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第2章 ◆ 見えるものと見えないものと
10. フォルトの旧友②
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『ねえねえクリス。あたしもオルデンに連れてってくれない??』
玄関先でエレナさんと迎えに来た騎士団の人達を見送ったら、フォルトの頭に乗ったシーニーがどこか楽しそうに言いました。
クロードお兄ちゃんは「うさぎ!?喋った!!?」と、とてもびっくりして、勢いよくお母さんの方に向きました。
そうだった。シーニーをまだお兄ちゃんに紹介していませんでした。
「クロード、こちらはフォルト様の旧友のシーニー様よ。遠い昔にこの『深霧の森』に住んでおられたお方で、今も森を守る魔法を維持しておられるのよ」
「えっ。それは失礼いたしました」
お母さんがシーニーを紹介すると、お兄ちゃんは改まって礼を執ります。
シーニーは気にすることもなく笑っていて、『そんな硬くならずに、スマイル、スマーイル♪』とその場を和ませてくれました。
とりあえず私達はリビングに戻って、落ち着いて話をすることにしました。
「シーニーはどうしてオルデンに行きたいの?」
『オルデンにはずーっと遊びに行ってなかったから、今どうなったのか気になって!クリスの学校にも行ってみたいしー!』
シーニーは耳をぴょこぴょこ動かして、目はキラキラと好奇心いっぱいです。
そんなハイテンションなうさぎが頭に乗っているフォルトは、半分呆れた目で伏せをしています。
なんだか疲れてるみたいだから、寮に帰ったらゆっくり休ませよう…。
「えっと…どれくらい行ってなかったの?」
『ん~~~。今のオルデンの話からだと、最後に行ったのはほんとにずーっと昔になるかな??人はちょっとしかいなかったし、まだ集落だった時かなぁ?』
そ、それはものすごく昔ですね!?
オルデンはこのヴェルトミール国の中では歴史が古い街に数えられます。
ここまで発展したのはここ100年くらいのことらしいのですが、オルデンが貿易都市と呼ばれる前から騎士団や学園、お店などもあったらしく、たくさんの人達が行き交っていたと歴史書に記されています。
そのオルデンがまだ集落だった頃となれば、えーと…まだヴェルトミール国が建っていない頃となります。
一番古い記録では大火山イグニスの噴火の後くらいだから…本当に大昔の話です。むむむ、全然想像できない!
「そんなに昔からシーニーは生きてるんだね。シーニーはこの森とかオルデン以外の場所にも遊びに行ってたの?」
『うん、そうだよー!遊びに行ってるって言っても、人間達を験したり、助けたりするのがあたしの仕事だから、それがいろんなところへ行く一番の理由かな!』
『そういえば、シーニーは【験す者】だったな。俺がいた村にも何度か来てたよな』
『そうそう!あの時はうさぎじゃなくてもっと別の姿だったなぁ』
フォルトとシーニーが昔を懐かしむように話が盛り上がっていると、クロードお兄ちゃんがこっそり声を掛けてきました。
私も思わず内緒話をしている気分でお兄ちゃんへ身を寄せます。
「シーニー様って、フォルトと同じ精霊獣なんだよな?母さんの精霊酔い大丈夫か?」
その言葉にはっとしてお母さんに目を向けると、いつも通りの穏やかな笑顔が返ってきました。
顔色もいいし、大丈夫みたい。
そこで、クレスト様のことを思い出して、お母さんの魔導具のペンダントに視線を落とします。
お母さんのペンダントはクレスト様が作った魔導具だとお父さんから聞きました。
その時は、こんな身近にすごい魔導具があることにびっくりしました。
『精霊獣は精霊に仕えてるけど、実際は精霊じゃないから大丈夫よ?』
お兄ちゃんとの会話を聞いたシーニーがあっけらかんと言いました。
それは前にフォルトにも言われたことでした。精霊獣は精霊じゃないけど精霊に近い存在ということ。
んん?それじゃあ、私は精霊と契約しているわけじゃないから、精霊魔術師じゃないよね?
でも、ルミナさんは立派な精霊魔術師だなって言ってた…。
なんだか頭が混乱してきました。
頭の中をぐるぐるしてるとフォルトが鼻を寄せてきました。
『あんまり深く考えなくてもいいと思うぞ。精霊獣っていう生き物だぐらいに思っておけば』
「そんなもの?」
『ああ。そんなもんそんなもん。クリスだって、自分が人間だって言われても人間ってどういう存在なのかって説明できないだろ?』
「そ、そうだね…確かに説明できないかも」
自分の存在…人間だということ…そんなこと考えたこともないよ。
世界には人間がいて、エルフもいて、妖精だって人の目には見えないけど存在していて、精霊も精霊獣もいる、それが「世界」なんだ。
うん。それを知っているだけでもいいんだよね?
『クリスは昔からいろんな種族と仲良くしていたから、みんな同じに見えるんじゃない??』
「えっ?どういうこと?」
シーニーがあまりにも普通なことのように言ったので、思わず訊き返してしまいました。
フォルトが顔をしかめて、シーニーに内緒話をするように鼻を寄せます。
『おい。それは言っていいことなのか?』
『んん?…ああ、そう言えばフォルトはルミナから聞いたんだっけ?大丈夫大丈夫。あたしは一切をあのお方に任されてるから』
『は?ってことは、シーニーがクリスの…?』
こそこそと内緒話をする2人(?)にお兄ちゃんと一緒に首を傾げるしかありませんでした。
お母さんは何か知っているようで、穏やかに笑っています。
もしかしたら、お母さんは精霊達から何か聴いているのかもしれません。
『クリス、今は答えられないけど、絶対話すから今は待ってくれる?』
シーニーが真剣な顔で言うので、頷くしかありませんでした。
それと同時に、それを聴く時、私は今の私なのだろうかと頭のどこかでぼんやりとそう思いました。
そうして、寝る時間までお母さんとお兄ちゃんに学園であったことを話して、アメジストさん特製のペンダントもちょっとだけ自慢しました。
お兄ちゃんはやっぱり海組進級に反対していたこともあって、困ったような顔をしていましたが、最後には笑って「よかったな」と言ってくれました。
あと、魔法の石がフォルトの媒体になったことも話して、お母さんはとっても喜んでくれました。
次の日、朝一番の馬車に乗ってオルデンへ帰ることにしました。
連休の最終日はオルデンで買い物をすることにしたので、早めに戻ろうと思ったからです。
お見送りにお母さんと早朝に帰ってきたお父さん、そしてクロードお兄ちゃんが私を抱きしめてくれました。またしばらくお別れです。
本当はすごく寂しくて、ずっと一緒にいたいけど、今度帰ってくるときはもっと海組の生徒として成長した姿で帰ってきたいから、それは口にしません。
「クリス、気をつけてね。またお休みが取れたら今度こそ一緒にお買い物に行きましょうね」
「うんっ!お母さんも無理しないでね」
目線を合わせるように屈んだお母さんの首に腕を回して抱きしめました。
お母さんも優しく私の背中に腕を回してくれました。
お母さんはいつもいい香りで心がほっと落ち着きます。
「大きくなって帰ってくるクリスを楽しみにしているよ」
「お父さん…いっぱい心配かけてごめんなさい。お父さんの娘に恥じないよう頑張るね!」
お父さんは私を抱き上げて、両腕いっぱいに抱きしめてくれました。
強すぎず弱すぎず、私を尊重してくれるお父さんの腕の中は安心します。
「クリス、本当に海組に行ってよかったか?」
クロードお兄ちゃんは、苦しそうな顔でそう言いました。
それは、帰って来てから一度も訊かれなかったこと。
「うん。課題とか勉強とかたくさん大変なことはあるけど、とっても楽しいよ!」
お兄ちゃんにこれ以上心配させないように、思いっきりの笑顔でそう答えました。
まだ海組に入ってからそこまで長い時間を過ごしてないから、これからどうなるかわからない。
本当は寂しいし、うまくやっていけるか不安もある。
それでも、フォルトと思い切り魔法の練習をするのが楽しい。
魔法が使えるのはもちろんそうだけど、魔導具師になるためにちょっとずつでも前に進めてるのがうれしいのです。
お兄ちゃんは、しばらく見つめてきた後、ふっと笑ってくれました。
「…そうだな。クリスが行きたいって言ったんだもんな。心配だけど…それがクリスの選んだ道だ」
お兄ちゃんにお姫様のように大事に抱き上げられます。
