異世界召喚されて捨てられた僕が邪神であることを誰も知らない……たぶん。

レオナール D

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154.トラップ地帯(一階層・奥)

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 エルフガルドの中心部にある『大樹の城』。
 そこに侵入したウータとステラ、思念体のみの和葉は、エントランスホールを抜けて奥に進んだ。

「それにしても……わざわざ、私達を招き入れるようなことをするなんて、『風』の女神エアは何を考えているのでしょう」

 城の中を進みながら、ステラが疑問を口にする。

「ウータさんを危険視しているのであれば、もっと他にやりようがあったと思うんですよ。例えば、残っている他の女神……『光』と『闇』の二人にも救援を頼むとか」

『そのことですけど……おそらく、エアという名の女神はかなり享楽的な性格なのだと思います』

「享楽的……ですか?」

 前を進むウータの後ろで、ステラと和葉がそんな会話をする。

『牢屋に閉じ込めた私達の前で得意そうに語っていました……これはゲームなのだと。ゲームにはふさわしいプレイヤーが必要だとも話していました』

「プレイヤー……まさか、チェスでもしているつもりなのでしょうか?」

『わかりませんけど、彼女はかなり性格が悪いですよ。牢屋の前であんなことを……』

「あんなこと……?」

『彼女は人間の身体を乗っ取って操ることができるらしく、王女殿下……竜哉さんが思いを寄せていた女性の身体を使って、筆舌にしがたいことをしていたのです。おそらく、竜哉さんを苦しめて遊ぶために……!』

「それはムカつくよねえ」

 前を進んでいたウータが会話に入ってきた。

「どこかの国のナンチャラ姫がどうなろうと知ったことじゃないけど、竜哉を苦しめたのは酷いよ。お仕置きしてあげなくちゃ許せないよね」

 ウータが足を速めて、小走りになる。

「みんなが心配だね。急がなくっちゃ」

「はい、でも罠が仕掛けられているかもしれません。くれぐれも慎重にいきましょう」

「うん。大胆かつ慎重にだ……ね?」

 そこまで話したところで、ウータの足元でカチリと音がした。

「あ」

 次の瞬間、部屋の天井が勢いよく落下してきた。
 踏まれた蟻のように潰されかけるが……直前で四本の石柱が飛び出してきて、落ちてきた天井を支える。

「危ないよねえ。もうちょっとでペチャンコに……」

 言葉の途中で、床が開いた。
 そこから紫色のガスが噴き出してくる。

『毒です!』

「移動するよ」

 和葉が叫んだ。
 ウータが両手で二人を抱き寄せて、転移を発動。
 この城の内部は時空が歪んでいるため、長距離の転移は不可能だが……視野の範囲内であれば、どうにか転移することが可能だった。

「あ」

 しかし、再びカチリという発動音。
 今度は四方八方から無数の槍が浴びせられる。

「きゃあ!」

「ビックリするなあ、まるで忍者屋敷じゃないか」

 ウータが驚きつつ、今度は『神の火』を発動させる。
 燃え盛る業火が壁となって立ちふさがり、三人に襲いかかって来ていた槍を燃やし尽くす。

『かなり周到に用意しているみたいですね……兵士だけじゃなくて、罠まで張り巡らせているなんて』

「忍者屋敷で思いついたよ……こういうのはどうかな?」

 ウータがジャンプして、天井に手を触れた。

「塵になれ」

 天井の一部が塵となって崩れ落ちる。
 ウータは一度降りて二人の身体を掴むと、道ができた上の階に転移する。

「このまま、ショートカットして上に行こう。大幅に時間を短縮……」

「ゴッハアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」

「して……わあっ!」

 ウータの身体に大きな顎が喰らいついた。

「グルルルルルルルルッ!」

 顎の主は見上げるような巨大な獅子。
 頭部が二つあり、胴体は鱗で覆われ、背中には巨大な翼まで付いている。

「キマイラ……的なやつ?」

「グルウッ!」

「あいたっ……」

 未知の怪物が唸り声を上げながら、ウータの身体を噛み砕いた。
 ブチャリと湿った音が鳴って、真っ赤な血が床に飛び散ったのである。
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