147 / 164
2章 神よ、感謝します。けど、ちょっと違う叶ったけどちょっと違うんです。
147話 ツンデレ黄金比お手本はおばあちゃん
しおりを挟む
「……それにしたって君はいつも通りだな」
「ん? 通常運行ですよ?」
「あの時は……」
「ん?」
何か言い淀んで、視線を一度逸らされる。何か考えているようだったけど、すぐにこちらに居直った。
「こちらの話だ。気にするな」
「ふむ?」
そうしてディエゴの手が伸びてきて、私に触れようとするものだから、するりと避ける。今の軌道を見るに耳で間違いなさそう。なんなの、あの日から耳をお気に召しましたか。そういうブームはいらないぞ。
「耳弱いからやめて」
「弱いのか」
「たぶん」
特殊なテンションのせいだったか疑問だけど、当面耳はやめてほしいところ。いや誰でも耳に唇当たってたら動揺するか。相手はイケメンでイケボなわけだし。
「はは、そうか」
「笑わないでよ」
「いや、可愛いなと思って」
一瞬胸の内がざわついたけど、気のせいだろう。可愛いとは。そういえば、ディエゴに可愛いと言われたのって初めてになる?あ、そんなこと考えるなんて女々しいかな?
どちらにしたって、あの時聞にされなくてよかった。落ち着いた今でこそテンションおかしくなりそうなのに。
「可愛いのはディエゴの方」
「格好良いにしてくれ」
「無理」
認めてほしいというオリアーナの言葉を今さらに思い出す。
おさまったと思ってたのに再度もより始めるのはどうにかしないとと内心ごちりつつも、ツンデレのデレは余すことなく堪能することにした。
「チアキ、時間だ」
「よし、任せて」
やっと時間になった。
そう、そもそも私は今日おばあちゃんにプレゼンするという重要なミッションがあるという。相変わらずボコボコになる覚悟で臨んだ本日、おばあちゃんのまさかの言葉に私はいつになく驚くこととなる。
「もうプレゼンとやらはいいでしょう」
「え?」
「必要ないと言いました」
「そ、それはつまり、認めて下さるんですか?」
短い言葉で肯定される。こんなにもあっさりやってくるとはだ。
「魔法使いの祖一族偏見についてですよ?」
「ええ、私の考えを見直しましょう。ただし、今後の貴方の行動を見続ける事で判断が変わる可能性もあります」
「は、はい大丈夫です! 私は偏見さえどうにかできれば」
一体何度ボコボコにされたことか。論破され続け、今や学園の講義よりも歴史を知るようになった私を誰か褒めてほしい。
「御祖母様」
「どうしました」
「チアキとの婚約を認めて下さいますか」
「ちょっと、それきかないでよ」
てか、もはや候補でもないんだけど。飛び越えてない?最初は婚約者候補じゃなかったっけ?
婚約者と婚約者候補では全然違う。後者であれば、他にも名を上げた令嬢がいるということ。前者は完全に私だけになってしまうというのに。
「ええ、認めましょう」
「やめて、おばあちゃんてば」
「しかし淑女としての品性は大幅に磨かないといけません。これから私の元へ通いなさい。一から学び直しです」
どっちにしても、おばあちゃんからボコボコにされるということに変わりないじゃん。通い続ける事になるってどういうこと。これがおばあちゃんなりのデレだというの。貴方をボコボコにしないと日々に張り合いがないわ的な?
ツンデレは好きだけど、ドエムではないよ、私。
「なんですか、貴方は私の元で学ぶ事がそんなにも不服ですか」
「いいえ、滅相もございません!」
待った。この言い方……これはつまり、おばあちゃんが私に会うための口実を作ったってこと?
なにこれすごい、ツンデレの黄金比のお手本やってる。会いたいんじゃないんだからねっが唐突にやってきた。さすがディエゴのおばあちゃん、ツンデレ言うならこちらの方が完璧に洗練されている。
おっといけない話がそれた。
「いやまって」
「良かったな、チアキ」
「何がいいのか」
あからさまに機嫌がいいディエゴ。それもそうだろう、家族の中で一番の難関が認めたというのだから。話が何故か二段飛ばしで越えていったことについては言うべきなの?
