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魔法学園編
夏のデートイベント~ライアン~
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いよいよ夏休みも最後の週に入った。
シャーロットも帰ってきて、お土産をたくさんくれた。
その上で、きちんと宿題をやっていたかチェックもされた。
少しずつ生徒が帰ってきて学園も賑やかになって来た。
そんな中、寮監の先生から一通の招待状を受け取った。
「王立オーケストラ、コンサートの招待状?」
「あら、すごい、ボックス席じゃない。差出人はえっと……ライアン王子様だわ!」
「ライアン様が?」
「これは絶対に何が何でも行かなくては!明日の夜?マヤ、ドレスはある?」
「えっと、これとこれ……」
「あら、ヴィヴィアン洋服店の最新モデルじゃない! この青いのにしましょう! 髪は当日私が結ってあげるからね」
「そんなことまで出来るの?」
そうよとシャーロットは私にドレスを当ててみながら答えた。
「貧乏貴族だって言ったでしょ。使用人は本当に数人。母の髪で練習して、妹が社交界デビューするときは私が結ってあげたんだから」
シャーロットはまるで自分が招待されたかのような張り切りようだった。
私は、緊張しながら翌日を迎えた。
ドレスを着て髪を結われている鏡台の中の自分は自分ではないようだった。
シャーロットは鼻歌を歌いながら器用に髪を結っていく。
それから自身のメイク道具で私にメイクを施した。
「出来上がりよ!」
鏡の中の自分はまさにお姫様そのものだった。
約束の時間になり、私は学園の玄関で迎えを待った。
そこに美麗に装飾された馬車が止まり、その馬車に相応しい金色の王子様が降り立った。
白地に金糸で刺繍された燕尾服が髪の色と完璧に調和していた。
「お待たせしました、クラキ殿。これはお美しい……ですが、首元が少々寂しいですね。あれを」
従僕がそっと箱を開けた。
そこには金にブルーサファイアがあしらわれたネックレスが入っていた。
「失礼、クラキ殿」
私が止める暇もなく、ライアンはネックレスを手に取り、背後に回って私の首にかけた。
「うん。ドレスともよく似合っている。それでは参りましょう、プリンセス」
「あの、こんな高価なもの付けさせていただくわけにはいかないのですが……」
「お気になさらず。こちらの急なお誘いにお受けいただいたお礼です。今宵はゆっくりお楽しみください」
私はコルセットのせいではなく、本当に胃が痛くなりそうだった。
そんな私を見ながら、ライアンはいつもの柔和な笑顔を崩さない。
(でも、前に感じていた冷たさがいつの間にか消えているんだよね……)
誰にでも優しく、平等で、人望の厚い、優秀な王子様。
そんなライアンが一体何故私にこんなことをするのだろう。
「ご到着です」
私はライアンに手を引かれ、ランプに照らされたホールへと誘われる。
中は紅い絨毯が敷かれ、私は夢心地でふわふわとその上を歩いた。
階段を昇ると、そこにはホール一面を見渡せる特等席で、大勢の人々が開演を待っていた。
「ここって……」
「ええ、一等席を用意しました」
ソファーの座り心地も全然違う。うちのミトリのソファーとは段違いである。
「あの、私、コンサートって初めてなんですが」
「ボックス席ですから、多少のおしゃべりは大丈夫ですよ。気を楽にしてお楽しみください」
やがて緞帳が開き、オーケストラが現れた。
弦楽器、管楽器、金管楽器、打楽器、それにピアノと現代のクラッシックとこの世界でも楽器の様子はよく似ていた。
しかし、生で聞くとCDで聞くのとは全く違う迫力がある。
ホールも音をよく反響するよう設計されていて、途轍もない臨場感だった。
私は圧倒されたまま、コンサートはあっという間に終盤に入っていった。
「どうですか、こちらのコンサートは?」
「ええ。私の世界でもこのように素晴らしいコンサートに出会ったことはありません」
「それは良かった……ちょっと失礼」
ライアンは軽く会釈するとボックス席から消えていった。
私は不思議に思いながらその後ろ姿を目で追った。
次の曲が始まろうとしていてもライアンは戻ってこなかった。
