非オタな僕が勇者に転生したら、オタな彼女が賢者に転生してサポート万全だった。

ケイオチャ

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第三章 異世界の現実を変えようとする者たち

一人が好きなクロス使いと妹のような少女〜リッカの過去〜

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 次の日、ユウは一人でリッカを探しに行った。
「みんなより早く起きて出てきちゃったけど、
 置き手紙は残してきたし、大丈夫だよね。」
 ふふんと楽しそうに歩くユウ。
「…あれ…ふぁー…ユウくん?」
 (これは見つかると面倒臭そうだ。)
 リッカが少し遠くから見つける。
「あっ…いたー!リッカさん、おはよう。」
 走っていくユウ。
 (逃げよう。)
 走って逃げるリッカ。
「なんで逃げるのー、話がしたいんだよ。」
 追いかけるユウ。
「…話?」
 足を止めるリッカ。
「わぁ。」
 ごつんとリッカと当たり、少しよろけるユウ。
「…!ごめん。」
 よろけず、謝るリッカ。
「あれ~?ギルドに行くんじゃなかったの?
 リッカおねぇちゃん。」
 散歩をしていたソレッラ。
「ソレッラ…あはは、ちょっと運動して走って
 たら、戻ってきちゃった。」
 笑って誤魔化すリッカ。
「そうなんだ、それで後ろにいる男の人は誰?」
 警戒する目でユウのことを見るソレッラ。
「えっと…僕はリッカさんのクラスメイトで
 勇者のユウ・ブレイブだよ。よろしくね。」
 かがんで目線を合わせて自己紹介するユウ。
「ほ…クラスメイト?怪しい。」
 より警戒するソレッラ。
「あっ…知り合いってことだよ、ソレッラ。
 怪しい人ではないから。信頼できるから。」
 (クラスメイトって概念知らないからな、
 ソレッラ。知り合いが一番近いかな。)
 フォローするリッカ。
「そうなの…おねぇちゃんが言うなら信じる。
 私はね、ソレッラって言います。
 おねぇちゃんと同居してます。」
 丁寧に自己紹介するソレッラ。
「かわいい…リッカさん、同居人がいるとは。
 知らなかったよ。妹みたいだね。」
 ソレッラの頭をすりすりするユウ。
「うふふーん。すごいんだよ!
 私は家事も料理も手伝う偉い子なんだよ。」
 誇りに思ってるソレッラ。
「…うーん…ずるい。」
 (私だって、ソレッラをいい子いい子したい。)
 睨んで言うリッカ。
「えっ…いやえっと…ダメだった?」
 戸惑うユウ。
「…いえ…別に。ソレッラはかわいい。」
 リッカもソレッラをよしよしする。
「あっ…おほん。ソレッラは散歩してて欲しいな。
 ユウと二人で話をするから。」
 お願いするリッカ。
「うん、分かった。」
 (おねぇちゃんは真面目な話をするんだな。
 邪魔はダメだね。)
 少し悲しそうにしつつ、素直に散歩に行く
 ソレッラ。
「ありがとう、ソレッラ。」
 優しく笑うリッカ。
「一人で行かせて大丈夫?」
 心配するユウ。
「…うん。冒険者ギルドに行くだけだから。
 そこなら安全、心配ではあるけど。
 家の中に入って。」
 素直なリッカ。
「うん、お邪魔します。ふぁ…」
 綺麗な部屋だった。それに温かみを感じた。
「ここに座って、飲み物用意するから。」
 端的に言うリッカ。
「うん…」
 (こんなに綺麗にして、ソレッラにあんなに
 優しいのに、なんで僕や他の人たちには
 そっけない感じなんだろう。)
 少し緊張しながら椅子に座るユウ。
「はい…ハーブティー…で話って。」
 マグカップを置いた後、ユウと向かい側の椅子に
 座るリッカ。
 顔は睨んでいて怖い顔をしている。
「パーティを組まない理由を知りたいんだ。」
 勢いよく言うユウ。
「…またその話。だから意味ないってこと。」
 さっさと話を終わらせたいリッカ。
「本当に?僕たちが来る前に何かあったんじゃ
 ない?だって、ラクロス部の時はチームワーク
 抜群だったリッカがパーティを組めば上手く
 いきそうだよ。」
 過去から意見を言うユウ。
「……だから、意味なかったんだよ!」
 勢いよく机を両手で叩いて激怒するリッカ。
 まずいと思い、ゆっくり座る。
「……ごめん。気持ち聞かないで舞い上がっ
 てたよ。えっと詳しく知りたいんだ。
 ソレッラにも言ってないみたいだから。」
 驚いてしばらく黙った後、反省するユウ。
「…そうだね…ごめんなさい…さっきはその…
 爆発した…。」
 謝った後、静かに語り出した。

