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第15話
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降伏した船の乗組員を自分の船に収容しつつ、オルチ達は倒れている死体を見た。
「どう見ても、銃撃を喰らった様にしか見えぬな」
オルチがその死体を見て呟いた。
「親爺。これはキョウが撃ったのか?」
部下がオルチに訊ねると、オルチはその通りと言わんばかりに頷いた。
オルチ達が乗っていた船で銃を扱っていたのは狂介だけであった。
なので、銃撃したのは狂介だと分かったのだが。オルチ達は信じられない思いであった。
「まさか、揺れる船上で狙撃して二人も殺めるとは……」
オルチの恐れが籠った声を聞いて、部下達も同感なのか頷いていた。
捕虜となった乗組員達から話を聞いた所、上甲板で船長が指揮をしていると、突然船長が倒れた。
何事かと思い、乗組員達が船長の側に行くと、船長のこめかみに穴が開いて死んでいた。
撃たれた船長自身も何が起こったのか分からないという顔で事切れていたので、それを見た乗組員も訳が分からなかった。
船長が死んだ事で、乗組員達は混乱した。
それを見て副船長が慌てて指揮を取り、混乱を収拾しようとしたのだが、其処でもまた船長と同じように副船長が倒れた。
今度は額に穴が開いていた。
まるで、悪夢を見ているかのような気分になった乗組員達は降伏を決断した。
その話を聞いても、オルチ達は頭から、そんな馬鹿な事があるかと思っていた。
だが、こうして銃撃された死体を見て乗組員達の気持ちが良く分かったオルチ達。
普通に行動していた者達が突然死ねば、誰でも驚くし取り乱す。
それが襲撃されている時に起これば混乱に拍車が掛かるといって良かった。
「指揮していた者が突然死んだら、相手はどう思うでしょうね?」
「恐らく、悪魔に魂を奪われた様な気分であったであろうな」
オルチは部下の問いかけに応えつつ、自分の船の甲板で銃の整備をしている狂介を見た。
(思いの外、良い拾い物をしたのかもな)
オルチは狂介のした事を見て、そう思えて仕方が無かった。
船にある物を全て略奪し終え、残った船は沈めてオルチは本拠地へと帰還した。
損害と言える損害を出さないで、多くの捕虜と略奪品を得たので大戦果と言っても良かった。
その証拠にオルチの部下達は自分達に分配された略奪品を見て嬉しそうに顔を緩ませていた。
部下達が船から降りて酒場にくり出す中、狂介は分配された略奪品を包んだ袋を持って船から降りようとしたが。
「キョウ」
其処でオルチに声を掛けられたので、狂介は足を止めた。
「何だ。親父」
「……前々から聞きたかったんだが、お前は故郷に帰りたいか?」
オルチがそう訊ねて来たが、その問いかけの意図が分からず狂介は首を傾げた。
「別に」
「家族は死んだと聞いているが、それでも故郷に帰りたいと思わないのか?」
「思わない」
狂介はそう言って、腰に佩いている剣の柄を叩いた。
「何処に行っても、鉄を打つ事が出来る。だから、問題ない」
狂介は淡々とだが思っている事を言う。
狂介は生まれて直ぐに母親を亡くし、口減らしの為に寺に預けられた。
その為か、父親と二人の兄については、親族という情を抱く事が出来なかった。
ただ血が繋がっているだけという認識であった。
片親を早くに亡くした事で感情が欠落したのだろう。
その為か、野盗に父親と二人の兄が殺される所を見ても、狂介の心の中で敵討ちをするという感情が芽生えなかった。寧ろ、何を失っても生き残るという思いしかなかった。
「今の生活の方が性に合っている」
肌を容赦なく焼く砂漠。緑豊かで生い茂る大地。空の様に青い海。
どれも、故郷とは全く違う環境であったが、狂介は気に入っていた。
この地に骨を埋めても良い位に。
「そうか……そうか」
狂介の言葉を聞いてオルチは納得した様に頷いた。
オルチは聞きたい事を聞こえたのか、手でもう行っても良いと促すので狂介は船から降りて自分の屋敷へと向かった。屋敷に着くと分配された略奪品は二等分にした。
