千年巡礼

石田ノドカ

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第3章 『雪解け』

19.転生輪廻

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 バラバラになった紗雪の身体を手に戻って来たユウに、一同は言葉を失い、暫くの間は次の行動へと移ることが出来ずにいた。
 空とミツキはその衝撃にただ立ち尽くし、漢那は何とも言えない表情を浮かべて唇を噛み、ユウへと視線を落とすばかり。

 そんな中『桜花に帰ろう』と言い出したのは、ユウだった。
 力なくそう口にするユウは、仕事が終わったから、ではなく、まるで全てに疲れてしまったような、諦めてしまったかのような、そんな声音と表情をしていた。
 目を覚ましていた美弥と嘉禄、その後見つかった他生存者複数名と共に監視所を後にしようかという矢先、ユウは糸の切れた人形のように、その場に倒れ伏してしまった。
 一同皆が消耗していることもあって、監視所に設置してある専用の鏡から漢那が説明を行ったところ、雲外は僅かに快復していた妖気を酷使し、全員を鏡から桜花へと引き戻し、一件は収束した。


 トコと漢那、監視所の生存者らは皆、美桜の元へ。
 空はその付き添いへ。
 ミツキは、その正体が妖魔であることもあり、漢那からの証言があった上で咲夜の元で審問を受け、その後菊理の観察下に置かれることとなった。
 ユウはというと、妖憑との戦いで負った傷、疲労、心の疲弊具合から、処置の後は自宅での療養と休職を言い渡されていた。

 翌日、城下の大庭園にて、紗雪の葬送が執り行われた。
 転生輪廻てんしょうりんね――消えた命は、いずれまたどこかで生まれかわるものなのだと信じられている為、派手な葬送はしないのが慣例だ。
 しかし桜花への貢献度、その知名度等から関わりのあった者も多い為、紗雪の死は公開され、参列したい者は自由にしても良い、と史上でも珍しい御触れが出された。
 想定していた以上、ともすれば桜花中の妖が集ったのではないかと思う程に参列者は多く、最後の一名になる頃には数日が経過していた。
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