異世界に転生した私は薬剤師の助手です!?

氷雨 いぶき

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本編

19、敵か…………味方か

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「な、何故だ!なぜ私を狙う!」

「あら、お分かりかと思ってましたわ。アシエル大総統、あなたゼルガナから《人工魔石》をいくつかいただいてるでしょ?」

「…………何のことだ」

「あらぁ!しらばっくれてもらっちゃ困るわ?こっちとしては《人工魔石》はこの世にあっちゃ困るのよねぇ………だからゼルガナも滅ぼしたんだし」

ベウは凍りつくような視線をアシエルに向けた。

「めんどくさいから建物ごと消しちゃおうかしら♡」

瞬間、アシエルを襲ったのは圧倒的な恐怖。

死がかま首をもたげ、そのあぎとを剥かんとしている。

「け、警備!警備ィーー!」

「あら…………残念ねぇ。あなたも人の上に立つ人なら凄絶な最後くらい迎えなさいよ」

アシエルの悲鳴がこだまする。













「や、ヤバイっスよ…………道化師ピエロがもう1人来たってことは…当然、大総統がヤバイっス!」

「分かってる、そんなことは!今は最速で向かうしかない!」

「くそッ………初仕事からこれか!」

戦闘訓練を受けた3人ですら一階の大総統室へは1分ほどもかかる。

「あ、あの角を曲がれば大総統室っス!」


最後のダッシュで部屋のドアを勢いよく開けたライル。

「あら…………来ちゃったの………」

その声は凍てつくようで、「死」そのものであるかのようだった。


「あ…………大総統………」

「ちょっと遅かったわね♡」

目の前に転がっていたのは、アシエルの首であった。
確実に胴と離れている。

「なぜだッ!なぜこの人を狙った!」

声を荒げるニュクスだったがベウは落ち着いたものだ。

「なぜって…………それはあなたたちが1番知ってるんじゃなぁい?」

「何……ッ!」

「とにかく会話する気は無いわ。じゃあね♡」

そう言い残し、窓から外へ飛び立つ。

「ま、待て!」

呼びかけも虚しくベウの姿は夜の闇に紛れて消えていった。

次の瞬間、ドアが開いてレインが疲労困憊で入ってきた。

「奴は………イノセンスと………ベウは……………!」

「惜しかった……今逃げられたよ」

エレジーは苦笑気味だ。

「くそッ!」

レインが悪態をついた時。

窓枠にどろりと何かが垂れ下がった。

それが血液だと分かるのに3秒。


そして、それがベウの血液だと分かるまでに、4秒__________

「え………はァ!?」

艶めいたベウの体が窓からずり下がって来て部屋の中に落ちた。

その美悪魔サキュバスのような体はもうピクリとも動かない。

「嘘…………どういうことだ………ッ!」

エレジーが声をあげた時、4人はに気付いた。


窓枠に金髪で長身の青年が立っていた。

気付けなかった、という事実に臨戦態勢をとる4人。

「魔石は………返してもらった。人間よ…………我らから奪い取ったモノの大きさを知れ……………ッ!」

厳かに口を開いた青年の声は怒りに満ちていて、なにかやるせなさを感じた。

「どういう事だ。ベウは魔石を取り込んでいたのか?だとしたらイノセンスは…………?」

ぴたりと、全部はまった。

「そうか…………賢者が死んでいったのは魔石を取り出されたからだ…………その方法を夜空の雲クラウンナイトは知っている…?そして、奴も…………!」

窓枠に立つ青年はピクリとも動かずにこちらをひたと見つめる。

「我らは聖炎騎士団ホーリーフレアナイツ…………太陽の王より奪われし魔石の守り人…………!」

そうか!とレインは1人合点がいっていた。

「人間どもよ…………とくと知れ。魔石の力を!」

そう言い残し、飛び立っていく。

闇に映える純銀の鎧がやけに目立っていた。


「な、なんなんだ…………」

エレジーが腰が抜けたように座り込むと、ニュクスとライルも力が抜けたようにへたり込んだ。

「私らの敵は…………夜空の雲クラウンナイトでは無かったのか………?奴は敵なのか味方なのか………だがベウが殺された。魔石を取り込んだベウが…………!」


大きな余韻を残して、初仕事は大失敗に終わった。
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