屋敷の使用人達に渡した残りは、今後の為に貯蓄された。
使用人達に略奪品を与えた後、自室に戻った狂介はベッドで横になり瞼を閉じた。疲れていたのか、直ぐに眠気が襲い掛かり狂介は眠りについた。
「どう見ても、銃撃を喰らった様にしか見えぬな」
オルチがその死体を見て呟いた。
「親爺。これはキョウが撃ったのか?」
部下がオルチに訊ねると、オルチはその通りと言わんばかりに頷いた。
オルチ達が乗っていた船で銃を扱っていたのは狂介だけであった。
なので、銃撃したのは狂介だと分かったのだが。オルチ達は信じられない思いであった。
「まさか、揺れる船上で狙撃して二人も殺めるとは……」
オルチの恐れが籠った声を聞いて、部下達も同感なのか頷いていた。
捕虜となった乗組員達から話を聞いた所、上甲板で船長が指揮をしていると、突然船長が倒れた。
何事かと思い、乗組員達が船長の側に行くと、船長のこめかみに穴が開いて死んでいた。
撃たれた船長自身も何が起こったのか分からないという顔で事切れていたので、それを見た乗組員も訳が分からなかった。
船長が死んだ事で、乗組員達は混乱した。
それを見て副船長が慌てて指揮を取り、混乱を収拾しようとしたのだが、其処でもまた船長と同じように副船長が倒れた。
今度は額に穴が開いていた。
まるで、悪夢を見ているかのような気分になった乗組員達は降伏を決断した。
その話を聞いても、オルチ達は頭から、そんな馬鹿な事があるかと思っていた。
だが、こうして銃撃された死体を見て乗組員達の気持ちが良く分かったオルチ達。
普通に行動していた者達が突然死ねば、誰でも驚くし取り乱す。
それが襲撃されている時に起これば混乱に拍車が掛かるといって良かった。
「指揮していた者が突然死んだら、相手はどう思うでしょうね?」
「恐らく、悪魔に魂を奪われた様な気分であったであろうな」
オルチは部下の問いかけに応えつつ、自分の船の甲板で銃の整備をしている狂介を見た。
(思いの外、良い拾い物をしたのかもな)
オルチは狂介のした事を見て、そう思えて仕方が無かった。
船にある物を全て略奪し終え、残った船は沈めてオルチは本拠地へと帰還した。
損害と言える損害を出さないで、多くの捕虜と略奪品を得たので大戦果と言っても良かった。
その証拠にオルチの部下達は自分達に分配された略奪品を見て嬉しそうに顔を緩ませていた。
部下達が船から降りて酒場にくり出す中、狂介は分配された略奪品を包んだ袋を持って船から降りようとしたが。
「キョウ」
其処でオルチに声を掛けられたので、狂介は足を止めた。
「何だ。親父」
「……前々から聞きたかったんだが、お前は故郷に帰りたいか?」
オルチがそう訊ねて来たが、その問いかけの意図が分からず狂介は首を傾げた。
「別に」
「家族は死んだと聞いているが、それでも故郷に帰りたいと思わないのか?」
「思わない」
狂介はそう言って、腰に佩いている剣の柄を叩いた。
「何処に行っても、鉄を打つ事が出来る。だから、問題ない」
狂介は淡々とだが思っている事を言う。
狂介は生まれて直ぐに母親を亡くし、口減らしの為に寺に預けられた。
その為か、父親と二人の兄については、親族という情を抱く事が出来なかった。
ただ血が繋がっているだけという認識であった。
片親を早くに亡くした事で感情が欠落したのだろう。
その為か、野盗に父親と二人の兄が殺される所を見ても、狂介の心の中で敵討ちをするという感情が芽生えなかった。寧ろ、何を失っても生き残るという思いしかなかった。
「今の生活の方が性に合っている」
肌を容赦なく焼く砂漠。緑豊かで生い茂る大地。空の様に青い海。
どれも、故郷とは全く違う環境であったが、狂介は気に入っていた。
この地に骨を埋めても良い位に。
「そうか……そうか」
狂介の言葉を聞いてオルチは納得した様に頷いた。
オルチは聞きたい事を聞こえたのか、手でもう行っても良いと促すので狂介は船から降りて自分の屋敷へと向かった。屋敷に着くと分配された略奪品は二等分にした。
屋敷の使用人達に渡した残りは、今後の為に貯蓄された。
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