うまく笑えない君へと捧ぐ

西友

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第二章

5

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 いくら会社が休みだからといって、わざわざ新幹線に乗り、何か約束があるわけでも何でもないのに、奈良から東京にまで行くなんてどうかしている、と自分でも思う。

(……あれは葉山が悪い。聞いてもいないのに式場と日にちをべらべら話すから)

 責任転換して、ぶつぶつ胸中で言い訳を繰り返す彰太。実のところ、行ってどうするのだろう。姿が見られれば、それで満足なのだろうか。答えが出ないまま目的の式場にたどり着いたはいいが、彰太はとある当たり前なことにようやく気付いた。

 招待状がなければ式場に入ることは出来ないのだということを。

 自分の馬鹿さ加減に呆れはて、式場から少し離れたところにあるベンチで項垂れていると、式場の外が騒がしくなってきたことに気付いた。

 式場の扉が開かれ、庭に集まっていた招待客の歓声が上がる。大勢の祝福の声と共に、一組の新郎新婦が出てきた。

 距離はあったが、視力のいい彰太はすぐにそれが誰かを理解した。秋晴れの空。白いタキシードに身を包み、遠い場所で穏やかに笑っているのは。

 間違いなく、一翔だった。

 胸が高鳴る。吸い寄せられるように、ゆっくりと歩みを進めていく。途中で、気付いた。一翔の隣で純白のウエディングドレスで嬉しそうに微笑む女性の目尻の下に、横に並んで二つのホクロがあることを。

 彰太は無意識に動いていた足を止めた。

「──そっか。良かった。本当に好きな人が出来たんだね」

 仮の恋人なんかじゃなくて、本当の恋人が。ならもう、寂しくないね。もしかしたら、これが確認したかったのかもしれない。哀しいけれど、四年前に見た女性と、今、一翔の隣にいる女性が同じで良かった。

 もう希望はないと、思い知れてよかった。

 もしも一翔がモデルをしていなかったら。自由に女の人と付き合えていたら。きっと男の自分など、相手にもされていなかった。

 だからあの三年間は、確かに奇跡だった。

 ──どうか、幸せに。

 祈りながら、彰太は背を向けた。振り返ることはしなかった。駅のホームで電車を待っている間に、スマホケースに入れてずっと持ち歩いていた、クッキーが入っていた小さな袋を取り出した。はじめて一翔にもらったその袋を、彰太はホームにあるゴミ箱に捨てた。

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