異世界に転生した私は薬剤師の助手です!?

氷雨 いぶき

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本編

28、噂

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「レインー、私疲れました………」

「黙って歩け。私だって疲れた」

聖炎騎士団ホーリーフレアナイツのヒントを得るため、この辺で1番大きな街である「アゼフス」へと向かう5人。

「ワインの名産地らしいっスよ~。ボクァあんまり飲めませんけど」

「ははは………そいつは楽しみだ」

答えたエレジーはどうやらいけるクチらしい。

既に6時間歩き詰めで、そろそろ日も暮れてくるといった頃、街明かりが地平線に見えた。

「やったー!やっと休める!」

真っ先に喜んだのはハルで、ニュクスは一度も文句を言っていない。

「そういえば………金はあるのか?」

ニュクスの心配どころはそこらしい。

「安心しろ、団の解散に伴っていくらかの金ができた。なけりゃ賞金稼ぎバウンティハンターでもやるさ」

物騒なのはエレジーだ。

さて、5分も歩けば街の灯りが近づいてくる。

さすがにこの時間帯から街を出るキャラバンも無いが、踏み固められた土というのは歩きやすく安心感がある。



「へぇ、ここがアゼフスか」

「大きな街っスねぇ………!」

街へと入る門には2人の兵が常駐しているようで、出身を聞かれた。

そこは例によってレインが国家薬剤師の紋章を見せるとすんなり通された。

「まずは宿っすねぇ………休みたい」
「いや、この際だから調査は明日からにして今日は休もう」

「「「賛成」」」

残り全員の声が重なる。

やはり相当に疲弊しているらしい。




適当に宿を取り、一階の酒場で暖かいご飯が出てきたところで暖をとる。

「いやぁ、寒くなってきたっスねぇ」

「本当だな。暖炉がありがたい」

「あぁ、お昼食べてなかったからスープが本当においしそう!」

いいつつもうありとあらゆる料理に手をつけようとしているハル。

「いや………しかし本当においしい」

喋るのもそこそこに料理を頬張り始める5人。

エレジーはワインを注文していて、それが大変お気に召したらしく上機嫌だ。



「おい、聞いたか?使のウワサ………」



それは耳を澄まさねば聞こえないような、小さな言葉だった。

しかし5人はそれに激烈に反応した。

ガタッ!と剣呑な音を立てて立ち上がった5人に注目が集まる。

「い、今!今………使徒と言った方!どなたですか!?」

5人の中で1番ライルが焦って聞く。

すると、カウンターに座っていた2人組のおじさんが手招きした。

5人で寄って行き、言わずもがなチップを払って客全員にライルが詫びた。

「今………使徒と言いましたか?」

当然のごとく質問するのはライルだが、全員が聞き耳を立てている。

「あ、あぁ。最近流行ってるウワサだよ………。神秘的な装具に身を固めた長身の男だか女だかが辻斬りをしてるっていう………」

「………!それで?」

「狙われてるのは主に金持ちなんだが………これが妙でさ!死体が見つからないんだ!辻斬りを見たってヤツが言うには、そいつは自分のことを「使徒」だって言ってたらしい」

「そうそう。それで誰が斬られた!って分かってるのにその人は見つからないんだよな………!」

2人は身震いしてビールを一気飲みした。

ライルはチップの追加を払って、5人は部屋へと引き上げた。






「………どう思う」

酒の抜けたエレジーが呟く。

ソファに座る5人のテンションは誰となく低い。

「断定、とまではいきませんが調べてみる価値はありますね。大いに」

「俺もそう思う」

「私もだ。追跡用の薬剤を調合してみよう」

「わ、私も………そう思います!」

おずおずと手を挙げたハル。

エレジーは全員の意思を確認した上で、それとなく呟いた。

「分かった。それじゃあ明日から2人組ツーマンセルで張り込みだ。レインはハルと、私はライルと、ニュクスは非番のものとだ」

「レインさん、薬の調合お願いするっス」

「カラーボールのような物も作っておこう」

かくして、意外なところから出たウワサの検証が始まった。
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