      ~リッカの過去~

「ここが異世界…海だ!わぁ、東京来ても、
 海には行かなかったから、いいね。」
 胸に期待を寄せて、異世界には来た。
 高校の時は栃木から引っ越してきて、知り合いは
 誰もいなくて、でもなんとか数人の友達が
 できた。しかし、三年生の時のクラスは
 どうにも馴染めず楽しくなかった。
 だから、異世界では楽しく生きると決めた。
 冒険者ギルドで冒険者登録をして、
 魔物は倒していた。
 数日たったある日…ある男に声を掛けられた。
「なぁ、俺たちとパーティ組まないか。
 一人だと受けられないクエストもあるだろう。
 それに強そうだしな。」
 手を差し伸べる男。
「はい、私はリッカ・クロスと言います。
 よろしくお願いします。」
 元気よく承諾したリッカ。
 その男はバルドと言う名前で優秀なパーティ
 であるブリッランテのリーダーである。
 最初は分からないこともあり、教えてくれたり、
 協力してくれたりと良くしてくれた。
 でも…そのうちリッカが強くなった。
 それが問題になってしまった。
「リッカ、強すぎるんだよ。
 これじゃあ、協力して倒せないじゃないか。
 お前ばかり経験値が上がって俺たちは強く
 慣れない。」
 だんだん声を荒げて言うバルド。
「ごめんなさい、技を押さえるのが難しくて
 威力が調整できないんです。」
 謝るリッカ。
「そうですね、強いアピールですか。
 一人でも平気だと言う、あぁ、そこが嫌いなの
 ですよ。」
 女が言う。
「そうだそうだ、お前がいなければ、僕はもっと
 活躍できたのによ。お前ばかり注目されて、
 気に食わなかった。」
 ひょろめの男が言う。
「ごめんなさい、ごめんなさい…。」
 (なんで…どうすれば良かった…分からない)
 謝ることしかできなかったリッカ。
「お前は追放だ…じゃあな。」
 バルドは冷たく言い放った。
 絶望した…でも次は…次は…とパーティに入った。
 しかし、同様に強すぎるという理由で追放
 された。
「もう…冒険者やめようかな、今までので
 なんとかなるだろうし…。」
 もはや一人で活動どころか冒険者をやめようと
 していたリッカ。
「や、やめてよ…い、痛いよ。誰か…助けて…。」
 少女が石を投げられたり、物を取られたり
 していた。
「へへーん、弱いやつは取られるだけなんだよー。」
「弱肉強食だよー。」
「バーカ、バーカ。」
 三人の少年が囲んでいる。
「…は…」
 (いじめられてる…許せない!)
 リッカは今までの考えていたことを忘れた。
 自然と体が動いた。
「…何…やってんの…いじめて楽しいかな?
 言葉が一番傷つくって知らないのかな。
 体の傷よりも心の傷の方が大きいだよ。
 ずっと残るんだよ。良い加減にしろよ。
 失敗することも多いのに誰も教えてくれない
 どうすれば良いかも分からないのに捨てるなよ。
 弱いとか強いとか関係ないんだよ。
 生きてるんのに、なんで…一生懸命…
 強いからって、弱いからって、理由つけて、
 本当勝手すぎるよ。」
 泣きながら、怒りながら、自分が何言って
 るか、分からないまま、必死に
 ただのリッカには関係ない少年三人に
 言っていた。
「なんだ、こいつ、行くぞ!」
「あぁ、なんかやる気なくなった。」
「怖ぇー!」
 走っていってしまった。
「はぁー…なんか…スッキリした…
 あっ…大丈夫?怪我…手当てしよう。」
 (何言ったか、ほとんど覚えてないけど)
 気づいて、少女に目を向けるリッカ。
「ほぇ…あっ、ありがとう、助けてくれて。
 手当てまではしなくても良いよ。」
 遠慮する少女。
「いいや、ちゃんとした方が良い。
 よいしょっと。」
 少女を抱き上げるリッカ。
「へ…えっと…。」
 戸惑う少女。
 そのままギルドに行って、医療室で応急処置
 してもらった。
「これで大丈夫ですよ。何があったかは
 聞きませんが、リッカさんが助けてみたい
 ですね。ありがとうございます。」
 お礼を言う医者。
「いえ…じゃあ…ありがとうございました。
 失礼します。」
 お礼を言って、出ていくリッカ。
「ありがとうございました、失礼します。」
 少女も出ていく。
「リッカさーん。」
 少女が呼ぶ。
「うん?」
 振り返るリッカ。
「私はソレッラって言います。
 恩返しとして、一緒に住んで、家事とか料理
 とか手伝います!」
 やる気満々に勢いよく言うソレッラ。
「えっ…いやさすがに両親が心配するよ。
 帰った方が…」
 帰ることを提案しようとするリッカ。
「いないよ。両親は私を捨てたから。
 だから、これからはリッカがおねぇちゃん。
 じゃなくても同居人になりたい!」
 必死に言うソレッラ。
「…ごめんなさい。ふん…うん、いいよ。
 一緒に住もう。」
 笑顔で言うリッカ。
「うん!よろしくお願いします!
 おねぇちゃん!」
 とびきりの笑顔で言うソレッラ。

