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第2章 ◆ 見えるものと見えないものと
23. 不思議な部屋の精霊①
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「…っ!リィちゃん、授業は!?」
リィちゃんを召喚してから、二日くらい経ってる。
もしかしたら、授業の途中で呼び出したかもしれない。
花組の規則を破らせてしまったかもしれない。
そんな事をぐるぐると考えてあまりにも私の顔色が悪かったのか、リィちゃんの手が優しく頬を撫でてくれました。
「大丈夫よ、クリスちゃん。花組に進級した時にちゃんと先生達には説明してあるわ。従属契約をしているから、急にいなくなることがあるかもしれないってね」
「リィちゃん…」
「ふふふ。正直、このまま退学してクリスちゃんの傍にいたいんだけど…」
「わーーー!!?それはダメだよ!?」
リィちゃんがなんでもないように言うから、思いっきり首を振って思い留まるように説得しました。
だって、リィちゃんがどんなにお花が好きなのかを知ってるから。私の為に好きなことを勉強することを手放さないでほしい。
リィちゃんはあまり納得してない顔でしたが、小さく頷いてくれました。
「でも、遠慮なく召喚してね?」
「うん。リィちゃんの力が必要な時は絶対呼ぶよ」
今度は、迷わずにリィちゃんを呼ぶ!
大きく頷き返したら、親友のきれいな緑の目が伏せられます。
「…そうじゃなくても、クリスちゃんに会いたい時は会ってくれる?」
ちょっとだけ沈んだその声は、言葉の裏で「離れるのが寂しい」と言っているようでした。
それは私も同じで、思わずリィちゃんを抱きしめます。
「もちろんだよ!会いに行くし、会いに来てね!」
「クリスちゃん、ありがとう!」
お互いにぎゅうぎゅう抱きしめ合って、笑います。
そんな私達の様子をフォルトとシーニーはどこか微笑んで見守ってくれていました。
『本当に仲良いな、おまえら』
そんな和やかなひと時は、控えめに扉を叩く音でかき消されました。
こんな夜中に誰だろう…?
もしかしてうるさくしてしまったのかなと思い、恐る恐る扉を開けました。
「夜中にすまぬな」
扉の向こうにいたのは、穏やかに微笑むルミナさんでした。
「ルミナさん、どこへ行くんですか?」
今私達は、ルミナさんに連れられて寮の廊下を歩いています。
消灯時間を過ぎているので、廊下は非常灯と足元を照らすほのかな明かりだけで薄暗いです。
ルミナさんは質問に答えることなく、ただただ私の手を引いて進んでいきます。
フォルトとリィちゃん、シーニーも一緒にと言われたので、フォルトを魔宝石に入れて、シーニーは姿を隠して私の頭の上に乗っています。リィちゃんはそんな私達の後ろを静かについてきています。
なんだろう?
ルミナさんの用事もそうですが、フォルトとシーニーも一緒っていうのも気になります。
しばらく歩いていくと、目的の場所に着いたのか、ルミナさんが足を止めました。
そこは、あの不思議な部屋があった武器庫の扉の前でした。
扉にはいくつもの鎖と魔法紋章術が刻まれていて淡く光っています。武器庫は誰も入れないようになっていました。
ロジーちゃん達は大丈夫だったかな…?
あの黒い存在はどうなったんだろう?
魔剣も、あのままだともっと大変なことになるはず。
黒い靄に満ちた部屋で辛うじて形を保ったあの黒い剣を思い出します。
魔剣として、あの部屋に封印されていた剣。
あの剣の持ち主さんは、剣と離れて寂しくなかったのかな…。
剣を大事にするルルーシア先輩が重なって、名も知らないあの剣の持ち主さんを想いました。
「ルミナさん、どうしてここに?」
ルミナさんの方へ目を上げると、じっと見つめられていました。
その目は、何かを見通しているようでちょっとだけ怖いと思ってしまいました。
そんな私の気持ちが伝わったのか、ルミナさんはすぐに武器庫の方に目を向けました。
「…すまぬな。ここの部屋の主がクリスと話したいそうでな」
「え?部屋の主って…?」
「クリスとそこのエルフが行った部屋におった者だ」
ルミナさんはそう言うと扉に手をかざしました。
すると、武器庫の扉の鎖がまるで朽ちたかのようにバラバラに解けて、ガシャンと床に落ちました。扉に刻まれていた紋章も光を失い、ただの模様になってしまいました。
それらのことに驚いている暇もなく、ルミナさんは武器庫の扉を開けて中へ入っていきました。
えええええ!?こ、壊しちゃった!いいのかな!?
