最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ

文字の大きさ
49 / 71

嫌がらせ

しおりを挟む
「いやー、マジで凄かったよな、さっきの試合」

「だよなー。 あんなハイレベルな試合、初めて見たぜ。 特にリュートのやつ、やばくね? あと数秒余裕あったら、絶対あいつ勝ってたろ」

「それな」

 制服に着替えようと自分のロッカーに向かっていたら、そんな会話が耳に入ってきた。
 みな興奮冷めやらぬようで、そこかしこで同じ話題が飛び交っている。
 アリンにこれ以上目立つなと念押しされてから、はや四日。
 今日もまた目立ってしまった。
 目立たずに済む日はいつかやってくるのだろうか。
 俺の平穏な学園生活はいずこ……。

「お疲れ様、リュート」

「おっつー」

 二人も今から着替えるようで、ロッカーから制服を取り出すところだった。
 その隣には美少女もとい、ルゥが服を脱いで……?

「お、お疲れさま! リュートくん!」

「…………」

 なんだろう、ルゥのこの場違い感は。
 男なんだから男子更衣室で肌を晒すのはおかしな事ではない筈なのに、なんだか見てはいけないものを見てしまっている感覚を覚えてしまう。

「ふぅ」

 何故胸元を脱いだ服で隠す。
 余計にいかがわしく見えるから止めてくれ。

「おい、早く行こうぜ」

「お、おう」

 ほら見ろ、言わんこっちゃない。
 下手に肌を晒すもんだから、周囲の男子達が急いで出ていってしまった。
 このままでは俺達の健全な学生生活に支障をきたしそうだ。
 そのうちルゥ専用の更衣室を作るべきではなかろうか。
 一度学園側に打診してみよう。

「あいつら何急いでんだ?」

「さあ、よっぽどお腹でも空いてたのかもね」

 違う!
 違うぞ、二人とも!
 そうじゃないんだ!
 これも全てルゥの無防備さが原因で……!

「まっ、どうでもいっか。 それよりも早く着替えて飯にしようぜ! 腹へったー!」

「今日はリュートも一緒なんだよね? 良かったのかい、いつものお友達は」

「ああ、それは大丈夫。 二人とも色々忙しいみたいだから、今日ぐらいはね」

 というか、フィオに関してはあれ以来避けられてるんだけどね。
 視線はちょくちょく感じるけど。
 昼休みとか、帰り道とかで。
 ダスティの言ったように若干ストーカー染みてきた気がするが、気のせいと思いたい。
 と、淡い一抹の希望を期待しながら俺はロッカーを────ガサガサ。

「……ん? リュート、なんか落としたぞ」

「紙くず……?」

「……はぁ、またか」

 足元に落ちた、ぐちゃぐちゃに丸められた紙くず。
 それを一瞥した俺は、同じ物が敷き詰つめられたロッカーに埋まっているであろう制服を救出すべく、先日ようやく開発に成功したあの魔法を発動させた。
 座標接続ポイントワープ────







 それから数日が経ったある日。

「──なあ」

「なに?」

 食堂を出てからしきりに背後を気にするダスティが、こんな事を言ってきた。

「そろそろあれ、どうにかしてくれよ。 視線が気になってしかたねえ」

 あれ……?
 ああ、フィオの事か。
 食堂での一件以降何を思ったのか、フィオは突然ストーカーにジョブチェンジ。
 今ではこうして俺の後を尾けてくるのが日課となりつつある。

「どうにかって言われてもなぁ」

 話しかけようとすると逃げちゃうから、話も出来ない状況なんだよな。
 こんな状態でどうしろというのか。

「そういうダスティは、なんか案とかないの?」

「ああ? あるわけねえだろ、んなもん。 つかお前が蒔いた種なんだから、お前がなんとかしろよ。 俺は関わんねえぞ」

 ごもっともで。

「あっ、俺ちょっくらトイレ行ってくるわ。 長くなると思うから先戻ってても良いぜ」

「はいはい、んじゃ先戻ってるわ。 また放課後になー」

「おーう」

 と、別れたのも束の間。

「リュート」

「ん?」

 数歩も歩かない内に戻ってきたダスティが、こんな事を……。

「お前なら重婚も目じゃねえさ。 頑張れよ、伯爵様」

「おい」

「重婚……!」

 なに瞳を輝かせてるんですか、フィオさんや。
 良いのか、お前はそれで良いのか?
 自分で言うのもなんだけど、もし重婚っなったら二番目なんですよ、あなた。
 それで本当に良いの?
 俺だったら嫌だけどなぁ。
 わからん、乙女の思考は難解すぎる。

