帝国のドラグーン

正海広竜

文字の大きさ
18 / 26

第17話

しおりを挟む
 後の事は使用人に任せて屋敷を出た狂介は徒歩で暫く歩くと、オルチの屋敷まで来た。
 この地方の建築方法なのか、狂介の故郷の建物は一階建て木造であったが、オルチの屋敷は二階建て石造りであった。この地方では石で建物作るのか、それとも海に近いので潮風で木が痛むのを考慮したのかは狂介は知らない。
 
 そう思いながら、狂介は屋敷の前に居る門番に声を掛けた。
「親父に呼ばれてきた」
「どうぞ」
 オルチに実子同然に可愛がられているという事が周知されている所為か、衛兵達は狂介を見ても特に不審に思う事も確認の為に屋敷に向かうような事はしなかった。
 門番に見送られ、狂介は屋敷へと入った。

 屋敷の庭のある道を歩きながら、狂介は屋敷の玄関まで来た。
 其処でも番をする者が居た。
 その者は狂介を見るなり「少々お待ちを」と告げて、屋敷の中に入った。
 屋敷に入ったと思ったら、直ぐに戻って来た。
「どうぞ、親爺がお待ちです」
「分かった」
 番をしている者が扉を開けてくれたので、狂介は屋敷の中に入って行った。
 
 屋敷の中に入ると、出迎えの女性の使用人が狂介に一礼した。
「ご案内します」
「頼む」
 狂介は女の使用人の後に付いて行った。

 屋内を少し歩き、目的の部屋の前まで来た。
 女性の使用人はドアをノックした。
 すると、ドアが開けられて、別の女性の使用人が出て来た。
「キョウ様をお連れしたと伝えて」
「畏まりました」
 狂介を連れて来た女性の使用人が告げると、出て来た女性の使用人は頷くと部屋に戻った。
 その女性の使用人は直ぐに戻って来た。
「どうぞ。お入り下さい」
 女性の使用人が扉を開けてくれたので、狂介は部屋に入った。
 
 部屋に入った狂介は部屋を見回した。
 故郷の家よりも高く白い天井。
 其処には何かの模様が刻まれていた。花の様な、何かの動物を模している様な幾何学模様が描かれていた。
 壁紙も白く統一されており、其処には数人が並んで座っても問題ないソファが幾つも置かれていた。
 その内の一つにオルチは座っていた。
 オルチの前には小さなテーブルが置かれており、其処には盃と炒った豆が盛られた皿が置かれていた。
「おお、来たか」
「お呼びとの事で」
 狂介は一礼して、頭を上げるとオルチは手招きした。

 手招きされた狂介はそのままオルチの傍まで来て、側のソファに座った。
「それで、今日は何の用でお呼びで?」
 また、剣か銃を作って欲しいという事だろうかと思いながら訊ねる狂介。
 狂介が作る品が人気が高く、時折、オルチから注文を受ける事があった。
 その作った品を何処に運ばれるのかは、狂介は知らないが命じられた以上は作るというのが、職人として矜持なので言われるがままに作っていた。

 だが、オルチは首を振る。
「今日はお前に贈り物だ」
「贈り物?」
 狂介が訊ね返すと、オルチはその理由を語りだした。
「日頃から、お前には頑張って貰っているからな。その礼だと思え」
「……こちらとしては衣食住を保証してくれるだけで十分なのだが」
 狂介からしたらそれだけでも十分だと思うのだが、オルチは首を振る。
「それだけでは割に合わん位に、色々と頑張っているのだ。お前は」
「左様で」
 そう答えながら、何をくれるのだろうと思う狂介。
 表情こそ変わらないが、内心期待している狂介。
「まぁ、見て驚け」
 オルチは笑みを浮かべつつ、手で膝を叩いた。
 片腕が義手なので、上手く叩けないので、膝を叩いた様だ。
 その音が聞こえたのか、別室のドアが開かれた。

「……っ」
 そのドアが開かれて見えたものに目を見開く狂介。
 開かれたドアに立っていたのは女性であった。
 狂介やオルチ達とは肌色が違い黒かった。
 ブルネットの長髪。高い鼻梁に大きな切れ長の目。緑色の瞳を持っていた。
 身長もそれなりに高く百七十センチ以上はあった。
 狂介の身長よりも高かった。
 胸元が大きく開かれ着飾った衣装を纏っていた。
 その衣装に似合うかのように大きく育った果実を持っていた。腰も程よく肉付いており、細くも太くも無かった。尻は胸に負けない位に豊満であった。
 その女性をマジマジと見た後、狂介はオルチを見た。
「親父。この方は?」
「喜べ。キョウ。お前に相応しい嫁を見つけて来たぞ」
 オルチは宣言に狂介は言葉を失った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

月弥総合病院

僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...