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第1章 ◆ はじまりと出会いと
24. ドタバタなおでかけ⑤
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「はあ……」
大通りの詰所の椅子に座って、大きなため息をつきます。
リィちゃんも隣の席で、落ち込んだ様子で休んでいます。
エレナさんとジルディースさんは勤務時間が終わるそうなので、騎士団の屋敷に戻りました。
ジルディースさんに「またここに戻るから待ってろ」と言われたので、リィちゃんと待っています。
結局、ポーチも魔宝石も見つけることができないまま、夕方になってしまいました。
宝飾店や質屋さんにも行ってみましたが、それらしきものはありませんでした。
他の騎士さん達が違う通りで見つけたスリを何人か連れてきましたが、みんな違う人でした。
私達がポーチを探している間、どこからそれを聞いたのか、大通りのお店の人や知らない人が「見つかるといいな」「見つかるのを祈ってるわ」と声をかけてくれました。
オルデンの人達は、こんな小さな私にも優しくて、ちょっとだけ涙が出そうでした。
「クリスちゃん、ごめんなさい。見つけられなかったわ」
「ううん。リィちゃんが謝ることなんてないよ。もとはと言えば、盗られた私のせいだし…」
「それこそクリスちゃんのせいじゃないわ!盗った人が悪いのよ!」
リィちゃんは怒りながら言いました。
私のためにこうやって怒ってくれるリィちゃんに、落ち込んだ気持ちが浮上します。
リィちゃんが友達で本当に幸せだなぁ。
「クリス、リリー、待たせたな」
間もなく、ジルディースさんが戻ってきました。
服も着替えていて、カッターシャツにロングのベスト、ズボンにブーツで、街のお兄さんという感じの服装でした。
ジルディースさんの後ろには、エレナさんもいます。
「落し物届をしてきたわ。見つかったら、グランツ学園にすぐ届けるわね」
「ありがとうございます、エレナさん」
空を見上げれば茜色になっていて、一番星が輝くのが見えます。
五時を知らせる鐘が遠くで聞こえました。
もう、帰らなければいけません。
席を立って、ジルディースさん、エレナさん、リィちゃんを順に見つめてお辞儀をします。
三人はちょっとびっくりした目をしました。
「今日は、たくさん私のために動いてくれてありがとうございました。みんなの気持ちがとってもうれしかったです」
心からの感謝を言って顔を上げると、ひょいっと体が浮きました。
びっくりする間もなく、力強く抱きしめられます。
目を向けると、ジルディースさんに抱っこされていて、その顔は悔しそうでした。
「ごめんな、クリス。絶対見つけるからな」
「はい。ありがとうございます、ジルディースさん」
エレナさんも申し訳なさそうな顔をして見つめてきます。
そんな沈んだ空気の中、気の抜けた声が聞こえました。
「にゃあ~」
その声で、私達は扉の方へ目を向けました。
そこには五匹の猫と切れ長で紫色の目をした白猫がいました。
その猫達は、首に見たことのあるリボンをしていて、猫町通りの猫だとすぐにわかりました。
赤いストライプのリボンは、あの黒猫ダンテさんのお店の横にあったアクセサリー屋さんの猫が着けていたものです。
「まったく、ずいぶん探しましたにゃ。もし帰っていたらレガロ様に返そうと思いましたにゃ」
そう言ったのは、白猫さんでした。
そして、白猫さんの隣にいた猫が、口に咥えたものを私のもとまで持ってきました。
ジルディースさんから降りて、それを受け取ります。
「!!」
渡されたものは、ちょっと汚れていましたが探していたポーチでした。
恐る恐る中を確認すると、魔宝石が何事もなかったかのように入っていました。
「どうして…これ…どこで?」
あまりにもびっくりしすぎて、片言になってしまいます。
その様子を見ていたリィちゃん達もびっくりしています。
「クリス様があんまりにも泣くので、私の部下達が探し出しましたにゃ。安心してください、それを盗った男は今頃路地裏でボロボロににゃっているのを発見されていると思いますにゃ」
「ええっ!!?」
白猫さんの部下!?
盗った人がボロボロ!?それは安心していいのかな!?
