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第27話 美少女から蜜をもらう
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事前調査をしていたという甘井の案内を受けて、王都にあるスイーツ店にやってきた。
純喫茶っぽい外装の建物は行列こそできていないものの、店内はかなりにぎわっている。
客のほとんどは若い女性か、あるいはカップル。いずれも和気あいあいとしてスイーツを食んでいる。
「わっ……これは白玉じゃないか! おまけにアンコまで……!?」
「世界観と合ってないわね。美味だから問題はないけれど」
揚羽が驚きの声を上げて、甘井が冷静な口調ながらも休みなくスプーンを動かす。
窓際のボックス席に座った四人と一匹。
彼らの下に運ばれてきたのは白玉入りのあんみつ。明らかに和風色のあるスイーツだった。
異世界に突如として現れた和スイーツに柊木が首を傾げる。
「いやいや……何でヨーロッパぽい世界で白玉あんみつが出てくるのかな? おかしくない?」
「この店を紹介してくれたメイドさんによると、お米も小豆もダンジョンで採れるそうよ。それなりに貴重な物らしいけど」
「へー、そうなんだ。ダンジョンで採れるんだ」
「調理法とかは過去に召喚された日本人が広めたらしいわ。味はもう一工夫というところだけど」
「パクパク」
どこか得意げな様子で解説しながら食べている甘井に対して、ヘリヤは無言であんみつを口に運んでいる。
「アンバー」
「キュイ」
そして、時折、スプーンを横に差し出して琥珀にあんみつを分けてくれる。
琥珀が小さな嘴であんみつをつつくと、口の中に甘い風味が広がった。
(悪くはないけど……甘井の言うとおり、ちょっと工夫が足りないってところかな?)
異世界で日本のスイーツが食べられるのなら十分なのかもしれないが、できれば果物や黄粉、抹茶などで彩りが欲しいところである。
(やっぱり材料が足りないんだろうな。ダンジョンで採れる食物で日本のスイーツを無理やりに再現したってところか。それにしても……)
アンバーはテーブル席にいる一同を見回す。
右隣にヘリヤ、左隣に揚羽。対面には柊木と甘井が座っている。
(まさか異世界でペンギンになって、女の子とデートをすることになるとは思わなかったよ。しかも四人同時に。日本だったら考えられなかったね)
「ラーメンやお蕎麦を出すレストランもあるそうよ。意外と日本の文化が根付いているようね、この国には」
「ほほう……それじゃあ、食べ物に関してはホームシックにならなくて済みそうだな。出来れば寿司なども食べたいところだが」
「ダンジョンには魚が獲れる階層もあるそうだから、技術的には不可能ではないわね。とはいえ……プロの寿司職人が偶然、召喚される可能性も低いだろうし、魚はあってもお酢は手に入らないと思うわ」
「そうか……寿司は食べられないか。私は和食党なんだけどな」
甘井の説明に揚羽が肩を落とす。
女サムライのような外見の揚羽であったが、やはり見た目の通りに和を好む人間のようだ。
「まあ、ダンジョンを攻略して日本に帰るまでの我慢だ。来年は受験だし、早めに帰りたいものだな」
「うへー、揚羽っちってば嫌な事思い出させないでよね。勉強やだー」
柊木が嫌そうな顔をする。
琥珀の記憶では、柊木の成績は底辺に近いあたりをさまよっていた。異世界召喚によりさらに遅れが生じるだろうし、受験勉強はかなり厳しいものになるだろう。
「ま、アタシ達はダンジョンで手に入る財宝があるからね。日本に帰るときには億万長者だろうし、今さら受験とかいらないかもね」
「そういえば……服屋の店長さんは仲間が日本に帰るのに三年かかったと言っていたわね。そこから受験をはじめたとしてもすでに二浪扱い。大学進学よりも、別の人生を考えておいた方が良いかもしれないわ」
「うわっ! マジヤバじゃん! 甘井っち嫌なところ突くわー」
「ダンジョンを攻略すると神様が願いをかけてくれるそうだけど……願いの仕方次第では、私達が召喚されたときに時間を巻き戻してもらえるかもしれないわね。もちろん、まずはダンジョンを攻略しないといけないから、捕らぬ狸の皮算用だけど」
「キュウ」
(もしも時間を巻き戻せるとして、そうなったら俺はどうなるんだ?)