先生達が立ち入り禁止にしてたのに…!
あまりのことに言葉を失って、リィちゃんと顔を見合わせます。
「えっと…入ってもいいのかな…?」
「…ルミナ様が行くと言っているのなら、いいんじゃないかしら?私もあの部屋のこと気になるわ」
『大丈夫大丈夫!あたし達もついてるし!ほら、フォルトも出してあげてよ』
頭に乗っていたシーニーが姿を現して、楽しそうに言いました。
その言葉に従って、フォルトを魔宝石から出します。
それから、ルミナさんの後を追うように暗い武器庫へ入りました。
武器庫の扉の向こうは夜のせいか、真っ暗で何も見えませんでした。
すると、真っ暗だと思っていた視界が急に眩しい光に包まれて、思わず目を閉じてしまいました。
しばらくして光が収まったのを感じると、恐る恐る目を開きます。
「クリスちゃん、大丈夫?」
『大丈夫か?クリス』
目を向けるとリィちゃん、フォルトに心配そうな目で見つめられていました。
フォルトの頭の上でシーニーが『眩しかったねぇ』とのんびりした様子で言います。
「クリス、こっちだ」
ルミナさんに呼ばれて改めて部屋を見渡すと、思わず息をのみました。
「…武器庫…じゃない…?」
目の前に広がった光景は、白く高い石積みの壁に無数の蔦の模様が刻まれた、どこか神聖な空間。
ここは本当にあの黒い靄に包まれていた部屋?
そう思うほど、この場所は澄んだ場所でした。
部屋全体に描かれた蔦の模様を目で追うと、ある一点から伸びてきているようでした。
その場所を隣にいたリィちゃんが指差します。
「クリスちゃん、あれが妖精達が言っていた剣?」
「えと…私が見た剣はもっと黒くて、どろって溶けたような形のものだったと思うんだけど…」
蔦の模様が向かっていたその場所には、蔦が這うような装飾がされた剣が台座に刺さっていました。
ただ静かにそこに在る剣を不思議な感覚で見つめます。
ロジーちゃん達が言っていた魔剣…じゃないよね?
だって、あの時私が見た剣はあんなに透き通るような色をしてなかった。
『少女よ、私を掬い上げてくれたことに感謝する』
リンと鈴のような響く声がどこからか聞こえてきました。
それにびっくりしてリィちゃんと周りを見渡しましたが、声の主は見つかりません。
ルミナさんとフォルト、シーニーは声の主がわかっているようで、驚いていませんでした。
『今の私は、人の目で捉えることはできない。存在としてはそうだな、目の前に広がる蔦の模様だと思えばよい』
その言葉にまたびっくりして、思わず足元を見下ろします。
美しく描かれた蔦の模様は淡く光を放っていて、それは魔法の石と似た輝きでした。
「えと…あなたは…もしかしてこの蔦の魔法の精霊さんですか…?」
『そうだ。長年、この封じられた神殿で妖精達とともに剣を護ってきた』
蔦の模様が呼吸をするようにキラキラと光を波打たせます。
精霊さんの存在がとても近く感じて、なんだかほっとします。
「あの、ロジーちゃん達がいなくなってしまったんですが…無事ですか?」
『無事だ。剣の瘴気が強くなったあの時、私が妖精達を空間から切り離した。今はそこで眠っている』
蔦の模様が場所を示すように淡く光り、それを目線で追っていくと、蔦のベッドで気持ちよさそうに寝ている三人を見つけました。
「…よかった…」
ロジーちゃん達が無事でほっとしました。
あの黒い存在に取り込まれたりしていたらどうしようと思っていたから。
『少女よ。改めて礼を言う。私の魔力を浄化してくれたこと、心から感謝する』
「えっ!?えと…私、精霊さんにどこかでお会いしましたか?」
あっもしかして、あの床の蔦の模様!?
