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本編
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りんは、どうしたら納得してくれるのだろう。
説得方法を模索していると、「ほら、いこうよ」りんが側に寄って来て、どこかに行くことを促された。
どうやら、思っていたより深く考え込んでいたようだ。いつのまにか、ホームルームは終わっていたようで、先生は教室にいなかった。周りのクラスメート達は各自、移動しようと立ち上がっていて、一緒に行こうと、友達のもとへ向かっている。
そして、何人かは一人で廊下の方へ向かっている。
うん、私は完全に後者だな。
そう思い立つと、すぐに行動に移そうとなるべく音を立てずに椅子から立ち上がり、廊下に出ようと一歩を踏み出す。目には、ガラスの窓から見える廊下しかうつっていない。
だけど、そそくさと出て行こうとした途端、りんに腕をガシッと掴まれた。中々の腕力で引き離そうとしても、腕が抜けない。庇護欲をそそる容姿でありながら、馬鹿力とは。
知っていたことだから驚きはしないけど、残念な目を向けてしまうのは勘弁してほしい。
「むぅ、何よ、その目は」だから、その不満顔はやめてください。
「ハァ、まぁそれはいいけど」おぉ、お許しが出たようだ。
ニッコリと笑って、もう一度足を踏み出す。
「いや、ちょっと待て。それは許してない」
りんが何故かまだ離れない腕をギュッと握った。
解せない。
「何よ、その納得できないみたいな顔は。一人で行かせるわけないでしょ。
一緒に行こうね」
笑顔の圧が凄い。顔が整っているから、余計にかさ増しされている。
「りん、」
でも、頷くわけにはいかないんだよ。だから、いつもより強い口調で言う。
私とりんの間に少し気まずい空気が流れた。
「なぎ、…嫌だからね」
それも、りんの言葉ですぐに霧散したが。
…取り合えず、今回のところはりんの頑固さに免じて、一緒に行くか。
クラスメートのためにも、ね。
「…分かった」
渋々と、了承する。
その言葉とともに、増え始めた足音が耳に入ったのを感じ、私も歩き出す。今度は、りんと一緒に。
離された手を目で追う。その手は握られていて、少し罪悪感を感じた。
それを頭の片隅に追いやり、りんに聞く。
「そう言えば、今からどこに行くの?」
「えっ、知らなかったのー?」
呆れた凛の声を聞きながら、
「講堂で、集会だよ」
何があるかを想像して、胸がギュッとなった。
それは、嬉しさによるものなのか未熟の私にはまだ分からない。
「そう」
「うん」
りんが何か言いたそうにしているのを目で制した。私は、モブなのだから。
説得方法を模索していると、「ほら、いこうよ」りんが側に寄って来て、どこかに行くことを促された。
どうやら、思っていたより深く考え込んでいたようだ。いつのまにか、ホームルームは終わっていたようで、先生は教室にいなかった。周りのクラスメート達は各自、移動しようと立ち上がっていて、一緒に行こうと、友達のもとへ向かっている。
そして、何人かは一人で廊下の方へ向かっている。
うん、私は完全に後者だな。
そう思い立つと、すぐに行動に移そうとなるべく音を立てずに椅子から立ち上がり、廊下に出ようと一歩を踏み出す。目には、ガラスの窓から見える廊下しかうつっていない。
だけど、そそくさと出て行こうとした途端、りんに腕をガシッと掴まれた。中々の腕力で引き離そうとしても、腕が抜けない。庇護欲をそそる容姿でありながら、馬鹿力とは。
知っていたことだから驚きはしないけど、残念な目を向けてしまうのは勘弁してほしい。
「むぅ、何よ、その目は」だから、その不満顔はやめてください。
「ハァ、まぁそれはいいけど」おぉ、お許しが出たようだ。
ニッコリと笑って、もう一度足を踏み出す。
「いや、ちょっと待て。それは許してない」
りんが何故かまだ離れない腕をギュッと握った。
解せない。
「何よ、その納得できないみたいな顔は。一人で行かせるわけないでしょ。
一緒に行こうね」
笑顔の圧が凄い。顔が整っているから、余計にかさ増しされている。
「りん、」
でも、頷くわけにはいかないんだよ。だから、いつもより強い口調で言う。
私とりんの間に少し気まずい空気が流れた。
「なぎ、…嫌だからね」
それも、りんの言葉ですぐに霧散したが。
…取り合えず、今回のところはりんの頑固さに免じて、一緒に行くか。
クラスメートのためにも、ね。
「…分かった」
渋々と、了承する。
その言葉とともに、増え始めた足音が耳に入ったのを感じ、私も歩き出す。今度は、りんと一緒に。
離された手を目で追う。その手は握られていて、少し罪悪感を感じた。
それを頭の片隅に追いやり、りんに聞く。
「そう言えば、今からどこに行くの?」
「えっ、知らなかったのー?」
呆れた凛の声を聞きながら、
「講堂で、集会だよ」
何があるかを想像して、胸がギュッとなった。
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「そう」
「うん」
りんが何か言いたそうにしているのを目で制した。私は、モブなのだから。
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