琥珀は現代日本と異世界を行き来しているが、もしもクラスメイトが時間を逆行したらどのような扱いになるのか不明である。
(僕がいる世界と彼らがいる世界がパラレルワールドになるのかもしれないな。そうなったら、ヘリヤさんともお別れか……)
「キュイ……」
そんなことを考えているうちに眠気が襲ってきた。
満腹になった殻だろうか……瞼がどんどん重くなっていき、意識が遠のいていく。
「アンバー?」
「キュウ……」
遠くでヘリヤが自分を呼ぶ声を聞きながら……琥珀は深い眠りについていったのである。
純喫茶っぽい外装の建物は行列こそできていないものの、店内はかなりにぎわっている。
客のほとんどは若い女性か、あるいはカップル。いずれも和気あいあいとしてスイーツを食んでいる。
「わっ……これは白玉じゃないか! おまけにアンコまで……!?」
「世界観と合ってないわね。美味だから問題はないけれど」
揚羽が驚きの声を上げて、甘井が冷静な口調ながらも休みなくスプーンを動かす。
窓際のボックス席に座った四人と一匹。
彼らの下に運ばれてきたのは白玉入りのあんみつ。明らかに和風色のあるスイーツだった。
異世界に突如として現れた和スイーツに柊木が首を傾げる。
「いやいや……何でヨーロッパぽい世界で白玉あんみつが出てくるのかな? おかしくない?」
「この店を紹介してくれたメイドさんによると、お米も小豆もダンジョンで採れるそうよ。それなりに貴重な物らしいけど」
「へー、そうなんだ。ダンジョンで採れるんだ」
「調理法とかは過去に召喚された日本人が広めたらしいわ。味はもう一工夫というところだけど」
「パクパク」
どこか得意げな様子で解説しながら食べている甘井に対して、ヘリヤは無言であんみつを口に運んでいる。
「アンバー」
「キュイ」
そして、時折、スプーンを横に差し出して琥珀にあんみつを分けてくれる。
琥珀が小さな嘴であんみつをつつくと、口の中に甘い風味が広がった。
(悪くはないけど……甘井の言うとおり、ちょっと工夫が足りないってところかな?)
異世界で日本のスイーツが食べられるのなら十分なのかもしれないが、できれば果物や黄粉、抹茶などで彩りが欲しいところである。
(やっぱり材料が足りないんだろうな。ダンジョンで採れる食物で日本のスイーツを無理やりに再現したってところか。それにしても……)
アンバーはテーブル席にいる一同を見回す。
右隣にヘリヤ、左隣に揚羽。対面には柊木と甘井が座っている。
(まさか異世界でペンギンになって、女の子とデートをすることになるとは思わなかったよ。しかも四人同時に。日本だったら考えられなかったね)
「ラーメンやお蕎麦を出すレストランもあるそうよ。意外と日本の文化が根付いているようね、この国には」
「ほほう……それじゃあ、食べ物に関してはホームシックにならなくて済みそうだな。出来れば寿司なども食べたいところだが」
「ダンジョンには魚が獲れる階層もあるそうだから、技術的には不可能ではないわね。とはいえ……プロの寿司職人が偶然、召喚される可能性も低いだろうし、魚はあってもお酢は手に入らないと思うわ」
「そうか……寿司は食べられないか。私は和食党なんだけどな」
甘井の説明に揚羽が肩を落とす。
女サムライのような外見の揚羽であったが、やはり見た目の通りに和を好む人間のようだ。
「まあ、ダンジョンを攻略して日本に帰るまでの我慢だ。来年は受験だし、早めに帰りたいものだな」
「うへー、揚羽っちってば嫌な事思い出させないでよね。勉強やだー」
柊木が嫌そうな顔をする。
琥珀の記憶では、柊木の成績は底辺に近いあたりをさまよっていた。異世界召喚によりさらに遅れが生じるだろうし、受験勉強はかなり厳しいものになるだろう。
「ま、アタシ達はダンジョンで手に入る財宝があるからね。日本に帰るときには億万長者だろうし、今さら受験とかいらないかもね」
「そういえば……服屋の店長さんは仲間が日本に帰るのに三年かかったと言っていたわね。そこから受験をはじめたとしてもすでに二浪扱い。大学進学よりも、別の人生を考えておいた方が良いかもしれないわ」
「うわっ! マジヤバじゃん! 甘井っち嫌なところ突くわー」
「ダンジョンを攻略すると神様が願いをかけてくれるそうだけど……願いの仕方次第では、私達が召喚されたときに時間を巻き戻してもらえるかもしれないわね。もちろん、まずはダンジョンを攻略しないといけないから、捕らぬ狸の皮算用だけど」
「キュウ」
(もしも時間を巻き戻せるとして、そうなったら俺はどうなるんだ?)
琥珀は現代日本と異世界を行き来しているが、もしもクラスメイトが時間を逆行したらどのような扱いになるのか不明である。
(僕がいる世界と彼らがいる世界がパラレルワールドになるのかもしれないな。そうなったら、ヘリヤさんともお別れか……)
「キュイ……」
そんなことを考えているうちに眠気が襲ってきた。
満腹になった殻だろうか……瞼がどんどん重くなっていき、意識が遠のいていく。
「アンバー?」
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遠くでヘリヤが自分を呼ぶ声を聞きながら……琥珀は深い眠りについていったのである。
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