「日取りは少し時間が経ってから決めましょう。ここ最近、賊が出たり誘拐未遂事件も起きていると聞いています。少々様子を見てから開始する方が最善です」
「え、なんですか、その話」
気にするほどではないというおばあちゃん。単に私を心配して言ってくれてるってことで、ツンデレが十二分に堪能出来てて最高だけど、それ以前に随分不穏だ。
賊が出るとかそんな話は以前の社交界で聞いた気もする。賊なら貴族を狙った誘拐をしようとしても不思議ではないか。お金を手っ取り早く手に入れるには人質とって交渉するのが早いし、そもそも爵位のある者を襲うだけで貴金属も奪える。
「ふむ」
「チアキ、賊の捕獲は警備隊や騎馬隊がする事だからな」
「え、何それどういう意味で言ってるの?」
「君の事だから、賊を捕らえにわざと外出しそうだ」
それは駄目だと念を押された。さすがの私の善意でそこまでやらないし。まあちょっと気にはなったけど。
その私の気持ちが反映したのか、しばらくして渦中に巻き込まれることになる。こういう時、自分が割と難儀な立ち位置にいるなと思わざるを得なかったことだけは、今ここに記しておこう。
「ん? 通常運行ですよ?」
「あの時は……」
「ん?」
何か言い淀んで、視線を一度逸らされる。何か考えているようだったけど、すぐにこちらに居直った。
「こちらの話だ。気にするな」
「ふむ?」
そうしてディエゴの手が伸びてきて、私に触れようとするものだから、するりと避ける。今の軌道を見るに耳で間違いなさそう。なんなの、あの日から耳をお気に召しましたか。そういうブームはいらないぞ。
「耳弱いからやめて」
「弱いのか」
「たぶん」
特殊なテンションのせいだったか疑問だけど、当面耳はやめてほしいところ。いや誰でも耳に唇当たってたら動揺するか。相手はイケメンでイケボなわけだし。
「はは、そうか」
「笑わないでよ」
「いや、可愛いなと思って」
一瞬胸の内がざわついたけど、気のせいだろう。可愛いとは。そういえば、ディエゴに可愛いと言われたのって初めてになる?あ、そんなこと考えるなんて女々しいかな?
どちらにしたって、あの時聞にされなくてよかった。落ち着いた今でこそテンションおかしくなりそうなのに。
「可愛いのはディエゴの方」
「格好良いにしてくれ」
「無理」
認めてほしいというオリアーナの言葉を今さらに思い出す。
おさまったと思ってたのに再度もより始めるのはどうにかしないとと内心ごちりつつも、ツンデレのデレは余すことなく堪能することにした。
「チアキ、時間だ」
「よし、任せて」
やっと時間になった。
そう、そもそも私は今日おばあちゃんにプレゼンするという重要なミッションがあるという。相変わらずボコボコになる覚悟で臨んだ本日、おばあちゃんのまさかの言葉に私はいつになく驚くこととなる。
「もうプレゼンとやらはいいでしょう」
「え?」
「必要ないと言いました」
「そ、それはつまり、認めて下さるんですか?」
短い言葉で肯定される。こんなにもあっさりやってくるとはだ。
「魔法使いの祖一族偏見についてですよ?」
「ええ、私の考えを見直しましょう。ただし、今後の貴方の行動を見続ける事で判断が変わる可能性もあります」
「は、はい大丈夫です! 私は偏見さえどうにかできれば」
一体何度ボコボコにされたことか。論破され続け、今や学園の講義よりも歴史を知るようになった私を誰か褒めてほしい。
「御祖母様」
「どうしました」
「チアキとの婚約を認めて下さいますか」
「ちょっと、それきかないでよ」
てか、もはや候補でもないんだけど。飛び越えてない?最初は婚約者候補じゃなかったっけ?
婚約者と婚約者候補では全然違う。後者であれば、他にも名を上げた令嬢がいるということ。前者は完全に私だけになってしまうというのに。
「ええ、認めましょう」
「やめて、おばあちゃんてば」
「しかし淑女としての品性は大幅に磨かないといけません。これから私の元へ通いなさい。一から学び直しです」
どっちにしても、おばあちゃんからボコボコにされるということに変わりないじゃん。通い続ける事になるってどういうこと。これがおばあちゃんなりのデレだというの。貴方をボコボコにしないと日々に張り合いがないわ的な?
ツンデレは好きだけど、ドエムではないよ、私。
「なんですか、貴方は私の元で学ぶ事がそんなにも不服ですか」
「いいえ、滅相もございません!」
待った。この言い方……これはつまり、おばあちゃんが私に会うための口実を作ったってこと?
なにこれすごい、ツンデレの黄金比のお手本やってる。会いたいんじゃないんだからねっが唐突にやってきた。さすがディエゴのおばあちゃん、ツンデレ言うならこちらの方が完璧に洗練されている。
おっといけない話がそれた。
「いやまって」
「良かったな、チアキ」
「何がいいのか」
あからさまに機嫌がいいディエゴ。それもそうだろう、家族の中で一番の難関が認めたというのだから。話が何故か二段飛ばしで越えていったことについては言うべきなの?
