千年巡礼

石田ノドカ

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第3章 『雪解け』

17.あと少し

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 大丈夫だ。
 無事でいてくれ。
 必ず生きてる。

 強く、祈るように念じる程に、それは嫌な心地を覚えさせた。

 頬に当たる葉の感触。
 風を切る身体。
 五月蠅いくらいに脈打つ鼓動。

 走れば走る程、山が近付けば近付く程に、それらはどんどん強く五月蠅くなってゆく。
 纏わりつく心地の悪い感覚にも、嫌気がさしてくる。

 それでもユウは、更に速く、もっと速く足を進め続ける。
 今ならまだ間に合う。
 きっと、手遅れじゃないはずだ。

「あっ、ユウ、さゆきは――ユウ…!」

 ミツキの声が聞こえた気がする。
 けれども今は、そんなことに構っている場合ではない。
 一言二言話している時間すらも惜しい。

 あと少し……あと少しなんだ。
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