その一連の動きがまるで王子様みたいと思ってしまいました。
それはもう私を子ども扱いしていない、一人のレディーとしての扱いだと気づきました。
「海組は他の組と違って実力重視で自由な所だけど、とても息苦しい所でもある。クリス、本当に苦しくてもうだめだって思ったら逃げてもいいし、やめてもいい。でもクリスは頑張り屋さんだから、きっと立ち向かっていくんだろうな。それでも本当に挫けそうになったら、そうなる前に誰か頼れる人に味方してもらうんだぞ」
「ありがとう、お兄ちゃん。スティール団長さんから弟さんのイヴェル先生のことも知れたし、大丈夫。これからもっと頑張れるよ!」
「ああ。体に気をつけるんだぞ」
そうして家族に別れを告げ、馬車に揺られてオルデンに戻りました。
降りた停留所はオルデンの正門前です。今日はこのまま買い物に行こうと思います。
『おおおおおお!!!?ここがオルデン――!!?しばらく見ない間にこんなに大きくなっちゃってたのぉおおお!!?』
『シーニー、静かにしろよ。街の人が驚いてるだろ?』
馬車を降りると、一番にシーニーが声を上げました。
そのスカイブルーの目はキラキラと輝いていて、耳もピコピコといろんな方向に忙しなく動いています。かわいい。
フォルトの頭の上でぴょんぴょん跳ねながらはしゃいでいるので、されている本人はとても迷惑そうな目でシーニーを見つめています。
『わ~~~っ探検したーい!!フォルト、探検がてら案内して!!』
『なんでだよ!!?』
昨日よりもテンションが上がっているシーニーは、ファルトの頭をバシバシ叩きます。
さすがにフォルトも苛立ってきて、頭を振ってシーニーを落とそうとしますが、がっしり毛を掴まれていて叶いませんでした。
フォルトの機嫌がものすごく悪くなってきたので、慌ててシーニーに手を伸ばします。
「シーニー、あんまりフォルトを困らせないで?私の大切な親友なの」
そう言って優しく頭を撫でてあげると、ぴたりと動きが止まりました。
『…むぅ。クリスの頼みなら仕方ないわ』
『俺の意見は無視なのかよ…』
おとなしくなったシーニーと納得いかない顔のフォルトを見て、ただ困り笑いするしかありませんでした。
玄関先でエレナさんと迎えに来た騎士団の人達を見送ったら、フォルトの頭に乗ったシーニーがどこか楽しそうに言いました。
クロードお兄ちゃんは「うさぎ!?喋った!!?」と、とてもびっくりして、勢いよくお母さんの方に向きました。
そうだった。シーニーをまだお兄ちゃんに紹介していませんでした。
「クロード、こちらはフォルト様の旧友のシーニー様よ。遠い昔にこの『深霧の森』に住んでおられたお方で、今も森を守る魔法を維持しておられるのよ」
「えっ。それは失礼いたしました」
お母さんがシーニーを紹介すると、お兄ちゃんは改まって礼を執ります。
シーニーは気にすることもなく笑っていて、『そんな硬くならずに、スマイル、スマーイル♪』とその場を和ませてくれました。
とりあえず私達はリビングに戻って、落ち着いて話をすることにしました。
「シーニーはどうしてオルデンに行きたいの?」
『オルデンにはずーっと遊びに行ってなかったから、今どうなったのか気になって!クリスの学校にも行ってみたいしー!』
シーニーは耳をぴょこぴょこ動かして、目はキラキラと好奇心いっぱいです。
そんなハイテンションなうさぎが頭に乗っているフォルトは、半分呆れた目で伏せをしています。
なんだか疲れてるみたいだから、寮に帰ったらゆっくり休ませよう…。
「えっと…どれくらい行ってなかったの?」
『ん~~~。今のオルデンの話からだと、最後に行ったのはほんとにずーっと昔になるかな??人はちょっとしかいなかったし、まだ集落だった時かなぁ?』
そ、それはものすごく昔ですね!?
オルデンはこのヴェルトミール国の中では歴史が古い街に数えられます。
ここまで発展したのはここ100年くらいのことらしいのですが、オルデンが貿易都市と呼ばれる前から騎士団や学園、お店などもあったらしく、たくさんの人達が行き交っていたと歴史書に記されています。
そのオルデンがまだ集落だった頃となれば、えーと…まだヴェルトミール国が建っていない頃となります。
一番古い記録では大火山イグニスの噴火の後くらいだから…本当に大昔の話です。むむむ、全然想像できない!