「日取りは少し時間が経ってから決めましょう。ここ最近、賊が出たり誘拐未遂事件も起きていると聞いています。少々様子を見てから開始する方が最善です」
「え、なんですか、その話」
気にするほどではないというおばあちゃん。単に私を心配して言ってくれてるってことで、ツンデレが十二分に堪能出来てて最高だけど、それ以前に随分不穏だ。
賊が出るとかそんな話は以前の社交界で聞いた気もする。賊なら貴族を狙った誘拐をしようとしても不思議ではないか。お金を手っ取り早く手に入れるには人質とって交渉するのが早いし、そもそも爵位のある者を襲うだけで貴金属も奪える。
「ふむ」
「チアキ、賊の捕獲は警備隊や騎馬隊がする事だからな」
「え、何それどういう意味で言ってるの?」
「君の事だから、賊を捕らえにわざと外出しそうだ」
それは駄目だと念を押された。さすがの私の善意でそこまでやらないし。まあちょっと気にはなったけど。
その私の気持ちが反映したのか、しばらくして渦中に巻き込まれることになる。こういう時、自分が割と難儀な立ち位置にいるなと思わざるを得なかったことだけは、今ここに記しておこう。
0
あなたにおすすめの小説
溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です
山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」
ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。
聖女は秘密の皇帝に抱かれる
アルケミスト
恋愛
神が皇帝を定める国、バラッハ帝国。
『次期皇帝は国の紋章を背負う者』という神託を得た聖女候補ツェリルは昔見た、腰に痣を持つ男を探し始める。
行き着いたのは権力を忌み嫌う皇太子、ドゥラコン、
痣を確かめたいと頼むが「俺は身も心も重ねる女にしか肌を見せない」と迫られる。
戸惑うツェリルだが、彼を『その気』にさせるため、寝室で、浴場で、淫らな逢瀬を重ねることになる。
快楽に溺れてはだめ。
そう思いつつも、いつまでも服を脱がない彼に焦れたある日、別の人間の腰に痣を見つけて……。
果たして次期皇帝は誰なのか?
ツェリルは無事聖女になることはできるのか?
【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?
はくら(仮名)
恋愛
ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。
※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎
水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。
もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。
振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!!
え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!?
でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!?
と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう!
前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい!
だからこっちに熱い眼差しを送らないで!
答えられないんです!
これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。
または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
乙女ゲーのヒロインに転生しましたが、悪役令嬢によって攻略済みの世界でした~スローライフ希望なのでそれでオッケーです!~
ゴルゴンゾーラ三国
恋愛
ゲーマーである主人公・花藤瀬利(かとうせり)は、大学からの帰り道に事故に合い、気が付くと、瀬利が発売当日から毎日遊んできた、『黎明のアルケミスト』という女性向けゲームのヒロインに生まれ変わっていた。
わくわくしながらゲームの世界に浸る瀬利だったが、攻略対象のキャラクター達に違和感を抱く。
メイン後略の彼も、ユーザー一番人気の彼も、果ては隠し攻略キャラの彼さえも、全ての攻略キャラがライバルヒロインキャラにベタ惚れだったのである。
瀬利より一足先にライバルヒロインへと転生していた少女・比菱あかりによれば、トゥルーエンドに存在する自らの死を回避するべく行動していたら、攻略キャラすべてがあかりに好意を抱くように変わってしまっていたのだという。
しかし、瀬利が好きなのは本編の乙女ゲームシナリオではなく、おまけのミニゲームのほう。 攻略対象そっちのけでゲームの世界に浸りスローライフの日々を送る……と思っていたのだが、サブキャラでもなくモブキャラですらない、本編に登場していない幼馴染と恋愛フラグが……?
【この作品は完結済みであるPixiv版を加筆・改稿して掲載しています。ご了承ください】
【この作品は『小説家になろう』『カクヨム』『pixiv』にも掲載しています。】
リトライさせていただきます!〜死に戻り令嬢はイケメン神様とタッグを組んで人生をやり直す事にした。今度こそ幸せになります!!〜
ゆずき
恋愛
公爵家の御令嬢クレハは、18歳の誕生日に何者かに殺害されてしまう。そんなクレハを救ったのは、神を自称する青年(長身イケメン)だった。
イケメン神様の力で10年前の世界に戻されてしまったクレハ。そこから運命の軌道修正を図る。犯人を返り討ちにできるくらい、強くなればいいじゃないか!! そう思ったクレハは、神様からは魔法を、クレハに一目惚れした王太子からは武術の手ほどきを受ける。クレハの強化トレーニングが始まった。
8歳の子供の姿に戻ってしまった少女と、お人好しな神様。そんな2人が主人公の異世界恋愛ファンタジー小説です。
※メインではありませんが、ストーリーにBL的要素が含まれます。少しでもそのような描写が苦手な方はご注意下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる