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第21話 美少女の手から魚を食べる
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異世界にペンギンの姿になって召喚されてしまい、クラスメイトの北欧系美少女に抱きしめられて一夜が明けた。
「はい、アンバー」
「キュ……」
「あーん」
「キュイ」
ヘリヤと揚羽、甘井の三人は朝の身支度を整えてから食堂らしき部屋に向かった。
食堂にはクラスメイトが集まっており、長テーブルに座って朝食を取っている。
クラスメイトは制服を着ている者が多く、こうして見ると異世界というよりも学食の風景のようだった。
ヘリヤ達三人もまたテーブルの一つについて、メイドが運んできた食事を食べ始める。
メニューはパンとベーコンエッグ、魚の切り身が入ったスープだった。
また、三人の食事とは別に野菜の切りくずや生魚も運ばれてくる。それはもしかしなくても琥珀の食事のようだった。
「あーん」
「キュ……」
ヘリヤが生魚を差し出してくるのを琥珀は微妙な気持ちになりながら嘴で食べる。
人生で初めての女の子からの「あーん」がまさか生魚になろうとは思わなかった。
不思議と上手く感じてしまうのがちょっと悔しい。アジによく似た魚は脂がのっているのか、妙に芳醇な味わいに感じられた。
(刺身でもない生魚をこんなにも美味く感じるだなんて……ペンギンにもなってみるもんだな)
「あーん」
「キュ……」
ヘリヤが心なしかウキウキとした様子で琥珀を餌付けする。
とても楽しそうで結構なことだ。ペンギンにエサやりをする機会など滅多にないだろうし、さぞや楽しいことだろう。
「へ、ヘリヤさん。私にもやらせてくれないか?」
「……私も」
揚羽と甘井もまたソワソワとした様子でヘリヤにねだり、琥珀に魚を差し出してくる。
拒む理由もないことだし、琥珀はパクパクと魚を飲み込んでいく。
「あ、楽しそうじゃん。エサやりしてんの?」
「柊木さん、もう大丈夫なの!?」
新たに食堂に入ってきたのは柊木翔子。
昨日、モンスターに生きたまま食べられたせいで、医務室で臥せっていたはずの女子生徒である。
「アタシにもやらせてよ。ほらほら、ペンプー。ごはんだよー」
柊木がニコニコと笑いながら皿の上の魚をつまみ、琥珀の嘴に押しつける。
「キュウ……」
自分をイジメていた柊木の手から食事を摂るのは屈辱的だったが、ここで拒んでヘソを曲げられたら、ヘリヤに迷惑がかかってしまうかもしれない。
やや憮然とした気持ちになりながら、差し出された魚の頭にパクついた。
「キュイ」
「あ、可愛いー! 良い子だね、ペンプー」
「Nej。ペンプーちがう。アンバー」
琥珀の頭をわしゃわしゃと撫でる柊木に、ヘリヤが唇を尖らせて抗議した。
「えー、アンバーなんて可愛くなくない? 絶対にペンプーの方が可愛いって!」
「アンバー、かわいい。かっこいい」
「私はペンちゃんがわかりやすくて良いと思うけど? 呼びやすくない?」
ヘリヤと柊木に揚羽まで加わり、朝食の席でよくわからない討論を始める。
「そもそも、アンバーってなんなの?」
「ほうせきの名前」
「フーン? 甘井っちはどう思う? ペンプーの方が可愛いよね?」
柊木が蚊帳の外にいた甘井に会話の水を向ける。
甘井はいつもの無表情のまま少しだけ考えて、口を開く。
「凍宮院氷雪丸」
「へ?」
「凍宮院氷雪丸……強そうだし、可愛い名前でしょう? 私達は日本人なのだから和風の名前を付けるべきじゃないかしら?」
「…………」
「…………」
柊木と揚羽が顔を引きつらせる。琥珀もである。
あまり話をしたことがなかったが、甘井がそういうセンスだとは知らなかった。
