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番外編③

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 ──五分後。

「もういい?」

 璃空が訊ねると、すぐさま「あと少し」と返ってきた。

「──フェラしていい?」

「それは駄目」

 どさくさ紛れに質問してみたが、すぐさま却下された。璃空は脳裏に、前原との会話を思い描いた。

「前原の友達が、本命にはフェラさせたくないから別の人にしてもらってたんだって。優斗もそうなの?」

 優斗は顔を左側に向け「……何、その友達」と呟いた。璃空も優斗の方に顔を動かした。あと数センチでキスができる距離に互いの顔がある。

「女好きのモテ男だったって。別の人にしてもらってるとは思ってないけど、何でおれにはしてほしくないの?」

「俺にとって一番大事なのは、璃空に気持ち良くなってもらうことなんだよ」

「そんなの、おれだって同じだし」

 璃空はむっとしてから、じっと優斗の唇を見つめ、傷があるところをぺろっと舐めた。

 優斗が目を丸くする。途端に、璃空はぼろぼろと涙を流しはじめた。

 ぎょっとし、驚いた優斗が起き上がる。

「ど、どうしたの? どこか痛い?」

「……優斗がおれ以外の人とキスしてた」

 ──え、今?

 璃空にしてはやけに冷静だと思っていたが、どうやら我慢していただけらしい。

 驚きよりも何やら安心してしまった優斗は目を細めた。

「ごめんね。もう二度としないから」

 前髪を上げ、キスをする。璃空は涙を拭いながら「生でしたい」と呟いた。

「え?」

「ゴムなしで、生でして」

「いや、それは」

「してったらして」

 ぐっと優斗の右腕を掴む璃空の顔は、またすぐに泣いてしまいそうな表情をしていた。優斗がうっ、と怯む。

「後が大変なのは、璃空なんだよ?」

「いいから」

 この目は、説得しても無駄だろう。泣かせてしまった負い目もあり、優斗は唇をぎゅっと結び「……分かった」と観念した。

 璃空の目が輝く。

「ほんと?」

「ただし、俺の言うことは聞いてね。嫌だ、やめては受け付けないから」

 何のことだろう。思ったが、女関係以外のことでは優斗を全面的に信じている璃空は「わかった」と大きく頷いた。

 ──その後。

 賢者タイムに浸る間もなく、優斗は璃空の中に自ら入れたものを指で丁寧にかきだし、風呂に直行した。

 その時点で璃空はもういいからと騒いでいたが、風呂でも同じところをこれまた丁寧に洗われ、恥ずかしさのあまりやだやだと騒いだが、宣言された通り、受け付けてもらえなかった。
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