ペンギン転生 異世界でペンギンになったが美少女に飼われたので別に良い

レオナール D

文字の大きさ
27 / 41

第27話 美少女から蜜をもらう

しおりを挟む
 事前調査をしていたという甘井の案内を受けて、王都にあるスイーツ店にやってきた。
 純喫茶っぽい外装の建物は行列こそできていないものの、店内はかなりにぎわっている。
 客のほとんどは若い女性か、あるいはカップル。いずれも和気あいあいとしてスイーツをんでいる。

「わっ……これは白玉じゃないか! おまけにアンコまで……!?」

「世界観と合ってないわね。美味だから問題はないけれど」

 揚羽が驚きの声を上げて、甘井が冷静な口調ながらも休みなくスプーンを動かす。

 窓際のボックス席に座った四人と一匹。
 彼らの下に運ばれてきたのは白玉入りのあんみつ。明らかに和風色のあるスイーツだった。
 異世界に突如として現れた和スイーツに柊木が首を傾げる。

「いやいや……何でヨーロッパぽい世界で白玉あんみつが出てくるのかな? おかしくない?」

「この店を紹介してくれたメイドさんによると、お米も小豆もダンジョンで採れるそうよ。それなりに貴重な物らしいけど」

「へー、そうなんだ。ダンジョンで採れるんだ」

「調理法とかは過去に召喚された日本人が広めたらしいわ。味はもう一工夫というところだけど」

「パクパク」

 どこか得意げな様子で解説しながら食べている甘井に対して、ヘリヤは無言であんみつを口に運んでいる。

「アンバー」

「キュイ」

 そして、時折、スプーンを横に差し出して琥珀にあんみつを分けてくれる。
 琥珀が小さな嘴であんみつをつつくと、口の中に甘い風味が広がった。

(悪くはないけど……甘井の言うとおり、ちょっと工夫が足りないってところかな?)

 異世界で日本のスイーツが食べられるのなら十分なのかもしれないが、できれば果物や黄粉きなこ、抹茶などで彩りが欲しいところである。

(やっぱり材料が足りないんだろうな。ダンジョンで採れる食物で日本のスイーツを無理やりに再現したってところか。それにしても……)

 アンバーはテーブル席にいる一同を見回す。
 右隣にヘリヤ、左隣に揚羽。対面には柊木と甘井が座っている。

(まさか異世界でペンギンになって、女の子とデートをすることになるとは思わなかったよ。しかも四人同時に。日本だったら考えられなかったね)

「ラーメンやお蕎麦を出すレストランもあるそうよ。意外と日本の文化が根付いているようね、この国には」

「ほほう……それじゃあ、食べ物に関してはホームシックにならなくて済みそうだな。出来れば寿司なども食べたいところだが」

「ダンジョンには魚が獲れる階層もあるそうだから、技術的には不可能ではないわね。とはいえ……プロの寿司職人が偶然、召喚される可能性も低いだろうし、魚はあってもお酢は手に入らないと思うわ」

「そうか……寿司は食べられないか。私は和食党なんだけどな」

 甘井の説明に揚羽が肩を落とす。
 女サムライのような外見の揚羽であったが、やはり見た目の通りに和を好む人間のようだ。

「まあ、ダンジョンを攻略して日本に帰るまでの我慢だ。来年は受験だし、早めに帰りたいものだな」

「うへー、揚羽っちってば嫌な事思い出させないでよね。勉強やだー」

 柊木が嫌そうな顔をする。
 琥珀の記憶では、柊木の成績は底辺に近いあたりをさまよっていた。異世界召喚によりさらに遅れが生じるだろうし、受験勉強はかなり厳しいものになるだろう。

「ま、アタシ達はダンジョンで手に入る財宝があるからね。日本に帰るときには億万長者だろうし、今さら受験とかいらないかもね」

「そういえば……服屋の店長さんは仲間が日本に帰るのに三年かかったと言っていたわね。そこから受験をはじめたとしてもすでに二浪扱い。大学進学よりも、別の人生を考えておいた方が良いかもしれないわ」

「うわっ! マジヤバじゃん! 甘井っち嫌なところ突くわー」

「ダンジョンを攻略すると神様が願いをかけてくれるそうだけど……願いの仕方次第では、私達が召喚されたときに時間を巻き戻してもらえるかもしれないわね。もちろん、まずはダンジョンを攻略しないといけないから、捕らぬ狸の皮算用だけど」

「キュウ」

(もしも時間を巻き戻せるとして、そうなったら俺はどうなるんだ?)

 琥珀は現代日本と異世界を行き来しているが、もしもクラスメイトが時間を逆行したらどのような扱いになるのか不明である。

(僕がいる世界と彼らがいる世界がパラレルワールドになるのかもしれないな。そうなったら、ヘリヤさんともお別れか……)

「キュイ……」

 そんなことを考えているうちに眠気が襲ってきた。
 満腹になった殻だろうか……瞼がどんどん重くなっていき、意識が遠のいていく。

「アンバー?」

「キュウ……」

 遠くでヘリヤが自分を呼ぶ声を聞きながら……琥珀は深い眠りについていったのである。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。

転移特典としてゲットしたチートな箱庭で現代技術アリのスローライフをしていたら訳アリの女性たちが迷い込んできました。

山椒
ファンタジー
そのコンビニにいた人たち全員が異世界転移された。 異世界転移する前に神に世界を救うために呼んだと言われ特典のようなものを決めるように言われた。 その中の一人であるフリーターの優斗は異世界に行くのは納得しても世界を救う気などなくまったりと過ごすつもりだった。 攻撃、防御、速度、魔法、特殊の五項目に割り振るためのポイントは一億ポイントあったが、特殊に八割割り振り、魔法に二割割り振ったことでチートな箱庭をゲットする。 そのチートな箱庭は優斗が思った通りにできるチートな箱庭だった。 前の世界でやっている番組が見れるテレビが出せたり、両親に電話できるスマホを出せたりなど異世界にいることを嘲笑っているようであった。 そんなチートな箱庭でまったりと過ごしていれば迷い込んでくる女性たちがいた。 偽物の聖女が現れたせいで追放された本物の聖女やら国を乗っ取られて追放されたサキュバスの王女など。 チートな箱庭で作った現代技術たちを前に、女性たちは現代技術にどっぷりとはまっていく。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

優の異世界ごはん日記

風待 結
ファンタジー
月森優はちょっと料理が得意な普通の高校生。 ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。 未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。 彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。 モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。

処理中です...