そうだよ、この部屋全体に蔦の模様が刻まれてるんだから、精霊さんは私のことを認識してる。
そう思っていると、全く違った答えが返ってきました。
『私はこの蔦の模様でもあるが、あの時其方が出会ったあの首のない存在だ。其方を通して穢れていた魔力が浄化され、こうして役目に戻ることができた』
「ええええ!?」
あまりのことに叫んでしまいました。隣にいたリィちゃんも目を丸くしています。
ちょ、ちょっと待って…!あれは精霊さんだったの!?あの黒いのが!?
それじゃあ、最初に会った黒い存在も精霊さん?でも、どこか雰囲気が違ったし…もしかして精霊さんとは別の存在?
「えと、妖精さん達に案内された部屋で実体のない黒いものに会ったんですけど、あれも精霊さんだったんですか?」
『あれは魔剣に憑いた憎悪の塊だ』
「憎悪…」
あれが憎悪…。
ゼロのものに似てるって思ったけど…もしかして、ゼロも何かを憎んでる…?
そう考えていたら、蔦の精霊さんが淡く光りながら言葉を続けます。
『其方があの魔物に取り込まれるところだったから、そうなる前に私の空間へと取り込んだのだ。間に合ってよかった』
「そうだったんですね…ありがとうございます」
そうして会ったのがあの首のない精霊さんだった…ということですね。
でも、魔法の浄化って…どういうことだろう?
意味がわからなくて、内心首を傾げているとリィちゃんが真剣な声で精霊さんに問いかけました。
「蔦の精霊様、どうしてこの剣はここに封じられることになったのでしょうか?」
『…其方は…フラワーエルフか。その気配、懐かしい』
「はい。私も蔦の精霊様にお会いできて、光栄の極みです」
きれいな礼を執ったリィちゃんの挨拶に、思わず釣られて私もお辞儀をします。
お辞儀をしたまま蔦の模様を見てみると淡く緑色に輝いてふわふわと揺れていました。
その様子がなんだか喜んでいるみたいで私もうれしくなってしまいます。
植物繋がりで気が合ったりするのかな?
「この剣がここに封じられておるのは、ある者から悪用されないためだ」
「ある者?」
リィちゃんの疑問に答えたのは、ずっと沈黙していたルミナさんでした。
『それは私から話そう。この剣はもともと精霊王様が人間に渡したものだった…』
そう言って、蔦の精霊さんは私達にあの台座に刺さっている剣の由来を話してくれました。
リィちゃんを召喚してから、二日くらい経ってる。
もしかしたら、授業の途中で呼び出したかもしれない。
花組の規則を破らせてしまったかもしれない。
そんな事をぐるぐると考えてあまりにも私の顔色が悪かったのか、リィちゃんの手が優しく頬を撫でてくれました。
「大丈夫よ、クリスちゃん。花組に進級した時にちゃんと先生達には説明してあるわ。従属契約をしているから、急にいなくなることがあるかもしれないってね」
「リィちゃん…」
「ふふふ。正直、このまま退学してクリスちゃんの傍にいたいんだけど…」
「わーーー!!?それはダメだよ!?」
リィちゃんがなんでもないように言うから、思いっきり首を振って思い留まるように説得しました。
だって、リィちゃんがどんなにお花が好きなのかを知ってるから。私の為に好きなことを勉強することを手放さないでほしい。
リィちゃんはあまり納得してない顔でしたが、小さく頷いてくれました。
「でも、遠慮なく召喚してね?」
「うん。リィちゃんの力が必要な時は絶対呼ぶよ」
今度は、迷わずにリィちゃんを呼ぶ!
大きく頷き返したら、親友のきれいな緑の目が伏せられます。
「…そうじゃなくても、クリスちゃんに会いたい時は会ってくれる?」
ちょっとだけ沈んだその声は、言葉の裏で「離れるのが寂しい」と言っているようでした。
それは私も同じで、思わずリィちゃんを抱きしめます。
「もちろんだよ!会いに行くし、会いに来てね!」
「クリスちゃん、ありがとう!」
お互いにぎゅうぎゅう抱きしめ合って、笑います。
そんな私達の様子をフォルトとシーニーはどこか微笑んで見守ってくれていました。
『本当に仲良いな、おまえら』
そんな和やかなひと時は、控えめに扉を叩く音でかき消されました。
こんな夜中に誰だろう…?
