6 / 82
6話 ラッキースケベの対処法→ハグ
しおりを挟む
逃げないと。
身体を離そうと後ろへ動くと、またしてもぱしりと手をとられる。
「アギオス侯爵令嬢」
「やめ、」
目があった。
躊躇いを見せる瞳は潤んでいた。なに、その反応。女子なの。
それどころじゃない、逃げよう。それかモードを俺つえええとかに変えるとか?
意外にもかたく私の手を掴んだまま離さない。手を引かれ私を引き込もうとするから、全力で抵抗した。まあ無理な体勢にあって徒労に終わったんだけど。
「すまない」
謝れると逆にこちら側の申し訳なさが半端ないんだけど。
私の無駄な抵抗は絡め取られ、ふわりと引き寄せられ抱きしめられた。
細身に見えたのに意外としっかりしている。
気付かなかったけど背も高くて大きくて、私がすっぽりおさまってしまう。
ああ、あったかいな。
「アギオス侯爵令嬢」
とても近いところから名を呼ばれ震えてしまう。回された彼の腕に少し力が入った。
上品な香水の匂いがする。昨日は野営のはずだろうに、この人謁見用に整えてきたの。
「よし、いいぞ」
しばらくそのまま借りてきた猫のように大人しくなった私を抱きしめ続け、次に蔓がしなる音が聞こえなくなって、アステリからやっと離れる許可がでた。
「これで、いいのか?」
「……」
解放された魔物たちも一様に息をつく。
「終わった?」
「昨日なかったから不思議だったけど、やっぱりあったね」
蔓に縛られてた魔物たちがやんややんや騒ぎながら大きな扉の向こうに去っていく。アステリがそう指示したのだろう。
見られたくないモードを見られてしまった。
よりにもよってラッキースケベだなんて。
「あ、な、」
「……大丈夫か?」
するりと王太子殿下の大きな手が私の手に重ねられる。
こんなことになってしまったのに、目の前の人が純粋な心配しかしてないのが嫌でも分かってしまった。
相手が真面目であればあるほど、恥ずかしさが増す。
「う、あ、」
「?」
「わあああああああ!!」
その場をダッシュだ。
全速力だ。
急にダッシュを決め込んだを私を誰も追いかけることができず、私は一人逃げ切りを果たした。
モードがここでチェンジだ。
誰にも会いたくない。恥ずかしさに爆発する。
部屋に戻って鍵をかけてベッドのシーツに包まる。
人の股間にダイブして? 皆に縛りプレイして? それを見られた挙げ句抱きしめられる?
明らかにやばいでしょ。
魔王と思われない、これは痴女よ痴女。
「うわああああ恥ずかしいいいいい」
「おい、イリニ」
ベッドの上でもんどりうっていると、扉を叩かれた。
アステリだ。様子を見に来たの。
「あ、引きこもりモードか」
鍵を魔法で開けようとして跳ね返され、そう判断したらしい。いや、許しを得ずに開けようとするのはどうなの。
「さっきから、そのモードって?」
「!」
ちょ、アステリ一人じゃない。
その声は第三王太子殿下。嘘、なんで連れてきてんの。
「帰って!」
「イリニ、ヘソ曲げんなよ」
「帰って!」
「アギオス侯爵令嬢……話をしたい」
「話はないから! アステリと仲良く話してればいいでしょ!」
「……ははーん」
アステリがしたり顔をしてるのが分かる声音だった。
「お前、俺のダチが来てるの羨ましかったんだな?」
「!」
やば、ばれた。
友達いいなあからの友達いなくて淋しいなあと思ったのがばれて恥ずかしい。もちろん気付いたのはラッキースケベモードになってからだったけど。
扉越しに、こいつ淋しいんだよ。とアステリが説明していた。
やめてよ、恥ずかしい。
「アギオス侯爵令嬢」
「……」
「当面の間、この城に住まわせてほしい」
「……え?」
扉越しの突然の要望に顔のほてりが一気に引いた。
「なんで?!」
バンと扉を開けた。
お、最速の引きこもりモード解除、とアステリが感心していた。
扉向こうの王太子殿下は眉根を少し寄せて、なぜか不機嫌さを滲ませ、私を見下ろしていた。
やっぱり背高い。
「アステリがいるなら、俺がここいても問題ないだろ」
「貴方、国の王子でしょ」
公務が多くあることは、元婚約者のかわりに仕事していた身だからよくわかる。それを全部放るのは難しいはず。
「国王陛下には許しを頂いている。しばらく君と一緒にいたい」
「え?」
「アステリのように君の側近として置いてくれないか?」
何を言っているの? 側近?
