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第1章 ◆ はじまりと出会いと
13. リリーの秘密
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前にも説明しましたが、この光組は組替えがいつでもできます。
一年生の間に自分が目指すものを決めて、空組、花組、海組のどの組になるかを選ばないといけません。
すでに行きたい組を決めている子は、入学した時にすぐに飛び級して組替えをするし、一年考えて進級するときに組を決める子もいます。
目指すものをすぐに決められない子もいるけど、この学校はいろんな人に出会い、見て体験することができるので、大体の子は目指すものが決まります。
それに、光組から替わった後は、四年生までならまだ組を選び直すことができるので考える時間もあります。
その場合、組替えの時にまた二年生から始めることになりますが。
それでも、三つの組を体験してから自分の組を見つけた人も少なくはないそうです。
「リィちゃんとカイト君は、何組にするかもう決めてるの?」
放課後、いつものようにリィちゃんとカイト君と一緒に図書室で宿題をしながら、二人に訊いてみました。
「私は花組よ。フラワーアレンジメントをしたいの」
「俺は海組。体動かすの好きだし」
二人とも自分がなりたいもの、したいことが決まってるみたいです。
むむむ。私も組替えのことを考えないといけないのですが、なかなか決められません。
正直、魔法で精一杯で、それ以外のことはあまり考えていませんでした。
「クリスちゃんは…まだ悩んでる?」
「うん。私、魔力も体力もあまりないから、空組にしようかなって思ってたんだけど、勉強したいものが魔法以外思いつかなくて…空組だと、難しいんだよね」
空組は、基本的に魔法が使えることが絶対になっています。
魔法から新しいことを見つけたり、研究に応用したりすることが多いからです。
なので、今の私には難しい組だと思います。
「花組じゃダメなのかよ?好きなものとか、やりたいことはないのか?」
カイト君が意外だなという顔で見つめてきます。
うーん、特にやりたいこともないかもしれない…。
お花を育てたり、小物を作ったりするのは家でよくやってるから好き。
歌とか劇とかは、聴いたり見る方が好き。
絵を描くのはあまりやらないから、好きでもないし嫌いでもないかな。
好きなことはたくさんあります。
でも、どれも学校で学びたいと思うほど好きじゃないと感じています。
いろんなことに挑戦・勉強して自分の好きなもの嫌いなものがわかってきたけど、自分のやりたいことはまだ全然わからないです。
魔法が使えてたら、違っていたのかな…。
「…何がやりたいかは、まだわからないなぁ…」
しょんぼりしていると、リィちゃんが優しく頭をなでてくれました。
こういうところがお姉ちゃんみたいだなって思います。
「やりたいことがないのは悪いことではないわ。まだクリスちゃんが出会っていないだけ。悪いのは、目をそらしてしまうことよ。探す努力を惜しまなければ、クリスちゃんの世界はその分大きくなるはずよ」
本当にリィちゃんは私と同い年なのでしょうか?
それは大人が言う言葉のようで、私はただただ目を丸くしました。
「!いけない。難しかった?」
ハッとしたリィちゃんは、困った顔で口に手を当てます。
その横で、カイト君がジト目でリィちゃんを見つめています。
「…歳がばれるぞ、リリー」
え?歳がばれる?
それって、リィちゃんは見た目どおりの年齢じゃないってこと?
確かに私よりもちょっと背は高いけど、カイト君よりは小さいです。
私よりも一歳上って言うならわかるけど、カイト君の言い方だともっと年齢が上っていう風に聞こえます。
不思議そうに見つめると、リィちゃんは仕方ないという顔をして一つため息をつきました。
そして、私の耳もとで小声で言いました。
「実は私、フラワーエルフなの。だから、人間と違って見た目は小さい子どものままなの。こう見えても十三歳なのよ」
「えっ!!?」
びっくりしすぎて、思わず叫んでしまいました。
だって、レガロお兄ちゃんと同い年ってこと!?
