桜の木の下でイケメンとモブは何をするか。

黒猫と招き猫

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 カシャッ

 ひらりひらりと舞い散る桜の花びら。春の陽光が花びらに反射し、燦然さんぜんと輝いていて幻想的で美しい。
 
 カシャッ

 このアングルも素敵だ。ピンクが空に映えていてかわいい。

 カシャッ

 今日は晴天で深い青空が広がっていて、空気が澄んでいて気持ちがいい。早めに来てよかったな。

 私は今、大切なカメラで美しく咲き誇る桜を感じるままに撮っている。

 四月。入学式。

 今日から、特待生として、この清風桜花せいふうおうか学園の生徒となる。

 学園の名に入っているように、この学園の校庭には見渡す限り満開の桜がある。
 あと何枚か撮ろうと意気揚々とカメラをかまえなおす。

 しかし、

 「ねぇ、撮らないでくれる。」

 突如、不機嫌な声を耳にした。声がする方に顔を向けると、訝しげな表情をした男と目が合った。
 男は、中々お目にかかれないほどの美貌の持ち主だった。
 春の暖かな日差しに反射して、燦然と光る美しいブロンドの短髪。綺麗な深い海のような碧眼。身長は170㎝くらい。
 もう今日から高校生だというのに王子様のように見えてしまうくらい美しかった。
 
 「…聞いてる?」

 男は少し苛立ったように言った。

 「……え?」 私?

 「そうそう、君だよ。さっきから桜を撮るフリしながら俺のこと撮ってるよね?」

 「いやいや、撮ってませんけど…」
 「いや、撮ってたでしょ」
 「ぇぇえ、、撮ってないですよ」

 撮ってた、撮ってない、で押し問答を繰り返すことに流石に男もめんどくさくなったのか、「じゃあ、ちょっとそのカメラ貸して」と言ってきた。

 まぁ、このままでは拉致があかないと私も思っていたところだからいいか。

 「いいですよ。でも大切に扱って下さいね」
 そう、言い含めながら首から下げていた紐を取り、カメラを男に渡す。

 「ん」


 男は写真を確認すると、自分が写ってないことがわかると返してきた。

 「ねっ、写ってませんでしたよね?」
 「まぁ、…
  でも、なんで風景ばっかりなの?さっきも、桜ばっか撮ってたし…」



 「…綺麗なので」


 「ふーん…
  ねぇ、知ってる? 
  桜の樹の下には屍体が埋まってるんだよ」


 「……」


 「そんな怖い顔しないでよ」
  
 男はこっちを見ておもしろいものを見たかのようにクスリと笑った。

 「梶井基次郎ですよね」

 「アハハ、知ってたんだ。へーえ?」

 男は殊更に笑みを深めた。

 流石にさっきから言われっぱなしで癇に障るので、一言何か言ってやろうと口を開く。
 しかし、男はそれを一瞥すると「じゃっ、またね」と言って、さっさと校舎の方に歩き始めてしまった。

 「えっ、ちょっ、まって」という、私の驚きの声はタイミングを見計ったかのように、急に増え始めた女の子たちの声にかき消された。
 

 
 
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