幕末の与平が異世界に行く

美瑠華麗

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7.『質問』が教える魔術を試す

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太陽に照らされてキラキラと光る砂浜と沖の波の飛沫。
遠くの海も輝いている。
熱い砂の上を海に向かって走る。
足の裏が熱くてたまらない。
浜辺に着くと、打ち寄せる波に飛び込んで足を冷やす。
波打ち際で暫く佇む。
断崖の白波を見たばかりだったので、打ち寄せる穏やかな波の音が心地いい。


遠くの海面は濃い群青色をしており、手前は薄い青色である。
海の深さで色が違う。足元は水色である。
波打ち際から沖の岩場まで遠浅になっており、魚が泳いでいるのがみえる。
透明度が異常に高い。故郷の海でも見たことがない。

波打ち際に足を出して、座る。
足に打ち寄せる波の感触を味わう。


喉の渇きを覚えると、掌から水を出して飲む。
欲しい物は思い描けば手に入る。
この島には丘の上から見る限り川らしいものはなかった。
しかし、動物はいるのだから、どこかに水源はありそうである。


精霊王には、出来ないことはないと言われたが、どうやるのか聞いていない。だが、考えるだけで何でもできる。

波打ち際に足を組んで座り、暫く考え込む。
《探知と鑑定を使えるようにしておく。己に》という精霊王の言葉を思い出した。

そう言えば、始めて島で目覚めた時、島の俯瞰図が見えたのも、同じ能力なのかもしれない。
要するに自分自身を探る。要するに、鑑定してみた。
すると、何と言うことか、目の前に画面が現れた。

名前    光の精霊(ヨヘイ)
性別    男(現在)
年齢    20歳
レベル   上限達成
全魔力量  20,000
残魔力量  5,000
属性    全属性
加護    なし
スキル   万能
質問


何が何だかわからない。
『質問』があったので、ポチってみた。

― 質問にお答えします―
声がする、一瞬たじろいだが、
「術の使い方を教えてくれ。」

- 何でもお聞きください-
「魔力量が随分減っているようだが。どうしてだ。」

― 昨日、亜空間を創造しました。最初に創造する時は魔力を相当量消費します。それ以降の消費量は殆ど発生しません。魔力は空中のマナを取り込むことにより回復します。光の精霊は、魔力を持つ人間あるいは魔獣を己の結界に取り込むことにより、魔力を吸収して、増やすこともできます―
「光の精霊? 結界?」

― 己の魔力を出して周りを囲み、防御のイメージを持つと、防御シールドあるは結界になります。この結界で相手を包み、魔力を吸い上げるイメージを持つと、魔力が己に移ります―
「拙者は光の精霊なのか。」

- 精霊王は光の精霊で、全ての精霊の頂点になります。与平殿は光の精霊で精霊王と同格となります-
「知らなかった。一般的な人間の魔力量はどの位だ。」

- 全ての人間が魔力を持っているわけではありません。持っている人間でも3,000以上の魔力を持つ者は殆どいません。平均で1,000から2,000位です-
「拙者の魔力量は異常に大きいことになるのか。もう一つ教えてくれ。レベルと言うのは何だ。」

- 強さの段階を示す数値で、数値が高ければ、より威力の高い魔術を使えるようになります。魔力を持っており、10以上のレベル持つ者は僅かです。10を超えると魔術師と呼ばれます-
「拙者は桁外れなのか。」

- 光の精霊ですから、当然のことです-
「拙者は光の精霊の加護を得たのだと勘違いしていたのか。」

- そういうことです。出来ないことはありません。願えば叶います。何より、精霊は食事を取らなくても死ぬことはありません-
「食べなくても死なない? どこまで反則なのだ。」


試しに炎球を出してみる。
その球を、見つめてさらに魔力を込めてみる。
少しずつ膨らんでゆく。
蜂の巣大になり、慌てて海面に放つ。
辺り一面、沸騰し、暫くして、小魚が浮いてきた。


食い物だ。
透明な水面に走り込んで、あわてて、かき集めて、浜辺に放り上げて行く。
30匹ほどが浜辺で砂まみれになっている。中には30㎝弱の魚もいる。豊漁だ。
魚を集めたが、どうやって運んだらいいのか。


『質問』に聞く。
「何か物を入れる魔術があればいいのだが。」

- アイテム空間を推奨します。この空間は時間停止しており、空間には限りがありますが、入れた食料等の劣化はありません。しかし、作成時に一定の魔力が消費されます。作成後の開閉及び維持には魔力は消費されません-

画面を出して見ると、アイテム空間と表示されている。ポチると、アイテム空間作成と出た。


集めた魚に手を置き、取り入れることを思い描くと、全部消えた。
取り出すことを考えると中に入っている収容物が頭に浮かぶ。
選ぶと、魚が現れた。何とも便利だ。当面の食い物も何とかなりそうだ。

ついつい、顔に笑みが零れる。
誰かが、見ていたら、きっと不気味な笑顔だと思うだろう。
だが、ここは、無人島。気にする必要はない。まだ、確かめたわけではないが。

確かめたい場所がある。気になっていた右側の岩場。人工水路があるのではと思った岩場である。

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