異世界に転生した私は薬剤師の助手です!?

氷雨 いぶき

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本編

30、消えたレイン

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「よォ、やっぱりアンタか」

暗がりの中、闇に紛れて逃げ出そうとした黒マントの男の背中に呼びかける。

ビクッと体を縮めた長身の黒マントだったが、すぐに殊勝に笑って振り返った。

「これはこれは………泣き虫レイン君。俺になにか用かい?忙しいんだがね………」

「やめろ。そのナイフを抜けば殺す。私が指定した言葉以外を発しても殺す。いいか?答えろ。………まずはその邪魔臭いマントを脱いでもらおうか?」

逡巡した黒マントにレインは躊躇なくスピアを投擲した。

「体に入れば瞬時に殺す毒が塗ってある。抗体は私も知らん。私が調合したからこの世に抗体はない」

黒マントが即座にマントを脱いだ。

その奥から現れたのは、忘れもしない。

「情報屋デゼフ………!」

「おや、お知りで?こりゃ光栄だ」

レインは今度も躊躇なくナイフを飛ばした。

毒はないがマントを脱いだ醜男の顔面の肉をいくらかえぐる。

男は悲鳴をあげたが、すぐに余裕の表状に戻った。

「アンタ、俺に死なれちゃ困るんでしょ?だから今投げたのは毒塗りのナイフじゃないんだ」

「調子にのるな。許しはしない。生かすか殺すかも俺次第………死にたいならそうしろ」

慄いたようにデゼフは黙った。

「いいか。はい、かいいえで答えろ。それ以外の言葉を発すれば殺す」

「……………………………」

聖炎騎士団ホーリーフレアナイツについて何か知っているか?」

「あ、あぁ」

「何を知っている」

「や、奴らについては何も知らない」

「あ?」

「ま、待ってくれ!や、やつらは瞬間移動の魔法をもっていて北の霊峰ザガルマータに本拠地を構えるという話だ。あ、あくまで噂なんだ」

自分が確信を持った情報でないと「知っている」といわないその見下げ果てたプライドに辟易する。

「だが………もし、知りたいなら………サン=ジェルマン伯爵を訪ねるといい。神出鬼没といえばあの方だからな………」

「そうか………」

レインは冷ややかに呟いた。

こいつへ向ける感情などもはや無い。

だが、心の奥底に蓋をしたはずのの煮えたぎる怒りが、あの感情が猛烈に蓋をノックする。

「あ、あの………報酬は」

何かが切れた。

この男は、この男は。

俺の母親を帝国に売り、たんまりと貰ったはずの金よりもさらに俺から金を奪うのか。

先程自分の情報を下らないプライドで切って捨てておいて、今さらそのプライドを拾い上げるのか。

レインは迷わず首をはねた。

過ぎ去ったはずの怒りが鎌首をもたげ、いままさにレインをまた飲み込もうとしている。

いけない。

ハル………。

もう自覚せずにはいられないその人の名を呟いて、また蓋をした。
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