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6.巨大黒熊と共闘して巨大黒蛇を倒す
しおりを挟む警戒を続けながら、その大きな気配に少しずつ近づく。
危険と判断したら、砂浜に向かって全力疾走するか、上空に避難するのを決めている。
樹々の間に、その気配同士が殺気を放ち続けている様子、つまり、2つの巨大な生き物の戦いの様子が見えて来た。
忍び足で、そっと近づいて枝の隙間から、覗く。
いたのは、巨大蛇だった。大きいが、巨大白蛇よりも2周りほど小さい。
黒熊を襲っている。どうなっているのか確認するのに少し時間がかかった。
黒熊に巨大蛇が絡みついていた。
どう見ても、黒熊が力負けしている。
放っておこうかと考えたが、弱い方に味方して、強い方を葬れば、多少とも危険が減るのではないか。
既に、刀の鍔に親指を乗せ、臨戦態勢になっている。
今の自分の力で倒せるかは確信がない。だが、力は満ちている。
ここに住むためには、倒さなければならない相手だ。決めた。
黒熊の胸を大蛇が締め上げている。黒熊は爪で硬い蛇の胴体を引っ搔くが、上滑りする。
大蛇は、熊の首にも巻き付き、締めあげる。
熊が締め上げている蛇の胴体に噛みつこうと、口を開けた。
硬い上に上滑りして、歯がたたない様子。
首の締め付けが激しくなり、黒熊は泡を吹いている。
覚悟を決めた与平は刀を抜いて、その戦いの中に走り込んだ。
渾身の一撃を黒蛇の頭に振り下ろした。
鱗が剥がれ深い傷がつき、白い頭蓋骨の一部が剥き出しになった。
巨大白蛇の動きが一瞬止まり、気味悪いその蛇眼が与平を捉えたが、怯えているようにも見える。
大蛇は黒熊の締め付けを解き、与平に尾を振り向けた。
足を踏んばり、刀で止めようとした。が、その尾は刀に届かず、眼には見えない何かに阻まれたように、そのまま、大蛇は弾き飛ばされた。
樹々を折りながら、樹の幹に当たって止まった。
与平は、黒蛇の頭の上空高くに飛ぶと、降下しながら両目を狙って刀を一閃、さらに一閃した。再び飛び上がり、林の中に降り立った。
黒蛇は頭を振り始めた。
両目を失った大蛇は辺り構わず、暴れる。
周囲の樹々を巻き込み、胴体のあちこちの鱗が剥げ、傷ついて行く。
巻き込まれないように、林の中で見守る。
暫くすると、黒蛇の動きが止まった。
何と、黒熊はまだ、生きていた。
気絶寸前で泡を吹いて倒れていたはずの黒熊がしぶとく生きていた。
よく見ると、黒蛇の尾を踏みつけている。
両目を失った大蛇の動きは鈍い。
そこに、黒熊の渾身の一撃が振り下ろされた。
黒蛇の頭が地面に叩きつけられた。
畳みかけるように、黒熊は頭に打撃を加え続ける。
まるで、祭りで若者が太鼓を鉢で叩く姿のようである。
大蛇は胴体に巻きこうとうねるが、力がない。大蛇の剥き出しになっていた頭骨が砕けて、ついに息絶えた。
黒熊は、座り込んだ。命を賭けた戦いだった。
疲労が激しいのは当たり前である。
座り込んだ熊の姿は、熊の人形のようにも見え、可愛くもある。
だが、人間で言えば、戦士だ。
良く戦った。
与平に気づき、じっと見ていたが、起き上がると、蛇を咥えて、引きずって行く。
その間。与平から目を離さない。
黒熊の大きさに違和感がある。農耕牛の3,4倍はある。
それだけ、大蛇も大きかったということになるのだが。この島の生き物は全て、大きいのか。
引きずって行くということは、家族の元へ帰るのだろう。
与平は共に戦った戦士と別れを告げた。
そこから離れて、浜辺の方向に向かう。
林が途切れると、砂浜だ。眩しくて手で太陽を遮る。
やっと見えて来た。
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