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36話 占いでは二人の相性は良い

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「夫人のキャラ濃い……面白いわ!」
「なによりです」

 最初は夫である公爵にバレないように始めたのがきっかけということだった。今では趣味で男装カフェやってるってすごい。

「あと基礎化粧品販売と占いもやってるんですよ」

 結構がつがつ仕事してた。占いしてみますかと言われお願いしてみる。

「王女殿下の許可も得てますし、今日は貸し切りなので、こちらでやりましょうか」

 どうやら別室があるらしいけど、今日はここでやってくれるという。国の許可が必要ってことはやっぱり彼女は聖女なのだろう。となると、今から行う占いもかなり精度の高いもののはずだ。
 カードを取り出した男装夫人は何を占いますかときいてくる。

「んー、どうしようかな」

 軽い内容からいってみようかな? スローライフ領地管理へ転職する相談とか。

「俺とディーナ様の相性についてお願いします」
「ヴォルム!」

 女子かってツッコミ入るよ。そんな私を無視してヴォルムは立て続けに捲し立てる。

「どうしたら良い結婚生活が送れるか、ディーナ様にデレてもらうにはどういう所に気を付ければいいか、ディーナ様が」
「やめてよ!」

 うふふと笑う男装夫人は別で紙とペンも出してきた。

「ホロスコープも一緒に見ていきましょう」
「待って、ヴォルムの質問全部受けるの?!」
「ええ、お二人のこと占いますよ」
「待った待った! 仕事! 仕事にします! 私外交特使辞めるんですけど、その後スムーズに次の仕事見つかりますかな方でお願いします!」
「では両方みてみましょう」
「夫人んんんん!!」

 手ごわいぞ、このハニーフェイス系イケメンめ。儚げ王子面してるのに攻めてくるわ。

「ホロスコープ上、相性は良いですね。お二人で領地経営するのもいいかもしれません」

 生まれから分かる星の配置では相性が良いらしい。それを聞いてヴォルムが無言なのにあからさまに喜んだ。分かりやすい。

「カードだと現在……今はバランスがよくないですね。どちらかの想いが強すぎるのでは?」

 ヴォルムがぐいぐいなので仰る通りですよと内心ごちる。

「うーん……ディーナ嬢についてなんですが」

 呼び方が変わった。え、なに、そういうサービス? そういえばどういうタイプがいいか聞かれた気がする。これが男装カフェの仕様なの?

「自身のトラウマと向き合う必要があります」

 私が唯一恋愛に苦手意識を持っていることを見なければならないということね。トラウマってほどでもないけど、私が今向き合えって言われると恋愛面しか浮かばない。

「ヴォルムさんはぐいぐいがんがんでオッケーですね」

 え、これ以上?
 ちょ、ヴォルム、ドヤ顔やめてくれる?

「さっきのバランスのカードがあったので、ディーナ嬢のキャパに合わせつつアプローチしていくのがよさそうです。目安はこのカード。ディーナ嬢が立ち止まった時はぐいぐいを一旦やめて様子見です」
「成程」
「あと怪我、いいえ……病気? しやすいので気をつけてください」
「どっちかって分からないんですか?」
「いつもなら怪我って思えるんですけど、ちょっと違う感じがします」
「そうなんですね」

 どちらにしろ、無理はしないようにってことか。
 一枚のカード一つからこんなに沢山のことが読み取れるなんてすごいわ。ヴォルムは私との相性がよくて終始ご機嫌だし。確かに思っていた以上に性質としては合っていたのは面白い。だてに六年一緒にいるだけあるわね。

「すごい精度高いですね!」
「ありがとうございます!」

 性格の特徴もそれぞれ言い当てられて笑える。本来は手をとって相手の本当に深いところを見ていくらしい。

「そんな重要な話を私にしちゃっていいんですか?」

 彼女が聖女と呼ばれ王女から制限がかかっていたのは夫人の占いやみえるといった能力が理由である可能性が高い。でもこんなにオープンでいいのだろうか?

「お二人のことはお越しになる前からみえてましたし、カードも大丈夫だって出てたので」
「それって予知ですか?」
「そうですね。キンガ、あ、王女殿下に伝えたら会ってもいいか自ら話して決めるって。その後ならいくらでも占いしていいって言われたんです」

 だから王女との会談があったのか。王女が許可すれば夫人に会える。人柄が許されてよかった。

「なによりお二人は一連の悪意を本当に終わらせると出たんです」
「悪意……セモツ国ですか?」

 私の言葉にヴォルムが視線を寄越した。この場で話す内容ではない。けど、やっぱり確認しておいた方がいいだろう。

「ええ。セモツ国がこの西の大陸全てを巻き込む戦争を起こすのを未然に防ぐのがお二人です」
「英雄じゃん」

 ますますセモツ国の尻尾を掴まないといけない流れになった。なかなかハードな予言をしてくれる。

「ディーナ様」
「後で説明するわ」

 ヴォルムも察してはいるだろうけど、ネカルタス王国でヴェルディスと話したことと、ここで公爵と話したことを彼は知らない。詳しく話しておかないと近日中から始める村人偽装生活に支障がでるから全て話しておかないとね。

「占いを進めますね……お仕事ですが、ディーナ嬢は外交よりも財政の仕事の方が向いてます」

 確かに得意だったかも。帳簿見るの好きだったけど、途中任せちゃって直近は触ってなかったわね。

「ヴォルムさんは医療や人のお世話も向いてますよ」
「俺がお世話するのはディーナ様だけです」
「そこなの?」
「ふふふ。それでも大丈夫ですよ」

 適職から今後は外で過ごすといいとまでアドバイスをもらう。占いってなんとくでしか知らなかったけど、意外と深い世界で存外なんでも分かるのね。目から鱗が落ちるわ。

「あ、そろそろ夫も来ると思います」
「お仕事オッケーだなんて寛容な旦那様ですね」

 にしても終始キラッキラだな男装夫人。うちの王太子殿下よりも王子さまだよ。

 「旦那様!」

 行き来に時間かかるから仕方ないけど、だいぶ楽しんでから公爵は帰ってきた。ドアの方を見れば美しい長身の女性が立っている。
 え、女性?

「お疲れ様です。旦那様」
「ああ」
「なんで?!」

 キラキラ王子さまがクール美人女性の腕をとった。

「夫です」

 女性にぺこりと会釈された。

「?!?!」
「夫は女装してお店に来てくれるんです」

 なんでやねん。
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