      ~リッカの家~

「そんな過去があったんだ。
 それを癒してくれたのがソレッラちゃんだった
 んだね。」
 納得するユウ。
「そうなんだよね、おねぇちゃん。」
 ソレッラが言う。
「なるほどね、たしかにそれはパーティに
 トラウマになるものね。」
 ルカが言う。
「納得だな。」
 レンが言う。
「そうですね、大変な思いをされたのですね。」
 マユミが言う。
「…!?増えてる!なんで…いるの?
 ソレッラは散歩に行ってたはずじゃ。」
 戸惑うリッカ。
「散歩してたら、ルカさんたちにユウさんが
 どこにいるのか聞かれたから、連れてきたら、
 話が聞こえたから、そのまま聞いてた。」
 悪気のないといった感じで話すソレッラ。
「えっ、置き手紙残したよ。」
 慌てるユウ。
「その内容が問題なんだよ。
『これからリッカと会います。
 何も心配ないので、探さないでください。』
 心配なるわ、逆に!」
 ツッコミを入れるレン。
「ごめん、てへへ。」
 テヘペロをするユウ。
「原因はユウだよ…めんどうなことに…。」
 はぁとため息をつくリッカ。
「じゃあ、おねぇちゃん、ユウさんたちと
 パーティ組んでみたら。めっちゃ強いから
 大丈夫だよ。」
 来るまでにいろいろ話を聞いていたソレッラ。
「いや…無理だよ。私ばかり目立ってしまう。
 それはもう…。」
 否定的な姿勢のリッカ。
「組もう!僕は規格外に強いらしいので。
 ルカによると。だから大丈夫!」
 手をとって勢いよく言うユウ。
「そこまで…言うなら…組むよ…パーティ。」
 少し前向きになったリッカ。
「よし決まりね、早速いくのよ!
 ギルドに!」
 気合い充分なルカ。
「うん、新体制でのクエストだ。」
 それに乗るレン。
「そうですね。いきましょう、リッカさん。」
 笑顔で言うマユミ。
「行こう、リッカさん。」
 手を差し伸ばすユウ。
「はい、行ってくるね、ソレッラ。」
 手を掴んで、ソレッラに挨拶するリッカ。
「いってらっしゃい~!」
 元気に見送るソレッラ。
 こうして、リッカが仲間に加わった。























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