「そんなに昔からシーニーは生きてるんだね。シーニーはこの森とかオルデン以外の場所にも遊びに行ってたの?」
『うん、そうだよー!遊びに行ってるって言っても、人間達を験したり、助けたりするのがあたしの仕事だから、それがいろんなところへ行く一番の理由かな!』
『そういえば、シーニーは【験す者】だったな。俺がいた村にも何度か来てたよな』
『そうそう!あの時はうさぎじゃなくてもっと別の姿だったなぁ』
フォルトとシーニーが昔を懐かしむように話が盛り上がっていると、クロードお兄ちゃんがこっそり声を掛けてきました。
私も思わず内緒話をしている気分でお兄ちゃんへ身を寄せます。
「シーニー様って、フォルトと同じ精霊獣なんだよな?母さんの精霊酔い大丈夫か?」
その言葉にはっとしてお母さんに目を向けると、いつも通りの穏やかな笑顔が返ってきました。
顔色もいいし、大丈夫みたい。
そこで、クレスト様のことを思い出して、お母さんの魔導具のペンダントに視線を落とします。
お母さんのペンダントはクレスト様が作った魔導具だとお父さんから聞きました。
その時は、こんな身近にすごい魔導具があることにびっくりしました。
『精霊獣は精霊に仕えてるけど、実際は精霊じゃないから大丈夫よ?』
お兄ちゃんとの会話を聞いたシーニーがあっけらかんと言いました。
それは前にフォルトにも言われたことでした。精霊獣は精霊じゃないけど精霊に近い存在ということ。
んん?それじゃあ、私は精霊と契約しているわけじゃないから、精霊魔術師じゃないよね?
でも、ルミナさんは立派な精霊魔術師だなって言ってた…。
なんだか頭が混乱してきました。
頭の中をぐるぐるしてるとフォルトが鼻を寄せてきました。
『あんまり深く考えなくてもいいと思うぞ。精霊獣っていう生き物だぐらいに思っておけば』
「そんなもの?」
『ああ。そんなもんそんなもん。クリスだって、自分が人間だって言われても人間ってどういう存在なのかって説明できないだろ?』
「そ、そうだね…確かに説明できないかも」
自分の存在…人間だということ…そんなこと考えたこともないよ。
世界には人間がいて、エルフもいて、妖精だって人の目には見えないけど存在していて、精霊も精霊獣もいる、それが「世界」なんだ。
うん。それを知っているだけでもいいんだよね?
『クリスは昔からいろんな種族と仲良くしていたから、みんな同じに見えるんじゃない??』
「えっ?どういうこと?」
シーニーがあまりにも普通なことのように言ったので、思わず訊き返してしまいました。
フォルトが顔をしかめて、シーニーに内緒話をするように鼻を寄せます。
『おい。それは言っていいことなのか?』
『んん?…ああ、そう言えばフォルトはルミナから聞いたんだっけ?大丈夫大丈夫。あたしは一切をあのお方に任されてるから』
『は?ってことは、シーニーがクリスの…?』
こそこそと内緒話をする2人(?)にお兄ちゃんと一緒に首を傾げるしかありませんでした。
お母さんは何か知っているようで、穏やかに笑っています。
もしかしたら、お母さんは精霊達から何か聴いているのかもしれません。
『クリス、今は答えられないけど、絶対話すから今は待ってくれる?』
シーニーが真剣な顔で言うので、頷くしかありませんでした。
それと同時に、それを聴く時、私は今の私なのだろうかと頭のどこかでぼんやりとそう思いました。
そうして、寝る時間までお母さんとお兄ちゃんに学園であったことを話して、アメジストさん特製のペンダントもちょっとだけ自慢しました。
お兄ちゃんはやっぱり海組進級に反対していたこともあって、困ったような顔をしていましたが、最後には笑って「よかったな」と言ってくれました。
あと、魔法の石がフォルトの媒体になったことも話して、お母さんはとっても喜んでくれました。
次の日、朝一番の馬車に乗ってオルデンへ帰ることにしました。
連休の最終日はオルデンで買い物をすることにしたので、早めに戻ろうと思ったからです。
お見送りにお母さんと早朝に帰ってきたお父さん、そしてクロードお兄ちゃんが私を抱きしめてくれました。またしばらくお別れです。