アステリ側近じゃないけど? ただ都合上ここにいるのが助かるってだけでいるんだけど?
それ説明するの手間だから、話合わせる方がいいかな?
「お、お給金払えないよ?」
「いらない。しばらくは試用期間でいい」
「兵は」
「王都へ下がらせる。申し訳ないが、カロを連れるのだけは許してほしい」
「よろしくー」
ひらひら手を振り、王太子殿下の後ろから顔を出すちゃら男。やっぱりちゃらいな。
「王太子殿下を側近?」
立場的に逆でしょ。
というか、この人さっきのラッキースケベ怒らないの? 昨日の俺つえええのことも何も言わないし。
「……名前」
「え?」
「名前で呼んでもらえないだろうか」
「え、と?」
アステリに目線を寄越すと肩をあげ苦笑するだけ。
そのやり取りを見て、王太子殿下はさらに眉間の皺を寄せた。
「アステリはよくて俺は駄目か?」
「そういうわけじゃ」
「なら、名を」
名前だけでそんなすごまれても。
彼の後ろでちゃら男が両手を合わせてお願いお願いとばかりのリアクションをしていた。
小さく溜息が出る。なんで、ここにきてこのやりとり?
「……エフティフィア、だっけ?」
「エフィだ」
王太子殿下を愛称で呼べって? てか親しくもなっていないのに急に愛称で呼べって?
言い返そうと思って見上げ、譲らなそうな強い瞳に私は諦めた。
「エフィ」
「ああ」
「……いいわ、好きなだけ城にいなよ」
「ありがとう」
「けど側近とかそういうのいいから。好きに過ごして」
「ああ」
もうちょっと一人にして、と伝え扉を閉じようとして、ふと思い至り手を止めた。
「?」
「私のことはイリニでいいわ」
「……ああ、分かった!」
扉を閉じる。
エフィの衝撃的な申し出で、ラッキースケベの恥ずかしさは紛れたけど、ちょっと整理したい。
落ち着くために紅茶でもいれようと、私は部屋の奥へ戻った。
身体を離そうと後ろへ動くと、またしてもぱしりと手をとられる。
「アギオス侯爵令嬢」
「やめ、」
目があった。
躊躇いを見せる瞳は潤んでいた。なに、その反応。女子なの。
それどころじゃない、逃げよう。それかモードを俺つえええとかに変えるとか?
意外にもかたく私の手を掴んだまま離さない。手を引かれ私を引き込もうとするから、全力で抵抗した。まあ無理な体勢にあって徒労に終わったんだけど。
「すまない」
謝れると逆にこちら側の申し訳なさが半端ないんだけど。
私の無駄な抵抗は絡め取られ、ふわりと引き寄せられ抱きしめられた。
細身に見えたのに意外としっかりしている。
気付かなかったけど背も高くて大きくて、私がすっぽりおさまってしまう。
ああ、あったかいな。
「アギオス侯爵令嬢」
とても近いところから名を呼ばれ震えてしまう。回された彼の腕に少し力が入った。
上品な香水の匂いがする。昨日は野営のはずだろうに、この人謁見用に整えてきたの。
「よし、いいぞ」
しばらくそのまま借りてきた猫のように大人しくなった私を抱きしめ続け、次に蔓がしなる音が聞こえなくなって、アステリからやっと離れる許可がでた。
「これで、いいのか?」
「……」
解放された魔物たちも一様に息をつく。
「終わった?」
「昨日なかったから不思議だったけど、やっぱりあったね」
蔓に縛られてた魔物たちがやんややんや騒ぎながら大きな扉の向こうに去っていく。アステリがそう指示したのだろう。
見られたくないモードを見られてしまった。
よりにもよってラッキースケベだなんて。
「あ、な、」
「……大丈夫か?」
するりと王太子殿下の大きな手が私の手に重ねられる。
こんなことになってしまったのに、目の前の人が純粋な心配しかしてないのが嫌でも分かってしまった。
相手が真面目であればあるほど、恥ずかしさが増す。
「う、あ、」
「?」
「わあああああああ!!」
その場をダッシュだ。
全速力だ。
急にダッシュを決め込んだを私を誰も追いかけることができず、私は一人逃げ切りを果たした。
モードがここでチェンジだ。
誰にも会いたくない。恥ずかしさに爆発する。
部屋に戻って鍵をかけてベッドのシーツに包まる。
人の股間にダイブして? 皆に縛りプレイして? それを見られた挙げ句抱きしめられる?
