この青い空の下で

山吹イリア

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ソラの石

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 二人は急いで小川に駆けつけた。
 そこには、彼女の他に3つの人影。
「やめて!それは私の石ですわ!」
 サニィはしゃがみこんだまま声を上げている。
「サニィ!こっちへ!」
「ソラ!」
 ソラは叫ぶと呪文を唱え始める。しかし、サニィは動かない。
「これは幸運だ。」
サニィのセレスタイトを手にぶら下げた男が呟いた。
「石が取り放題だね。」
 もう一人の男はメガネをくいっと上げながら楽しげに言った。
 一方、パティと呼ばれた小さな女の子は、サニィの髪を三つ編みにして遊んでいる。
「この少女は闇の魔法を使いますわ!影を踏まれると動けなく…きゃあ!」
ばちっ!
 石を持った男は表情を変えず、突然サニィに電撃のようなものを浴びせた。彼女はたまらず声を上げる。
「サニィさん!」
 男二人はゆっくりとこちらから離れるように歩いていく。
 逃さない!
 ソラは狙いを少女から男たちへ変更した。
「"烈葉(れつよう)"!」
びゅん!
 風がソラの髪をはためかせて唸る。
 ソラの前から放たれた風の矢はセレスタイトを持った男の手に直撃した。
「ちっ!?」
 石は宙に舞い、アーサーがキャッチする。
 男は一瞬、驚愕の表情を浮かべた後、なぜか笑顔になる。
 そして、彼らは風のように走り去っていった。
「…ふう。…サニィ!?」
 ソラは一息ついて、サニィのもとへ駆けていく。
 パティという女の子も消えていて、サニィは縛を解かれたが気を失っていた。
 アーサーも駆けつける。ソラは彼女を抱き起す。
「…あ…わたくし、生きてる…?
 ではなくて!わたくしのセレスタイトは!?」
 ふるふると頭を振って我にかえる。
「無事ですよ。」
 アーサーはサニィに石を渡す。彼女は石を受け取るとそっと胸に抱きしめた。
「ありがとうございます。」
「あいつら…一体何なのかしら…」
 ソラは首をかしげる。するとアーサーはソラ、と声をかけ
「それより…気になることがあります。」
「?」
 二人はキョトンとしている。
「ソラ。あなたはなぜ石を2つ持っているのですか?」
 彼は言うなり、そっと手を伸ばし、ソラの耳に触れた。
「え!?」
 彼女の耳には青い耳飾り。年頃の少女なのだから、それくらいつけていても不自然ではない。
「ただの耳飾り、ではないですよね?魔法を使った時、魔力を感じました。その2つの石から。
「……」
 ソラは目を伏せ、ふう、とため息をついた。
「それは、あたしが"ハーフ"だからよ。」
 彼女は耳元の手に自分の手をそっと重ねた。


***


 ーーハーフ。
 それは、両親が人間とエルフ族の子ども。つまり、二種族の混血である。
 人間とエルフ族は昔から仲が悪い。理由としては、人数、寿命、魔力の差などなど。
 人数は人間の方が圧倒的に多い。しかし、あとの2点に関してはエルフ族の方に軍配があがる。
 さらに、それをお互いに妬み合っているため、溝は深くなるばかり。

 と言うのが世の中の定説である。
「サニィさん、物知りですねー。」
 場所を木陰に変えて。
 サニィは解説を始めたのであった。
「驚いたわ。盗み食いの才能しかないのかと思ってた。」
「話をそらさないで頂けます?」
 彼女に睨まれてソラはパタパタ手を振る。
「ごめん、ごめん。でも、あたし、別に隠すつもりはなかったのよ。聞かれもしなかったし。それに…」
 ソラは悲しそうな目をして続けた。
「それに、ハーフって、それだけで何かと差別されたり、変な目で見られたりするのよね…慣れたけど…」
「わ、わたくしは!そんなことしませんわ!」
 サニィは身を乗り出して言う。
「同じ空の下で共に生きているのですから、種族なんて関係ありませんわ。差別だなんて、愚かな者がすることです!」
 彼女の言葉にソラは笑顔で答えた。
「ありがと。」
 そう言うと、ソラは困った様子で頭をかいた。
「でも、ひとつ問題が発生したみたいなの。」
「問題…ですか?」
 アーサーは首を傾げた。
「あたしが魔法を使った時、アーサーはこの2つの石から別々の魔力を感じたんでしょ?」
「はい。」
「ということは、あたしが石を2つ持っているとわかった。」
「…何が問題なのです?」
 今度はサニィが首を傾げた。
 彼らは、サニィの石を奪おうとした。さらに、石が取り放題、という言葉。
 そこから導き出される答えとは。
 アーサーは、あ、と声を出した。
「彼らは石を奪いに再び襲ってくる。」
「たぶん正解。」
「なんですってえええええええ!!」
 サニィの叫び声が辺りに響き渡った。
「でも。ま、気にせず進みましょ。」
「気にしないとかっ、なぜそんなことできるのです!?わたくしはっ、あんな人質の様な怖い体験はこりごりですわ!」
 サニィは興奮気味である。
「サニィさん。気にしていても、しなくても、やってくるものは仕方がないじゃあないですか。それならば、気にするだけ損ですよ。」
 アーサーがなだめる。
「フォローになっていませんわあああ!第一!王族のわたくしにもしもの事があったらどうしてくれるのですか!お金も世間体も気にせず楽しく甘く生きて行く予定ですのに!」
「とりあえずマシュマロお供えしてあげるわよ。」
「いやああぁぁぁ!!」
 ソラはなんだか楽しそうだ。そして、サニィの肩に手を掛けてウインクした。
「多少のスパイスがあってこそ人生よ。」
「甘いものにスパイスは要りませんわ!」
 彼女は涙目で訴える。
「では、話がまとまったことですし…」
「どのあたりがです!?」
「出発しましょう。」
 アーサーは散らかり放題の話を無理矢理まとめて立ち上がった。
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