私の声に、周りの人達が睨んできます。
そうでした、ここは図書室でした。
軽く周りの人達に頭を下げます。
叫んでしまったのは仕方がないと思います。
いくらリィちゃんが大人っぽくても、やっぱり見た目は子どもです。
でも、髪に隠れた耳をよく見ると普通の人間とは違っていて、小さいけど、おでかけの日に見たきれいなエルフさんのような耳でした。
その耳とエルフって言われなきゃ、きっと信じられませんでした。
あっ!もしかして、あの時ダンテさんやエルフさんがリィちゃんを見てびっくりしていたのは、リィちゃんがエルフだって気づいたから?
レガロお兄ちゃんと同い年に見えたなら、なるほど、「彼女?」って訊きますよね。
「クリスちゃん、秘密にしてね。みんなにびっくりされちゃうから。グランツ学園にはいろんなエルフが入学しているけど、教育科にはあまりいないの。先生は知ってるけどね」
「う、うん。わかった…」
人差し指を口に当ててウインクするリィちゃんは、やっぱりお姉さんなんだなと思わされます。
だって、かわいいけど、大人っぽいです。
年上ってわかると、すごく緊張してきます。
「えと…リィちゃんのこと、訊いてもいい?」
「ええ。いいわよ。何でも訊いて?」
カイト君のこともあったので、リィちゃんに許しをもらいます。
リィちゃんはきれいに微笑んでくれたので、フラワーエルフについて訊くことにしました。
「フラワーエルフって、エルフ…なんだよね?」
「ええ、そうよ。人間から見れば、あまり違いがわからないと思うけど、エルフには種族があるの」
それは初めて知りました。
エルフはみんな同じだと思っていました。
目を輝かせながら話を聞いていると、リィちゃんは続けて話してくれました。
「エルフは、人間から見た私たちを指す総称みたいなものね。もちろん、どの種族も祖先は同じエルフよ。長い年月をかけて地域や習慣などで見た目や魔力の性質がそれぞれに変わっていったの」
「そっか。私たち人間でいう、国とか部族と同じなんだね!ね、フラワーエルフって、どんなエルフなの?」
リィちゃんはにっこり笑って、手を組みます。
不思議に思ってその手を見つめると、ぱっとかわいいピンクのお花が現れました。
「すごい!お花の魔法!?」
「ふふ、フラワーエルフは特に花を愛でる種族なの。魔法でいろんな花を出すことができるのよ」
そう言って、ぽぽぽんっといろんなお花を出して見せてくれました。
どの花もかわいくて、囲まれると幸せな気持ちになっちゃいます。
「素敵な魔法!幸せいっぱいになるね!」
優しくてふわふわなリィちゃんにぴったりな魔法です。
リィちゃんは、優しく笑い返してくれて、ぎゅっと抱きしめてきました。
「ふふふっ、そんな風に言ってくれるなんて、うれしいわ。クリスちゃん大好き」
「私もリィちゃんが大好きだよ。もちろん、カイト君も大好き」
ぎゅーっとされたまま、視線をカイト君の方に向けます。
カイト君はびっくりしたように目を見開いていて、固まっていました。
あれ?私、何か変なこと言ったかな?
カイト君は少しだけ目をそらしましたが、いつものように笑ってくれました。
「俺もクリスが好きだ。友達でうれしいぞ」
笑って細められた夕焼け色の瞳はとてもきれいで、思わず見入ってしまいました。
すると、ぐるんっと体が半回転して、カイト君が見えなくなります。
リィちゃんが私を抱きしめたままカイト君の方に向いたからです。
「そんな目して!カイトにはクリスちゃんをあげないからねっ」
「何意味わかんねーこと言ってんだ、リリー?」
「だって、まるで愛の告白みたいだったわよ?」
「はあ!?友達として好きだって言ってんだろ!」
頭上で飛び交う二人のやり取りを見ながら、思わず笑ってしまいます。
これはケンカじゃない、二人ともじゃれ合ってるんだ。
だって、楽しんでるみたいだから。
リィちゃんもカイト君も私も、お互いが大事で大好き。
えへへ、それってすごく幸せだなぁ。
二人の言い合いは司書さんが来るまで続いて、止めなかった私も一緒に怒られてしまいました。
日が傾いてきて、一年生の下校時間が近づいてきます。
図書室にいた他の一年生も、席を立って帰る準備をしています。
宿題を鞄に詰めて、私たちもそれぞれ帰ることにしました。
結局、あれからリィちゃんとカイト君とおしゃべりして、全然宿題が捗りませんでした。
最後に、リィちゃんに「呼び方、さん付けにした方がいい?」と聞くと、いつもどおりでいいよと言ってくれたので、そのままの呼びにすることにしました。
リィちゃんとカイト君は寮組なので校門で別れて、馬車の停留所へ向かいます。
今の時間だと、歩いて行けば馬車がちょうど到着するくらいです。
今日の晩御飯は何かな?
