帝国のドラグーン

正海広竜

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第16話

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 それから半年後。

 狂介は相も変わらず剣を打っていた。
 最近では、剣だけでは無く銃の製作も手掛けていた。
 刀身彫りの技術を駆使して、銃身に様々な模様を施していた。
 銃として使えるだけでは無く、その見事な細工の為か商人達にも評判を呼び、かなり需要があった。
 もう一つ狂介が打つ剣の方も人気が高かった。
 そこいらにある剣よりも遥かに切れ味が良く、折れずらいので人気があった。
 また、刀身に文様が浮かぶというこの国の職人達でも作る事が出来ない技術に人気があった。
 職人達は狂介の技術を盗もうと、狂介の剣を取り寄せて調べたが、その製法が解明する事が出来なかった。
 その為か、職人達の中には狂介の工房へ忍び込み、技術を盗もうとしていた。

 職人が狂介の屋敷に忍び込み、物陰に隠れながら狂介を探していた。
 丁度、狂介が剣を反らせる為に水を付けようとしている所でであった。
 炉で熱くなり赤くなった剣が水が入った桶の中に入れた。
 水に付けられた鉄は暫くジュウジュウという音を立てて、水を泡立てた。
 暫くつけていたが、音がしなくなると狂介は水から剣を上げた。
 水に付ける前は直剣であった剣が、水から上げられると反りかえっていた。

 職人はそれを見た瞬間、驚愕した。
 そして、剣に付けたその水に何か秘密があると思い、水を覗こうとした所で狂介は職人に気付いた。
「曲者っ」
 狂介はその忍び込んだ職人対して、持っている剣を叩き付けた。
 水に付けたので熱は冷めており、熱くはない。まだ、刃も付けていないので切れる事も無かった。
 だが、鉄の塊に叩かれた事で職人は気を失った。

「……また、俺の技術を盗もうとした奴か。これで、何人目だ?」
 出来た剣を肩で担ぎながら溜め息を吐く狂介。
 最初、狂介の作った剣など大した物ではないと思っていた職人達が、商人達に人気が出て来たという事に嫉妬してか、工房に入り込み技術を盗もうとしだした。
 今月だけでも、数えきれない程の職人が忍び込んだ。
 見つける度に気を失わせて捕まえるか殺していた。
 技術を盗もうとしているのだから仕方がない事と言えた。

 狂介も殺す事に何の躊躇いも無かった。
 というのも、盗むのに失敗した実例を見た事があるからだ。
 狂介が故郷に居た頃、兄の一人が父の技術を盗もうとして失敗して片腕を切り落とされたのを見た。
 刀を打ち終えた後で、焼き入れの際に使った水の桶に兄は手を入れようとしたが、それに気づいた父が容赦なく兄の腕を切り落とした。
 兄が腕を切り落とされても、父は動じる事は無かった。
『技は目で盗め』
 とだけ告げて、兄を治療する事なくその場を離れた。
 無情が無いさまであったが、それを見た狂介は父の作業に全神経を集中させて、技を盗んだ。

「これからは、護衛に誰か雇った方が良いかな?」
 そう呟く狂介。
 其処に使用人がやって来た。
「失礼します。・・・ひっ」
 使用人が工房に入るなり、倒れている人を見て悲鳴をあげる。
 また、人が死んだのかと思ったからだ。
「大丈夫だ。こいつは死んでない。後で、奴隷商人に売りにいってくれ」
 実はこうして職人が忍び込んできて捕まえると、奴隷商人に売るとそれなりに良い値段で売れるので、意外に良い収入になるので、狂介も満更悪い気分では無かった。
「分かりました」
 使用人の返事を聞きながら狂介は打った剣を壁に立て掛けた。
「それで、何の様だ?」
「オルチ様が御呼びです。屋敷に来るようとの事です」
「親父が?」
 何の用だろう?と思いつつ、狂介はとりあえず愛用の剣を佩いて屋敷を後にした。
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