もしかしてうるさくしてしまったのかなと思い、恐る恐る扉を開けました。
「夜中にすまぬな」
扉の向こうにいたのは、穏やかに微笑むルミナさんでした。
「ルミナさん、どこへ行くんですか?」
今私達は、ルミナさんに連れられて寮の廊下を歩いています。
消灯時間を過ぎているので、廊下は非常灯と足元を照らすほのかな明かりだけで薄暗いです。
ルミナさんは質問に答えることなく、ただただ私の手を引いて進んでいきます。
フォルトとリィちゃん、シーニーも一緒にと言われたので、フォルトを魔宝石に入れて、シーニーは姿を隠して私の頭の上に乗っています。リィちゃんはそんな私達の後ろを静かについてきています。
なんだろう?
ルミナさんの用事もそうですが、フォルトとシーニーも一緒っていうのも気になります。
しばらく歩いていくと、目的の場所に着いたのか、ルミナさんが足を止めました。
そこは、あの不思議な部屋があった武器庫の扉の前でした。
扉にはいくつもの鎖と魔法紋章術が刻まれていて淡く光っています。武器庫は誰も入れないようになっていました。
ロジーちゃん達は大丈夫だったかな…?
あの黒い存在はどうなったんだろう?
魔剣も、あのままだともっと大変なことになるはず。
黒い靄に満ちた部屋で辛うじて形を保ったあの黒い剣を思い出します。
魔剣として、あの部屋に封印されていた剣。
あの剣の持ち主さんは、剣と離れて寂しくなかったのかな…。
剣を大事にするルルーシア先輩が重なって、名も知らないあの剣の持ち主さんを想いました。
「ルミナさん、どうしてここに?」
ルミナさんの方へ目を上げると、じっと見つめられていました。
その目は、何かを見通しているようでちょっとだけ怖いと思ってしまいました。
そんな私の気持ちが伝わったのか、ルミナさんはすぐに武器庫の方に目を向けました。
「…すまぬな。ここの部屋の主がクリスと話したいそうでな」
「え?部屋の主って…?」
「クリスとそこのエルフが行った部屋におった者だ」
ルミナさんはそう言うと扉に手をかざしました。
すると、武器庫の扉の鎖がまるで朽ちたかのようにバラバラに解けて、ガシャンと床に落ちました。扉に刻まれていた紋章も光を失い、ただの模様になってしまいました。
それらのことに驚いている暇もなく、ルミナさんは武器庫の扉を開けて中へ入っていきました。
えええええ!?こ、壊しちゃった!いいのかな!?
先生達が立ち入り禁止にしてたのに…!
あまりのことに言葉を失って、リィちゃんと顔を見合わせます。
「えっと…入ってもいいのかな…?」
「…ルミナ様が行くと言っているのなら、いいんじゃないかしら?私もあの部屋のこと気になるわ」
『大丈夫大丈夫!あたし達もついてるし!ほら、フォルトも出してあげてよ』
頭に乗っていたシーニーが姿を現して、楽しそうに言いました。
その言葉に従って、フォルトを魔宝石から出します。
それから、ルミナさんの後を追うように暗い武器庫へ入りました。
武器庫の扉の向こうは夜のせいか、真っ暗で何も見えませんでした。
すると、真っ暗だと思っていた視界が急に眩しい光に包まれて、思わず目を閉じてしまいました。
しばらくして光が収まったのを感じると、恐る恐る目を開きます。
「クリスちゃん、大丈夫?」
『大丈夫か?クリス』
目を向けるとリィちゃん、フォルトに心配そうな目で見つめられていました。
フォルトの頭の上でシーニーが『眩しかったねぇ』とのんびりした様子で言います。
「クリス、こっちだ」
ルミナさんに呼ばれて改めて部屋を見渡すと、思わず息をのみました。
「…武器庫…じゃない…?」
目の前に広がった光景は、白く高い石積みの壁に無数の蔦の模様が刻まれた、どこか神聖な空間。
ここは本当にあの黒い靄に包まれていた部屋?
そう思うほど、この場所は澄んだ場所でした。
部屋全体に描かれた蔦の模様を目で追うと、ある一点から伸びてきているようでした。
その場所を隣にいたリィちゃんが指差します。
「クリスちゃん、あれが妖精達が言っていた剣?」
「えと…私が見た剣はもっと黒くて、どろって溶けたような形のものだったと思うんだけど…」
蔦の模様が向かっていたその場所には、蔦が這うような装飾がされた剣が台座に刺さっていました。
ただ静かにそこに在る剣を不思議な感覚で見つめます。
ロジーちゃん達が言っていた魔剣…じゃないよね?
