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第28話 僕は日本でもスキルを使う
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深い眠りから一転して、意識が覚醒していく。
ゆっくりと瞼を開くと暗い視界に光がさして、目の前が明るくなっていった。
「……知ってる天井だ」
知っていて当然。自分の部屋の天井なのだから。
先ほどまで女子四人とスイーツを食べていたはずなのに、目を覚ますと自室のベッドで眠っていた。
どうやら、日本に戻ってきたようだ。
(今さらだけど、俺が寝ている間、身体はどうなってるんだろうね?)
普通に考えれば精神……魂だけが召喚されているのだろうが、ひょっとすると、肉体も消えている可能性があった。
(あ、違うか。昨日、学校で召喚されている間に保健室に運ばれてたな。ということは……やっぱり身体はこっちの世界にあるのかな?)
「まあ、何でも良いけどね……」
考えていても仕方がない。
起き上がり、寝間着から制服に着替える。
今日もちゃんと学校に行く予定だ。引きこもり生活に戻りはしない。
昨日は坂木という男子生徒に絡まれて酷い目に遭ったが……身体も心も調子は良い。学校に行くのが楽しみでさえある。
(ステータスも上がっているし、今だったらケンカしても返り討ちにできるんじゃないか?)
そんな強気な考えさえ浮かんでくる。
クラスメイトが異世界に召喚する以前だったら考えられなかったが、琥珀はダンジョンで魔物と戦っている。
あの巨大なミミズ……ワームと比べると、坂木をはじめとした不良生徒などネズミのようなものだ。怖がる必要は全くない。
(我ながら逞しくなったもんだな……)
「おはよう。母さん、父さん」
「琥珀……!」
強いて不満を上げるとすれば、制服姿で朝の挨拶をしただけで母親が涙目になることくらいだろうか。感極まったような母親の顔に苦笑いが出てきてしまう。
大袈裟だと嘆きたくなるが、ずっと引きこもっていた琥珀が悪いので文句は言えない。
居心地が悪かったので、朝食のトーストとベーコンエッグを食べてからさっさと家を出る。
朝の涼しげな空気が琥珀の身体を包み込む。
早めに家を出てきたため、家の前の通りに人の姿はなかった。
「ピュッ! ピュッ!」
「ん?」
学校に向かって通学路を歩いている琥珀であったが、ふと道路の端の方から奇妙な鳴き声が聞こえてきた。
怪訝に思いながら近づいてみると、翼を怪我した雀がアスファルトの地面の上でジタバタと藻掻いている。
「ピュッ! ピュッ!」
悲痛な鳴き声を上げる雀。翼を怪我したせいでもう飛ぶこともできないのだろう。
自然界において、飛ぶことができなくなった野鳥の末路は決まっている。飢え死にするか、捕食者に襲われておしまいである。
「ム……」
以前の琥珀であれば見て見ぬふりをしていたかもしれないが、異世界でペンギン生活を送っている身としては同じ鳥類として他人事のような気がしない。
琥珀は怪我をした雀の傍らに膝をついて、覚えたばかりのスキルを発動させる。
「ヒーリング」
魔力が流れ込み、雀が淡い光に包まれた。
徐々に怪我が消えていき、血の痕すらも無くなってしまう。
「これでもう大丈夫だ」
「ピュウ?」
「ピュイ」
「ピュー!」
雀が不思議そうに小首を傾げる。
琥珀が安心させるように鳴くと、雀は嬉しそうに空を飛んでいった。
空高々と飛んでいく雀を見上げて、琥珀は不思議と穏やかな気持ちになって微笑んだ。
(やっぱり、異世界召喚も悪くはないね。出来ないことができるようになるが嬉しいことだって忘れていたよ)
これからも琥珀はペンギンとして異世界に召喚されて、ヘリヤに可愛がられてレベルが上がっていくのだろう。
そうして向上した能力、スキルで何をすればいいのか……改めて、考える時間を取った方が良いのかもしれない。
琥珀はウキウキと軽くなった心のまま、これまでずっと嫌いだったはずの高校へと向かっていったのである。
ゆっくりと瞼を開くと暗い視界に光がさして、目の前が明るくなっていった。
「……知ってる天井だ」
知っていて当然。自分の部屋の天井なのだから。
先ほどまで女子四人とスイーツを食べていたはずなのに、目を覚ますと自室のベッドで眠っていた。
どうやら、日本に戻ってきたようだ。
(今さらだけど、俺が寝ている間、身体はどうなってるんだろうね?)
普通に考えれば精神……魂だけが召喚されているのだろうが、ひょっとすると、肉体も消えている可能性があった。
(あ、違うか。昨日、学校で召喚されている間に保健室に運ばれてたな。ということは……やっぱり身体はこっちの世界にあるのかな?)
「まあ、何でも良いけどね……」
考えていても仕方がない。
起き上がり、寝間着から制服に着替える。
今日もちゃんと学校に行く予定だ。引きこもり生活に戻りはしない。
昨日は坂木という男子生徒に絡まれて酷い目に遭ったが……身体も心も調子は良い。学校に行くのが楽しみでさえある。
(ステータスも上がっているし、今だったらケンカしても返り討ちにできるんじゃないか?)
そんな強気な考えさえ浮かんでくる。
クラスメイトが異世界に召喚する以前だったら考えられなかったが、琥珀はダンジョンで魔物と戦っている。
あの巨大なミミズ……ワームと比べると、坂木をはじめとした不良生徒などネズミのようなものだ。怖がる必要は全くない。
(我ながら逞しくなったもんだな……)
「おはよう。母さん、父さん」
「琥珀……!」
強いて不満を上げるとすれば、制服姿で朝の挨拶をしただけで母親が涙目になることくらいだろうか。感極まったような母親の顔に苦笑いが出てきてしまう。
大袈裟だと嘆きたくなるが、ずっと引きこもっていた琥珀が悪いので文句は言えない。
居心地が悪かったので、朝食のトーストとベーコンエッグを食べてからさっさと家を出る。
朝の涼しげな空気が琥珀の身体を包み込む。
早めに家を出てきたため、家の前の通りに人の姿はなかった。
「ピュッ! ピュッ!」
「ん?」
学校に向かって通学路を歩いている琥珀であったが、ふと道路の端の方から奇妙な鳴き声が聞こえてきた。
怪訝に思いながら近づいてみると、翼を怪我した雀がアスファルトの地面の上でジタバタと藻掻いている。
「ピュッ! ピュッ!」
悲痛な鳴き声を上げる雀。翼を怪我したせいでもう飛ぶこともできないのだろう。
自然界において、飛ぶことができなくなった野鳥の末路は決まっている。飢え死にするか、捕食者に襲われておしまいである。
「ム……」
以前の琥珀であれば見て見ぬふりをしていたかもしれないが、異世界でペンギン生活を送っている身としては同じ鳥類として他人事のような気がしない。
琥珀は怪我をした雀の傍らに膝をついて、覚えたばかりのスキルを発動させる。
「ヒーリング」
魔力が流れ込み、雀が淡い光に包まれた。
徐々に怪我が消えていき、血の痕すらも無くなってしまう。
「これでもう大丈夫だ」
「ピュウ?」
「ピュイ」
「ピュー!」
雀が不思議そうに小首を傾げる。
琥珀が安心させるように鳴くと、雀は嬉しそうに空を飛んでいった。
空高々と飛んでいく雀を見上げて、琥珀は不思議と穏やかな気持ちになって微笑んだ。
(やっぱり、異世界召喚も悪くはないね。出来ないことができるようになるが嬉しいことだって忘れていたよ)
これからも琥珀はペンギンとして異世界に召喚されて、ヘリヤに可愛がられてレベルが上がっていくのだろう。
そうして向上した能力、スキルで何をすればいいのか……改めて、考える時間を取った方が良いのかもしれない。
琥珀はウキウキと軽くなった心のまま、これまでずっと嫌いだったはずの高校へと向かっていったのである。
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