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お誕生日デート ──1──
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『──不滅の灯火。 微量の魔力で延々と光を放つ魔道具。 光源となるアルタニウム魔晶は女神の涙とも言われており、非常に高価である。 魔道具の産みの親である神匠ヴェーガレッテが生涯を賭けて産み出した、古神具の一つ。 希少度ランクA』
今より数千年前、世界に名を残すほど様々な作品を世に放った偉大なドワーフが居た。
そのドワーフこそが、歴史書に必ず記される大天才、ヴェーガレッテ=イゴール。
神匠ヴェーガレッテその人である。
書物によるとこのヴェーガレッテというドワーフは、一生を賭けて多種多様な魔道具を産み出したらしい。
そのどれもが現代の技術では再現できない唯一無二の代物とされている。
故にヴェーガレッテが産み出した魔道具は、畏敬の念を込めてこう呼ばれるようになった。
古神具と。
「てことは、これが噂に聞くあの……」
まさかこんな代物を貰うことになるとは夢にも思わなかった。
ヴェーガレッテ作の魔道具は一つで屋敷を建てられるほどの価値があるという。
当然ながら、豪商として名を馳せる大貴族であるマーカス=オルガ公が知らないハズがない。
どのくらいの価値を持つ代物か、マーカスさんは知っていたに違いない。
知っていて渡したのだ、命を救われた代金として。
仕事の手付金として。
「はは、さっすがマークの親父さんだ。 抜け目ないおっさんだよ、ほんと」
呟きながら、俺はベッドにダイブ。
尻ポケットから帰り際に渡された通行証を取り出し、天井で輝く魔鉱石に照らした。
「西の大国、ウェステリア。 芸術の国、か」
噂ではウェステリアの首都、アラリオン市はとても綺麗な町並みで、行った者全てを魅了してやまない都市と聞く。
マーカスさんの目的は、そのアラリオン市にある美術館。
そこでとある商談があるらしいのだが、ここで問題が一つ浮上した。
その問題とは、ウェステリア公国までの道中に出没する魔族。
スカーレット=ヴィシャスの存在である。
このスカーレットとかいう魔族の女は何故かウェステリアとノルスガルドを繋ぐ唯一の橋を封鎖するよう鎮座しており、意味不明な事を言っては通ろうとした者達をこてんぱんにノシているのだとか。
しかも最悪な事にこいつめちゃくちゃ強いようで、ウェステリア、ノルスガルドの兵が立ち向かっても返り討ちに遭うんだそう。
なんて迷惑なやつなんだ。
これは是非とも一戦交えてみたい。
いや、交えてみせる!
という訳で、俺はその依頼を即受理。
共にウェステリア公国へと旅する事となった。
とはいえ、今すぐという話ではない。
出発は今から二週間後の月末。
猶予は少なく見積もって、およそ十日ってところか。
それまでにデモンブラッドの件をなんとかしないと────
「……ぐぅ」
それから数時間経った頃。
カーン!
「うおっ! な、なんだ!? なんの音……!」
突如として響き渡る騒音に、俺は反射的に飛び起きる。
「…………おはよう」
「お、おはよう……」
どうやら今の音はフライパンの底をお玉で叩いた音だったらしい。
ベッドの脇に目を向けるとフライパンとお玉を装備したアリンが、俺を見下ろしていた。
「あんたねぇ……いつまで寝てんのよ! もう昼よ、昼! 今日は大事な日だから朝一番に起きろって、この間言ったでしょうが!」
なんでこいつこんなキレてんだ。
怖い。
「大事な日ぃ……? 今日なんかあったっけ?」
「こ、こいつ嘘でしょ……? 信じらんないんだけど」
と、怒りを通り越して心底呆れた表情をアリンが浮かべると、そこへリーリンがやってきて。
「お姉ちゃーん、リュートくん起きたー?」
「おーう。 今丁度起きたとこ……」
「ちょっと聞いてよ、リーリン! こいつマジであり得ないんだけど! 今日がなんの日かわからないって言うのよ? あり得なくない!?」
「え……? そ、そう……なんだ……」
それを聞いた途端、リーリンの顔色が明らかに沈んだ。
今日の用事ってもしかして、リーリンに関係が?
やべぇ、なんだったっけ。
マジで覚えてない。
アリンとの用事ならどうでも良いが、リーリンが関係しているとなれば話は別。
なんとしても思い出さなければ。
「んんんん……」
ダメだ、喉元までは出かかってるのだが今一思い出せない。
なんとなく、とっても大事な用事があったような気がしないでも……。
「……ハッ! そうだ! 今日は確かリーリンの……!」
「ごっしゅじーん! おっはよー!」
「ごふぅ!」
超高速で飛び込んできた何かに腹部を強打された俺は、耐えきれず悶絶する。
そして、起き抜けにこんな目に遇わせてくれた大馬鹿野郎を涙目越しに睨みながら、声を絞り出した。
「このバカドラ、いきなり何しやがる……」
可愛らしい小振りの角と少女体型には似つかわしくない雄大な尻尾を持つ竜人の少女は、一応悪いと思ってるのか、おちゃらけるように「てへっ」と舌を出す。
エンドラがもし見た目通りのロリッ娘だったのなら、許せなくもない。
むしろ幼女にいたずらされるのは男の夢なので、どんと来いまである。
しかしこいつの実年齢は千年を優に超えるロリババア。
幼女とは言いがたい。
よって俺はこの馬鹿ドラゴン、略してバカドラに同じ痛みを与えてやると心に誓った。
「あははー、ごめんごめーん。 ご主人ってばすっごい頑丈だから、このくらいなら大丈夫かなーってつい勢いが……はにゃ?」
ゆらりと起き上がって顔面を鷲掴みにすると、エンドラはようやく事の重さを理解し、冷や汗を流し始める。
「確かに俺は人より頑丈だ、それは間違いない。 けどな……痛ぇもんは痛ぇんだよ!」
「みぎゃー!」
「てかお前のせいで折角思い出したのに忘れちまったじゃねえか! どうしてくれんだ!」
五指に力を入れ、エンドラに仕返しをしていると、その騒ぎを聞き付けたリルまでもがやってきた。
『おや、主殿まだ居らしたのですね。 てっきりリーリン殿と既に出掛けていらっしゃるかと』
「あー、まあちょっとな。 ところで、例の件はどうだった?」
「例の……件?」
昨晩、俺はリルにとある命を出した。
それは、マーカス侯一行を襲った暴徒やあの魔人なる存在がどこから来たのか、それを調べてこい、という内容だ。
そしてどうやら何か見つけたらしい。
リルの胴体に括りつけておいたショルダーバックが昨晩よりやや膨らんでいる。
『ええ、なかなか面白い物が見つかりました。 主殿が戦ったあの場所から森に入り、暫く歩くと妙な建物を見つけまして、その中でこれが…………いえ、この話は後に致しましょう。 今日はリーリン殿の誕生日。 これ以上待たせては申し訳ない』
「……はい……」
ここ最近いくら忙しかったからって、アリンの誕生日ならともかく、リーリンの誕生日を普通忘れるか?
本当に俺ってやつはバカにも程がある。
とはいえ、リーリンはまだ怒ってない。
今ならまだ挽回出来るハズだ。
となれば善は急げ。
今日の為に用意しておいた誕生日プレゼントで挽回を…………し、しまったあ!
昨日取りに行く予定だったのに、それもすっかり忘れてた!
俺のバカ野郎、どこまでドジなんだお前は!
こうなったら、なんとかリーリンを商店街に連れ出して、そこでプレゼントを回収。
その場であたかも予定通りと言わんばかりにあれをリーリンに……!
「へー? 随分と綺麗なカンテラねー。 リュートにしてはなかなか洒落たもん持ってんじゃない」
「ほんとだねー、可愛いー」
……良いことを思い付いた。
プレゼントを取りに行くにしても、まずはリーリンのテンションを上げないことには連れ出すのは恐らく困難。
ならばまずは、テンションを上げさせるのが得策だろう。
幸いな事に、リーリンはあのカンテラに興味津々。
一先ずはあれを仮のプレゼントし、連れ出した後、本物をプレゼントすれば今日のミスは帳消しに……よし、これで行こう。
「ねえ、リーリン。 これ、わたし達の部屋に飾ったら映えそうじゃない?」
「お、お姉ちゃん……?」
「……リュートー、ちょっと相談なんだけどさぁ。 このカンテラ、あたしに譲ってくんない? ほら、一応あたしだって女子な訳じゃん? 少しは飾り付けしたいって言うかぁ」
「お姉ちゃん、やめて! 私、妹として凄く恥ずかしい!」
妹の静止も聞かず、アリンはカンテラを手に取るが、俺はすかさずカンテラを奪い返し、
「勝手に持ってくな、返せ」
「ぶーぶー、けちんぼー」
「誰がケチだ、誰が。 そもそもこれはリーリンの為に用意したもんで、お前に渡すつもりは最初からねえんだよ。 てな訳で、リーリン」
そのままカンテラを、リーリンの可愛らしい小さな手のひらに置いた。
「え……?」
「誕生日おめでとな、リーリン。 これ、俺からの誕生日プレゼントだ。 良かったら貰ってくれ」
「い、良いの……? こんな高そうな物? これって多分、魔道具……だよね?」
一目で見抜くか、流石は母さんの愛弟子なだけはある。
大したもんだ。
魔力を探知する能力だけなら、ゆうに俺を越えてるかもしれない。
「良いに決まってるだろ、リーリンの為に用意したんだから」
「リュートくん……うん、一生大事にするね」
心が痛い……。
これは是が非でもアレをプレゼントしなくては。
「あー、ところでさ。 今日って確か、みんなで遊びに行くんだったよな?」
「そうだよ? それがどうかしたの?」
「えっと、それなんだけど……すまん、アリン。 今日は俺にリーリンを譲ってくれないか? どうしても二人で行きたい所があって……」
オーダーメイドしたとある品物を受け取りに行きたいから、などとは口が裂けても言えない。
バレたら何を言われるか考えただけでも身の毛がよだつ。
「は? 何言ってんの、あんた。 急にそんな事言われても困るんだけど。 こっちはもうとっくに予定は立ってんの。 だからそんなワガママ聞くわけ……ふーん、なるほどねぇ。 へーえ?」
「な、なんだよ」
アリンは俺の顔をまじまじ眺めた後、ニヤッと悪戯な笑みを浮かべる。
なんて……なんてムカつく顔なんだ。
一発ぶっ叩いてやりたい。
「おっけー、わかった。 ならあたし達は留守番してるわ。 頑張りなさい、リーリン。 ここが勝負どころよ」
「え? え? え?」
「リーリンだけずるい! エンドラだってご主人と遊びたい! ねっ、ご主人! エンドラも一緒に……!」
「はいはい、お子ちゃまはこっち。 大人の邪魔しなーい」
「むー! いーやーだー! エンドラも一緒に遊ぶのー! はーなーせー!」
ワガママを言うも、エンドラはアリンに引き摺られていった。
直後、取り残されたリーリンが顔を真っ赤にして……。
「ふへぇ~」
ベッドに倒れてしまったのだった。
今より数千年前、世界に名を残すほど様々な作品を世に放った偉大なドワーフが居た。
そのドワーフこそが、歴史書に必ず記される大天才、ヴェーガレッテ=イゴール。
神匠ヴェーガレッテその人である。
書物によるとこのヴェーガレッテというドワーフは、一生を賭けて多種多様な魔道具を産み出したらしい。
そのどれもが現代の技術では再現できない唯一無二の代物とされている。
故にヴェーガレッテが産み出した魔道具は、畏敬の念を込めてこう呼ばれるようになった。
古神具と。
「てことは、これが噂に聞くあの……」
まさかこんな代物を貰うことになるとは夢にも思わなかった。
ヴェーガレッテ作の魔道具は一つで屋敷を建てられるほどの価値があるという。
当然ながら、豪商として名を馳せる大貴族であるマーカス=オルガ公が知らないハズがない。
どのくらいの価値を持つ代物か、マーカスさんは知っていたに違いない。
知っていて渡したのだ、命を救われた代金として。
仕事の手付金として。
「はは、さっすがマークの親父さんだ。 抜け目ないおっさんだよ、ほんと」
呟きながら、俺はベッドにダイブ。
尻ポケットから帰り際に渡された通行証を取り出し、天井で輝く魔鉱石に照らした。
「西の大国、ウェステリア。 芸術の国、か」
噂ではウェステリアの首都、アラリオン市はとても綺麗な町並みで、行った者全てを魅了してやまない都市と聞く。
マーカスさんの目的は、そのアラリオン市にある美術館。
そこでとある商談があるらしいのだが、ここで問題が一つ浮上した。
その問題とは、ウェステリア公国までの道中に出没する魔族。
スカーレット=ヴィシャスの存在である。
このスカーレットとかいう魔族の女は何故かウェステリアとノルスガルドを繋ぐ唯一の橋を封鎖するよう鎮座しており、意味不明な事を言っては通ろうとした者達をこてんぱんにノシているのだとか。
しかも最悪な事にこいつめちゃくちゃ強いようで、ウェステリア、ノルスガルドの兵が立ち向かっても返り討ちに遭うんだそう。
なんて迷惑なやつなんだ。
これは是非とも一戦交えてみたい。
いや、交えてみせる!
という訳で、俺はその依頼を即受理。
共にウェステリア公国へと旅する事となった。
とはいえ、今すぐという話ではない。
出発は今から二週間後の月末。
猶予は少なく見積もって、およそ十日ってところか。
それまでにデモンブラッドの件をなんとかしないと────
「……ぐぅ」
それから数時間経った頃。
カーン!
「うおっ! な、なんだ!? なんの音……!」
突如として響き渡る騒音に、俺は反射的に飛び起きる。
「…………おはよう」
「お、おはよう……」
どうやら今の音はフライパンの底をお玉で叩いた音だったらしい。
ベッドの脇に目を向けるとフライパンとお玉を装備したアリンが、俺を見下ろしていた。
「あんたねぇ……いつまで寝てんのよ! もう昼よ、昼! 今日は大事な日だから朝一番に起きろって、この間言ったでしょうが!」
なんでこいつこんなキレてんだ。
怖い。
「大事な日ぃ……? 今日なんかあったっけ?」
「こ、こいつ嘘でしょ……? 信じらんないんだけど」
と、怒りを通り越して心底呆れた表情をアリンが浮かべると、そこへリーリンがやってきて。
「お姉ちゃーん、リュートくん起きたー?」
「おーう。 今丁度起きたとこ……」
「ちょっと聞いてよ、リーリン! こいつマジであり得ないんだけど! 今日がなんの日かわからないって言うのよ? あり得なくない!?」
「え……? そ、そう……なんだ……」
それを聞いた途端、リーリンの顔色が明らかに沈んだ。
今日の用事ってもしかして、リーリンに関係が?
やべぇ、なんだったっけ。
マジで覚えてない。
アリンとの用事ならどうでも良いが、リーリンが関係しているとなれば話は別。
なんとしても思い出さなければ。
「んんんん……」
ダメだ、喉元までは出かかってるのだが今一思い出せない。
なんとなく、とっても大事な用事があったような気がしないでも……。
「……ハッ! そうだ! 今日は確かリーリンの……!」
「ごっしゅじーん! おっはよー!」
「ごふぅ!」
超高速で飛び込んできた何かに腹部を強打された俺は、耐えきれず悶絶する。
そして、起き抜けにこんな目に遇わせてくれた大馬鹿野郎を涙目越しに睨みながら、声を絞り出した。
「このバカドラ、いきなり何しやがる……」
可愛らしい小振りの角と少女体型には似つかわしくない雄大な尻尾を持つ竜人の少女は、一応悪いと思ってるのか、おちゃらけるように「てへっ」と舌を出す。
エンドラがもし見た目通りのロリッ娘だったのなら、許せなくもない。
むしろ幼女にいたずらされるのは男の夢なので、どんと来いまである。
しかしこいつの実年齢は千年を優に超えるロリババア。
幼女とは言いがたい。
よって俺はこの馬鹿ドラゴン、略してバカドラに同じ痛みを与えてやると心に誓った。
「あははー、ごめんごめーん。 ご主人ってばすっごい頑丈だから、このくらいなら大丈夫かなーってつい勢いが……はにゃ?」
ゆらりと起き上がって顔面を鷲掴みにすると、エンドラはようやく事の重さを理解し、冷や汗を流し始める。
「確かに俺は人より頑丈だ、それは間違いない。 けどな……痛ぇもんは痛ぇんだよ!」
「みぎゃー!」
「てかお前のせいで折角思い出したのに忘れちまったじゃねえか! どうしてくれんだ!」
五指に力を入れ、エンドラに仕返しをしていると、その騒ぎを聞き付けたリルまでもがやってきた。
『おや、主殿まだ居らしたのですね。 てっきりリーリン殿と既に出掛けていらっしゃるかと』
「あー、まあちょっとな。 ところで、例の件はどうだった?」
「例の……件?」
昨晩、俺はリルにとある命を出した。
それは、マーカス侯一行を襲った暴徒やあの魔人なる存在がどこから来たのか、それを調べてこい、という内容だ。
そしてどうやら何か見つけたらしい。
リルの胴体に括りつけておいたショルダーバックが昨晩よりやや膨らんでいる。
『ええ、なかなか面白い物が見つかりました。 主殿が戦ったあの場所から森に入り、暫く歩くと妙な建物を見つけまして、その中でこれが…………いえ、この話は後に致しましょう。 今日はリーリン殿の誕生日。 これ以上待たせては申し訳ない』
「……はい……」
ここ最近いくら忙しかったからって、アリンの誕生日ならともかく、リーリンの誕生日を普通忘れるか?
本当に俺ってやつはバカにも程がある。
とはいえ、リーリンはまだ怒ってない。
今ならまだ挽回出来るハズだ。
となれば善は急げ。
今日の為に用意しておいた誕生日プレゼントで挽回を…………し、しまったあ!
昨日取りに行く予定だったのに、それもすっかり忘れてた!
俺のバカ野郎、どこまでドジなんだお前は!
こうなったら、なんとかリーリンを商店街に連れ出して、そこでプレゼントを回収。
その場であたかも予定通りと言わんばかりにあれをリーリンに……!
「へー? 随分と綺麗なカンテラねー。 リュートにしてはなかなか洒落たもん持ってんじゃない」
「ほんとだねー、可愛いー」
……良いことを思い付いた。
プレゼントを取りに行くにしても、まずはリーリンのテンションを上げないことには連れ出すのは恐らく困難。
ならばまずは、テンションを上げさせるのが得策だろう。
幸いな事に、リーリンはあのカンテラに興味津々。
一先ずはあれを仮のプレゼントし、連れ出した後、本物をプレゼントすれば今日のミスは帳消しに……よし、これで行こう。
「ねえ、リーリン。 これ、わたし達の部屋に飾ったら映えそうじゃない?」
「お、お姉ちゃん……?」
「……リュートー、ちょっと相談なんだけどさぁ。 このカンテラ、あたしに譲ってくんない? ほら、一応あたしだって女子な訳じゃん? 少しは飾り付けしたいって言うかぁ」
「お姉ちゃん、やめて! 私、妹として凄く恥ずかしい!」
妹の静止も聞かず、アリンはカンテラを手に取るが、俺はすかさずカンテラを奪い返し、
「勝手に持ってくな、返せ」
「ぶーぶー、けちんぼー」
「誰がケチだ、誰が。 そもそもこれはリーリンの為に用意したもんで、お前に渡すつもりは最初からねえんだよ。 てな訳で、リーリン」
そのままカンテラを、リーリンの可愛らしい小さな手のひらに置いた。
「え……?」
「誕生日おめでとな、リーリン。 これ、俺からの誕生日プレゼントだ。 良かったら貰ってくれ」
「い、良いの……? こんな高そうな物? これって多分、魔道具……だよね?」
一目で見抜くか、流石は母さんの愛弟子なだけはある。
大したもんだ。
魔力を探知する能力だけなら、ゆうに俺を越えてるかもしれない。
「良いに決まってるだろ、リーリンの為に用意したんだから」
「リュートくん……うん、一生大事にするね」
心が痛い……。
これは是が非でもアレをプレゼントしなくては。
「あー、ところでさ。 今日って確か、みんなで遊びに行くんだったよな?」
「そうだよ? それがどうかしたの?」
「えっと、それなんだけど……すまん、アリン。 今日は俺にリーリンを譲ってくれないか? どうしても二人で行きたい所があって……」
オーダーメイドしたとある品物を受け取りに行きたいから、などとは口が裂けても言えない。
バレたら何を言われるか考えただけでも身の毛がよだつ。
「は? 何言ってんの、あんた。 急にそんな事言われても困るんだけど。 こっちはもうとっくに予定は立ってんの。 だからそんなワガママ聞くわけ……ふーん、なるほどねぇ。 へーえ?」
「な、なんだよ」
アリンは俺の顔をまじまじ眺めた後、ニヤッと悪戯な笑みを浮かべる。
なんて……なんてムカつく顔なんだ。
一発ぶっ叩いてやりたい。
「おっけー、わかった。 ならあたし達は留守番してるわ。 頑張りなさい、リーリン。 ここが勝負どころよ」
「え? え? え?」
「リーリンだけずるい! エンドラだってご主人と遊びたい! ねっ、ご主人! エンドラも一緒に……!」
「はいはい、お子ちゃまはこっち。 大人の邪魔しなーい」
「むー! いーやーだー! エンドラも一緒に遊ぶのー! はーなーせー!」
ワガママを言うも、エンドラはアリンに引き摺られていった。
直後、取り残されたリーリンが顔を真っ赤にして……。
「ふへぇ~」
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