桜の木の下でイケメンとモブは何をするか。

本編

16.

　生徒会の話の後も何事もなく、開式の言葉で集会は締めくくった。

　その教室へ戻る帰りに、隣に歩いているりんに今一度お願いした。
　「この学園生活で、一緒に行動するのはやめてもらいたい」
　教室でのようでなく、これは決定事項なのだというように言った。
　りんにも、これは伝わったようで表情を固くしている。
　私は、前を向き、何でもないように周りからは見えるようにスタスタと歩いていく。
　しかし、りんからの返答はなく、私は気になって横を見るとそこには誰もいなかった。
　私は立ち止まり後ろを振り向くと、そこには私と同じように立ち止まっているりんがいた。
　いや、少し違う。
　私は、りんの方へまっすぐと視線を向けているが、りんはこちらを見ずに俯いている。

　そんな私たちを、周りは、ちらちらと見ていて訝しんでいるが、廊下の真ん中、それも三学年の色んな生徒がいる中で野次馬となるのは避けているようだった。

　ちょうどいい。もう少しで、この周辺は人がいなくなるだろう。私たちもホームルームがあるから、あんまり長いはできないが、十分だ。

　人が私を避けて歩くたびに風が小さく舞い、より私を奮い立たせてくれる。




　キュ、上履きの音が誰もいなくなった廊下へ響いた。

　りんはまだ、顔を上げない。


　「りん、」


　「……」


　「りん、」


　「……」



　「皐月　凛」　



　「ーーーっ！」


　りんは、いきよいよく顔を上げた。その顔は、誰がみても泣きそうで、顔が崩れそうになった。

　それでも、これはりんのためでもあるから。
　ごめん、誰にも聞かせることのない謝罪を心の中で呟く。

　
　そして、その目を見て、水を打ったかのように静まり返った廊下に一つの言葉を落とす。
　
　「あれは、お願いじゃない」

　りんに聞かれることのない様に、息を深く吸い込む。

　「命令だ」
　
　それを吐き出すのが、思ったより浅くて息苦しくなった。

　はくはくと口を震わせ、何かを紡ごうとするりん。

　追い詰めるように、答えを、是を求めかのようにもう一度呼んだ。

　「皐月　凛、」



　キーンコーンカーンコーン


　ホームルームが始まるチャイムが校舎全体で鳴っている。

　でも、今回はここで終わらせない。

　驚いたように、りんは二つの髪を揺らしている。ピンクが視界に入り、私の中に浸透していくそれは、もう一度りんに問おうと促した。

　だが、私が口にする前に遮られる。

　「それは、お受けいたしかねます」

　りんの拒絶によって、もう一度静寂は訪れた。

　思いもよらぬ返答に、今度は私が下を向いてしまう。
　いや、違う。分かっていのだ。この、りんの返答がくる可能性が高いことは、理解していた。ただ、納得していなかっただけだ。