だって、あの時私が見た剣はあんなに透き通るような色をしてなかった。
『少女よ、私を掬い上げてくれたことに感謝する』
リンと鈴のような響く声がどこからか聞こえてきました。
それにびっくりしてリィちゃんと周りを見渡しましたが、声の主は見つかりません。
ルミナさんとフォルト、シーニーは声の主がわかっているようで、驚いていませんでした。
『今の私は、人の目で捉えることはできない。存在としてはそうだな、目の前に広がる蔦の模様だと思えばよい』
その言葉にまたびっくりして、思わず足元を見下ろします。
美しく描かれた蔦の模様は淡く光を放っていて、それは魔法の石と似た輝きでした。
「えと…あなたは…もしかしてこの蔦の魔法の精霊さんですか…?」
『そうだ。長年、この封じられた神殿で妖精達とともに剣を護ってきた』
蔦の模様が呼吸をするようにキラキラと光を波打たせます。
精霊さんの存在がとても近く感じて、なんだかほっとします。
「あの、ロジーちゃん達がいなくなってしまったんですが…無事ですか?」
『無事だ。剣の瘴気が強くなったあの時、私が妖精達を空間から切り離した。今はそこで眠っている』
蔦の模様が場所を示すように淡く光り、それを目線で追っていくと、蔦のベッドで気持ちよさそうに寝ている三人を見つけました。
「…よかった…」
ロジーちゃん達が無事でほっとしました。
あの黒い存在に取り込まれたりしていたらどうしようと思っていたから。
『少女よ。改めて礼を言う。私の魔力を浄化してくれたこと、心から感謝する』
「えっ!?えと…私、精霊さんにどこかでお会いしましたか?」
あっもしかして、あの床の蔦の模様!?
そうだよ、この部屋全体に蔦の模様が刻まれてるんだから、精霊さんは私のことを認識してる。
そう思っていると、全く違った答えが返ってきました。
『私はこの蔦の模様でもあるが、あの時其方が出会ったあの首のない存在だ。其方を通して穢れていた魔力が浄化され、こうして役目に戻ることができた』
「ええええ!?」
あまりのことに叫んでしまいました。隣にいたリィちゃんも目を丸くしています。
ちょ、ちょっと待って…!あれは精霊さんだったの!?あの黒いのが!?
それじゃあ、最初に会った黒い存在も精霊さん?でも、どこか雰囲気が違ったし…もしかして精霊さんとは別の存在?
「えと、妖精さん達に案内された部屋で実体のない黒いものに会ったんですけど、あれも精霊さんだったんですか?」
『あれは魔剣に憑いた憎悪の塊だ』
「憎悪…」
あれが憎悪…。
ゼロのものに似てるって思ったけど…もしかして、ゼロも何かを憎んでる…?
そう考えていたら、蔦の精霊さんが淡く光りながら言葉を続けます。
『其方があの魔物に取り込まれるところだったから、そうなる前に私の空間へと取り込んだのだ。間に合ってよかった』
「そうだったんですね…ありがとうございます」
そうして会ったのがあの首のない精霊さんだった…ということですね。
でも、魔法の浄化って…どういうことだろう?
意味がわからなくて、内心首を傾げているとリィちゃんが真剣な声で精霊さんに問いかけました。
「蔦の精霊様、どうしてこの剣はここに封じられることになったのでしょうか?」
『…其方は…フラワーエルフか。その気配、懐かしい』
「はい。私も蔦の精霊様にお会いできて、光栄の極みです」
きれいな礼を執ったリィちゃんの挨拶に、思わず釣られて私もお辞儀をします。
お辞儀をしたまま蔦の模様を見てみると淡く緑色に輝いてふわふわと揺れていました。
その様子がなんだか喜んでいるみたいで私もうれしくなってしまいます。
植物繋がりで気が合ったりするのかな?
「この剣がここに封じられておるのは、ある者から悪用されないためだ」
「ある者?」
リィちゃんの疑問に答えたのは、ずっと沈黙していたルミナさんでした。
『それは私から話そう。この剣はもともと精霊王様が人間に渡したものだった…』
そう言って、蔦の精霊さんは私達にあの台座に刺さっている剣の由来を話してくれました。
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