この青い空の下で

山吹イリア

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青空と星空

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 街から海に延びる一本の橋。それは水晶で出来ているのか、下の青が透けて見える。
 その橋を渡ると、太陽の光を反射して輝く透明な城がそびえていた。それは文字通り、海に浮かんでいるよう。
「どっしえぇぇえええええっ!!?」
「開口一番、変な声を上げないでくださいます?」
 サニィは隣で耳を塞ぎながら言った。
「…私も声を上げたい気持ちですよ。マシュマロを盗み食いしたサニィさんがまさか王族の方だったとは…。」
 彼女はびくっと体を震わせて沈黙する。
 ひとしきり声を出し終えたソラはサニィの方を向き、
「あ、あたしもアーサーと同じ理由だから。マシュマロ盗み食い少女。」
笑顔で言い放つ。サニィは対抗してソラを睨みつける。
「先程より言葉遣いが乱雑なのが気に触るのですけれど…」
 二人の間に火花が…
「ま、それは冗談として。
 サニィ、あなたほんとに王族なの?」
 散る前に質問を投げかける。
 すると、サニィは答える代わりに城へ向かって歩き出した。扉のない城の壁に向かって。
「ちょっと!サニィ?」
 ソラは彼女を追いかける。
 そのとき、扉が目の前に突然現れ、重厚そうな扉は音もなく開いた。
 そして、赤みがかかる金色をふわりとなびかせて王女は振り返った。
「これが答えですわ。」


***


 城の中は壁や天井、床に至るまで透明な水晶でできていて。どういうわけか水が流れ、色鮮やかな魚が泳いでいる。
 城は透明な水晶でできているはずなのに。さらにどういうわけか、中から外は見えないし、外から中も見えない。
「どうなってるんですかね。この城は。」
 アーサーは魚を目で追いながら呟く。
 三人は不思議な城の中を少し歩いて、一つの部屋に入った。
「ようこそ、我が城へ。歓迎しよう、客人よ。」
 部屋では男と女、二人の人物が待っていた。
 男は海の青を切り取ったような色の髪と目を持っている。
 青年と見間違えるほど若々しく見えるが、口元にたくわえた髭のおかげで年相応の貫禄を醸し出している。
 女の方は穏やかに微笑んで、彼の横に佇んでいた。
 銀色の髪を上品にまとめ、髪と同じ色の、でも決して派手ではないティアラを頭に乗せている。散りばめられた赤い石とのコントラストが印象に残る。
 サニィは二人の元へ歩み寄ると、口を開いた。
「お父様、お母様、御紹介いたします。こちら、ソラさんとアーサーさん。
 お姉様を探してくださる、心強い方々ですわ。」
「ふむ。サニィの試練を突破したとは、なんと心強い。」
「サニィ…また危険なことを…」
 ソラとアーサー、二人には話の筋が全く見えない。
 しかし、親子の会話に入る隙もなく、ただ見ていることしかできなかった。
 「あの、すみません!」
 耐えきれなくなってソラは声を上げた。
 ぴたっ、と親子の会話が止まる。
「おや、申し訳ない。自己紹介が遅れたな。
 私は、ティレニアス王国国王、ラウディだ。こっちは、妻のノア。
 ようこそ。水の都、ティレニアス・シティへ。」
 いや、自己紹介をして欲しかったのではなくて。
 ラウディ王の横でノア王妃が礼をする。
「…食事にいたしましょう。温かいうちにお召し上がりくださいな。」
 ソラとアーサーは困った顔で目を合わせ、促されるまま、テーブルについた。
 水晶でできているであろう大きなテーブルにも、変わらず魚が泳いでいる。
「私は、というよりそこのサニィは、海の中が大好きでな。」
 王はそう言うと、パチンと指を鳴らした。
 すると、城のいたるところを泳いでいた魚が一瞬にして消えた。
「…?!」
「だが、流石に食事時には気が散るであろう。」
 彼はにこやかに微笑んで頬杖をついた。
 それが合図だったかのように、食事が運ばれてくる。
「あの、恐縮ですが、質問が…」
 恐る恐る手を挙げるソラ。
「どうぞ。ソラ殿。」
「話の筋が全く見えないのですが、王は何をお望みで…?」
 隣ではアーサーもそうそう、と頷きながら王を見つめる。
「おや。これは申し訳ない。サニィから聞いておらんか。」
「ええ…」
 彼はサニィ、と小さく声をかけた。
 サニィは父と目を合わせてから静かに立ち上がった。
「申し遅れました。わたくしは、ティレニアス王国王女、サニィ=オスマンサス=ランジュ=ティレニアス。どうぞ、お見知り置きを。」
 気品漂う仕草で話を続けた。
「単刀直入に言わせていただきます。
 わたくしのお姉様を探し出してください。」
 彼女はそう言って、ぺこりと頭を下げたのだった。


