桜の木の下でイケメンとモブは何をするか。

本編

14.

　講堂に行くまでの道でりんが会わなかった間に起こった出来事を面白おかしく話してくる。
　そんな話に私は懐かしい思いに駆られながらも、聞き役に徹していた。

　ふと、思いたった様にりんはこんな質問をしてきた。

　「そう言えば、りん。あのカメラはどうしているの？」
　「あぁ、今はロッカーの中に大切にしまっているよ。大切なものだけど、学校内でいつも持ち歩いているわけにはいかないからね」

　一緒にいた時はだいたい欠かさず側に置いていたから気になっていたのだろう。
　突然の質問だけど、別段驚きもせずに答える。

　それよりも、これが布石である様な気がしてならないけど。

　りんの目をじっと見ると、りんはなんでもない様に、ふぃ、と視線を逸らした。

　「」

　「あっ、そう言えば。昨日会った時、首から下げてたよね。なにとってたの？」


　「桜」

　「…ふーん、今度見せてね」

　りんは、それだけ言うと、さっきまでの話の続きを始めた。


　講堂に着くと、だいたいの人が集まっていてそれぞれ着席している。席は指定のようで、私らのクラスだけが分かりやすく空いている。
　ステージの方を見ると、あと10分後から集会を始める予定だとパネルに表示されていて、一息ついた。
　教室で長引かせなくて正解だったな、と。

　盗み聞きしている奴らも奴らだが、ここでは、正解だ。情報は矛にも盾にもなる。

　後輩が入学早々に先輩や先生を待たせるのは言語道断だけど。
　結果、そうならなかったからいいけど、時間は確認して欲しいものだね。みんな、私らの話に興味津々で気づいて無かったみたいだから。
　私が視認した範囲なので、確信は持てないけどね。A組の生徒だから、高い家柄の子が多いというのも関係あるかもしれない。

　みんなが静かにお行儀良く座っているのを観察していると、集会が始まった。

　開式の言葉から始まり、段取りよく進んでいく。

　眠気と格闘しているため、内容は左から右に聞き流している。

　司会の人が「次は、生徒会です。」と、アナウンスをした。

　その瞬間一気に覚醒した。
　目は冴え、ステージの方に視線がいく。

　これは、私以外の人たちもそうだ。
　堅苦しい話に飽き飽きするのは金持ちも庶民も関係ないらしい。
　彼らは、一見そうは見えないように取り繕ろうのがうまいけど。
　
　始めに、新入生たちのために自己紹介をされる。
　今は四人構成で、会長も副会長も家格が高い。そして、書記だが、驚くことに、西園、あの先輩だった。
　ここは、テンプレでチャラそうな先輩が会計ではないのか。
　「西」ということで生徒会に入っている可能性は大いにあったから、そこには驚かない。

　ザワザワし始めた講堂の中で私はただ一人だけを見つめていた。

　生徒会の最後の一人、「東」の名を持つ会計。