本当はすごく寂しくて、ずっと一緒にいたいけど、今度帰ってくるときはもっと海組の生徒として成長した姿で帰ってきたいから、それは口にしません。
「クリス、気をつけてね。またお休みが取れたら今度こそ一緒にお買い物に行きましょうね」
「うんっ!お母さんも無理しないでね」
目線を合わせるように屈んだお母さんの首に腕を回して抱きしめました。
お母さんも優しく私の背中に腕を回してくれました。
お母さんはいつもいい香りで心がほっと落ち着きます。
「大きくなって帰ってくるクリスを楽しみにしているよ」
「お父さん…いっぱい心配かけてごめんなさい。お父さんの娘に恥じないよう頑張るね!」
お父さんは私を抱き上げて、両腕いっぱいに抱きしめてくれました。
強すぎず弱すぎず、私を尊重してくれるお父さんの腕の中は安心します。
「クリス、本当に海組に行ってよかったか?」
クロードお兄ちゃんは、苦しそうな顔でそう言いました。
それは、帰って来てから一度も訊かれなかったこと。
「うん。課題とか勉強とかたくさん大変なことはあるけど、とっても楽しいよ!」
お兄ちゃんにこれ以上心配させないように、思いっきりの笑顔でそう答えました。
まだ海組に入ってからそこまで長い時間を過ごしてないから、これからどうなるかわからない。
本当は寂しいし、うまくやっていけるか不安もある。
それでも、フォルトと思い切り魔法の練習をするのが楽しい。
魔法が使えるのはもちろんそうだけど、魔導具師になるためにちょっとずつでも前に進めてるのがうれしいのです。
お兄ちゃんは、しばらく見つめてきた後、ふっと笑ってくれました。
「…そうだな。クリスが行きたいって言ったんだもんな。心配だけど…それがクリスの選んだ道だ」
お兄ちゃんにお姫様のように大事に抱き上げられます。
その一連の動きがまるで王子様みたいと思ってしまいました。
それはもう私を子ども扱いしていない、一人のレディーとしての扱いだと気づきました。
「海組は他の組と違って実力重視で自由な所だけど、とても息苦しい所でもある。クリス、本当に苦しくてもうだめだって思ったら逃げてもいいし、やめてもいい。でもクリスは頑張り屋さんだから、きっと立ち向かっていくんだろうな。それでも本当に挫けそうになったら、そうなる前に誰か頼れる人に味方してもらうんだぞ」
「ありがとう、お兄ちゃん。スティール団長さんから弟さんのイヴェル先生のことも知れたし、大丈夫。これからもっと頑張れるよ!」
「ああ。体に気をつけるんだぞ」
そうして家族に別れを告げ、馬車に揺られてオルデンに戻りました。
降りた停留所はオルデンの正門前です。今日はこのまま買い物に行こうと思います。
『おおおおおお!!!?ここがオルデン――!!?しばらく見ない間にこんなに大きくなっちゃってたのぉおおお!!?』
『シーニー、静かにしろよ。街の人が驚いてるだろ?』
馬車を降りると、一番にシーニーが声を上げました。
そのスカイブルーの目はキラキラと輝いていて、耳もピコピコといろんな方向に忙しなく動いています。かわいい。
フォルトの頭の上でぴょんぴょん跳ねながらはしゃいでいるので、されている本人はとても迷惑そうな目でシーニーを見つめています。
『わ~~~っ探検したーい!!フォルト、探検がてら案内して!!』
『なんでだよ!!?』
昨日よりもテンションが上がっているシーニーは、ファルトの頭をバシバシ叩きます。
さすがにフォルトも苛立ってきて、頭を振ってシーニーを落とそうとしますが、がっしり毛を掴まれていて叶いませんでした。
フォルトの機嫌がものすごく悪くなってきたので、慌ててシーニーに手を伸ばします。
「シーニー、あんまりフォルトを困らせないで?私の大切な親友なの」
そう言って優しく頭を撫でてあげると、ぴたりと動きが止まりました。
『…むぅ。クリスの頼みなら仕方ないわ』
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おとなしくなったシーニーと納得いかない顔のフォルトを見て、ただ困り笑いするしかありませんでした。
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