ぽかーんとして白猫さんを見つめていると、用は済んだと背を向けられます。
「ちゃんと渡しましたからね。クリス様、もう落とさにゃいように、お気を付けくださいにゃ」
「…っ! 白猫さん、ありがとうございました!」
さっさと行ってしまおうとするので、慌ててその背中にお礼を言います。
白猫さんとその部下(?)の猫達は視線だけこっちに向けると、「にゃあ」と鳴いて、人込みに消えていきました。
それを見送ったら、突然ジルディースさんが噴き出すように笑いました。
「っ、あはははははっ!すげーな、クリス!猫達に見つけてもらった奴なんて初めてだ!」
「ふふふふ、本当よ。猫町通りの猫達は気まぐれなのに…クリスちゃんのために猫情報網を駆使してくれたのね」
エレナさんも堪えるように笑っていて、場の空気が和やかになりました。
リィちゃんも私に抱きついてきて、「よかったわね」と喜んでくれました。
じわじわと私もうれしくなってきて、笑顔になります。
手の中のポーチを握りしめて、この手に魔宝石が帰ってきたことを実感します。
失くしてたのはたった数時間なのに、その間とても不安でたまりませんでした。
それほど、私にとってこの石はかけがえのないものになっていたんだと改めて思います。
あれだけ探して見つからなかったのを、猫達にあっさり見つけてもらえたのにはびっくりしたけど、本当によかった!
おかえり、魔法の石。
もう絶対失くさないからね。
心の中でもう一度白猫さんたちにお礼を言って、今度猫町通りに行ったときは、お礼を持ってお店に寄ろうと思いました。
「ほんとによかったな、クリス」
ひとしきり笑い終えたジルディースさんが優しく微笑んで頭を撫でてきます。
エレナさんもほっとした顔をして、少し困り笑いを見せました。
「クリスちゃん、本当によかった。……こんなことがあったけど…オルデンのこと嫌いにならないでね」
「そんな、嫌いになんかなりません」
みんな、本当に優しい人達です。
そんな人達がいる街を嫌いになるわけありません。
たくさんの人達、猫達が私を気にかけてくれて、助けてくれて、ますますこの街が好きになりました。
今日出会った人達に感謝しながら、一番の笑顔をエレナさんとジルディースさんに見せました。
「私、エレナさんとジルディースさん、この街の人達が大好きです!」
そう言った瞬間、三人に抱きしめられました。
その様子は傍から見れば、まるでお団子状態です。
「ああ、もう!クリスちゃん、かわいすぎるわ!妹にしたいくらいよ!」
「エレナさん、独り占めはだめです!」
「くそぉ、うれしいこと言ってくれるじゃねーか」
こうして、いろいろあったドタバタなおでかけは無事に(?)終わりました。
次の日の放課後、エレナさんとジルディースさん、協力してくれた騎士さん達に改めてお礼を言うために、リィちゃんと騎士団の屋敷に行きました。
迎えてくれた騎士さん達は、とても優しい人達で、見つかったことをとても喜んでくれました。
エレナさんとジルディースさんは見回り中で、もうすぐ帰ってくると言うので屋敷で待つことにしました。
その間に、騎士さん達にお礼のクッキーを渡します。
エレナさんとジルディースさん以外の騎士さん達は、お父さんくらいの年齢の人が多くて、クッキーを渡した人みんなに抱っこしてもらったり、頭を撫でてもらいました。
リィちゃんも私と同じようにされて、どこか戸惑っていましたが、照れくさそうに笑っていました。
「クリス、来てたのか!」
「あら、クリスちゃん。リリーちゃんも」
一通りあいさつし終えた頃、ジルディースさんが帰ってきました。
その後ろでエレナさんがちょっとびっくりした顔をしましたが、すぐに微笑んでくれました。
「今日は改めてお礼に来たんです」
「そうなのか。そんな改まらなくていいのに」
「そういうわけにはいきません」
たくさんお世話になったので、きちんとお礼をしたいです!
