しっかり者で、泣き虫で、甘えん坊のユメ。

西友

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番外編①

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「じゃあ、どうして」

 んー。
 小瀬野が頭をがしがしといじる。

「……あいつ、酔って意識が朦朧としはじめてから、ずっとおんなじ名前ばっか連呼しだしてさあ。ゆーと。ゆーとって」

 優斗の双眸が、僅かに見開く。

「普通に考えりゃ恋人だろうけど、男の名前だろ? 変だなーっと思って、聞いてみたわけ。ゆーとって、恋人かって。したら、頷いたんだよ。マジかよって、最初はドン引きしてたんだけど」

 小瀬野が薄く笑う。
 優斗は黙って、先を促した。

「何か、ふとお前のこと思い出してさ。まさかと思いながら、ゆーとって同じ大学の佐伯優斗のことかって聞いたら、ドンピシャで」

 小瀬野は言葉を切り、俯いた。

「相手がお前だって知ったら……何か、すげー憐れになって。どんな理由で付き合うことになったかは知らねーけど、絶対からかわれてるだけなんだろうなって。オレの妹ですらフラれたのに、男のこいつなんか、いいように使われた挙げ句、もっと手酷くフラれるんだろうなって考えたんだ。だから」

「……だから?」

 優斗が静かに声を上げる。

「何ていうか、こっぴどくフラれて泣く前に、お前と別れた方があいつのためになるんじゃないかと思ったんだよ。あいつ真面目そうだし、好きでもない奴とヤったってなったら、自分から別れを切り出すんじゃないかと思って。どうせ、一度も抱いてやってないんだろ? 男相手に、勃つわけないもんな」

 優斗は押し黙っている。それを肯定と受け取ったのか、小瀬野はさらに続けた。

「あいつ、本当にお前のこと好きみたいだぜ。オレが言うのも何だけどさあ、相手は選べよ。遊びだか何だか知らねえが、いくら男だからって、あんな純粋な奴に手ぇ出すなよな」

 煽りやからかいなどは感じない、少しの怒気すら感じられる口調で言いながら、小瀬野がタバコの灰を灰皿に落とす。

「──璃空が誘ったっていうのは?」

 優斗の問いに、小瀬野が鼻で笑う。

「そんなことする奴じゃねーだろ。見てて分かんねーの? あいつは居酒屋ですでに意識なかったし、朝までぐーすか寝てたよ」

 優斗は頭に血が上ってくるのを感じたが、何とか耐えた。まだ確認しなければいけないことがある。

「……俺たちが付き合っていること、前原くんとあなたの彼女も知っているんですか?」

「ああ、安心しろよ。オレの女は前原に絡んで二人でできあがってたし、オレたちの会話は誰にも聞かれてねーから」

 タバコを灰皿に置き、小瀬野が腕を組んだ。優斗が何を語るのか、窺っている様子にも見える。

 どうして璃空に嘘をついたのか。理由の全て、言い終えたのだろう。そう判断した優斗は、口元だけに笑みを残したまま、表情を消した。

 結局。
 全部、嘘だったってことか。

「──余計なこと、しないでくれますか」
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