「こほん」

 そうして天恵を得たフィオは、ここ一週間の奇行を無かったかのように、堂々とした態度で、

「リュート、久しぶりですね。 元気でやっていましたか? わたしは色々ありましたが、なんとか持ち直して今や……」

 話しかけ────

「あのー、君がもしかしてヴェルエスタくん?」

「へ?」

 誰?
 振り向くと手紙を手にした見知らぬ女子が立っていた。

「…………」

 いかん、フィオの人見知りが発動してしまった。
 フリーズしたまま一向に動かない。
 カッチコチである。

「えっと、俺がヴェルエスタで間違い無いですけど、君は……?」

「よかったー、見つかってホッとしたよ。 はい、これ。 君宛の手紙」

「ど、どうも」

 反射的に受け取ると、女子生徒は「確かに渡したからね」と言って、早々に立ち去っていった。
 まるで逃げるように。

「差出人は……書いてない、か」

 まあ誰からかは想像に難しくないが。
 どうせマーク=オルガか、その取り巻きからだろう。
 
「どうせまた嫌がらせの手紙かなんかだろーな。 フィオもそう思わな……フィオ?」

 あれ、居ない。

「どこ行ったんだ、あいつ」

 折角話のネタが出来たから、こいつをきっかけに仲直りしようと思ったのに。
 なかなか上手くいかないもんだ。

「しゃあない、一人で読むとしますか。 でもその前に……鑑定」

 ……ああ、やっぱりか。
 思った通り、手紙にはとある仕掛けが施されていた。
 この世界には魔法やスキルの他に、幾つか不思議な力がある。  
 メリルやシルトアウラ様が得意な黒魔術や、フィオの使う精霊魔法もその一つ。
 中でも厄介なのは、黒魔術を元に発明された、「呪物」と呼ばれる代物だ。
 呪物とは文字通り、呪いの品。
 使用する事で対象に呪いをかけられるという、とんでもない代物。
 それが呪物だ。
 とはいえ、効果はマチマチ。
 強力な物は国が管理していて、学生が手に入れられる呪物なんてのは、悪戯に使える程度の効果しかない。
 よって、この手紙に内包された呪いも気にするほどの物じゃあない。
 なら敢えて引っ掛かり、書いた本人に呪いを跳ね返してやるのもまた一興。
 俺にかかれば呪いの反射なんかちょちょいのちょいってね。

「さてさて、一体どんな内容が…………!」

 案の定、手紙を開いた瞬間、呪いが俺に降りかかってきた。
 鑑定によると、呪いの種類は週日不幸。
 一週間、不幸に苛まれるといった軽い呪いだった。
 これなら別に反射するまでもない呪いだが、俺のスキル、呪術反射。
 チートスキル級のこのパッシブスキルはどんな呪術にも脊髄反射で機能してしまう為、キャンセルは不可。
 よって、呪いは自動的に呪物を使った人間に跳ね返されてしまうのである。

「へへっ! マーク様、ヴェルエスタのやつ手紙読みましたよ! これであいつは一週間、絶えず酷い目に……!」

「────ッ!」

「きゃあっ!」

「うおっ! なんだ!?」

 おん……?
 今なんか向こうから誰かが階段を転げ落ちる音がしたような…………まさか。

「ぐ……あぁ……」

「マ、マーク様ぁぁぁぁ!」

「す、すすす、すいません、マーク様! まさか後ろにいらっしゃるとは! 本当に申し訳ございません!」

 案の定、マークが階段を転げ落ちた音だったか。
 バカなやつ、やめときゃよかったのに。
 まあでもこれに懲りて、暫くは大人しくなるだろう。
 呪いの効果が続く一週間くらいは。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

前世は最強の宝の持ち腐れ!?二度目の人生は創造神が書き換えた神級スキルで気ままに冒険者します!!

yoshikazu
ファンタジー
主人公クレイは幼い頃に両親を盗賊に殺され物心付いた時には孤児院にいた。このライリー孤児院は子供達に客の依頼仕事をさせ手間賃を稼ぐ商売を生業にしていた。しかしクレイは仕事も遅く何をやっても上手く出来なかった。そしてある日の夜、無実の罪で雪が積もる極寒の夜へと放り出されてしまう。そしてクレイは極寒の中一人寂しく路地裏で生涯を閉じた。 だがクレイの中には創造神アルフェリアが創造した神の称号とスキルが眠っていた。しかし創造神アルフェリアの手違いで神のスキルが使いたくても使えなかったのだ。  創造神アルフェリアはクレイの魂を呼び寄せお詫びに神の称号とスキルを書き換える。それは経験したスキルを自分のものに出来るものであった。  そしてクレイは元居た世界に転生しゼノアとして二度目の人生を始める。ここから前世での惨めな人生を振り払うように神級スキルを引っ提げて冒険者として突き進む少年ゼノアの物語が始まる。

神の手違い転生。悪と理不尽と運命を無双します!

yoshikazu
ファンタジー
橘 涼太。高校1年生。突然の交通事故で命を落としてしまう。 しかしそれは神のミスによるものだった。 神は橘 涼太の魂を神界に呼び謝罪する。その時、神は橘 涼太を気に入ってしまう。 そして橘 涼太に提案をする。 『魔法と剣の世界に転生してみないか?』と。 橘 涼太は快く承諾して記憶を消されて転生先へと旅立ちミハエルとなる。 しかし神は転生先のステータスの平均設定を勘違いして気付いた時には100倍の設定になっていた。 さらにミハエルは〈光の加護〉を受けておりステータスが合わせて1000倍になりスキルも数と質がパワーアップしていたのだ。 これは神の手違いでミハエルがとてつもないステータスとスキルを提げて世の中の悪と理不尽と運命に立ち向かう物語である。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

処理中です...