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本編
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あのあと、私は入学式の時間が近づいてきたことに気づいて、急いで講堂にむかった。
式のあいだ、さっきの出来事を思い出して、ため息を吐くのをこらえるのが大変だった。でも、式が終わったこと後のことを考えて憂鬱な気分を振り払った。
なのに、…
なんでこの人がいるんだっ!
「ねぇねー、君覚えてる?俺だよ俺」
「オレオレ詐欺は受け付けておりません」
「ええ~、」
ほんと、腹立つんですけど、この人。
「というか、さっさと出てってもらえません?」
めんどくさくなって声が冷え冷えとしている。だから、それを察して、「ほら、朝会ったでしょ。桜のまえでさぁ~」…いや、聞けよっ!
「あの聞いてます?」
「うんうん、聞いてるよー。僕の名前が知りたいんだっけ?「いや、違います」」
「あはは、そんな食い気味に否定しなくても。俺、泣いちゃうよー」
そう言うと、男は顔を覆ってシクシクとわざとらしく泣き真似をしてきた。
「はぁ~…」
ため息を吐き、男へ冷たい視線を向けるとさすがに、まともに話す気になったのか、泣き真似をやめてこちらの方を見てきた。
顔はヘラヘラしてて腹立つことこの上ないが…
「そんなに怒んないでよ~。顔が般若みた~い」
「……」
そばにあった金槌にふと目を向ける。
「ご、ごめんごめん。それはまじで洒落にならないから」
もう一度冷たい視線を男に向けると、
「あっ、うん。
えーと、俺にここから出てって欲しいんだっけ?」
「そうです」
やっと、観念したかと思って安堵したが、次の言葉でやっぱり、こいつを殴ろうかと本気で殺意が芽生えた。
「え~、それは無理だな~」
「はっ?」
「いや、、だから無理だって」男は少し焦りながら言った。
「え、いや、でも、退学してもいいんですか?」
「えっ、さっきの写真本当に学校側にバラすの?」
「ええ、そうですよ?ただの脅しではありませんので…」
「ふーん、でも、
俺、なんも罰食らわないよ」
「えっ、はっ?」
「だーかーら、言っても意味ないよ~」
「な、なんで」
「あっ、でも女のほうは悪くて退学かな~」
男はそう言って、ヘラヘラ笑った。
「そう言えば、君、美術部に用があったんでしょ?」
「えっ、ええ、入部しようと思っていたので見学を…先輩にも会おうと思ってて、」
なんだ急に、そう訝しみの目を向けるが男はニンマリと笑うだけで無視した。
「じゃあ、ちょうどよかったじゃない」
「何を…」という私の声は次の言葉で完全にかき消された。
「俺は美術部所属の2年だよ」
よろしくね、そう言ってケラケラとまた笑った。
「えっ…」
頭の中で危険信号が点滅している。
この男を初めに見たとき、私は王子様のようだと思ってしまった。
だが、こいつは王子なんかじゃない。
私の高校生活を脅かす悪魔に違いない、そう確信した。
式のあいだ、さっきの出来事を思い出して、ため息を吐くのをこらえるのが大変だった。でも、式が終わったこと後のことを考えて憂鬱な気分を振り払った。
なのに、…
なんでこの人がいるんだっ!
「ねぇねー、君覚えてる?俺だよ俺」
「オレオレ詐欺は受け付けておりません」
「ええ~、」
ほんと、腹立つんですけど、この人。
「というか、さっさと出てってもらえません?」
めんどくさくなって声が冷え冷えとしている。だから、それを察して、「ほら、朝会ったでしょ。桜のまえでさぁ~」…いや、聞けよっ!
「あの聞いてます?」
「うんうん、聞いてるよー。僕の名前が知りたいんだっけ?「いや、違います」」
「あはは、そんな食い気味に否定しなくても。俺、泣いちゃうよー」
そう言うと、男は顔を覆ってシクシクとわざとらしく泣き真似をしてきた。
「はぁ~…」
ため息を吐き、男へ冷たい視線を向けるとさすがに、まともに話す気になったのか、泣き真似をやめてこちらの方を見てきた。
顔はヘラヘラしてて腹立つことこの上ないが…
「そんなに怒んないでよ~。顔が般若みた~い」
「……」
そばにあった金槌にふと目を向ける。
「ご、ごめんごめん。それはまじで洒落にならないから」
もう一度冷たい視線を男に向けると、
「あっ、うん。
えーと、俺にここから出てって欲しいんだっけ?」
「そうです」
やっと、観念したかと思って安堵したが、次の言葉でやっぱり、こいつを殴ろうかと本気で殺意が芽生えた。
「え~、それは無理だな~」
「はっ?」
「いや、、だから無理だって」男は少し焦りながら言った。
「え、いや、でも、退学してもいいんですか?」
「えっ、さっきの写真本当に学校側にバラすの?」
「ええ、そうですよ?ただの脅しではありませんので…」
「ふーん、でも、
俺、なんも罰食らわないよ」
「えっ、はっ?」
「だーかーら、言っても意味ないよ~」
「な、なんで」
「あっ、でも女のほうは悪くて退学かな~」
男はそう言って、ヘラヘラ笑った。
「そう言えば、君、美術部に用があったんでしょ?」
「えっ、ええ、入部しようと思っていたので見学を…先輩にも会おうと思ってて、」
なんだ急に、そう訝しみの目を向けるが男はニンマリと笑うだけで無視した。
「じゃあ、ちょうどよかったじゃない」
「何を…」という私の声は次の言葉で完全にかき消された。
「俺は美術部所属の2年だよ」
よろしくね、そう言ってケラケラとまた笑った。
「えっ…」
頭の中で危険信号が点滅している。
この男を初めに見たとき、私は王子様のようだと思ってしまった。
だが、こいつは王子なんかじゃない。
私の高校生活を脅かす悪魔に違いない、そう確信した。
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