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37話 潜入捜査、若い夫婦のフリをする
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「私はセモツ国へ潜入捜査の時にこの姿で行っていたので」
「ああ、スパイってことですか」
「女性よりも綺麗ですよね!」
「確かに」
お肌白くて潤い半端ないもんね。
「ウツィアの化粧品のおかげで」
「夫人の基礎化粧品買ってきます」
「ありがとうございます!」
折角なので公爵共々四人テーブル席にお茶となった。男装女装そのままだけど、少し見慣れてきたっぽい。
「村長から了承を得ましたので、明日から滞在可能です」
「ありがとうございます」
「しかし下働きを一人もいれなくてよいのですか? 物品や食料は揃えますが」
「構いません。そうでないと逆に怪しいですし」
「……そうですか。村長は若い夫婦が農業をする為に入ってきた、とするらしいです」
「夫婦?」
「はい」
ヴォルムが満足そうにしている。もっともらしく「信憑性と現実性があっていいですね」と言ってるし。私との相性占いもよかったし調子乗ってるわね。今後は自分の怪我か病気にさえ気を付ければ問題なく、恋愛面はお墨付きをもらっていたもの。
「明日朝餉の後にでもすぐ向かいたいのですが可能でしょうか」
「用意しましょう。私とウツィアも村まで案内を」
「ありがとうございます。それと公爵閣下、お伺いしても?」
さっきセモツへの潜入捜査時は女性の姿でと言っていた。つまりセモツのことをよく知っている。これはきくしかない。
「セモツはどのような国でしょうか。これから関わることになるのでより知っておきたいのですが」
「ああ。私は武力に関する場所によく潜入していて」
あまり統率された様子は見られないのに、妙に纏まっていて命じられたことに忠実だとか。
「セモツは潜入にも長けている。私が女装して潜入していたのはセモツを習ってというのもあって」
「え?」
「セモツのスパイは基本、性別を偽る所から始まります。元々戦いの場で私の顔が知れているというのもありましたが、セモツの性別を偽るスパイの慣習をうまく利用することにしました」
セモツ国のスパイは女性なら男装して、男性なら女装して潜入してくるらしい。その理由は洗脳手段の一つでもあり自我を曖昧にさせるためだ。我を弱くするってことだろうか。公爵が女装して潜入するのは、自分もセモツのスパイとして育てられている人間だという同族意識を持たせ油断させることも兼ねているのかもしれない。
「夫人の男装もそうしたところから?」
「いいえ。私はカードが男装したらいいと出たからです」
「そうでしたか」
聖女と言われ国に囲われるような立場だからセモツ国へスパイなんてありえなかったわね。でもこの婦人ならやってのけそう。
「あ、でも意外性があるといいかもって考えたのもありましたし、結婚する前、旦那様とお会いしてた時に男装というイメージはみえていたと思うんですが」
みえるみえないの話はよく分からないからな。
話を再びセモツ国に戻すことにした。
「公爵閣下。セモツ国のスパイはファンティヴェウメシイ王国にもいたのですか?」
「ああ。早い段階で捕らえ対策をとったので現在我が国にスパイはいない。王女殿下の夫が魔法で見張ってもくれているから確実でしょう」
「なるほど」
「恐らく、そちらの三国にも数名ずつは入り込んでいると思います」
公爵の見立てではスパイがいない国は自国と魔法大国ネカルタスぐらい。鎖国しないと潜入阻止できないって相当優秀だ。
「ドゥエツ王国にもセモツ国の人間は既にいるということになるわね」
「ディーナ様、手紙を書きますか?」
「そうね。どちらにしろファンティヴェウメシイ王国に残ってセモツの動向を見ていくから、そのことに加えて書いておこうかな」
男装夫人が「それなら王女殿下から預かった魔法ですぐに遅れる羊皮紙を使って下さい」とキラッキラの笑顔で言われた。
そうだった。公爵は女性で夫人は男性の姿だったわね。ふとした時に忘れてしまい、そして驚いてしまうわ。
「いっそ性別逆転して村人潜入捜査もありかな?」
「ループト公爵令嬢の髪は綺麗な白金色だから、その色を活かせば王子様みたいな男性になりそうですね!」
「いえいえ、夫人に敵う王子はいないと思いますよ」
「そうですか? ありがとうございます!」
とキラッキラ王子の隣から「するのですか」と女装公爵が至極真面目にきいてきたのをヴォルムが断っていた。農民のフリをするので精一杯ですので結構ですと。
まあそうね。農業中ウイッグとれても困るから、極々普通の農民というものになることにしよう。
「では明日よろしくお願いします」
「ああ。最大限助力しよう」
* * *
「滅茶苦茶いいとこじゃん」
村の端、国境線がよく見える開けた土地が拠点になった。家の前はそこそこの広さを持つ畑で、直前まで住んでいた夫婦が整えた状態で去っていったらしい。日が浅く育つものであれば、すぐにでも芽が出る土の具合だ。
「セモツが通る時は確実に見えますね」
ヴォルムと同じ国境線を見る。最短で楽に進むなら、この平地を通るだろう。海へ出る目的があるなら山を越える選択肢はない。ただし姿が丸見えなので私のように監視する側が圧倒的に有利になる。
「農業しながらセモツが動くの待とうか」
「はい」
最後まで公爵は心配してたけど、最後は夫人がなにかアドバイスして納得した。な村娘用の服に着替える。ちょっと綺麗すぎるから後で適度に使用感が出るようにしておこう。セモツの賊とは話さないからいいけど、遠目からでも村娘に見えるようにしないとね。
「ああ、スパイってことですか」
「女性よりも綺麗ですよね!」
「確かに」
お肌白くて潤い半端ないもんね。
「ウツィアの化粧品のおかげで」
「夫人の基礎化粧品買ってきます」
「ありがとうございます!」
折角なので公爵共々四人テーブル席にお茶となった。男装女装そのままだけど、少し見慣れてきたっぽい。
「村長から了承を得ましたので、明日から滞在可能です」
「ありがとうございます」
「しかし下働きを一人もいれなくてよいのですか? 物品や食料は揃えますが」
「構いません。そうでないと逆に怪しいですし」
「……そうですか。村長は若い夫婦が農業をする為に入ってきた、とするらしいです」
「夫婦?」
「はい」
ヴォルムが満足そうにしている。もっともらしく「信憑性と現実性があっていいですね」と言ってるし。私との相性占いもよかったし調子乗ってるわね。今後は自分の怪我か病気にさえ気を付ければ問題なく、恋愛面はお墨付きをもらっていたもの。
「明日朝餉の後にでもすぐ向かいたいのですが可能でしょうか」
「用意しましょう。私とウツィアも村まで案内を」
「ありがとうございます。それと公爵閣下、お伺いしても?」
さっきセモツへの潜入捜査時は女性の姿でと言っていた。つまりセモツのことをよく知っている。これはきくしかない。
「セモツはどのような国でしょうか。これから関わることになるのでより知っておきたいのですが」
「ああ。私は武力に関する場所によく潜入していて」
あまり統率された様子は見られないのに、妙に纏まっていて命じられたことに忠実だとか。
「セモツは潜入にも長けている。私が女装して潜入していたのはセモツを習ってというのもあって」
「え?」
「セモツのスパイは基本、性別を偽る所から始まります。元々戦いの場で私の顔が知れているというのもありましたが、セモツの性別を偽るスパイの慣習をうまく利用することにしました」
セモツ国のスパイは女性なら男装して、男性なら女装して潜入してくるらしい。その理由は洗脳手段の一つでもあり自我を曖昧にさせるためだ。我を弱くするってことだろうか。公爵が女装して潜入するのは、自分もセモツのスパイとして育てられている人間だという同族意識を持たせ油断させることも兼ねているのかもしれない。
「夫人の男装もそうしたところから?」
「いいえ。私はカードが男装したらいいと出たからです」
「そうでしたか」
聖女と言われ国に囲われるような立場だからセモツ国へスパイなんてありえなかったわね。でもこの婦人ならやってのけそう。
「あ、でも意外性があるといいかもって考えたのもありましたし、結婚する前、旦那様とお会いしてた時に男装というイメージはみえていたと思うんですが」
みえるみえないの話はよく分からないからな。
話を再びセモツ国に戻すことにした。
「公爵閣下。セモツ国のスパイはファンティヴェウメシイ王国にもいたのですか?」
「ああ。早い段階で捕らえ対策をとったので現在我が国にスパイはいない。王女殿下の夫が魔法で見張ってもくれているから確実でしょう」
「なるほど」
「恐らく、そちらの三国にも数名ずつは入り込んでいると思います」
公爵の見立てではスパイがいない国は自国と魔法大国ネカルタスぐらい。鎖国しないと潜入阻止できないって相当優秀だ。
「ドゥエツ王国にもセモツ国の人間は既にいるということになるわね」
「ディーナ様、手紙を書きますか?」
「そうね。どちらにしろファンティヴェウメシイ王国に残ってセモツの動向を見ていくから、そのことに加えて書いておこうかな」
男装夫人が「それなら王女殿下から預かった魔法ですぐに遅れる羊皮紙を使って下さい」とキラッキラの笑顔で言われた。
そうだった。公爵は女性で夫人は男性の姿だったわね。ふとした時に忘れてしまい、そして驚いてしまうわ。
「いっそ性別逆転して村人潜入捜査もありかな?」
「ループト公爵令嬢の髪は綺麗な白金色だから、その色を活かせば王子様みたいな男性になりそうですね!」
「いえいえ、夫人に敵う王子はいないと思いますよ」
「そうですか? ありがとうございます!」
とキラッキラ王子の隣から「するのですか」と女装公爵が至極真面目にきいてきたのをヴォルムが断っていた。農民のフリをするので精一杯ですので結構ですと。
まあそうね。農業中ウイッグとれても困るから、極々普通の農民というものになることにしよう。
「では明日よろしくお願いします」
「ああ。最大限助力しよう」
* * *
「滅茶苦茶いいとこじゃん」
村の端、国境線がよく見える開けた土地が拠点になった。家の前はそこそこの広さを持つ畑で、直前まで住んでいた夫婦が整えた状態で去っていったらしい。日が浅く育つものであれば、すぐにでも芽が出る土の具合だ。
「セモツが通る時は確実に見えますね」
ヴォルムと同じ国境線を見る。最短で楽に進むなら、この平地を通るだろう。海へ出る目的があるなら山を越える選択肢はない。ただし姿が丸見えなので私のように監視する側が圧倒的に有利になる。
「農業しながらセモツが動くの待とうか」
「はい」
最後まで公爵は心配してたけど、最後は夫人がなにかアドバイスして納得した。な村娘用の服に着替える。ちょっと綺麗すぎるから後で適度に使用感が出るようにしておこう。セモツの賊とは話さないからいいけど、遠目からでも村娘に見えるようにしないとね。
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