明らかにやばいでしょ。
魔王と思われない、これは痴女よ痴女。
「うわああああ恥ずかしいいいいい」
「おい、イリニ」
ベッドの上でもんどりうっていると、扉を叩かれた。
アステリだ。様子を見に来たの。
「あ、引きこもりモードか」
鍵を魔法で開けようとして跳ね返され、そう判断したらしい。いや、許しを得ずに開けようとするのはどうなの。
「さっきから、そのモードって?」
「!」
ちょ、アステリ一人じゃない。
その声は第三王太子殿下。嘘、なんで連れてきてんの。
「帰って!」
「イリニ、ヘソ曲げんなよ」
「帰って!」
「アギオス侯爵令嬢……話をしたい」
「話はないから! アステリと仲良く話してればいいでしょ!」
「……ははーん」
アステリがしたり顔をしてるのが分かる声音だった。
「お前、俺のダチが来てるの羨ましかったんだな?」
「!」
やば、ばれた。
友達いいなあからの友達いなくて淋しいなあと思ったのがばれて恥ずかしい。もちろん気付いたのはラッキースケベモードになってからだったけど。
扉越しに、こいつ淋しいんだよ。とアステリが説明していた。
やめてよ、恥ずかしい。
「アギオス侯爵令嬢」
「……」
「当面の間、この城に住まわせてほしい」
「……え?」
扉越しの突然の要望に顔のほてりが一気に引いた。
「なんで?!」
バンと扉を開けた。
お、最速の引きこもりモード解除、とアステリが感心していた。
扉向こうの王太子殿下は眉根を少し寄せて、なぜか不機嫌さを滲ませ、私を見下ろしていた。
やっぱり背高い。
「アステリがいるなら、俺がここいても問題ないだろ」
「貴方、国の王子でしょ」
公務が多くあることは、元婚約者のかわりに仕事していた身だからよくわかる。それを全部放るのは難しいはず。
「国王陛下には許しを頂いている。しばらく君と一緒にいたい」
「え?」
「アステリのように君の側近として置いてくれないか?」
何を言っているの? 側近?
アステリ側近じゃないけど? ただ都合上ここにいるのが助かるってだけでいるんだけど?
それ説明するの手間だから、話合わせる方がいいかな?
「お、お給金払えないよ?」
「いらない。しばらくは試用期間でいい」
「兵は」
「王都へ下がらせる。申し訳ないが、カロを連れるのだけは許してほしい」
「よろしくー」
ひらひら手を振り、王太子殿下の後ろから顔を出すちゃら男。やっぱりちゃらいな。
「王太子殿下を側近?」
立場的に逆でしょ。
というか、この人さっきのラッキースケベ怒らないの? 昨日の俺つえええのことも何も言わないし。
「……名前」
「え?」
「名前で呼んでもらえないだろうか」
「え、と?」
アステリに目線を寄越すと肩をあげ苦笑するだけ。
そのやり取りを見て、王太子殿下はさらに眉間の皺を寄せた。
「アステリはよくて俺は駄目か?」
「そういうわけじゃ」
「なら、名を」
名前だけでそんなすごまれても。
彼の後ろでちゃら男が両手を合わせてお願いお願いとばかりのリアクションをしていた。
小さく溜息が出る。なんで、ここにきてこのやりとり?
「……エフティフィア、だっけ?」
「エフィだ」
王太子殿下を愛称で呼べって? てか親しくもなっていないのに急に愛称で呼べって?
言い返そうと思って見上げ、譲らなそうな強い瞳に私は諦めた。
「エフィ」
「ああ」
「……いいわ、好きなだけ城にいなよ」
「ありがとう」
「けど側近とかそういうのいいから。好きに過ごして」
「ああ」
もうちょっと一人にして、と伝え扉を閉じようとして、ふと思い至り手を止めた。
「?」
「私のことはイリニでいいわ」
「……ああ、分かった!」
扉を閉じる。
エフィの衝撃的な申し出で、ラッキースケベの恥ずかしさは紛れたけど、ちょっと整理したい。
落ち着くために紅茶でもいれようと、私は部屋の奥へ戻った。
0
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
【完結】真の聖女だった私は死にました。あなたたちのせいですよ?
時
恋愛
聖女として国のために尽くしてきたフローラ。
しかしその力を妬むカリアによって聖女の座を奪われ、顔に傷をつけられたあげく、さらには聖女を騙った罪で追放、彼女を称えていたはずの王太子からは婚約破棄を突きつけられてしまう。
追放が正式に決まった日、絶望した彼女はふたりの目の前で死ぬことを選んだ。
フローラの亡骸は水葬されるが、奇跡的に一命を取り留めていた彼女は船に乗っていた他国の騎士団長に拾われる。
ラピスと名乗った青年はフローラを気に入って自分の屋敷に居候させる。
記憶喪失と顔の傷を抱えながらも前向きに生きるフローラを周りは愛し、やがてその愛情に応えるように彼女のほんとうの力が目覚めて……。
一方、真の聖女がいなくなった国は滅びへと向かっていた──
※小説家になろうにも投稿しています
いいねやエール嬉しいです!ありがとうございます!
追放聖女の再就職 〜長年仕えた王家からニセモノと追い出されたわたしですが頑張りますね、魔王さま!〜
三崎ちさ
恋愛
メリアは王宮に勤める聖女、だった。
「真なる聖女はこの世に一人、エミリーのみ! お前はニセモノだ!」
ある日突然いきりたった王子から国外追放、そして婚約破棄もオマケのように言い渡される。
「困ったわ、追放されても生きてはいけるけど、どうやってお金を稼ごうかしら」
メリアには病気の両親がいる。王宮で聖女として働いていたのも両親の治療費のためだった。国の外には魔物がウロウロ、しかし聖女として活躍してきたメリアには魔物は大した脅威ではない。ただ心配なことは『お金の稼ぎ方』だけである。
そんな中、メリアはひょんなことから封印されていたはずの魔族と出会い、魔王のもとで働くことになる。
「頑張りますね、魔王さま!」
「……」(かわいい……)
一方、メリアを独断で追放した王子は父の激昂を招いていた。
「メリアを魔族と引き合わせるわけにはいかん!」
国王はメリアと魔族について、何か秘密があるようで……?
即オチ真面目魔王さまと両親のためにお金を稼ぎたい!ニセモノ疑惑聖女のラブコメです。
※小説家になろうさんにも掲載
聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる
夕立悠理
恋愛
ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。
しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。
しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。
※小説家になろう様にも投稿しています
※感想をいただけると、とても嬉しいです
※著作権は放棄してません
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
王家を追放された落ちこぼれ聖女は、小さな村で鍛冶屋の妻候補になります
cotonoha garden
恋愛
「聖女失格です。王家にも国にも、あなたはもう必要ありません」——そう告げられた日、リーネは王女でいることさえ許されなくなりました。
聖女としても王女としても半人前。婚約者の王太子には冷たく切り捨てられ、居場所を失った彼女がたどり着いたのは、森と鉄の匂いが混ざる辺境の小さな村。
そこで出会ったのは、無骨で無口なくせに、さりげなく怪我の手当てをしてくれる鍛冶屋ユリウス。
村の事情から「書類上の仮妻」として迎えられたリーネは、鍛冶場の雑用や村人の看病をこなしながら、少しずつ「誰かに必要とされる感覚」を取り戻していきます。
かつては「落ちこぼれ聖女」とさげすまれた力が、今度は村の子どもたちの笑顔を守るために使われる。
そんな新しい日々の中で、ぶっきらぼうな鍛冶屋の優しさや、村人たちのさりげない気遣いが、冷え切っていたリーネの心をゆっくりと溶かしていきます。
やがて、国難を前に王都から使者が訪れ、「再び聖女として戻ってこい」と告げられたとき——
リーネが選ぶのは、きらびやかな王宮か、それとも鉄音の響く小さな家か。
理不尽な追放と婚約破棄から始まる物語は、
「大切にされなかった記憶」を持つ読者に寄り添いながら、
自分で選び取った居場所と、静かであたたかな愛へとたどり着く物語です。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる