異世界に転生した私は薬剤師の助手です!?

氷雨 いぶき

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本編

3、ハコニワ

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「ところで………「太陽の境界」って知ってます?」

言うべきか僅かに逡巡して、まぁいいやとO型らしく言い切る。

「いや………知らないな」

アゴに指を当てたまま俯くレイン。

そのまま長考の姿勢に入ってしまって、コーヒーが溢れそうだったので慌てる。

「い、いや深く考えなくていいです!知らないなら、それで!」

不本意ながらという顔でテーブルの上の白い箱をいじるレイン。

どうやら、自分が知らない事があるのが我慢ならないらしい。

「ねぇ………レイン。私…気になってたんだけど、その箱なんですか?」

「ん?これか。ちょっと来てみろ」

言われるままにスリッパを履いて(レインが魔法で作った)箱を覗き込む。

「わぁ………凄い。これって箱庭ってやつですよね?知らないけど」

「まぁ、そうだな。これは私の「植物園」だ」

「え………こんな小さいの?」

もう分かっていた。

この時点でもう、嫌な予感がしていた。
それはもうすっごく!

「じゃあ入るか。新人の助手もいることだしな?」

ニヤリとこっちを見る。

そして、ボンと音を立てて「大人レイン」になる。

「あれ、この中にはそっちで入るんですね」

「当たり前だ。お前、気ィ抜くと死ぬぞ?」

サァー、という音は私の血の気が引いて行く音が。

「え、えぇ!ど、どの辺がヤバイんですか?」

「西側の沼には近づくな。ふつうに食われる。草に」

そ、そういう意味じゃない………。

てかそんな広いのこの箱庭!

「まぁ、薬剤師たるものいつでも体に効く草くらいキープしておかなくてはな」

「あぁ、漢方とか?知らんけど」

「お前は知らないことだらけだな」

てへ、と笑った時どうしようもない尿意が襲って来た。

「はッ!隊長!私トイレ行きたい!」

ビシッと敬礼するハル。

「やめろその呼び方。キッチンの左側」

おっとっと、左………と。


トイレは水洗で割と新しく、なにより洋式だったのに驚いた。

何気なく鏡を見た。

「え、え………は、はぁぁぁぁあぁぁ!?」

赤毛が混じる、赤みが射す程度だった黒髪と瞳が完全な赤に染まっている。

それも、美しく光沢を放つダーククリムゾンに近いルビー色。



「ちょ、ちょっと!どういう事!?私の髪が!目が!」

「ど、どうした………?別にどうもないだろう、美しいままだ」

あぁこれはレインのせいじゃないなと思い、これはこれで気に入ったのでまぁいいやと落着。

「あ、ううん。なんでもない」

「なんなんだ、お前………」

















「これはシツカソウ。これに生えるカビは万病に効く、最もポピュラーな大衆むけの薬と言えるな」

「ほー」

「ちゃんと聞いとけよ。仮にも私の助手だ」

「はいはい」

30分ほど前から箱庭に入っている。

既に50種類ほどの植物をテキパキと教え込まれている。

「あれ………そういえば、花粉って見えないよなぁ」

『不可視のものが見える』とか言ってなかったか、あの神。

「え、おわっ!」

女の子らしかぬ悲鳴をあげたハル。

なんと目の前に黄色やオレンジのふわふわが浮遊している。

「どうした」

「こ、これ………花粉?」

そっと指でつまむとふわふわはふわふわのまま掴めた。

「バカめ、花粉が肉眼で見えるものか。指で掴めるなど論外だ。お前はどうも頭がお花畑らしい」

「ほ、本当ですよ!」

やれやれと肩をすくめたレインが親指と人差し指で円を作る。

「硝子魔法凹凸レンズ」

ハルの手のひらを指の円から覗いたレインが驚く。

「なんと!本当に花粉を手のひらに乗せている!」

「ね、だから言ったじゃないですか!」

あ、そうか。私が花粉を「不可視のもの」だと自覚したから見えるようになったのか。

そっか、これ。……………結構使える?

その時、ピルルルルルとレインの腕時計が震えた。

「おっと………おい、ハル。出るぞ」

「え、え?」

「アーライル大公へ薬を届ける日なのだよ、今日は」



そう言って、ニヤリと笑ったレイン。

「お前のその不可思議な力の話は帰ってきてからだ」

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