しっかり者で、泣き虫で、甘えん坊のユメ。

西友

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番外編③

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 その日の夜。

「ごちそうさま。後片付けしてくるから、璃空は休んでてね」

「うん。ありがと」

 晩御飯を食べ終えた二人分の食器を下げ、優斗が流し台に立つ。

 ジャー。
 水の音がテレビ音に混じり聞こえてきた。

 璃空はちらっとキッチンに目を向けた。優斗は視線に気付かず、お皿を洗っている。それを確認した璃空は、そっとナイトテーブルに近付いた。膝立ちのまま、ごそごそと引き出しを探る。

(確か……いつもここから出して──)

「何か探し物?」

 びくっ。
 すぐ背後から響いた声。驚き、璃空の手から落ちたものは。

 ──コンドーム。

 優斗はそれを拾い「待ちきれなかったの?」と嬉しそうに微笑んだ。

 明日が休みの土曜の夜に、セックスをする。それはここ最近の恒例となっていた。

 璃空は恥ずかしさから「あの、えっと」と俯いていたが、決心したように顔を上げた。

「今日は、ゴムなしでしてみたい」

 突然の申し出に優斗は目を丸くしたが、すぐに「──駄目」と却下した。

 あまりに早い返答に困惑しながらも、璃空は食い下がった。

 こんなことで負けてはいられないのだ。

「な、何で。おれは女じゃないから、妊娠しないし」

「駄目。お腹壊したらどうするの?」

「そんな簡単に壊さないよ」

「駄目です」

 優斗は頑なだった。取り付く島もないとはこのことか。

 璃空はぎゅっと拳を握りしめ「じゃ、じゃあ。ゆ、優斗の舐めさせて」と顔を若干赤くしながら訴えた。

 優斗は心の中で可愛いなと呟きながらも「それも駄目」と表情を変えなかった。璃空の願いは全て叶えてあげたいが、ことこれに関して譲るつもりはない。

 二つ目の案も却下され、璃空は口調を荒げた。

「──何で! 優斗はおれの……その、してくれるじゃん!」

「俺は璃空に、そういうことさせたくないんだよ」

 璃空は眉を寄せ「……おれが、女じゃないから?」と訴えた。

 優斗は「そんなの関係ない。大切だからだよ」と璃空の左頬に手を添えた。それから右頬にも手を当て、ぐっと顔を近付けた。

「──それで?」

「え?」

「何があったの?」

 どきっ。
 璃空があからさまに動揺する。目を逸らしながら「な、何でもない」と言っても何の説得力もない。

「何もなくて、急にこんなこと言うかなあ」

 どうしてこうも優斗は察しがよいのか。いつもなら嬉しいが、こういう時は非常に困る。

「──女の人と付き合うよりも、いいことあるって思ってほしくて」

 俯き、ぼそぼそ答える。優斗は「? どういう」と璃空の両頬から手を離そうとしたが、その手を璃空が掴んだ。

 璃空が、がばっと面を上げる。

「おれが。おれが男だからこそできることがあると思ったんだ。妊娠しないから中出しできるし! フェラだって、男だからこそどこが気持ちいいか分かるし!」

 一気にまくし立て、力説する璃空。優斗は理由が分かり、少し安心していた。何かあったわけではなく、璃空のネガティブモードが発動した結果なのかと納得してしまった。

「あのね、俺は璃空が好きだからセックスしたいと思うんだ。ただ気持ちよくなりたいだけじゃなくてね」

「でも生でするほうが気持ちいいんだよね? おれはしたことないから分かんないけど」

 後半口調が強めになったのは、気のせいだろうか。

「璃空とのセックスは、いつも気持ちがいいよ。好きの伴うセックスは、こんなにも違うものなんだね」

「ゴムなしだと、もっと違うよ」

 心からの言葉も、今日の璃空には届きそうもない。

「……因みに、コンドームをどうするつもりだったの?」

「ハサミで切り刻もうかと」

「…………」

 その後。
 どうしてゴムを着けるのか。その必要性を璃空に納得してもらうのに、優斗は二時間を費やした。
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