4 / 9
―― 序章 ――
【004】命名・テナガアシナガ災害
しおりを挟む
四月二十五日、0800。
その時刻、陸上自衛隊南会津駐屯地に第一報が入った。丁度朝礼中だった佐久間悠迅二等陸士は、当初状況を把握できなかった。
「会津若松市・市内に、未確認生物が襲来。市内を破壊している模様。繰り返す、会津若松市・市内に――」
知らせを受けた神保一等陸佐が伝えると、普通科連隊の者達は、騒然となった。なにせ未確認生物だ。それこそ噂では、航空自衛隊ではUFOに遭遇した者が後を絶たないなどという話もあるが、それとこれとは話が違う。
「現在、政府官邸が、官邸対策室を設置」
四十代半ばの神保の声に、悠迅の隣にいた度会が声を上げる。
「未確認生物ってどんな生物なんですか?」
「……生きているとは思うが、生物なのかは分からない。見た方が早いだろう」
いつもならば急な質問に苦言を呈する神保だろうが、今回は違うようだ。
先程知らせに来た者から受け取った大型のタブレット端末を、皆に見えるように持ち上げて、動画を再生する。
「!?」
悠迅は目を見開いた。そこには、民話で聞く、手長足長としか思えない存在が映っていた。長い手で家々や建物を破壊し、長い脚を動かしては様々な物を踏み潰している。こうしてタブレット端末で見ると、下手な特撮映画にしか見えなかった。
「冗談でしょう?」
度会が言う。周囲も頷いている。これはバラエティの仕込み番組かなにかに違いないと、現実を受け入れるのを皆が拒否している。
「事実だ」
神保はそう答えたが、彼自身も非常に困惑した面持ちだ。
「じ、事態は特に緊急を要するものであり、要請はまだだが……災害? 救助に向かう。とにかく、市民が犠牲になっていることは明らかだ。皆、心して救助に当たるように」
確かにこれを、災害と呼んでいいのかは疑問だ。
だがタブレット端末を見るかぎり、地震と台風が一緒に訪れた以上の被害が出ているのは間違いない。悠迅は気を引き締めた。
なにより会津若松市は、彼の実家がある。友人も多く暮らしている。次のゴールデンウィークにも帰省する予定だった。
――美緒は無事なのか?
ふと、幼馴染みの顔が脳裏を過る。丁度、タブレット端末が破壊したあたりは、自分の母校でもあり彼女の通う会津栄高校への通学路だ。どうしても、無事でいてほしいと願ってしまう。
その後、南会津駐屯地の普通科連隊は、会津若松市へと向け出発した。
仮称だが、テナガアシナガ災害と命名されたのもその頃だ。
事件に反して、清々しい青空は、平和すぎるほど平和に見えて、本当にテナガアシナガ災害が発生しているようには、悠迅にはとても思えなかった。
これが、会津若松市を襲った、後に激甚災害に指定される騒動の幕開けとなった。
その時刻、陸上自衛隊南会津駐屯地に第一報が入った。丁度朝礼中だった佐久間悠迅二等陸士は、当初状況を把握できなかった。
「会津若松市・市内に、未確認生物が襲来。市内を破壊している模様。繰り返す、会津若松市・市内に――」
知らせを受けた神保一等陸佐が伝えると、普通科連隊の者達は、騒然となった。なにせ未確認生物だ。それこそ噂では、航空自衛隊ではUFOに遭遇した者が後を絶たないなどという話もあるが、それとこれとは話が違う。
「現在、政府官邸が、官邸対策室を設置」
四十代半ばの神保の声に、悠迅の隣にいた度会が声を上げる。
「未確認生物ってどんな生物なんですか?」
「……生きているとは思うが、生物なのかは分からない。見た方が早いだろう」
いつもならば急な質問に苦言を呈する神保だろうが、今回は違うようだ。
先程知らせに来た者から受け取った大型のタブレット端末を、皆に見えるように持ち上げて、動画を再生する。
「!?」
悠迅は目を見開いた。そこには、民話で聞く、手長足長としか思えない存在が映っていた。長い手で家々や建物を破壊し、長い脚を動かしては様々な物を踏み潰している。こうしてタブレット端末で見ると、下手な特撮映画にしか見えなかった。
「冗談でしょう?」
度会が言う。周囲も頷いている。これはバラエティの仕込み番組かなにかに違いないと、現実を受け入れるのを皆が拒否している。
「事実だ」
神保はそう答えたが、彼自身も非常に困惑した面持ちだ。
「じ、事態は特に緊急を要するものであり、要請はまだだが……災害? 救助に向かう。とにかく、市民が犠牲になっていることは明らかだ。皆、心して救助に当たるように」
確かにこれを、災害と呼んでいいのかは疑問だ。
だがタブレット端末を見るかぎり、地震と台風が一緒に訪れた以上の被害が出ているのは間違いない。悠迅は気を引き締めた。
なにより会津若松市は、彼の実家がある。友人も多く暮らしている。次のゴールデンウィークにも帰省する予定だった。
――美緒は無事なのか?
ふと、幼馴染みの顔が脳裏を過る。丁度、タブレット端末が破壊したあたりは、自分の母校でもあり彼女の通う会津栄高校への通学路だ。どうしても、無事でいてほしいと願ってしまう。
その後、南会津駐屯地の普通科連隊は、会津若松市へと向け出発した。
仮称だが、テナガアシナガ災害と命名されたのもその頃だ。
事件に反して、清々しい青空は、平和すぎるほど平和に見えて、本当にテナガアシナガ災害が発生しているようには、悠迅にはとても思えなかった。
これが、会津若松市を襲った、後に激甚災害に指定される騒動の幕開けとなった。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ヤクザに医官はおりません
ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
彼は私の知らない組織の人間でした
会社の飲み会の隣の席のグループが怪しい。
シャバだの、残弾なしだの、会話が物騒すぎる。刈り上げ、角刈り、丸刈り、眉毛シャキーン。
無駄にムキムキした体に、堅い言葉遣い。
反社会組織の集まりか!
ヤ◯ザに見初められたら逃げられない?
勘違いから始まる異文化交流のお話です。
※もちろんフィクションです。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
月弥総合病院
僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる