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1章 推しがデレを見せるまで。もしくは、推しが生きようと思えるまで。
72話 フラグ回収―推しが生きようと思うまで―(でもそっち選ぶの)
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「チアキ?」
おっといけない、エステルとトットにも説明するか。
オリアーナに了承を貰い、オリアーナがあの事故の日、オルネッラの乗る馬車の車輪に壊れるよう魔法をかけた事を話し、その上でエスタジがオルネッラにきくと彼女はそれを「お守り」と言った事。
2人はすぐに私の言いたいことを理解した。
さすが、本当話早くて助かる。
「詠唱も似ているわね」
「壊す魔法は失敗したとしても他ですぐに影響が出る。しばらく時間を経て発現する事は滅多にない」
「それにあの事故で、唯一オルネッラ譲は生きていたのでしょう?」
そう、クラーレがやらかす前までは生きていた。
母はもう息を引き取るかどうかというところだったけど、オルネッラは少なくとも母よりは軽かった、とすればそれは運がいいというよりも、何かが守ったのではないだろうかと推測できる。
「それが願いの魔法であれば、オリアーナはオルネッラと一緒にいたいという想いが活かされるんじゃないかと思うんだけど」
「そうね、チアキの考える通りだわ」
「オルネッラ譲の発言とも整合性がとれる」
「オリアーナ、そういうことなんだよ」
「私が間違った魔法を?」
「そう」
そもそもエスタジが気づいて、オルネッラが気づかないなんてことはないだろう。
同時、それが破壊の魔法が本当にたまたま時差で起きるものだったとしても放置する理由がない。
オルネッラが当時何かに失敗したとか、悩んでいたとかは周囲の聞き取りからしてもなさそうだから。
もっとも人の心理面は本当に見ただけじゃ分からないのだけど、それでも今の情報からだとオリアーナが願いの魔法を間違えて使ってしまったという判断が一番有力。
「お守りだって嬉しそうに言ったんでしょ。事故に遭うかもしれないと分かって喜ぶ人なんてそういないんだから、願いの魔法と考えていいんじゃない? オリアーナ、当時の詠唱覚えてる?」
「いいえ、詠唱まではもう……」
「あ、無理に思い出さなくていいよ。実際どっちの魔法を使ってもオリアーナのせいじゃないのは同じなんだから」
「…………はい」
彼女は頷いた。同時、思い当たる部分はあるようだった。
年齢的にもまだ彼女は魔法を習い始めたばかりだったし、実践することもなかった。
「今なら言えるかな、うん。そろそろ先へ進んでみようよ、オリアーナ」
「チアキ……」
「楽しく毎日過ごそう」
思い出してどっちなのか追及する気はないけど、オルネッラのお守り発言はとてもいいきっかけでいい時に投入されたぞ。
推測の域ではあっても、オリアーナのせいじゃないという可能性が高いのなら、それは彼女の救いと支えになるはずだ。
この日までコツコツ自分を責める事をしない練習してきたところに、後押しがくれば彼女はさらに進める。
私の心持ちも和み、さて軽やか帰宅だと思ったら、トットが神妙な面持ちで手を顎に添え考えていた。
「どうしたの、トット」
「いや…今までの違和感の理由が分かった気がした」
「どういう?」
「チアキの話から察するに複製本と事故については別物だと思っていたのだが」
「うん」
「複製本と事故は繋がっているのではないかと」
「うん?」
トットは何やら考え中らしい。
そこを言及するのは全然かまわないけど、決定的な部分を忘れてはいけないぞ。
「オルネッラから話きけない事には何もはっきりしない」
「……そうだな、それが難しいとなるともう推測を話す事しか出来ない」
「けど気になると」
「そうだ」
私も違和感を抱いたままだ。
解決していない事がまだある。
事故は何故起きたか。
オルネッラは何故複製本を必要としていたのか。
クラーレの話した事は事故の後の事だし、エスタジやエドアルドにオリアーナが話した事は当人が考えてるほど事故に影響していない。
けど、オリアーナはこの事故の事を受け入れ、自分の責任だと責める事を解消しようとしている。
となると水面下で調べていくのがいいか。
「トット、エステル。そこ頼んでもいい?」
「ああ、構わない」
「ええ、もちろん」
私の中で一定の解決はしてしまっているけど、そこを突き詰めるともしかしたら、オルネッラの魂に辿り着けるのではと思った。
完全に辿り着けないにしろ、ヒントみたいなものはあってもいいな、という希望的観測。
「チアキも無理は駄目よ」
「大丈夫だよ、エステル。社畜の頃のが辛い」
「相変わらずだな」
「感心してる場合ではないわ、サルヴァトーレ。目を離すと無茶をするのがチアキなのだから」
よくわかってるエステル。
とはいっても、私が沸点超えても止めはせず、好きなようにやらせてくれる挙句アフタフォローまでしてくれるのだから、なんだかんだ私に甘いよね。
そんな2人が大好きなわけだけれども。
「チアキ、顔が緩んでるわ」
「えへへ、ごめんエステル」
「もう」
そうして2人と別れてオリアーナと2人になる。
そんないつもの道中、オリアーナが静かに呟いた。
「チアキ」
「何?」
ずっと考えていたと言う。
私と初めて出会ったあの特殊な状況の時からずっとだと。
おっとシリアスな話なのかと身構えたら、違う方向からの言葉がやってきた。
「戻ろうと、思います」
「え?」
「言葉のままですが」
違うよ、感動に思わず声が出ただけだよ。
だって、その戻るって。
「テゾーロから、人の身体に」
「おおお!」
ついにこの身体に?!
「ですが条件があります」
「条件?」
「はい……オルネッラの身体に戻りたいのです」
「え?」
ちょっと待って、それはさすがに考えてなかった。
おっといけない、エステルとトットにも説明するか。
オリアーナに了承を貰い、オリアーナがあの事故の日、オルネッラの乗る馬車の車輪に壊れるよう魔法をかけた事を話し、その上でエスタジがオルネッラにきくと彼女はそれを「お守り」と言った事。
2人はすぐに私の言いたいことを理解した。
さすが、本当話早くて助かる。
「詠唱も似ているわね」
「壊す魔法は失敗したとしても他ですぐに影響が出る。しばらく時間を経て発現する事は滅多にない」
「それにあの事故で、唯一オルネッラ譲は生きていたのでしょう?」
そう、クラーレがやらかす前までは生きていた。
母はもう息を引き取るかどうかというところだったけど、オルネッラは少なくとも母よりは軽かった、とすればそれは運がいいというよりも、何かが守ったのではないだろうかと推測できる。
「それが願いの魔法であれば、オリアーナはオルネッラと一緒にいたいという想いが活かされるんじゃないかと思うんだけど」
「そうね、チアキの考える通りだわ」
「オルネッラ譲の発言とも整合性がとれる」
「オリアーナ、そういうことなんだよ」
「私が間違った魔法を?」
「そう」
そもそもエスタジが気づいて、オルネッラが気づかないなんてことはないだろう。
同時、それが破壊の魔法が本当にたまたま時差で起きるものだったとしても放置する理由がない。
オルネッラが当時何かに失敗したとか、悩んでいたとかは周囲の聞き取りからしてもなさそうだから。
もっとも人の心理面は本当に見ただけじゃ分からないのだけど、それでも今の情報からだとオリアーナが願いの魔法を間違えて使ってしまったという判断が一番有力。
「お守りだって嬉しそうに言ったんでしょ。事故に遭うかもしれないと分かって喜ぶ人なんてそういないんだから、願いの魔法と考えていいんじゃない? オリアーナ、当時の詠唱覚えてる?」
「いいえ、詠唱まではもう……」
「あ、無理に思い出さなくていいよ。実際どっちの魔法を使ってもオリアーナのせいじゃないのは同じなんだから」
「…………はい」
彼女は頷いた。同時、思い当たる部分はあるようだった。
年齢的にもまだ彼女は魔法を習い始めたばかりだったし、実践することもなかった。
「今なら言えるかな、うん。そろそろ先へ進んでみようよ、オリアーナ」
「チアキ……」
「楽しく毎日過ごそう」
思い出してどっちなのか追及する気はないけど、オルネッラのお守り発言はとてもいいきっかけでいい時に投入されたぞ。
推測の域ではあっても、オリアーナのせいじゃないという可能性が高いのなら、それは彼女の救いと支えになるはずだ。
この日までコツコツ自分を責める事をしない練習してきたところに、後押しがくれば彼女はさらに進める。
私の心持ちも和み、さて軽やか帰宅だと思ったら、トットが神妙な面持ちで手を顎に添え考えていた。
「どうしたの、トット」
「いや…今までの違和感の理由が分かった気がした」
「どういう?」
「チアキの話から察するに複製本と事故については別物だと思っていたのだが」
「うん」
「複製本と事故は繋がっているのではないかと」
「うん?」
トットは何やら考え中らしい。
そこを言及するのは全然かまわないけど、決定的な部分を忘れてはいけないぞ。
「オルネッラから話きけない事には何もはっきりしない」
「……そうだな、それが難しいとなるともう推測を話す事しか出来ない」
「けど気になると」
「そうだ」
私も違和感を抱いたままだ。
解決していない事がまだある。
事故は何故起きたか。
オルネッラは何故複製本を必要としていたのか。
クラーレの話した事は事故の後の事だし、エスタジやエドアルドにオリアーナが話した事は当人が考えてるほど事故に影響していない。
けど、オリアーナはこの事故の事を受け入れ、自分の責任だと責める事を解消しようとしている。
となると水面下で調べていくのがいいか。
「トット、エステル。そこ頼んでもいい?」
「ああ、構わない」
「ええ、もちろん」
私の中で一定の解決はしてしまっているけど、そこを突き詰めるともしかしたら、オルネッラの魂に辿り着けるのではと思った。
完全に辿り着けないにしろ、ヒントみたいなものはあってもいいな、という希望的観測。
「チアキも無理は駄目よ」
「大丈夫だよ、エステル。社畜の頃のが辛い」
「相変わらずだな」
「感心してる場合ではないわ、サルヴァトーレ。目を離すと無茶をするのがチアキなのだから」
よくわかってるエステル。
とはいっても、私が沸点超えても止めはせず、好きなようにやらせてくれる挙句アフタフォローまでしてくれるのだから、なんだかんだ私に甘いよね。
そんな2人が大好きなわけだけれども。
「チアキ、顔が緩んでるわ」
「えへへ、ごめんエステル」
「もう」
そうして2人と別れてオリアーナと2人になる。
そんないつもの道中、オリアーナが静かに呟いた。
「チアキ」
「何?」
ずっと考えていたと言う。
私と初めて出会ったあの特殊な状況の時からずっとだと。
おっとシリアスな話なのかと身構えたら、違う方向からの言葉がやってきた。
「戻ろうと、思います」
「え?」
「言葉のままですが」
違うよ、感動に思わず声が出ただけだよ。
だって、その戻るって。
「テゾーロから、人の身体に」
「おおお!」
ついにこの身体に?!
「ですが条件があります」
「条件?」
「はい……オルネッラの身体に戻りたいのです」
「え?」
ちょっと待って、それはさすがに考えてなかった。
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