***


 要するに、話はこうだ。
 数日前から姿が見えなくなっているサニィの姉を探し出してほしい。
 しかし、街の人に王女が行方不明だと知れたらおおごとである。それならば、旅の者に依頼しては、と考えた。
 そこでサニィは海辺で旅人を探すことにしたのだ。
 ソラとアーサーはそんな話をご馳走とともに聞いていた。
「で、盗み食いをした、と。」
「そ、それは、見たこともない美味しそうな物がありましたので、成り行き上、避けられぬ事態ですわ!」
 食後の紅茶の香りを楽しみながらも、ジト目で言うソラ。
 アーサーは手を挙げて、
「サニィさんに質問があります。」
「どうぞ。」
 ティーカップを静かに置く。
「何故私たちに試練を?」
「はっはっは。それは愚問だよ、アーサー殿。」
 サニィの代わりにラウディ王が笑いながら答えた。
「娘が一緒に旅をするというのに、いざという時頼りにならない者を雇っても仕方がないだろう?」
「…って、ちょっと待った!
 あたしは一緒に旅をするだなんて一言も聞いていませんけどっ、ごほっ、ごほっ!」
「ソラ、落ち着いてください。」
 驚いて紅茶を咳き込むソラの背中をさする。
「私は、サニィさんが一緒に来ると思っていましたよ。何しろ、私たちはお姉さんの容姿がわかりませんからね。」
 アーサーはそう言って席を立つ。同時にラウディ王も立ち上がり、頭を下げた。
「娘たちを頼む。ソラ殿、アーサー殿。」


***


 「 歩きにくい、足が痛い、喉が渇いた…疲れましたわ!!もう!!」
 文句を言うだけ言ってその場に座り込むサニィ。
 何で舗装されていない道というものは、こんなにも歩きにくいのかしら…
 ああ、疲れているのとイライラするので、文句しかでてこないですわ。
「ぎゃー!もう!文句をたらたらたらたら!ちょうどそこに小川があるから、お水でも飲んできたらいいわよ!」
サニィは涙目でキッとソラを睨んで、小川へとフラフラ歩いていく。
「一緒に行きましょうか?」
「いいですわ!!」
 アーサーの言葉を最後まで聞かず答える。
 ああ、もう、八つ当たりしてますわ、わたくし。
 城から出てからというもの。
 一行はしっかりと舗装されていない街道を隣街へと進んでいた。
 サニィはふわふわのドレスから、動きやすいワンピースに着替え、ロングブーツを履いている。
 小川の水を少し飲んだところで、隣に人がいるのに気がついた。
「おねえさんの、いし、きれい。」
 まだ子どもだろうか、言葉がたどたどしい。
 サニィは、これ?と言って、ティアラからぶら下がっている青い石を指差した。
「それ、パティにちょうだい?」


***


 「にしても、遅いですね。」
「そうね。道にでも迷ってるのかな…」
「それはソラでしょう?」
 ニヤッとソラを見つめて一言。
 ソラは、いじわる、と頰を膨らませた。
「ところで、いくつか質問しても?」
「あたしにわかる範囲なら。」
 するとアーサーは指を一本ずつ立てながら言った。
「ひとつ。魔法について。
 ふたつ。空にいつも見える虹について。
 そして、みっつ。私の記憶ついて。」
 ソラは長くなるわよ、と前置きをしてその場に座り直し、話し始めた。
「まず、魔法について。これは、洞窟でも少し話したわね。
 魔法には、地水火風氷光闇、7つの属性があって、人間ならば扱える属性は原則1人ひとつ。属性は生まれつき決まっているようで、たまに2つ使える人もいるみたい。
 ちなみに、エルフ族は2つ3つ使えるのが普通らしいわ。
 そして、人間とエルフ族に共通して言えるのは、空の石と呼ばれる石がないと魔法が使えないの。
 人間は青空の石、セレスタイト。
 エルフ族は星空の石、ラピスラズリ。
 をそれぞれ1つだけ持っているわ。
 人間の場合、セレスタイトはいつの間にか手元にあって、それから魔法が使えるようになるの。
 エルフ族は、生まれつき体内に持っていたり、石を持って生まれてきたりするらしいわ。」
「ソラ。」
「なに?」
急に彼が深刻そうな顔をした。
「嫌な予感がします。」
ーーきゃあ!
悲鳴が聞こえてきたのは同時だった。
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