心配になった私はライアンを探しに行こうとしたところ、従僕が私を押し留めた。
「ライアン様なら間もなくおいでになります。お席についてお待ちください」
私は大人しくソファーに身を沈めるしかなかった。
やがて次の曲が始まった。
指揮者が台に立つと、舞台の袖からライアンが現れた。
手にはヴァイオリンらしき楽器を持っている。
ライアンが現れると観客から歓声が上がった。
それを指揮者が収まるのを待って、指揮棒を振り出し、曲が始まった。
壮麗な曲で神聖さすら感じさせた。
ついにライアンのソロが始まった。
ライアンのヴァイオリンは歌うように高らかに柔らかく会場内に響き渡った。
曲が終わるとスタンディングオベーションで拍手は鳴りやまなかった。
ライアンは指揮者と握手を交わし、舞台を降りていった。
「ライアン様、素晴らしい演奏でした!」
ボックス席に戻って来たライアンに私は開口一番そう言った。
音楽で感動するという経験は私にとって初めてだった。
それほどライアンのヴァイオリンの技術も演奏も卓越していた。
「ありがとうございます。ぜひ、クラキ殿に聞いていただきたくて、無理を言いました」
「あの曲名のカンパニュラとはどういう意味ですか?」
「カンパニュラはこの西大陸に自生する花の名前です……その意味は『誠実』、そして『感謝』」
「誠実と感謝……」
「俺は幼い時から。絵画、音楽、剣術、帝王学……ありとあらゆることを叩きこまれました。私の母は教育熱心で、第二王子の俺を王位につかせるために誰にも『負けてはならない』と言い聞かされてきました」
でもとライアンは天井を見上げた。
つられて私も見上げると天井には聖女が雲に巻かれて天の神に誘われる絵が描いてあった。
「魔法学園に入って、クラキ殿に出会いました。英才教育を受けてきた俺でも貴方の努力には敵わなかった。それに強い嫉妬と劣等感に苦しみました。けれど、勉学や武術は順位などという小さな枠のものではなく、自分を磨き強くするものだとわかりました。そのために貴方という存在がより俺の能力を高めてくれることに気付けたのです……ありがとう、マヤ殿。貴方がこの世界に召喚されてくれたことを神に感謝します」
華やかなオーケストラの音色の中でライアンはそう語り、清々しい笑顔を見せた。
シャーロットも帰ってきて、お土産をたくさんくれた。
その上で、きちんと宿題をやっていたかチェックもされた。
少しずつ生徒が帰ってきて学園も賑やかになって来た。
そんな中、寮監の先生から一通の招待状を受け取った。
「王立オーケストラ、コンサートの招待状?」
「あら、すごい、ボックス席じゃない。差出人はえっと……ライアン王子様だわ!」
「ライアン様が?」
「これは絶対に何が何でも行かなくては!明日の夜?マヤ、ドレスはある?」
「えっと、これとこれ……」
「あら、ヴィヴィアン洋服店の最新モデルじゃない! この青いのにしましょう! 髪は当日私が結ってあげるからね」
「そんなことまで出来るの?」
そうよとシャーロットは私にドレスを当ててみながら答えた。
「貧乏貴族だって言ったでしょ。使用人は本当に数人。母の髪で練習して、妹が社交界デビューするときは私が結ってあげたんだから」
シャーロットはまるで自分が招待されたかのような張り切りようだった。
私は、緊張しながら翌日を迎えた。
ドレスを着て髪を結われている鏡台の中の自分は自分ではないようだった。
シャーロットは鼻歌を歌いながら器用に髪を結っていく。
それから自身のメイク道具で私にメイクを施した。
「出来上がりよ!」
鏡の中の自分はまさにお姫様そのものだった。
約束の時間になり、私は学園の玄関で迎えを待った。
そこに美麗に装飾された馬車が止まり、その馬車に相応しい金色の王子様が降り立った。
白地に金糸で刺繍された燕尾服が髪の色と完璧に調和していた。
「お待たせしました、クラキ殿。これはお美しい……ですが、首元が少々寂しいですね。あれを」
従僕がそっと箱を開けた。
そこには金にブルーサファイアがあしらわれたネックレスが入っていた。
「失礼、クラキ殿」
私が止める暇もなく、ライアンはネックレスを手に取り、背後に回って私の首にかけた。
「うん。ドレスともよく似合っている。それでは参りましょう、プリンセス」
「あの、こんな高価なもの付けさせていただくわけにはいかないのですが……」
「お気になさらず。こちらの急なお誘いにお受けいただいたお礼です。今宵はゆっくりお楽しみください」
私はコルセットのせいではなく、本当に胃が痛くなりそうだった。
そんな私を見ながら、ライアンはいつもの柔和な笑顔を崩さない。
(でも、前に感じていた冷たさがいつの間にか消えているんだよね……)
誰にでも優しく、平等で、人望の厚い、優秀な王子様。
そんなライアンが一体何故私にこんなことをするのだろう。
「ご到着です」
私はライアンに手を引かれ、ランプに照らされたホールへと誘われる。
中は紅い絨毯が敷かれ、私は夢心地でふわふわとその上を歩いた。
階段を昇ると、そこにはホール一面を見渡せる特等席で、大勢の人々が開演を待っていた。
「ここって……」
「ええ、一等席を用意しました」
ソファーの座り心地も全然違う。うちのミトリのソファーとは段違いである。
「あの、私、コンサートって初めてなんですが」
「ボックス席ですから、多少のおしゃべりは大丈夫ですよ。気を楽にしてお楽しみください」
やがて緞帳が開き、オーケストラが現れた。
弦楽器、管楽器、金管楽器、打楽器、それにピアノと現代のクラッシックとこの世界でも楽器の様子はよく似ていた。
しかし、生で聞くとCDで聞くのとは全く違う迫力がある。
ホールも音をよく反響するよう設計されていて、途轍もない臨場感だった。
私は圧倒されたまま、コンサートはあっという間に終盤に入っていった。
「どうですか、こちらのコンサートは?」
「ええ。私の世界でもこのように素晴らしいコンサートに出会ったことはありません」
「それは良かった……ちょっと失礼」
ライアンは軽く会釈するとボックス席から消えていった。
私は不思議に思いながらその後ろ姿を目で追った。
次の曲が始まろうとしていてもライアンは戻ってこなかった。
心配になった私はライアンを探しに行こうとしたところ、従僕が私を押し留めた。
「ライアン様なら間もなくおいでになります。お席についてお待ちください」
私は大人しくソファーに身を沈めるしかなかった。
やがて次の曲が始まった。
指揮者が台に立つと、舞台の袖からライアンが現れた。
手にはヴァイオリンらしき楽器を持っている。
ライアンが現れると観客から歓声が上がった。
それを指揮者が収まるのを待って、指揮棒を振り出し、曲が始まった。
壮麗な曲で神聖さすら感じさせた。
ついにライアンのソロが始まった。
ライアンのヴァイオリンは歌うように高らかに柔らかく会場内に響き渡った。
曲が終わるとスタンディングオベーションで拍手は鳴りやまなかった。
ライアンは指揮者と握手を交わし、舞台を降りていった。
「ライアン様、素晴らしい演奏でした!」
ボックス席に戻って来たライアンに私は開口一番そう言った。
音楽で感動するという経験は私にとって初めてだった。
それほどライアンのヴァイオリンの技術も演奏も卓越していた。
「ありがとうございます。ぜひ、クラキ殿に聞いていただきたくて、無理を言いました」
「あの曲名のカンパニュラとはどういう意味ですか?」
「カンパニュラはこの西大陸に自生する花の名前です……その意味は『誠実』、そして『感謝』」
「誠実と感謝……」
「俺は幼い時から。絵画、音楽、剣術、帝王学……ありとあらゆることを叩きこまれました。私の母は教育熱心で、第二王子の俺を王位につかせるために誰にも『負けてはならない』と言い聞かされてきました」
でもとライアンは天井を見上げた。
つられて私も見上げると天井には聖女が雲に巻かれて天の神に誘われる絵が描いてあった。
「魔法学園に入って、クラキ殿に出会いました。英才教育を受けてきた俺でも貴方の努力には敵わなかった。それに強い嫉妬と劣等感に苦しみました。けれど、勉学や武術は順位などという小さな枠のものではなく、自分を磨き強くするものだとわかりました。そのために貴方という存在がより俺の能力を高めてくれることに気付けたのです……ありがとう、マヤ殿。貴方がこの世界に召喚されてくれたことを神に感謝します」
華やかなオーケストラの音色の中でライアンはそう語り、清々しい笑顔を見せた。
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