このクッキーでも足りないくらいです。
お礼のクッキーを渡せば、うれしそうに笑うジルディースさん。
エレナさんも釣られたように笑って、クッキーを受け取ってくれました。
「ふふ。うれしいわ。クリスちゃん、よかったらお友達にならない?」
「え?友達ですか?」
エレナさんの言葉にきょとんとしていると、ジルディースさんが笑い出します。
「それ、いいな。クリス、俺とも友達になってくれよ」
「え、えええー…」
ジルディースさんまでそう言うので、戸惑うしかありません。
隣でリィちゃんはくすくすと笑っていて、私の反応を見ています。
その様子だと、リィちゃんはこの展開を予想してたのでしょうか。
「…嫌?」
あまりにも悲しそうにエレナさんが言うので、頷くしかありませんでした。
その答えに、ぱあっと笑顔を見せるエレナさんは、美人さんのはずなのに、かわいいと思ってしまいました。
「ふふふっ、もうお友達ね!」
「俺もな!クリス、もう友達なんだから敬語は無しだからな!」
ジルディースさんも笑顔で言ってきて、これはもう頷くしかありませんでした。
「はい…じゃ、なかった、うん。エレナさん、ジルディースさん、よろしくね」
この時、密かに「クリスちゃんを見守り隊」が発足したということを知るのは、ずっと後の話になります。
大通りの詰所の椅子に座って、大きなため息をつきます。
リィちゃんも隣の席で、落ち込んだ様子で休んでいます。
エレナさんとジルディースさんは勤務時間が終わるそうなので、騎士団の屋敷に戻りました。
ジルディースさんに「またここに戻るから待ってろ」と言われたので、リィちゃんと待っています。
結局、ポーチも魔宝石も見つけることができないまま、夕方になってしまいました。
宝飾店や質屋さんにも行ってみましたが、それらしきものはありませんでした。
他の騎士さん達が違う通りで見つけたスリを何人か連れてきましたが、みんな違う人でした。
私達がポーチを探している間、どこからそれを聞いたのか、大通りのお店の人や知らない人が「見つかるといいな」「見つかるのを祈ってるわ」と声をかけてくれました。
オルデンの人達は、こんな小さな私にも優しくて、ちょっとだけ涙が出そうでした。
「クリスちゃん、ごめんなさい。見つけられなかったわ」
「ううん。リィちゃんが謝ることなんてないよ。もとはと言えば、盗られた私のせいだし…」
「それこそクリスちゃんのせいじゃないわ!盗った人が悪いのよ!」
リィちゃんは怒りながら言いました。
私のためにこうやって怒ってくれるリィちゃんに、落ち込んだ気持ちが浮上します。
リィちゃんが友達で本当に幸せだなぁ。
「クリス、リリー、待たせたな」
間もなく、ジルディースさんが戻ってきました。
服も着替えていて、カッターシャツにロングのベスト、ズボンにブーツで、街のお兄さんという感じの服装でした。
ジルディースさんの後ろには、エレナさんもいます。
「落し物届をしてきたわ。見つかったら、グランツ学園にすぐ届けるわね」
「ありがとうございます、エレナさん」
空を見上げれば茜色になっていて、一番星が輝くのが見えます。
五時を知らせる鐘が遠くで聞こえました。
もう、帰らなければいけません。
席を立って、ジルディースさん、エレナさん、リィちゃんを順に見つめてお辞儀をします。
三人はちょっとびっくりした目をしました。
「今日は、たくさん私のために動いてくれてありがとうございました。みんなの気持ちがとってもうれしかったです」
心からの感謝を言って顔を上げると、ひょいっと体が浮きました。
びっくりする間もなく、力強く抱きしめられます。
目を向けると、ジルディースさんに抱っこされていて、その顔は悔しそうでした。
「ごめんな、クリス。絶対見つけるからな」
「はい。ありがとうございます、ジルディースさん」
エレナさんも申し訳なさそうな顔をして見つめてきます。
そんな沈んだ空気の中、気の抜けた声が聞こえました。
「にゃあ~」
その声で、私達は扉の方へ目を向けました。
そこには五匹の猫と切れ長で紫色の目をした白猫がいました。
その猫達は、首に見たことのあるリボンをしていて、猫町通りの猫だとすぐにわかりました。
赤いストライプのリボンは、あの黒猫ダンテさんのお店の横にあったアクセサリー屋さんの猫が着けていたものです。
「まったく、ずいぶん探しましたにゃ。もし帰っていたらレガロ様に返そうと思いましたにゃ」
そう言ったのは、白猫さんでした。
そして、白猫さんの隣にいた猫が、口に咥えたものを私のもとまで持ってきました。
ジルディースさんから降りて、それを受け取ります。
「!!」
渡されたものは、ちょっと汚れていましたが探していたポーチでした。
恐る恐る中を確認すると、魔宝石が何事もなかったかのように入っていました。
「どうして…これ…どこで?」
あまりにもびっくりしすぎて、片言になってしまいます。
その様子を見ていたリィちゃん達もびっくりしています。
「クリス様があんまりにも泣くので、私の部下達が探し出しましたにゃ。安心してください、それを盗った男は今頃路地裏でボロボロににゃっているのを発見されていると思いますにゃ」
「ええっ!!?」
白猫さんの部下!?
盗った人がボロボロ!?それは安心していいのかな!?