「みんな、どしたの……?」
日本語を理解できていないヘリヤだけが不思議そうな顔で首を傾げていたのである。
「はい、アンバー」
「キュ……」
「あーん」
「キュイ」
ヘリヤと揚羽、甘井の三人は朝の身支度を整えてから食堂らしき部屋に向かった。
食堂にはクラスメイトが集まっており、長テーブルに座って朝食を取っている。
クラスメイトは制服を着ている者が多く、こうして見ると異世界というよりも学食の風景のようだった。
ヘリヤ達三人もまたテーブルの一つについて、メイドが運んできた食事を食べ始める。
メニューはパンとベーコンエッグ、魚の切り身が入ったスープだった。
また、三人の食事とは別に野菜の切りくずや生魚も運ばれてくる。それはもしかしなくても琥珀の食事のようだった。
「あーん」
「キュ……」
ヘリヤが生魚を差し出してくるのを琥珀は微妙な気持ちになりながら嘴で食べる。
人生で初めての女の子からの「あーん」がまさか生魚になろうとは思わなかった。
不思議と上手く感じてしまうのがちょっと悔しい。アジによく似た魚は脂がのっているのか、妙に芳醇な味わいに感じられた。
(刺身でもない生魚をこんなにも美味く感じるだなんて……ペンギンにもなってみるもんだな)
「あーん」
「キュ……」
ヘリヤが心なしかウキウキとした様子で琥珀を餌付けする。
とても楽しそうで結構なことだ。ペンギンにエサやりをする機会など滅多にないだろうし、さぞや楽しいことだろう。
「へ、ヘリヤさん。私にもやらせてくれないか?」
「……私も」
揚羽と甘井もまたソワソワとした様子でヘリヤにねだり、琥珀に魚を差し出してくる。
拒む理由もないことだし、琥珀はパクパクと魚を飲み込んでいく。
「あ、楽しそうじゃん。エサやりしてんの?」
「柊木さん、もう大丈夫なの!?」
新たに食堂に入ってきたのは柊木翔子。
昨日、モンスターに生きたまま食べられたせいで、医務室で臥せっていたはずの女子生徒である。
「アタシにもやらせてよ。ほらほら、ペンプー。ごはんだよー」
柊木がニコニコと笑いながら皿の上の魚をつまみ、琥珀の嘴に押しつける。
「キュウ……」
自分をイジメていた柊木の手から食事を摂るのは屈辱的だったが、ここで拒んでヘソを曲げられたら、ヘリヤに迷惑がかかってしまうかもしれない。
やや憮然とした気持ちになりながら、差し出された魚の頭にパクついた。
「キュイ」
「あ、可愛いー! 良い子だね、ペンプー」
「Nej。ペンプーちがう。アンバー」
琥珀の頭をわしゃわしゃと撫でる柊木に、ヘリヤが唇を尖らせて抗議した。
「えー、アンバーなんて可愛くなくない? 絶対にペンプーの方が可愛いって!」
「アンバー、かわいい。かっこいい」
「私はペンちゃんがわかりやすくて良いと思うけど? 呼びやすくない?」
ヘリヤと柊木に揚羽まで加わり、朝食の席でよくわからない討論を始める。
「そもそも、アンバーってなんなの?」
「ほうせきの名前」
「フーン? 甘井っちはどう思う? ペンプーの方が可愛いよね?」
柊木が蚊帳の外にいた甘井に会話の水を向ける。
甘井はいつもの無表情のまま少しだけ考えて、口を開く。
「凍宮院氷雪丸」
「へ?」
「凍宮院氷雪丸……強そうだし、可愛い名前でしょう? 私達は日本人なのだから和風の名前を付けるべきじゃないかしら?」
「…………」
「…………」
柊木と揚羽が顔を引きつらせる。琥珀もである。
あまり話をしたことがなかったが、甘井がそういうセンスだとは知らなかった。
「みんな、どしたの……?」
日本語を理解できていないヘリヤだけが不思議そうな顔で首を傾げていたのである。
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