堕ちた英勇の子

正海広竜

文字の大きさ
11 / 17

第十話

しおりを挟む
 エドワード達は持って来た昼食を食べ終えて食休みしながら、カードゲームをしていると。

「さて、そろそろ。皆に会いに来た訳を話すわね」

 腹もくちくなり、茶を飲んで気分を落ち着けたアイギナがそう言うと、エドワード達はカードゲームを止めて顔を向ける。

「皇女様。今日はいったい、どういう理由で僕達に会いに来たのですか~?」

 シモンファルトが疑問に思っている事を訊ねた。

 それが口火となり、他の者達も口を開いた。

「うむ」

「そうだね。姫様とは幼馴染とは言え、僕達とは学年が違うんだ。だから、接する事が少ない。それなのに会いに来た」

「旧交を温めるだけならば、学院ではなく茶会を開くので呼び出せばいい。それをしないという事は」

 エドワードは其処で区切ってアイギナを見る。

 見ているだけで心臓がドキドキ言うが、顔に出さない様に頑張るエドワード。

『このまま告れば?』

 相棒テッドの声が頭の中に響いた。

 エドワードは心の中で黙っていると思いながら口を開く。

「この学院内で、俺達としたい事がある。だから会いに来たという事ですか?」

 エドワードがそう訊ねると正解とばかりに笑うアイギナ。

「そうなの。この学院は入学して半年したら、部活に入るという校則がある事を知っている?」

 アイギナの問いかけにエドワード達は頷いた。

 この校則は学年が違う生徒達との交流を深める為と言う名目で作られたものだ。

 様々な部活があるので、最低でも一つ選び其処に入る事が決められていた。

「貴方達は何処かの部活に入るか決めた?」

 アイギナの問いにエドワードはオスカー達を見る。

 三人は決まっていないのか首を横に振る。

「皆、決まっていないそうです。自分もそうです」

 エドワード達が決まっていないと言うと、アイギナはこれ幸いとばかりにポケットから紙を出した。

 その紙には『入部届け』と書かれていた。

 エドワード達はその紙をジッと見る。

「「「「遊戯部?」」」」

「そう。去年からわたし達が入っている部活なの。カードゲームやボードゲームとかをして遊ぶ部活よ」

「……それって要するに遊ぶという事ですか?」

「そうとも言えるわね。でも、ちゃんとした大会にも出ている部なのよ」

「へぇ~、そうなんだ」

「遊べるのなら、良いんじゃない?」

「うむ」

 アイギナの話を聞いてオスカー達は入部に乗り気であった。

「エドはどうなの?」

 オスカー達は入部に乗り気であったが、エドワードだけ顎を撫でた。

「エド?」

「どうかしたの?」

 オスカーとシモンファルトは返事をしないエドワードに不審に思いエドワードの顔を見る。

「……他の部にも並列して入っても良いですか」

 実はエドワードは入りたい部があり、其処に入ろうと決めていた。

 だが、アイギナ皇女が勧めるので断るのも勿体ないと思った。

「別に良いわよ。強制はしないし、他の部と一緒に入って問題ないわ。それに」

 アイギナはルイーズを見た。

「ルイーズも遊戯部の他に剣術部も入っているから問題ないわ」

 アイギナがそう言うのを聞いてエドワードは頭を下げた。

「では、わたしも遊戯部ともう一つの部にも入るという事で」

「そう良かったわ」

 エドワードが入部すると言うと、クリュネ達は不満を述べた。

「ええ~、お兄ちゃん。そうしたら、わたし達と遊ぶ時間がなくなるよ~」

「エド兄。妹を可愛がらないのは問題だよっ」

「その、わたしも出来れば、兄さんと一緒に遊びたいな……」

 不満を述べる義妹達を見て苦笑いしつつエドワードは三人の頭を撫でた。

「お前達とはちゃんと遊ぶ時間を作るから、大丈夫だ」

「「本当に~~~?」」

「本当だ」

「「じゃあ、いいや」」

 クリュネ達はすんなり了承した。

 ヘレネだけは渋い顔をしていたが、エドワードが頭を撫でた。

「大丈夫だ。本当にちゃんと時間を作るから」

「本当に?」

「ああ。約束だ」

「うん」

 ヘレネは目を細めて気持ちよさそうに頭を撫でられていた。

『お前ってさ、女を誑し込む才能あるぜ。兄弟』

 テッドがそう言うのを聞いてエドワードは心の中でどういう意味だよと言うが、テッドからの答えはなかった。

 その後、オスカー達も『遊戯部』に入る事を決めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

処理中です...