お母さん、疲れてないかな?
あ、今日はレガロお兄ちゃんが早く帰るって言ってたから、きっと大丈夫だよね。
お母さんは、あの倒れた日から疲れやすくなったみたいです。
だから、お父さんが毎日お母さんのお守りに魔力を込めています。
前は毎日魔力を込めることはしなかったのに…。
それに、いつの間にかお守りのデザインが変わったように思いました。
お母さんに「お守り、変わったの?」と訊いたら、困り笑いを返されたので、それ以上何も訊けませんでした。
あれからもう一ヵ月くらい経ちます。
お母さんは前と変わらずに家のことをこなして、元気でいます。
私が心配しすぎると、家族のみんなにも心配させちゃうから、こっそりお母さんを見守ることにしています。
街の石畳を数えながら歩いていると、まだ遠い停留所に、見覚えのあるきれいな黒髪の人が立っているのが見えました。
背筋がまっすぐ伸びた、大人っぽい立ち方。
ときどき風に揺られるサラサラなストレートの黒髪には、装飾具が着けられているのが見えます。
もしかして…!
その後ろ姿を見れば、歩くスピードが速くなって、近くまで行く頃には走っていました。
停留所に滑り込むように辿り着けば、思い切ってその人の名前を呼んでみました。
「ラ、ライゼンさんっ」
一年生の間に自分が目指すものを決めて、空組、花組、海組のどの組になるかを選ばないといけません。
すでに行きたい組を決めている子は、入学した時にすぐに飛び級して組替えをするし、一年考えて進級するときに組を決める子もいます。
目指すものをすぐに決められない子もいるけど、この学校はいろんな人に出会い、見て体験することができるので、大体の子は目指すものが決まります。
それに、光組から替わった後は、四年生までならまだ組を選び直すことができるので考える時間もあります。
その場合、組替えの時にまた二年生から始めることになりますが。
それでも、三つの組を体験してから自分の組を見つけた人も少なくはないそうです。
「リィちゃんとカイト君は、何組にするかもう決めてるの?」
放課後、いつものようにリィちゃんとカイト君と一緒に図書室で宿題をしながら、二人に訊いてみました。
「私は花組よ。フラワーアレンジメントをしたいの」
「俺は海組。体動かすの好きだし」
二人とも自分がなりたいもの、したいことが決まってるみたいです。
むむむ。私も組替えのことを考えないといけないのですが、なかなか決められません。
正直、魔法で精一杯で、それ以外のことはあまり考えていませんでした。
「クリスちゃんは…まだ悩んでる?」
「うん。私、魔力も体力もあまりないから、空組にしようかなって思ってたんだけど、勉強したいものが魔法以外思いつかなくて…空組だと、難しいんだよね」
空組は、基本的に魔法が使えることが絶対になっています。
魔法から新しいことを見つけたり、研究に応用したりすることが多いからです。
なので、今の私には難しい組だと思います。
「花組じゃダメなのかよ?好きなものとか、やりたいことはないのか?」
カイト君が意外だなという顔で見つめてきます。
うーん、特にやりたいこともないかもしれない…。
お花を育てたり、小物を作ったりするのは家でよくやってるから好き。
歌とか劇とかは、聴いたり見る方が好き。
絵を描くのはあまりやらないから、好きでもないし嫌いでもないかな。
好きなことはたくさんあります。
でも、どれも学校で学びたいと思うほど好きじゃないと感じています。
いろんなことに挑戦・勉強して自分の好きなもの嫌いなものがわかってきたけど、自分のやりたいことはまだ全然わからないです。
魔法が使えてたら、違っていたのかな…。
「…何がやりたいかは、まだわからないなぁ…」
しょんぼりしていると、リィちゃんが優しく頭をなでてくれました。
こういうところがお姉ちゃんみたいだなって思います。
「やりたいことがないのは悪いことではないわ。まだクリスちゃんが出会っていないだけ。悪いのは、目をそらしてしまうことよ。探す努力を惜しまなければ、クリスちゃんの世界はその分大きくなるはずよ」
本当にリィちゃんは私と同い年なのでしょうか?
それは大人が言う言葉のようで、私はただただ目を丸くしました。
「!いけない。難しかった?」
ハッとしたリィちゃんは、困った顔で口に手を当てます。
その横で、カイト君がジト目でリィちゃんを見つめています。
「…歳がばれるぞ、リリー」
え?歳がばれる?
それって、リィちゃんは見た目どおりの年齢じゃないってこと?
確かに私よりもちょっと背は高いけど、カイト君よりは小さいです。
私よりも一歳上って言うならわかるけど、カイト君の言い方だともっと年齢が上っていう風に聞こえます。
不思議そうに見つめると、リィちゃんは仕方ないという顔をして一つため息をつきました。
そして、私の耳もとで小声で言いました。
「実は私、フラワーエルフなの。だから、人間と違って見た目は小さい子どものままなの。こう見えても十三歳なのよ」
「えっ!!?」
びっくりしすぎて、思わず叫んでしまいました。
だって、レガロお兄ちゃんと同い年ってこと!?
私の声に、周りの人達が睨んできます。
そうでした、ここは図書室でした。
軽く周りの人達に頭を下げます。
叫んでしまったのは仕方がないと思います。
いくらリィちゃんが大人っぽくても、やっぱり見た目は子どもです。
でも、髪に隠れた耳をよく見ると普通の人間とは違っていて、小さいけど、おでかけの日に見たきれいなエルフさんのような耳でした。
その耳とエルフって言われなきゃ、きっと信じられませんでした。
あっ!もしかして、あの時ダンテさんやエルフさんがリィちゃんを見てびっくりしていたのは、リィちゃんがエルフだって気づいたから?
レガロお兄ちゃんと同い年に見えたなら、なるほど、「彼女?」って訊きますよね。
「クリスちゃん、秘密にしてね。みんなにびっくりされちゃうから。グランツ学園にはいろんなエルフが入学しているけど、教育科にはあまりいないの。先生は知ってるけどね」
「う、うん。わかった…」
人差し指を口に当ててウインクするリィちゃんは、やっぱりお姉さんなんだなと思わされます。
だって、かわいいけど、大人っぽいです。
年上ってわかると、すごく緊張してきます。
「えと…リィちゃんのこと、訊いてもいい?」
「ええ。いいわよ。何でも訊いて?」
カイト君のこともあったので、リィちゃんに許しをもらいます。
リィちゃんはきれいに微笑んでくれたので、フラワーエルフについて訊くことにしました。
「フラワーエルフって、エルフ…なんだよね?」
「ええ、そうよ。人間から見れば、あまり違いがわからないと思うけど、エルフには種族があるの」
それは初めて知りました。
エルフはみんな同じだと思っていました。
目を輝かせながら話を聞いていると、リィちゃんは続けて話してくれました。
「エルフは、人間から見た私たちを指す総称みたいなものね。もちろん、どの種族も祖先は同じエルフよ。長い年月をかけて地域や習慣などで見た目や魔力の性質がそれぞれに変わっていったの」
「そっか。私たち人間でいう、国とか部族と同じなんだね!ね、フラワーエルフって、どんなエルフなの?」
リィちゃんはにっこり笑って、手を組みます。
不思議に思ってその手を見つめると、ぱっとかわいいピンクのお花が現れました。
「すごい!お花の魔法!?」
「ふふ、フラワーエルフは特に花を愛でる種族なの。魔法でいろんな花を出すことができるのよ」
そう言って、ぽぽぽんっといろんなお花を出して見せてくれました。
どの花もかわいくて、囲まれると幸せな気持ちになっちゃいます。
「素敵な魔法!幸せいっぱいになるね!」
優しくてふわふわなリィちゃんにぴったりな魔法です。
リィちゃんは、優しく笑い返してくれて、ぎゅっと抱きしめてきました。
「ふふふっ、そんな風に言ってくれるなんて、うれしいわ。クリスちゃん大好き」
「私もリィちゃんが大好きだよ。もちろん、カイト君も大好き」
ぎゅーっとされたまま、視線をカイト君の方に向けます。
カイト君はびっくりしたように目を見開いていて、固まっていました。
あれ?私、何か変なこと言ったかな?
カイト君は少しだけ目をそらしましたが、いつものように笑ってくれました。
「俺もクリスが好きだ。友達でうれしいぞ」
笑って細められた夕焼け色の瞳はとてもきれいで、思わず見入ってしまいました。
すると、ぐるんっと体が半回転して、カイト君が見えなくなります。
リィちゃんが私を抱きしめたままカイト君の方に向いたからです。
「そんな目して!カイトにはクリスちゃんをあげないからねっ」
「何意味わかんねーこと言ってんだ、リリー?」
「だって、まるで愛の告白みたいだったわよ?」
「はあ!?友達として好きだって言ってんだろ!」
頭上で飛び交う二人のやり取りを見ながら、思わず笑ってしまいます。
これはケンカじゃない、二人ともじゃれ合ってるんだ。
だって、楽しんでるみたいだから。
リィちゃんもカイト君も私も、お互いが大事で大好き。
えへへ、それってすごく幸せだなぁ。
二人の言い合いは司書さんが来るまで続いて、止めなかった私も一緒に怒られてしまいました。
日が傾いてきて、一年生の下校時間が近づいてきます。
図書室にいた他の一年生も、席を立って帰る準備をしています。
宿題を鞄に詰めて、私たちもそれぞれ帰ることにしました。
結局、あれからリィちゃんとカイト君とおしゃべりして、全然宿題が捗りませんでした。
最後に、リィちゃんに「呼び方、さん付けにした方がいい?」と聞くと、いつもどおりでいいよと言ってくれたので、そのままの呼びにすることにしました。
リィちゃんとカイト君は寮組なので校門で別れて、馬車の停留所へ向かいます。
今の時間だと、歩いて行けば馬車がちょうど到着するくらいです。
今日の晩御飯は何かな?
お母さん、疲れてないかな?
あ、今日はレガロお兄ちゃんが早く帰るって言ってたから、きっと大丈夫だよね。
お母さんは、あの倒れた日から疲れやすくなったみたいです。
だから、お父さんが毎日お母さんのお守りに魔力を込めています。
前は毎日魔力を込めることはしなかったのに…。
それに、いつの間にかお守りのデザインが変わったように思いました。
お母さんに「お守り、変わったの?」と訊いたら、困り笑いを返されたので、それ以上何も訊けませんでした。
あれからもう一ヵ月くらい経ちます。
お母さんは前と変わらずに家のことをこなして、元気でいます。
私が心配しすぎると、家族のみんなにも心配させちゃうから、こっそりお母さんを見守ることにしています。
街の石畳を数えながら歩いていると、まだ遠い停留所に、見覚えのあるきれいな黒髪の人が立っているのが見えました。
背筋がまっすぐ伸びた、大人っぽい立ち方。
ときどき風に揺られるサラサラなストレートの黒髪には、装飾具が着けられているのが見えます。
もしかして…!
その後ろ姿を見れば、歩くスピードが速くなって、近くまで行く頃には走っていました。
停留所に滑り込むように辿り着けば、思い切ってその人の名前を呼んでみました。
「ラ、ライゼンさんっ」
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