはフォルトの背中しか見えませんが、そこに誰かいるのでしょうか?
こっそりと覗くように木の後ろから様子を見てみます。
『…どういうことだ?空っぽの化石じゃなかったのかよ?』
「わらわも驚いているぞ。まさか形が変わるとはな」
『あ~~。見せてもらった時は何も感じなかったんだけどなぁ』
「昔からおまえは魔力感知が下手だな」
『うるせーよ!……事実だけどよ』
フォルトが肩を落とすように頭をがくんと下げると、さらさらの銀髪が見えました。
あの髪は、もしかして…。
「む?クリス、そんなところでどうしたのだ?」
フォルトの陰から流れる髪を優雅に押さえながら顔を出したのは、思ったとおりルミナさんでした。
笑顔で手招きされたので、フォルトの傍へ駆け寄ります。
フォルトを見上げたら、ちょっと困ったような目を返されました。
「フォルトから聞いてな。クリス、魔宝石ユーラティオを持っておるそうだな?」
「えっ、あ…はい」
そう訊いてきたルミナさんの目はいつものような温かいものではなく、かと言って冷たいものでもありませんでした。
何かを見極めるような、冷静でいて、でも灼けつくような何かを感じる目です。
「クリスは、いつからその石を持っておる?」
「えと…2年近く前に、精霊王様からいただいたんです」
アンジェさんとのやり取りを簡単に説明したら、2人とも始終ずっと目を丸くしていました。
あれ…?そういえば、アンジェさんに会ったことはライゼンさん以外の人に話したことなかったかも?
『…マジかよ。本当にあの方に会ったのか…』
「なるほどな。諸々の合点がいった…」
私の話を聴いて、2人はそれぞれ何かに納得したようです。
そして、何かを伝え合うようにお互いを見つめました。
精霊と精霊獣との会話か何かがあるのでしょうか?
しばらく2人はそのまま動かなかったので、取り残された私はどうすればいいのかわかりません。
ぱらぱらと木の葉が落ちるのをぼんやりと眺めて、どれくらいの時間が経ったのでしょうか。
ルミナさんが私に向き直るように手を伸ばしてきました。
その手は、私の頬に触れたかと思うと、横髪を後ろに梳くような優しい動きで撫でてきました。
されるがままになっていると、いつもの温かい目が私の目に映ります。
「…うむ、わかった。あの方は、おまえに何かを託しておられるようだな。その役割を果たすまでは、わらわ達はおまえにそのことについて何も言えん」
『悪ぃな、クリス。こればっかりはあの方にしかわかんねーことだから』
フォルトの困ったようなため息が降ってきます。
よくわからないけど、フォルトとルミナさんにはアンジェさんの考えていることがわかっているみたいです。
ちょっと残念に思いましたが、アンジェさんに会えばきっとわかるよね?
だって、まだ私はアンジェさんの「言葉」を聴いてないから。
「うん、わかった…。じゃあ、この石のことは教えてくれる?」
ポケットから魔宝石を取り出します。
それを見た2人が息を呑んだ気がしました。
2人は恐る恐るといった感じで魔法石を見つめます。
ルミナさんは何度か角度を変えながら眺めて、小さく息をつきました。
「うむ、紛うことない魔宝石だな。懐かしい」
『ああ。この形…本当にあの魔宝石だな…』
私の手に乗る魔宝石を顔を寄せながら言う2人。
2人の目はどこかキラキラとしていて、なんだかうれしそうです。
その様子がちょっとだけ微笑ましいと思ってしまったのは秘密です。
話が長くなるのか、ルミナさんが近くのベンチを指差しました。
それに頷いて、ベンチに私とルミナさんが腰かけて、フォルトは私達の前の芝生に座ります。
「わらわ達が魔宝石について知っていることは少ない。だが、クリスよりは知っているつもりだ。そうだな、とりあえず魔宝石ユーラティオの特性を教えよう」
「特性…?」
ルミナさんは、魔宝石ユーラティオについて知っていることを話してくれました。
簡単に説明すると、魔宝石ができたのは今からずっとずっとずーっと昔のこと。
妖精とエルフと人間が争いばかりしていた、とても暗い時代。
精霊王さんはそれまで世界に干渉することはありませんでしたが、長く続く争いと流れる血の多さに心を痛めて、3つの魔宝石を創りました。
それが「祝福の石」「追憶の石」「契約の石」です。
その3つの石のうち、人間がもらった「契約の石」は他の2つとは違い、成長していく石でした。
何かと心を通わす度に、誰かと約束を交わす度に、その形を変えていくのです。
どういう流れで3者の争いが終わったのかはわかりませんが、精霊王さんが介入したということは間違いありません。
と、2人が魔宝石について知っているのはこれくらいでした。
「精霊王と3つの石」の絵本で大体の話は分かっていたつもりでしたが、ところどころ違うところがありました。
それと、私が持っている魔宝石は「契約の石」だということもわかりました。
ライゼンさんがおでかけの時に教えてくれた、『少し意味合いが違うが、魔宝石もそういう意味の名だ』と言っていたのを思い出しました。
そして、魔宝石の「特性」…成長するというのは、ライゼンさんも知らないことでした。
ちなみに、フォルトはアンジェさんが魔宝石を持っているのを見たことあるくらいで、どんなものかはよく知らなかったようです。懐かしいっていう反応しかできなかったのも納得です。
2人の話を聴いて、改めて手の中の魔宝石を見つめます。
「どうして成長していくんだろう?」
「それはわらわ達にもわからない。だが、あのお方のことだ。人間にとって一番適した石を創ったのであろう」
ルミナさんは、魔宝石にそっと指先で触れました。
すると魔宝石がキラキラと輝いて、ちょっとだけ虹色が強くなった気がしました。
「そうか…そうだな。人間とはそういう存在だな」
ルミナさんは目を細めて、きれいに微笑みます。まるで大好きなものを目にしたような柔らかな笑みです。
私にはその言葉の意味は分かりませんでしたが。
芝生に寝そべってそれを見ていたフォルトも顔を上げて、魔宝石に鼻先を近づけます。
さっきと同じようにまた魔宝石が輝いて、虹色が広がります。
『細かいことはわかんねーけど、この石の魔力はあったけーな。クリスみてえだ』
フォルトも何かを感じたのか、どこか遠い目で魔宝石を見つめています。
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