ぽかーんとして白猫さんを見つめていると、用は済んだと背を向けられます。
「ちゃんと渡しましたからね。クリス様、もう落とさにゃいように、お気を付けくださいにゃ」
「…っ! 白猫さん、ありがとうございました!」
さっさと行ってしまおうとするので、慌ててその背中にお礼を言います。
白猫さんとその部下(?)の猫達は視線だけこっちに向けると、「にゃあ」と鳴いて、人込みに消えていきました。
それを見送ったら、突然ジルディースさんが噴き出すように笑いました。
「っ、あはははははっ!すげーな、クリス!猫達に見つけてもらった奴なんて初めてだ!」
「ふふふふ、本当よ。猫町通りの猫達は気まぐれなのに…クリスちゃんのために猫情報網を駆使してくれたのね」
エレナさんも堪えるように笑っていて、場の空気が和やかになりました。
リィちゃんも私に抱きついてきて、「よかったわね」と喜んでくれました。
じわじわと私もうれしくなってきて、笑顔になります。
手の中のポーチを握りしめて、この手に魔宝石が帰ってきたことを実感します。
失くしてたのはたった数時間なのに、その間とても不安でたまりませんでした。
それほど、私にとってこの石はかけがえのないものになっていたんだと改めて思います。
あれだけ探して見つからなかったのを、猫達にあっさり見つけてもらえたのにはびっくりしたけど、本当によかった!
おかえり、魔法の石。
もう絶対失くさないからね。
心の中でもう一度白猫さんたちにお礼を言って、今度猫町通りに行ったときは、お礼を持ってお店に寄ろうと思いました。
「ほんとによかったな、クリス」
ひとしきり笑い終えたジルディースさんが優しく微笑んで頭を撫でてきます。
エレナさんもほっとした顔をして、少し困り笑いを見せました。
「クリスちゃん、本当によかった。……こんなことがあったけど…オルデンのこと嫌いにならないでね」
「そんな、嫌いになんかなりません」
みんな、本当に優しい人達です。
そんな人達がいる街を嫌いになるわけありません。
たくさんの人達、猫達が私を気にかけてくれて、助けてくれて、ますますこの街が好きになりました。
今日出会った人達に感謝しながら、一番の笑顔をエレナさんとジルディースさんに見せました。
「私、エレナさんとジルディースさん、この街の人達が大好きです!」
そう言った瞬間、三人に抱きしめられました。
その様子は傍から見れば、まるでお団子状態です。
「ああ、もう!クリスちゃん、かわいすぎるわ!妹にしたいくらいよ!」
「エレナさん、独り占めはだめです!」
「くそぉ、うれしいこと言ってくれるじゃねーか」
こうして、いろいろあったドタバタなおでかけは無事に(?)終わりました。
次の日の放課後、エレナさんとジルディースさん、協力してくれた騎士さん達に改めてお礼を言うために、リィちゃんと騎士団の屋敷に行きました。
迎えてくれた騎士さん達は、とても優しい人達で、見つかったことをとても喜んでくれました。
エレナさんとジルディースさんは見回り中で、もうすぐ帰ってくると言うので屋敷で待つことにしました。
その間に、騎士さん達にお礼のクッキーを渡します。
エレナさんとジルディースさん以外の騎士さん達は、お父さんくらいの年齢の人が多くて、クッキーを渡した人みんなに抱っこしてもらったり、頭を撫でてもらいました。
リィちゃんも私と同じようにされて、どこか戸惑っていましたが、照れくさそうに笑っていました。
「クリス、来てたのか!」
「あら、クリスちゃん。リリーちゃんも」
一通りあいさつし終えた頃、ジルディースさんが帰ってきました。
その後ろでエレナさんがちょっとびっくりした顔をしましたが、すぐに微笑んでくれました。
「今日は改めてお礼に来たんです」
「そうなのか。そんな改まらなくていいのに」
「そういうわけにはいきません」
たくさんお世話になったので、きちんとお礼をしたいです!
このクッキーでも足りないくらいです。
お礼のクッキーを渡せば、うれしそうに笑うジルディースさん。
エレナさんも釣られたように笑って、クッキーを受け取ってくれました。
「ふふ。うれしいわ。クリスちゃん、よかったらお友達にならない?」
「え?友達ですか?」
エレナさんの言葉にきょとんとしていると、ジルディースさんが笑い出します。
「それ、いいな。クリス、俺とも友達になってくれよ」
「え、えええー…」
ジルディースさんまでそう言うので、戸惑うしかありません。
隣でリィちゃんはくすくすと笑っていて、私の反応を見ています。
その様子だと、リィちゃんはこの展開を予想してたのでしょうか。
「…嫌?」
あまりにも悲しそうにエレナさんが言うので、頷くしかありませんでした。
その答えに、ぱあっと笑顔を見せるエレナさんは、美人さんのはずなのに、かわいいと思ってしまいました。
「ふふふっ、もうお友達ね!」
「俺もな!クリス、もう友達なんだから敬語は無しだからな!」
ジルディースさんも笑顔で言ってきて、これはもう頷くしかありませんでした。
「はい…じゃ、なかった、うん。エレナさん、ジルディースさん、よろしくね」
この時、密かに「クリスちゃんを見守り隊」が発足したということを知るのは、ずっと後の話になります。
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