クールキャラなんて演じられない!

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2章 神よ、感謝します。けど、ちょっと違う叶ったけどちょっと違うんです。

147話 ツンデレ黄金比お手本はおばあちゃん

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「……それにしたって君はいつも通りだな」
「ん? 通常運行ですよ?」
「あの時は……」
「ん?」

 何か言い淀んで、視線を一度逸らされる。何か考えているようだったけど、すぐにこちらに居直った。

「こちらの話だ。気にするな」
「ふむ?」

 そうしてディエゴの手が伸びてきて、私に触れようとするものだから、するりと避ける。今の軌道を見るに耳で間違いなさそう。なんなの、あの日から耳をお気に召しましたか。そういうブームはいらないぞ。

「耳弱いからやめて」
「弱いのか」
「たぶん」

 特殊なテンションのせいだったか疑問だけど、当面耳はやめてほしいところ。いや誰でも耳に唇当たってたら動揺するか。相手はイケメンでイケボなわけだし。

「はは、そうか」
「笑わないでよ」
「いや、可愛いなと思って」

 一瞬胸の内がざわついたけど、気のせいだろう。可愛いとは。そういえば、ディエゴに可愛いと言われたのって初めてになる?あ、そんなこと考えるなんて女々しいかな?
 どちらにしたって、あの時聞にされなくてよかった。落ち着いた今でこそテンションおかしくなりそうなのに。

「可愛いのはディエゴの方」
「格好良いにしてくれ」
「無理」

 認めてほしいというオリアーナの言葉を今さらに思い出す。
 おさまったと思ってたのに再度もより始めるのはどうにかしないとと内心ごちりつつも、ツンデレのデレは余すことなく堪能することにした。

「チアキ、時間だ」
「よし、任せて」

 やっと時間になった。
 そう、そもそも私は今日おばあちゃんにプレゼンするという重要なミッションがあるという。相変わらずボコボコになる覚悟で臨んだ本日、おばあちゃんのまさかの言葉に私はいつになく驚くこととなる。

「もうプレゼンとやらはいいでしょう」
「え?」
「必要ないと言いました」
「そ、それはつまり、認めて下さるんですか?」

 短い言葉で肯定される。こんなにもあっさりやってくるとはだ。

「魔法使いの祖一族偏見についてですよ?」
「ええ、私の考えを見直しましょう。ただし、今後の貴方の行動を見続ける事で判断が変わる可能性もあります」
「は、はい大丈夫です! 私は偏見さえどうにかできれば」

 一体何度ボコボコにされたことか。論破され続け、今や学園の講義よりも歴史を知るようになった私を誰か褒めてほしい。

「御祖母様」
「どうしました」
「チアキとの婚約を認めて下さいますか」
「ちょっと、それきかないでよ」

 てか、もはや候補でもないんだけど。飛び越えてない?最初は婚約者候補じゃなかったっけ?
 婚約者と婚約者候補では全然違う。後者であれば、他にも名を上げた令嬢がいるということ。前者は完全に私だけになってしまうというのに。

「ええ、認めましょう」
「やめて、おばあちゃんてば」
「しかし淑女としての品性は大幅に磨かないといけません。これから私の元へ通いなさい。一から学び直しです」

 どっちにしても、おばあちゃんからボコボコにされるということに変わりないじゃん。通い続ける事になるってどういうこと。これがおばあちゃんなりのデレだというの。貴方をボコボコにしないと日々に張り合いがないわ的な?
 ツンデレは好きだけど、ドエムではないよ、私。

「なんですか、貴方は私の元で学ぶ事がそんなにも不服ですか」
「いいえ、滅相もございません!」

 待った。この言い方……これはつまり、おばあちゃんが私に会うための口実を作ったってこと?
 なにこれすごい、ツンデレの黄金比のお手本やってる。会いたいんじゃないんだからねっが唐突にやってきた。さすがディエゴのおばあちゃん、ツンデレ言うならこちらの方が完璧に洗練されている。
 おっといけない話がそれた。

「いやまって」
「良かったな、チアキ」
「何がいいのか」

 あからさまに機嫌がいいディエゴ。それもそうだろう、家族の中で一番の難関が認めたというのだから。話が何故か二段飛ばしで越えていったことについては言うべきなの?

「日取りは少し時間が経ってから決めましょう。ここ最近、賊が出たり誘拐未遂事件も起きていると聞いています。少々様子を見てから開始する方が最善です」
「え、なんですか、その話」

 気にするほどではないというおばあちゃん。単に私を心配して言ってくれてるってことで、ツンデレが十二分に堪能出来てて最高だけど、それ以前に随分不穏だ。
 賊が出るとかそんな話は以前の社交界で聞いた気もする。賊なら貴族を狙った誘拐をしようとしても不思議ではないか。お金を手っ取り早く手に入れるには人質とって交渉するのが早いし、そもそも爵位のある者を襲うだけで貴金属も奪える。

「ふむ」
「チアキ、賊の捕獲は警備隊や騎馬隊がする事だからな」
「え、何それどういう意味で言ってるの?」
「君の事だから、賊を捕らえにわざと外出しそうだ」

 それは駄目だと念を押された。さすがの私の善意でそこまでやらないし。まあちょっと気にはなったけど。
 その私の気持ちが反映したのか、しばらくして渦中に巻き込まれることになる。こういう時、自分が割と難儀な立ち位置にいるなと思わざるを得なかったことだけは、今ここに記しておこう。
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