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第15話 ペンギンだが男をみせる
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突如として現れた巨大なミミズによって、柊木翔子が丸呑みにされてしまった。
「ワームだ! みんな、走って!」
シャーロットが慌てて叫んだ。
地中から飛び出してきた巨大ミミズ……それは『ワーム』と呼ばれる魔物だったらしい。
「キュウ……!」
(ワーム……イングランドとかの伝説に出てくるドラゴンの亜種で地べたを這う蛇のような竜だったか? 種類によっては羽があったりもするけど、これは完全なミミズだな)
「どうしてアレがこんな下の階層に……! まともに戦っても勝機はない。脱出ポートまで走りなさい!」
「シャーロット教官、柊木さんは……!」
「もう間に合わない! 先に『死に戻って』いるはずだから、早く逃げなさい!」
シャーロットの声に叩かれ、他の三人が全力で走る。
揚羽だけは後ろ髪を引かれている様子だったが、脱出ポートがある転移門に向けて走っていく。
先頭を走っていたのは真っ先に逃げていたヘリヤだったが、足の短いペンギンを連れているせいで後ろから来た甘井に追い抜かれてしまう。
揚羽がヘリヤの背中を押しており、最後尾をシャーロットが続いていく。
「GYAOOOOOOOOOOOOOO!」
ワームが四人と一匹を追いかけてくる。
人間を一人丸呑みしているはずなのに、まだまだ満腹ではないようだ。
「クッ……仕方がない!」
「シャーロット教官!?」
立ち止まったシャーロットに揚羽も立ち止まりそうになる。
「止まらないで! そのまま走って!」
「ッ……!」
その声に背中を押されて、揚羽が後ろ髪を引かれる思いを断ち切った。
シャーロットが剣を抜いてワームと戦い、時間を稼いでくれる。
今のうちに、脱出ポートから逃げなくては。
「みんな、急ぎなさい!」
先に建物についた甘井が後続に向かって声を張り上げる。
冷静沈着、クールで無表情な甘井がここまで大声を出すのを始めて見た。
「甘井さん、先に行って!」
「……外で待っているわ」
甘井が建物の中に消える。
揚羽とヘリヤ、琥珀も遅れて、建物にたどり着いた。
「ハア、ハア……これが、てんい門?」
走ってきた直後で息を切らして、ヘリヤがつぶやく。
パルテノン神殿のような建物には柱はあれど壁や扉はない。
大理石らしき柱に囲まれているのは、ダンジョンの入口と同じような形状の門と人間の頭部ほどの宝石である。
緑色の宝石はどういう原理か宙に浮かんでおり、下には幾何学的な文様を描いた魔方陣があった。
「あの宝石よ! アレに触ったら戻れるはず……!」
揚羽がヘリヤと琥珀を誘導して、宝石に触れようとした。
「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!」
しかし……宝石に触れる寸前、身の毛もよだつような絶叫が浴びせられる。
見れば、ワームが建物の数メートル手前まで迫ってきていた。
シャーロットの姿はない。もしかして、もうやられてしまったのだろうか?
「GYOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!」
「あ……!」
ワームが巨大な口を開き、こちらに向かって灼熱の炎を噴き出してきた。
蛇やミミズに似ていても、ワームというのは立派なドラゴンの仲間だと思い知らされる。
(このままだと全滅だ……だったら、いっそ!)
「キュイッ!」
「アンバー!?」
琥珀が聖を突き飛ばして、ワームの前に立ちふさがる。
「キュオオオオオオオオオオオオオオッ!」
(フロストバースト! 最大出力!)
そして、全身全霊で氷の息吹を吐き出した。
体内にある全ての魔力を氷に変換したことで激しい脱力感に襲われるが、構うことなく力を振り絞る。
巨大なワームのブレスに対して、小さなペンギンの吐息はあまりにもか弱い。『蟷螂の斧』というのはこうやってできた言葉なのか。
「アンバー……!」
「ヘリヤさん、ダメだ! 彼に任せて行くんだ!」
しかし、ささやかな抵抗はそれでも実を結んだらしい。
琥珀の息吹によってごくわずかにワームの炎が緩んだことで、ヘリヤと揚羽が脱出ポートに触れることに成功した。
「キュオ……!」
(これでいい……召喚獣としての役割は果たした!)
自分の目的はあくまでもヘリヤを守ること。
彼女を差し置いて自分だけ助かるなど言語道断。盾になって死ぬべきは自分なのだから。
「GYAOOOOOOOOOOOOOOO!」
「キュオ、キュオ……」
(お前の顔、覚えたぜ。次に会ったら覚えていろよ……!)
心の中で中指を立てて、小さなペンギンの身体が炎に飲み込まれたのである。
「ワームだ! みんな、走って!」
シャーロットが慌てて叫んだ。
地中から飛び出してきた巨大ミミズ……それは『ワーム』と呼ばれる魔物だったらしい。
「キュウ……!」
(ワーム……イングランドとかの伝説に出てくるドラゴンの亜種で地べたを這う蛇のような竜だったか? 種類によっては羽があったりもするけど、これは完全なミミズだな)
「どうしてアレがこんな下の階層に……! まともに戦っても勝機はない。脱出ポートまで走りなさい!」
「シャーロット教官、柊木さんは……!」
「もう間に合わない! 先に『死に戻って』いるはずだから、早く逃げなさい!」
シャーロットの声に叩かれ、他の三人が全力で走る。
揚羽だけは後ろ髪を引かれている様子だったが、脱出ポートがある転移門に向けて走っていく。
先頭を走っていたのは真っ先に逃げていたヘリヤだったが、足の短いペンギンを連れているせいで後ろから来た甘井に追い抜かれてしまう。
揚羽がヘリヤの背中を押しており、最後尾をシャーロットが続いていく。
「GYAOOOOOOOOOOOOOO!」
ワームが四人と一匹を追いかけてくる。
人間を一人丸呑みしているはずなのに、まだまだ満腹ではないようだ。
「クッ……仕方がない!」
「シャーロット教官!?」
立ち止まったシャーロットに揚羽も立ち止まりそうになる。
「止まらないで! そのまま走って!」
「ッ……!」
その声に背中を押されて、揚羽が後ろ髪を引かれる思いを断ち切った。
シャーロットが剣を抜いてワームと戦い、時間を稼いでくれる。
今のうちに、脱出ポートから逃げなくては。
「みんな、急ぎなさい!」
先に建物についた甘井が後続に向かって声を張り上げる。
冷静沈着、クールで無表情な甘井がここまで大声を出すのを始めて見た。
「甘井さん、先に行って!」
「……外で待っているわ」
甘井が建物の中に消える。
揚羽とヘリヤ、琥珀も遅れて、建物にたどり着いた。
「ハア、ハア……これが、てんい門?」
走ってきた直後で息を切らして、ヘリヤがつぶやく。
パルテノン神殿のような建物には柱はあれど壁や扉はない。
大理石らしき柱に囲まれているのは、ダンジョンの入口と同じような形状の門と人間の頭部ほどの宝石である。
緑色の宝石はどういう原理か宙に浮かんでおり、下には幾何学的な文様を描いた魔方陣があった。
「あの宝石よ! アレに触ったら戻れるはず……!」
揚羽がヘリヤと琥珀を誘導して、宝石に触れようとした。
「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!」
しかし……宝石に触れる寸前、身の毛もよだつような絶叫が浴びせられる。
見れば、ワームが建物の数メートル手前まで迫ってきていた。
シャーロットの姿はない。もしかして、もうやられてしまったのだろうか?
「GYOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!」
「あ……!」
ワームが巨大な口を開き、こちらに向かって灼熱の炎を噴き出してきた。
蛇やミミズに似ていても、ワームというのは立派なドラゴンの仲間だと思い知らされる。
(このままだと全滅だ……だったら、いっそ!)
「キュイッ!」
「アンバー!?」
琥珀が聖を突き飛ばして、ワームの前に立ちふさがる。
「キュオオオオオオオオオオオオオオッ!」
(フロストバースト! 最大出力!)
そして、全身全霊で氷の息吹を吐き出した。
体内にある全ての魔力を氷に変換したことで激しい脱力感に襲われるが、構うことなく力を振り絞る。
巨大なワームのブレスに対して、小さなペンギンの吐息はあまりにもか弱い。『蟷螂の斧』というのはこうやってできた言葉なのか。
「アンバー……!」
「ヘリヤさん、ダメだ! 彼に任せて行くんだ!」
しかし、ささやかな抵抗はそれでも実を結んだらしい。
琥珀の息吹によってごくわずかにワームの炎が緩んだことで、ヘリヤと揚羽が脱出ポートに触れることに成功した。
「キュオ……!」
(これでいい……召喚獣としての役割は果たした!)
自分の目的はあくまでもヘリヤを守ること。
彼女を差し置いて自分だけ助かるなど言語道断。盾になって死ぬべきは自分なのだから。
「GYAOOOOOOOOOOOOOOO!」
「キュオ、キュオ……」
(お前の顔、覚えたぜ。次に会ったら覚えていろよ……!)
心の中で中指を立てて、小さなペンギンの身体が炎に飲み込まれたのである。
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